富士フィルムのカセットテープ(Range)の広告
(オーディオアクセサリー 8号掲載)
Category Archives: 国内ブランド - Page 86
富士フィルム (Range)
オーディオテクニカ AT34
ヤマハ A-1, T-1
コーラル 4L-60, H-30, H-40, HD-60
デンオン SC-105
瀬川冬樹
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
前号でもかなり上位の成績をおさめたSC104の兄貴分ということで期待を持って聴いた。ユニットの基本的な構成は、ウーファーが少し違う以外は104と同じのようだが、エンクロージュアがひとまわり大型になっただけあって、低域がふくらんでいる。そのためばかりでなく全体の音色は104とかなり変っていて、104よりも良く響く印象だ。ただしこの低域は、置き方や組合せでうまくコントロールしないと、いくらかこもったり音をひきずったりする傾向が多少あるので、台はやや高め(約50センチ)にして、背面は壁からいくらか(本誌試聴室では約20センチ)離す置き方がよかった。それでもキングズ・シンガーズのバスのブレスト音がいくらか遠く甘くなる傾向があるというように、これはこのスピーカーの低域の特徴のように思われる。これに対して中〜高域のバランスの良さは国産としては特筆もので、かなり音量を上げても、どこかの音域が出しゃばるというようなことがない。ただしシェフィールドのダイレクトカッティングなどでは、パワーを上げても耳当りが柔らかいために、CA2000のメーターを振り切ってもまだ物足りない。感じがある。そういう傾向の音だから、アンプはラックスやトリオの系統が、またカートリッジは455EやVMS20E/IIの系統の方が、スピーカーに合っていると思った。
デンオン TU-850
井上卓也
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
TU850は、デンオン独特の回転ドラム式ダイアル、2個のメーターをもつ個性的なデザインを踏襲した新製品である。
中間増幅段の帯域切替、超高域FM検波器、NFBパイロットキャンセルのMPX、録音用発振器内蔵などが特長といえよう。
マランツ Model 920
黒田恭一
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ
カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶あかるい音色でピッチカートが示される。さわやかなひびきだ。
❷しっかりした輪郭で、しかしせりだしすぎることなく、示される。
❸特にきわだたせるというわけではないが、各ひびきによく順応する。
❹低音弦のまとまり方はいい。第1ヴァイオリンにもう少し艶がほしいが。
❺もりあがりの示し方には、無理がない。クライマックスで一応の力を示す。
モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶音像的なまとまりがいい。しっかりしたひびきだ。
❷音色的対比をくっきりすっきり示す。ひびきに品位が感じられる。
❸「室内オーケストラ」の軽く、さわやかなひびきをよく示す。
❹わざとらしくならずに第1ヴァイオリンのひびきの特徴を示す。
❺特にフルートのひびきが魅力的で、このましい。
J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶すっきりした誇張感のない、さわやかな声は魅力的だ。
❷接近感の提示は見事だ。定位のよさでもきわだつ。
❸声とクラリネットのバランスはとてもいい。
❹うたった声をキメこまかく示す。はった声も硬くならない。
❺声とオーケストラのバランスがよく、各ひびきの特徴を鮮明に示す。
「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶凹凸なく、ナチュラルなバランスというべきだろう。
❷フォルテとピアノの対比は、自然で、無理がない。
❸過度に残響をひきずっていないので、言葉のたちあがりがいい。
❹声にしなやかさがあり、しかもすっきりしている。
❺自然にひびいて、わざとらしさがない。
浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶ピンとポンの音色的、音場的対比は充分だ。
