井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
SB−M300は、SB−M10000の新重低音再生方式を驚異的低価格で実現した、同社ならではの思い切りの良い力作だ。
井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
SB−M300は、SB−M10000の新重低音再生方式を驚異的低価格で実現した、同社ならではの思い切りの良い力作だ。
井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
SL−P860プレーヤーも、上級機SL−P2000の特徴を受け継いだベーシック版で、内容の濃い高CP機。
井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
同社の中核モデルは、まずセパレートアンプでは、プリアンプはSU−C2000とパワーアンプSE−A2000で、ともに上級機の構想を受け継いでいるが、注目点はともにヴァーチャル・バッテリー電源を採用していることだ。
井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
SU−A900は、MOSクラスAA回路、Rコア電源トランス、THCB防振構造筐体、ヴァーチャル・バッテリー電源など、上級機の成果を集大成したプリメインアンプだ。
井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
SL−P2000CDプレーヤーは、SアドヴァンストMASH・1ビットDAC、インストゥルメンテーション差動回路、クラスAA出力アンプバッテリー駆動と同等にクリーンなヴァーチャル・バッテリー方式電源、ディジタル光学系サーボなど、同社が全ジャンルの製品に提唱するサイレント・テクノロジーに基づいて開発された製品だ。
井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
SE−A7000パワーアンプは、A級電圧制御アンプとスピーカー駆動電流源となるB級アンプを組み合わせたMOSクラスAAパワーアンプ、新開発高音質マスターシリーズ電解コンデンサー、新無誘導抵抗、高剛性重量級で磁気輻射・機械振動の少ない筐体などが特徴だ。
井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
SU−C7000プリアンプは、伝送経路に混入する雑音を排除する鉛電池電源の採用が注目点。音量調整はカーボン抵抗体回転型の同社独自の高音質型。回路はクラスAA構成、筐体はTHCB防振構造採用である。
井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
テクニクスの第1作「テクニクス1」スピーカーシステム以来、連綿として開発されてきた同社のスピーカーシステム。最近のDDD方式重低音再生を柱にした一連の新スピーカー群は、継続は力なりを具現化した同社の意欲作だ。
その頂点に位置するSB−M10000は、超広帯域再生の実現に挑戦し、約5年の歳月をかけて完成させた、国難異性品ではヤマハのGF1以外にあまり類例のない、超弩級・超高価格なフロアー型スピーカーシステムだ。
基礎研究は同社の技術研究所で始まり、目標とした電気・音響トランスデューサーとして完成させてから、次に音楽を聴くためのオーディオ用スピーカーシステムとして音響事業部が製品化するといった、日本の超大型企業ならではのプロセスを経て完成されたことでは、国内製品唯一といってよいビッグプロジェクトと成果だ。
現在のCDソフトでは、低域は5Hzまで収音されており、これを再生するためには超大型システムとするか、アンプで低域を増強するかの二者択一となるが、同社では新重低音再生方式を開発することで、これをクリアーしている。一方、超高域側は、100kHzの再生を可能とした独自のリーフ型トゥイーターがすでにあるが、本機ではスーパーグラファイト振動板のドーム型で挑戦している。また、超広帯域化により聴感上で歪みが多く感じられることもあるが、エンクロージュア時代の低振動化、振動系各部の改良や駆動源の磁気回路にも新技術が導入されている。
構成は4ウェイ型で、低域用のパッシヴラジエーター付ケルトン型ウーファーがキーポイントになる。口径は低域22cm、中低域18cmと異なるが、共通の特徴は低歪率型リニア磁気回路、エッジ前後非対称空気排除量を低減する6分割の凹凸プッシュプルエッジ、高域にも採用された振動板外周部に高内部損失材を配したピークレス振動板などの搭載だ。
注目の新重低音再生方式とは、一個の密閉型エンクロージュアの前面と背面に駆動ユニットを置き、そのまた前後の前面と背面にパッシヴラジエーターを取り付けた密閉型エンクロージュアを設け、同相駆動するという構造を採用。これを同社ではデュアルダイナミックドライブ(DDD)方式と呼んでいるが、この方式は振動の打ち消し能力があり、エンクロージュアの振動を大幅に低減させながら重低音再生を可能としている。この方式により、超広帯域型システムとしては予想外に台形寸法は抑えられているが、さすがに重量は155kgと物凄いスピーカーシステムだ。ただし、運送を考慮し、上下2分割が可能となっている。
