Category Archives: 国内ブランド - Page 94

トリオ KA-7300D

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 コストパフォーマンスがはなやかに喧伝されていたころ開発されたKA7300も、今年になってマイナーチェンジされ、しかもDCアンプ化された。このKA7300Dは内容が充実していて、実質的に高く評価していい製品だ。がっちりした明確な音像イメージの再現が力感に溢れ、より大きなパワーを感じさせる。

テクニクス ST-9030T

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 テクニクスのチューナーは、この製品と、80Aのペア製品を聴いたが、いずれも純度の高い音質で、SN比もよく、安定したチューナーである。新しい製品らしい、アップトゥデイトな内容をもったこのチューナーは、実用性の高い製品として評価できる。デザインとしてはもう少しチューナーらしい夢がほしい。

テクニクス SL-1300

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 この稿を書いている時点でマークIIが発表されたが、DCサーボのダイレクトドライヴによる、オートマチックリピートとカット機構をもったシステムの草分け的存在であった。スタティックバランスのアトーンアームも、妥当なバランスの音質が得られ、使い勝手のよい便利さと高性能を兼ね備えている。

グレース SF-90

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 F9シリーズの単売品の音には、どこかひよわな頼りなさがあったが、SF90になってからは音像にしっかりした芯が加わって、国産カートリッジに共通したやや薄味ながらひずみ感の少ない美しい音質が楽しめるようになった。RとLの接続がSME式と逆なので、共用する場合には左右を逆に接ぎかえる。

オンキョー Integra A-7

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オンキョーの新シリーズの中級プリメインアンプである。中低域の透明感と弾力性が、従来のアンプと一味違うところで、プレゼンスの際限が優れている。したがって、大編成のオーケストラのホール空間のリアリティなどが豊かで好ましい。しかし、反面、もう一つ明確にシャープに音像を浮彫りにしてくれるような感じがあってくれたらとも思う。この辺のニュアンスは、アンプでずい分変るものだ。

オンキョー Scepter 10

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ユニットの基本設計や全体の構成に、JBLを手本にしたふしはあるにしても、イミテーションの域を脱して明らかにオンキョーの新シリーズの個性に仕上って、計測上も聴感でもフラットなワイドレンジ型で、音のクォリティもしっかりしている。音にもっと明るい弾みがあればなお良い。

ビクター JL-F45R

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 これは実質的に便利で、かなりの性能の得られる普及型の中での優秀機。フラットなデザインのベースに、オートリピート、オートカット機構のついたDDターンテーブルとスタティックバランスドアームが装備される。付属カートリッジも、まずまずのものだが、高級なものにもちゃんとフォローする。

トリオ KT-7700

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 標準的チューナーといってよい製品。チューナーに関して高い信頼性をもつトリオの製品らしく、ある機会にテストしたとき、このチューナーのSN比のよさ、音質のよさを実感させられた。これよりはるかに値段の高い、高級チューナーで、劣るものがいくつもあったといっておこう。

ビクター JA-S41

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ビクターのプリメインアンプの中の中級機種であるこの製品は、厚みのある立体的な再生音を可能にしてくれるし、音の質感が品がいい。とちらかというと、ウォームなサウンドで、がっちりとしたソリッドな音像感というより、雰囲気重視型のソノリティを特長とする。高さのあるパネルのプロポーションは安定感があって落ち着いているし、決して消化されたデザインとはいえないが、冷たい感じを与えないので好感がもてる。

ヤマハ CT-7000

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 わが家での常用チューナーである。とにかくオーソドックスで使いよいチューナー。そうした実用性を、ことさらに無視したような未来的チューナーを私は好まない。それでいて、このチューナーはモダーンなフィーリングであり、精緻な構造である。感度、音質ともに文句のない優れたチューナーだ。フロントエンドは7連バリコンを使い、RF2段、ブロック・セラミックフィルターを使っている。

サテン M-117X

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 117シリーズの最高機種で、もともとは4ch用だが、ふつうのステレオ再生にも、ワイドレンジ型ならではの繊細な音質が生かせる。共振の少ない剛性の高いヘッドシェルにとりつけ、軽くオイルダンプしたアームで、うまく調整すると、高域の華やかさが抑えられ、切れこみの良いクリアーな音が楽しめる。

アキュフェーズ T-100

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 C200、P300というセパレートアンプとの共通イメージでデザインされたチューナーで、内容的にも同セパレートアンプの充実さとバランスした高度なもの。放送局と家庭のシステムを針金で直結させるという思想で、徹底的に諸歪を追求した特性のリファインされた優秀なチューナー。フロントエンドは5連バリコンで、IF段は10素子のLCフィルターを使用している。デザインが洗練されていないのが惜しい。

ソニー PS-8750

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 クォーツロックサーボ・ターンテーブルとして早くから登場したシステムである。数々の新技術をとり入れてまとめられた、いかにも機械といったイメージが表面に出すぎているのが、個人的には少々好みに合わないが、実質性能は高く評価できる。スタティックバランス型トーンアームも、適応性の広いユニヴァーサルタイプとして、音質的にバランスもよい。やや生硬な音になるのは、見た目からくる先入観かもしれない。