❷後方からのひびきには、透明感がありすっきりしている。
❸音には充分な浮遊感があり、十全に飛びかう。
❹前後のへだたりの提示が万全なため、広々と感じられる。
❺ピークでは、力強さということで、もうひとつものたりない。
アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶すっとぬけるような透明なひびきの、奥の方でのひろがりがいい。
❷ギターの音色のきりかえを、あざやかに示す。
❸下の方でひろがるひびきではないが、くっきり示す。
❹輝きをもってひびき、ギターの音色とよく対比する。
❺きわだちもすぎもせず、ひっこみすぎもせず、このましい。
ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶ベースのひきしまったひびきが有効だ。バランスがいい。
❷イーグルスの音楽的工夫を充分にひびきで感じとらせる。
❸乾いたひびきだが、あやふやさがなくこのましい。
❹ドラムスの、シャープな、力感にみちたつっこみがいい。
❺バック・コーラスのうたう言葉は、充分にたつ。
ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶力にみちたひびきが、積極的に前にでてくる。
❷申し分なくなまなましいが、誇張感はない。
❸音の消え方の提示にわざとらしさがない。
❹力のあるひびきで、シャープに反応しえている。
❺特に音色的なそれぞれの特徴を鮮明に示す。
タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶右と左とのリズムの応答はあざやかだ。
❷明るいひびきで、鋭く、ききての方にせまる。
❸過度に音像がひろがらないために、効果的だ。
❹前後のへだたりがとれているので、せまくるしさがない。
❺リズムの提示がシャープだ。めりはりがついている。
座鬼太鼓座
❶すっきりときこえてくるが、距離感は示せている。
❷いかにも尺八らしい枯れたひびきがいい。
❸過不足なくきこえ、ひびきの輪郭も示す。
❹ある程度のスケール感を示して、消える音も伝える。
❺わざとらしくはなっていないが、きこえて効果をあげる。
デンオン PMA-850
井上卓也
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
デンオンのプリメインアンプは、良き時代の高級感級アンプの面影を感じさせるPMA700Zが、DCアンプ化されマークIIIとして登場したばかりである。
今回は、これにつづいて、1001、1003といったセパレート型アンプでの成果をベースとし、最新の技術動向の最先端をゆく回路構成を備えたPMA850が、新しく装いを変えて登場することになった。
基本的な開発のポリシーは、格段のユニットアンプの特性を極限値まで追求し、いわゆるプッシュプルタイプの平衡型コンプリメンタリー構成を全段増幅に採用している。これにより、裸特性の良さを活かし、ダイナミックな音楽信号の歪補正を従来回路の製品より完全にしている。また、ダイナミックレンジを拡大する目的で、とくにSN比が重点的に追求され、同社の従来製品よりも約10dB向上しているとのことだ。
機能的には、30mVの許容入力をもつMCヘッドアンプ、イコライザーとパワーアンプを直結するダイレクトカップルスイッチなどを備える。従来どおりのクロストーク特性の重視に加えて、左右別巻線のトロイダルトランス仕様の強力な電源部、DC構成の全段直結平衡型DCパワーアンプなどは、今回はじめて採用された。
このモデルは、各構成アンプの素直で優れた性能がナチュラルに音に反映したかのような、明るい、伸びやかな現代のデンオンの音といえるものだ。従来機との違いは、ちょうど、カートリッジでいえばDL103と最新製品DL103Dの差と似ており、音の性質でも同様なことがいえる。新世代のデンオンを感じさせる磨き込んだ立派な音である。
オットー SX-P1
黒田恭一
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ
カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶少人数で演奏されているようなピッチカートだ。
❷くまどりたしかだが、ひびきががけりがちで生気にとぼしい。
❸特徴あるひびきのからみあいをさらに鮮明に示してほしい。
❹低音弦のピッチカートが少しふくらみすぎ。
❺大きくひびきはふくらむが、腰のすわった音がほしい。
モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像は大きい。もう少しくっきりしてほしい。
❷音色的な対比は拡大ぎみに示す傾向がある。
❸「室内オーケストラ」のひびきとしては、重すぎないか。
❹いくぶんこれみよがしになっているといわざるをえない。
❺ソロをとる楽器のひびきの特徴が拡大される。
J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶風呂場の中での声のようにきこえる。表情を拡大しがちだ。
❷接近感を誇張する。笑いそうな声もきわだたせたりもする。
❸声の方がきわだち、クラリネットはうめこまれがちだ。
❹はった声は、硬くなり、特徴的なひびきになる。
❺声と楽器のひびきはもう少しとけあってほしい。
「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶バリトンやバスがせりだし、横一列に並んでいると感じにくい。
❷声量をおとした分だけ、言葉の明瞭度がうすれる。
❸さらに残響をきりおとした方が、言葉がたつだろう。
❹吸う息をきわだたせる。ひびきに敏捷さがほしい。
❺「ラー」はのびているが、自然なしなやかさは不足だ。
浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的、音場的な対比を充分に示している。
❷クレッシェンドが多少ゴツゴツしがちである。
❸ひびきがもう少し浮いてほしい。ひろがりはある。
❹前後のへだたりはまずまずで、横へのひろがりもある。
❺ひびきにより一層の力があれば、さらにはりだすのだろうが。
アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶ひびきのキメがいくぶん粗めなのがおしい。
❷音像的に横にひろがりすぎるので、❶との差がつきにくい。
❸下の方でひろがるようにひびくので、くっきりと浮びあがるとはいえない。
❹一応の効果はあげるものの、光り方がたりない。
❺他のひびきにうめこまれてはいないが、効果的とはいえない。
ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶ベースのひびきがせりだしすぎていないか。
❷厚みというより、横へのひろがりがきわだつ。
❸ハットシンバルの音は、乾いているが、薄く感じられる。
❹ドラムスのひびきが、切れが鈍く、重い。
❺バック・コーラスのうたう言葉は、もっと鮮明であってほしい。
ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像はきわめて大きく感じられる。胴の中できいているかのようだ。
❷クローズアップした感じが強いが、なまなましさはもう一歩だ。
❸消える音の尻尾の提示は、必ずしも充分とはいえない。
❹細かい音の動きに対しての反応はあまり得意ではないようだ。
❺左右の両ベーシストとの音像的な差がある。
タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶この部分の音楽的なアタックは、もう少し鋭く示してほしい。
❷ブラスの音は、そのひびきの特徴を示すものの、大きくふくらむ。
❸横には充分にひろがるが、前にははりだしてこない。
❹さらに後方へのひきがとれていてもよかった。
❺リズムの提示がシャープに示されれば、より効果的だったろう。
座鬼太鼓座
❶尺八のいる位置が比較的近いところに感じられる。
❷尺八のひびき特徴を示すが、低い方の音がふくらみがちだ。
❸きこえる。しかし、輪郭を示すわけではない。
❹大太鼓の大きさを感じさせるが、消え方が伝わりにくい。
❺さらに硬質なひびきでもたらされてもよかっただろう。
ソニー PS-X9
井上卓也
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