デンオン DL-103

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 FM局その他のプロ関係で多数採用されている著名なカートリッジ。もともとはオルトフォン型をデンオン流にアレンジした構造のMC型だが、出力が割合に大きいため、最近のSN比のよいアンプなら、トランスやヘッドアンプなしで実用的な音量まで出せるところが使いやすい。針圧は2・5gぐらいかける。

パイオニア RT-701

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 古き良きマグネコーダーの再来を思わせる個性的なデザインにまとめられた製品である。実際にラックにマウントしてみると使って良く、眺めても楽しい。音は巧みに帯域コントロールされ、4トラックオープンテープの魅力を十分に引出し、それでいて使いやすい音である点が好ましい。より発展を期待したい製品だ。

サテン M-18BX

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 サテンは日本のカートリッジの専門メーカーとして、いかにも専門家らしい行き方をしてきたメーカーだ。信じるコンセプションを一貫し、独自の構造を磨き上げ、本当に一品一品作るクラフトマンシップをもつ。MC型だが高出力で、振動系に不用意にイージーな弾性体を使うことを避け、明解きわまりない音を出す。

ソニー TC-K7

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 新しくモデルナンバーがシンプルになって登場した一連のコンポーネント中で、このK7は、事実上のソニーのカセットデッキのトップモデルである。操作系は、スイッチ型のプランジャーコントロールで快適に動作し、オプションのリモートコントロールも使用可能である。走行系は安定で、そのためカセットにおきやすい音質のゆれが少なく、ソリッドでスッキリした、いわば、カセットデッキの標準的な音が特長である。

ダイヤトーン DP-EC1

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 フルオートマチックシステムでありながら、マニュアルプレーヤーの性能の高さをもつ。全電子式コントロールは、きわめてスムーズで未来的。一度使うと、その便利さが忘れられないオートプレーヤーだが、ここまで性能と動作の円滑な自動機構をバランスさせた製品は数少ない。国産唯一の電子コントロール・オートプレーヤーとして高く評価できる。デザインも悪くはないがもう一次元、洗練されてほしい。

オーディオテクニカ AT-14Ea/G

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 テクニカ独自のVMカートリッジも、いまや一連の製品が勢揃いして全く自家薬籠中のものになった印象だが、中で価格と音質のバランスのよいのはこの14Eaあたりのようだ。シュアー型のMMとはひと味違う切れ込みの良い華やかな音質が独特。マグネシウム合金製のMGシェルつきで使いやすい。

トリオ KA-7100D

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 トリオのシリーズ中、新しい中級製品で、豊かな内容を盛り込みながら、価格は安く、お買徳なアンプである。回路的な特長は多くあるが、一言にしていえば、高級アンプの内容を、合理的にコストダウンで実現したといえるものだ。鮮明な音像は、よく引締り、無駄な甘さがなく、よりパワーの大きなアンプを感じさせる立派な音である。デザインは風格がないが、これは求める方が無理な値段であろう。

パイオニア CT-97

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 カセットデッキでは、もっとも魅力のある製品が多い9万円台の価格帯に置かれたパイオニアのトップモデルである。基本型はCT−9であり、単にパネルフェイスを改良したモデルと思われやすいが、音質面では、聴感上の周波数帯域がよりワイドレンジ化されて、粒立ちも一段と細やかになっている。中域のエネルギー感と力強さを望むなら、むしろCT−9であるが、ラックに組み込み、システム中に入れるとなれば、CT−97だ。

サンスイ SR-929

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ピアノに見られる黒塗装のフィニッシュがユニークで、質感が高い。レコードをかけるフィリングは自然で、心情的にも魅力のあるシステムだ。ナイフエッジのトーンアームは、どこといって不満はないほどリファインされたが、しっとりした魅力の質感には至っていないのが残念。やはりSMEには一歩も二歩も譲らざるを得ない。しかし、使いよさではSMEより上で、動作も手堅い。価格を上廻る風格がある。

オーディオクラフト AC-10E

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 国産のカートリッジが、概して中〜高域にエネルギーバランスが集まりがちで、言いかえればオーケストラのトゥッティ等でやや派手やかすぎのカン高い音を鳴らす中で、オーディオクラフトのカートリッジは、中〜高域をむしろおさえこんで、低域に厚みを持たせた、国産には得がたいバランスで聴かせる。

ヤマハ NS-690II

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 日本の音、と表現してきたNS690の改良型で、一段の芯の強さ、張りが加わった。特有の美しさは、さらっとして暖かく、穏やかなサウンドを特長としている。どちらかといえば、淡彩で,油のようなこくはない。バランスはじつによくとれていて、3ウェイのコントロールは見事である。

マランツ Model 1250

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 往年のマランツの系統を引継いだパネルレイアウト・デザインは、今なお魅力的であり、美しい。同社のプリメインのトップモデルの名に恥じない風格である。おとは、まさに絢爛豪華なアメリカン・サウンドで、実にブライトである。力強く、積極的に、スピーカーが雄弁に鳴りはじめるのである。