プレーヤーシステムは、ダイレクトドライブ型フォノモーターが実用化されて以来、FG型サーボの第2世代、さらに、クォーツロックの第3世代と性能が向上し、現在のトップランクの製品では、まったく完成期に入ったかのように感じられる。性能的に見ても、聴感上においても頂点に達し、もはやプレーヤーシステムが、コンポーネントシステムのネックになるとは考えられないというのが実情である。しかし、一部では、精密な機械加工による精度をもつ、まったくサーボシステムをもたない旧タイプのフォノモーターを使ったシステムのほうが、現在のクォーツロックのフォノモーターのものよりも聴感上で明らかにメリットがあるとの声も絶えないのは事実である。
たとえば、業務用として定評のあるEMTのTSD15を、一般のプレーヤーシステムとEMT927stとで比較試聴したとしよう。当然のことながら同じTSD15なのに、結果としての音は、カセットデッキの音と2トラック・38センチの音ほどに隔絶した差、誰しも驚くほどの違いが出てくる。この意味では、アンプにたとえれば、現在のプレーヤーシステムは、プリメインアンプの範囲にとどまり、高級セパレート型アンプに匹敵する製品は皆無といえよう。
今回ソニーから発表されたPS−X9は、まさしくセパレート型アンプのランクにある待望された大型製品である。
直径38cm、重量2・8kgの大型ターンテーブルは、トルクムラによる振動がない起動トルク7kg/cmの大型リニアBSLモーターでダイレクトドライブされ、サーボ系は、マグネディスク検出方式に加えて、クリスタルロック機構付である。プレーヤーベースは、モーターとトーンアームを他の部分から隔離したアルミ鋳造フレームによるフローティング機構を備え、アルミダイキャスト製の固定フレームからゲル状の高粘性体のインシュレーターで懸架されている。また、モーター部は軸受部分が砲金製、モーターハウジングが鋳鉄製である。
トーンアームは高感度で剛性が高い軸受ブロックとパイプには剛性アルミ合金と炭素繊維をラミネートした材料を採用し、内部のリード線には高域損失が少ないリッツ線を、シェル固定には前後2箇所で締めつけるネックシリンダー機構をもつ。
カートリッジはマグネシュウムシェルと一体化したXL−55Pro、電源はパルスロック型で、MCヘッドアンプとフォノイコライザーが内蔵されている。なお、トーンアームはオートリフター機構付である。
PS−X9に各種のカートリッジを使い、内蔵アンプを使用せず、ダイレクトにコントロールアンプに接続して試聴してみると、安定感があり重厚な低域をベースとして、テープの2トラック・38センチ的な雄大なスケールをもったダイナミックな音に変貌した。
ラックス L-10
井上卓也
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
新セパレート型アンプC12、M12と共通の外形寸法とデザインをもつ新プリメインアンプで、ラボラトリー・リファレンス・シリーズの5L15と共通のDC構成イコライザーとハイゲインDCパワーアンプのみの単純構成が特長である。パワーアンプは、高周波特性が優れた小型パワートランジスターの並列使用で、動作はABクラスだ。機能はシンプルだが、湾曲点3段切替の高音、低音コンペンセーターがあり、変化範囲は狭いが実用上では本機自体が歪感が皆無といってもよいナチュラルな音をもつため、僅かのバランスの変化が敏感に聴きとれ、一般のトーンコントロールと同様に効果的に使える。
マランツ Model 1180
井上卓也
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
モデル1180は、基本的にはモデル3250とモデル170DCをインテグレートアンプ化したと考えてよい製品である。機能的には、モデル3250にピークインジケーターが加わった点だけが異なる。セパレート型の組合せの音に比較すると、ややローエンドとハイエンドを抑えたプリメイン型らしいバランスであり、これは聴感上でのパワー感となって反映されている。同じ定格出力だが、本機のほうがスピーカーを駆動するエネルギーは強く、4343を十分に駆動した。
マランツ Model 3250, Model 170DC
井上卓也
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
管球アンプ時代からの伝統を誇るマランツのセパレート型アンプは、ソリッドステート化されてからも、シンプルで機能美の典型ともいえるフラットなフロントパネルをもつデザインを踏襲してきたが、コントロールアンプ・モデル3600の発表を機会として、ブラック仕上げのサブパネルを配した立体的なフロントパネルに変更され、新しいマランツの顔として定着している。
今回発表された一連の新シリーズ製品は、それに対してサブパネルをフロントパネルに重ねた二段構成のタイプとなり、色調も薄いゴールド一色に統一されている。
モデル3250は、マランツのコントロールアンプとしては、位置づけとしてモデル3200の後継機種として開発された製品である。モデル3200に比較して外形寸法は、標準のいわゆるマランツサイズに統一され大型化されたため、外観から受ける印象は本格的なコントロールアンプらしくなっている。
機能的には、現在のアンプとしては例外的ともいえるフロントパネルに左右独立したマイクジャックを備える他に、高音と低音のみがターンオーバー可変型で、かつ中音を含めたトライコントロールをもち、加えてMCヘッドアンプと連続可変型のラウドネスコントロールがある。
モデル170DCは、コントロールアンプ・モデル3250と組み合わせるパワーアンプで、型番末尾にDCが付いているように、マランツ最初のDC構成のアンプである。パワーは90W+90Wで、フロントパネルにはブルーに照明される2個の大型のパワーメーターがあり、対数圧縮されたメータースケールにより8Ω負荷時のピークパワーを直読できるうえに、左右独立したLED使用のピークインジケーターを備えている。
モデル3250とモデル170DCの組合せの音は、最新製品にふさわしく従来のマランツのアンプよりもかなり粒子が細かく、広いfレンジを感じさせる現代的なものだ。強力な電源回路をベースとする伝統的な、力強く芯がしっかりした低音の上に、米国系のアンプらしい中域の充実感があるのは血統の異なるところであろう。モデル3250は、単体で使用してもナチュラルな音場空間の拡がりと定位感のよさは、モデル3600を明らかに抜いたものだ。
ビクター EQ-7070, M-7070
井上卓也
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
ビクターの7070シリーズは、単なるセパレートアンプの分野にとどまらず、周辺機器までを含めたシステムプランにより開発されたユニークな製品である。すでに、このシリーズではグラフィックイコライザーSEA7070、エレクトロニッククロスオーバーCF7070が発売されているが、今回、イコライザーアンプEQ7070、モノ構成パワーアンプM7070、FMシンセサイザーチューナーT7070、プラズマインジケーターDS7070がシリーズに加わり、充実した製品のラインナップとなった。
EQ7070は、フォノイコライザーの名称をもつようにディスク優先型のプリアンプで、必要最少限度の機能のみを残した単純機能のプリアンプであり、トーンコントロールはシリーズ製品のSEAを併用することになる。機能は、2系統はMM/MC切替可能となっている3系統のフォノ入力、AUX、チューナーの入力切替、2系統のテープモニタ、CとRのカートリッジ負荷切替などを備える。
MCヘッドアンプは、エキストラ・ローノイズFET採用のICL−DC構成で高SN比をもち、イコライザーアンプは、初段FET同相帰還ダブル差動定電流負荷のICL−DC構成、フラットアンプは初段FETシンメトリー・プッシュプル・ドライブ型ICL−DC構成である。
M7070は、モノ構成の完全なDCアンプである。電源関係を重視した設計であるために、A−B独立電源のBクラス動作をするパワー段には、一般の商用電源を一度DCに整流した後に数10kHzのパルスに変換し、高周波用トランスで変換してから再び整流してDC電源を得るDクラス電源に、制御系にPWM方式を用い応答速度を高めた定電圧電源が使用されている。これにより、電源の内部インピーダンスを高域まで非常に低くすることが可能となり、電源のレギュレーションは、理想の電源と言われた蓄電池をしのぐものとしている。
この強力な電源をベースとして、パワー段には高域特性が優れた素子として注目されているパワーMOS FETを採用し、100kHzにおいても120Wの実効出力を、0・02%の高調波歪率で得ることに成功している。
フロントパネルには、12ポイントのLEDピークパワーインジケーターを備え、0・3Wから200Wまで表示可能であり、入力調整、ヘッドフォン端子、スピーカー切替を備える他にプロ用機器としても使用するために、キャノンコネクターをもつ。
EQ7070とM7070の組合せは、現代アンプらしい伸びきったfレンジと粒子が細やかで透明感のある音をベースとし、反応が速く十分にエネルギー感がある充実したサウンドで、ソフトドーム系や、古いタイプのスピーカーに積極的に働き、活気ある音として聴かせる。
ビクター JA-S77
井上卓也
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
セパレート型アンプの2020シリーズを基盤として開発されたプリメインアンプで、ビクターの中心機種の位置にある。構成は、イコライザー、トーンアンプがA級動作のDC構成、パワーアンプがDCアンプのトライDC構成で、電源は、A−B独立型、対数圧縮型パワーメーター、フロントパネルのテープ入出力端子が目立つ。
このモデルは、最新アンプ共通の歪感がなくfレンジが広い、滑らかな粒子の細やかな音をもつ。ビクター製品らしく、音色が明るく、中域に十分な厚みが感じられるのが魅力のポイントである。
オーレックス SB-730
井上卓也
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
各ユニットアンプをはじめ、電源部、各種の構成部品を徹底的に低歪化してつくられたオーレックスの新プリメインアンプである。
このモデルは、音色が軽く明るいタイプで、粒立ちが細かい音をもつが、中高域に適度の輝きがあり効果的にシャープさを感じさせる魅力となっている。低域の反応はおだやかで中高域は早いタイプといえるだろ。
ヤマハ A-1
井上卓也
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
ヤマハのプリメインアンプは、すでに定評が高いCA2000をトップモデルとして、充実したラインナップを持っている。
今回発表されたプリメインアンプは、型番が従来モデルと区別されていることからもわかるように、やや現在では特殊なタイプとも考えられるディスク優先型のユニークな構想に基づく新製品である。
ディスク優先の考え方は、デザインに強く表現され、フロントパネルにはボリュウムと使用時のみ照明される3個の角型のプッシュスイッチがあるのみだ。他のトーンコントロール、テープ関係のスイッチなどの機能は、ヒンジにより下方向に開くサブパネル内部に収納されている。プッシュスイッチは、左から電源、スピーカー、ディスクの順で、ディスクスイッチは、内部のセレクタースイッチがどの位置にあっても、フォノ優先の切替が可能である。この場合には、回路的にはトーンコントロールアンプぺはジャンプされ、イコライザーアンプは直接パワーアンプに接続される。
構成は、ヤマハの超低雑音ICによるMCヘッドアンプ、初段に同様に自社製の超低雑音デュアルFETを使い終段がSEPPのイコライザー、利得が0dBのヤマハ独自のCR−NF型トーンコントロール、入力感度が200mVに設計され一般よりも約20dB高利得型のDCパワーアンプからなる。ディスクスイッチON時には、MM型カートリッジを使用するとすれば、信号系にはイコライザー出力部にフィルムコンデンサー1個のみということになる。
機能は、バランス調整がないだけで他はトーンコントロールを含むベーシックな装備を備えるが、カートリッジ負荷抵抗切替は、リアパネルの専用ジャックに附属の47kΩ、68kΩの表示があるプラグを差込んでおこなう方式が採用され、プラグなしでは100kΩとなっている。
A1は、他のヤマハのプリメインアンプとは異なるフレッシュで伸びやかな明るい音が印象的である。音のクォリティが高く、十分な表現力があり、セパレート型アンプの魅力をインテグレート化したといえるユニークな製品である。
テクニクス SE-A1 (Technics A1), SU-A2 (Technics A2)
井上卓也
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
すでにオーディオアンプのジャンルでは、量的に世界最大の生産量を誇るにいたっているわが国において、超高級機を象徴するセパレートアンプの分野では、いまだに海外製品、ことに米国の製品には一歩を譲る感が深いのが現状である。
テクニクスでは、数年前にパワーアンプの出力段をも含めた完全定電圧化電源を採用したSE10000パワーアンプと、これとペアになるSU10000コントロールアンプを発表し、質的には世界のトップランクの製品として認められ、その高価格な面をも含めて脚光を浴びたが、今回久し振りに沈黙を破ったかのように、、まさにスーパーアンプの名称に応わしいような、質的にも量的にも、名実ともに現時点での究極のセパレートアンプともいえる超弩級製品が発売されることになった。
パワーアンプのテクニクスA1は、小出力のAクラスアンプの電源の中央をフローティングし、別個の電源アンプで出力振幅にフォローするようにAクラスアンプの電源中点を駆動するというユニークな発想を実用化したA+クラス動作による、350W+350Wのパワーを誇る製品である。
この方式の採用により、質的には優れるも、量的にはハイパワー化が至難であったAクラスアンプの問題点を一挙に解決し、従来の100W足す100W級のAクラスアンプの外形寸法のなかで、空冷用のファンを使用せずに高出力化に成功している点は特筆すべきものがある。
構成は、2モノーラル型で1チャンネル当り4電源、系8電源をもった完全なDCアンプであり、アクティブ・サーマル・サーボ方式によりDCドリフト対策は万全である。機能面は、高分解能ピークメーター、ベル可変の4系統スピーカー端子、フェードイン・アウト回路を持つクリックのないファンクションスイッチなどを備える。また、高出力アンプとしては例外的に高域のレスポンスが伸び、歪率が低く抑えられている点が見逃せない。
コントロールアンプのテクニクスA2は、驚くべき多機能を装備した超大型コントロールアンプである。イコライザーを含み完全なDCアンプ構成をとり、段間のコンデンサーは皆無であり、動作は全段Aクラスである。この完全DCアンプ化は、世界最初のものであり、パワーアンプにも採用されたアクティブ・サーマル・サーボ方式により実現されたものだ。機能面では、リレー制御のフェード回路付タッチスイッチによるファンクション切替、4バンドの周波数、Q可変イコライザー兼一般型の高音、低音調整、可変型ラウドネス調整、多用途切替型高分解能メーター、4種の波形が選択可能な発振器内蔵、ミキシング可能なマイク入力など現時点で考えられる限りの機能はほぼ完全に装備している。発表された規格は測定器の限界に迫る驚異的な値である。
トリオ KT-8000
井上卓也
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
最高級機種KT9700の内容を中級機で実現した注目すべき新製品である。7連バリコン使用のフロントエンド、IF帯域の2段切替とダブルコンバージョン方式によるパルスカウント方式の超低歪FM検波回路の採用が最大のポイントである。MPX部は、クリーンサブキャリアー方式によるパイロットキャンセラー付。
テクニクス ST-9038T (Technics 38T), SH-9038P (Technics 38P), SH-9038R (Technics 38R)
井上卓也
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
クォーツシンセサイザーFMチューナーST9038T、マイコン・プログラマブルユニットSH9038P、クォーツシンセサイザーFM受信コントローラーSH9038Rの3モデルで構成するセパレート型の驚くべき機能と性能を備えたシステムチューナーである。
基本となるST9038Tは、プッシュボタンで自動、手動で選局できるチューナーで、ミューティングスイッチは、ステレオ歪率0・2%以下、0・2〜1%、OFFの3段切替で設定した歪率未満の弱い局はミューティングされる。選局ボタンを自動とし、0・2%以下のミューティングとすれば、東京では、選局ボタンのワンタッチでNHK東京とFM東京を交互に受信可能というすばらしい使用法が、この機能により得られる。
マイコン・プログラマブルユニットSH9038Pは、単独使用も可能であるが、ST9038Tと専用16
ピンコードで結合して使用する。本機は、マイクロコンピューターを内蔵し、1週間の単位で曜日、時間、放送局(8局まで)、ACラインのON−OFF指定(4系統のACアウトレット)を33回自由に設定できる他に、電源同期型の時計、加算可能なストップウォッチとしても使用できる。
クォーツシンセサイザーFM受信コントローラーSH9038Rは、前者の組合せにさらに加えることにより、電界強度表示、マルチパスレベル表示、付属のアンテナ回転機構と組み合わせたアンテナ角度の表示とメモリー付アンテナ自動回転機能などができる。本機自身にもクォーツシンセサイザーを内蔵し、ST9038Tと組んで、ブースター、アッテネーター、さらに同調ツマミにより、従来感覚のフライホイールによるマニュアル同調さえも可能としている。
トリオ L-05M
井上卓也
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
前回発表されたパワーアンプL07Mは、スピーカーとパワーアンプ間のコードを短縮し、業務用に見られるスピーカーとパワーアンプの一体化がテーマであったが、今回のL05Mでは、過渡応答の徹底的改善をテーマとし、いわゆるハイスピード化を狙った製品である。出力段に高域特性が優れたEBTを採用し、モノ構成のDCアンプとしているため、DC領域までの動特性を含めた低域特性に見合う高域特性を得ている。単なる広帯域化でなくアンプの音質改善を主眼としたトランジェント特性を重視した結果とのことだ。
トリオ LS-707
瀬川冬樹
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
弟分のLS505も、正攻法でまでめに作られた佳作だったが、さすがにフロアータイプになると音のスケール感がずっと豊かになり、質感も上等になってくる。すべてのプログラムソースを通じて、505よりも帯域内での出しゃばりがよくおさえられ、完成度が上っていることを納得させられる。興味深かったのは、いろいろと設置条件を変えてテストしているあいだに、約20分ほど鳴らし込んでから本調子が出てくることに気がついた。鳴らしはじめはどうにも表情が硬くバランスも悪い。どのスピーカーにもそうした傾向はあるのだが、LS707はことにそれが顕著だった。単純な切り換え比較では見落とすところだろう。もうひとつ補足の必要のあるのは部屋の音響条件のととのえかただ。本誌の試聴室は、前回のテストから改装されて以前より残響時間が短めになったものの、いわゆるデッドではないが、LS707は、この部屋にウレタンフォームの大きなロールを数巻入れてデッドに仕上げた上で、ブロックの台の上に乗せ、背面は壁に近づけるが左右になるべく開いて設置するという方法で、前記の試聴結果を得た。ライブな部屋では音がこもる傾向があった。アンプはあまり選り好みしないが、カートリッジは455Eの傾向よりも4000DIIIの系統で、プログラムソースはポップス系の方が納得できた。
オーレックス SY-88
井上卓也
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
SY77につづく、オーレックス第2弾のステレオプリアンプである。
機能面は、単純でクォリティ優先型のプリアンプで、MCヘッドアンプを内蔵している。構成部品は、最近の製品では徹底して性能面、音質面から追求される重要なポイントであるが、ここではV型無誘導メタライズド・ポリエステルフィルムコンデンサー、高音質電源用電界コンデンサー、対数パターンPBボリュウムの採用など十分に検討されている。コンストラクションは、電源トランスからアンプ系を前後に分離独立したタイプである。
ヤマハ T-2
井上卓也
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
待望久しいC2とペアになる超薄型のFM専用チューナーである。
構成は、マニュアル選局をする従来型で、シンセサイザー方式を避け、高SN比を得ようとする設計方針である。フロントエンドは7連バリコン使用で、動作状態を高感度と高選択度に切替可能だ。IF段は、妨害を受けると選択度を狭く切替えるオートDX回路付、MPX部にはDC・NFBスイッチング回路、トラッキング型パイロットピュアキャンセル回路、アンチ・インターフェアレンスPLLシステムなど最新の技術を活かした低歪率、高セパレーションを誇る。なお、メーターは信号強度を3mV〜1mVの範囲で指示し、マルチパスなどの妨害は指針の変化で示す妨害検出型で、選局中に局と同調すると、その局の周波数はデジタル表示され、ツマミから指を離すと自動的に、その局にロックされる。また、弱電界受信では、ノイズによりオートブレンド回路が動作をし、ステレオ表示ランプはブレンド量に応じて暗くなり、モノでは消灯する。
T2は、地元局の強力な電波に隣接した遠距離の弱い局を受信するフィールドテストにおいても妨害波排除能力が優れた結果を示し、数少ない民放FMの実質的なサービスエリアを広げるメリットが大きいように思う。
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