柔らかくゆったりした、しなやかな低域は、重低音という表現とは異質だが十分に伸び切る。この低域と質感が揃った中低域以上はナチュラルで、スムーズなバランスだ。特に中域のエネルギーが十分にある点は素晴らしい。
井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
2S1601は、ダイヤトーン50周年を記念して登場した、低域と高域にアラミドコーン採用の等音速2ウェイDS−A3をベースに、ユニットとエンクロージュアを極限までチューンナップし、小スタジオや放送局用小型モニターとして現場の信頼に応えるだけの性能にまで追い込んだ、一種のニアフィールドモニターである。したがって、サウンドキャラクターは、DS−A3の芳醇な音とは異なり、ソリッドで引き締まった質的な高さが特徴だ。
井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
DS8000Nは、クロスオーバー特性可変の独立ネットワーク方式を採用したモデルで、同社初の38cm径紙コーンによる低域と、Aシリーズで開発された新アラミドクロスコーンの中域、2S3003直系のB4Cコーン型高域の3ウェイフロアー型システム。内容は非常に濃く、モニター的にも、家庭内での定音量再生でもバランスを崩さず、伸びやかに鳴る鳴りっぷりの良さは格別だ。なお、クロスオーバー固定型のベーシックモデルも用意されている。
井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
テクニクスは1965年に、小さな組織で高級スピーカーシステムを作ろうという、大企業にしては非常に困難であり、非現実的な発想が実現してスタートしたブランドだ。当初はスピーカーのみという発想であったが、どのように優れたスピーカーであっても、それを駆動するアンプが必要であり、またプログラムソース側として、アナログプレーヤーやフォノカートリッジ、カセットデッキにまで開発範囲を拡げていく。そしてついにオープンリール・テープデッキ、それも業務用の頂点とされた76cmスピードのモデルまで開発するようになる。当時のテクニクス開発スタッフでも、これほど巨大なブランドになるとは想像もしなかったということだ。
テクニクス誕生以前でも、松下電器つまりナショナル・ブランドから、大家電メーカーとしては異例の、時代の最先端をいく構想のスピーカーユニットが発売されていたことに注目したい。’54年に、彗星のように突然ナショナルから発売された、後に「ゲンコツ」の愛称で親しまれたフルレンジ型8P−W1だ。本機は、メカニカル2ウェイ振動板に球形ディフューザーをつけた斬新なデザインと、論理的な設計に基づいた、当時としては驚異的な特性の見事さで注目された。実際に使ってみて、その素晴らしいサウンドにまた驚かされ、一躍スピーカーのトップランクに位置づけられる傑作モデルとなった。
しかしそれ以前にも、30cmコーン型ユニットの前面に多数の小穴を設けた発泡材(?)の覆いを付け、高域レスポンスをコントロールした、型名は忘れたがユニットがあった。実際に音を聴いたが、当時の一種独特のコーンの高域共振による騒々しさがなく、大変にナチュラルな音であったことも記憶に新しく、その後の一連のディフューザー付フルレンジ型が、8P−W1へのひとつのアプローチであったように思われる。
このように、すべての部品を自らの手で開発する思想は古くからあり、これがテクニクスの誕生で技術集団として形成されたことで、大企業の幅広い分野をカバーするメリットがオーディオに結集し、他社にない独自のオーディオ理論が形成されたように思われる。
井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
DS−V9000は、磁気回路の歪みを低減する独自のADMC方式により、一段と振動系の能力を発揮させるようにした新フラッグシップVシリーズの4ウェイ密閉型システムだ。エンクロージュアには各種の天然材を適材適所に採用した同社としては異例の設計と、もの凄い物量投入型の豪華な使用ユニットに注目したい。大人の風格を感じさせる、使いこんではじめて魅力のわかる名機だ。
井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
MDデッキのMDS−JA50ESは、従来よりDレンジの広い録・再を可能とするワイドビットストリーム技術と、新開発ATRAC用ICの採用をはじめ、トレイ部とベースメカ間を振動遮断する新機構や、異なったレベルのDBS、LD、CDの音量差を解消するディジタル録音ボリュウム、可変ディジフィルなど、ソニーの最新ディジタル技術を集大成したモデルだ。
井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
ディジタルプログラムソースに対応する新放送局用モニターとして、小型高密度設計で最大音圧レベルを大幅に向上したモデルが2S3003。低域はネットワークレスの全域型で、高域を低いクロスオーバーから使うコーン型2ウェイ方式は、2S305を受け継ぐ設計だ。定機器のアラミドハニカムコーンと、究極の振動板といわれるピュアボロン(B4C)コーン型の組合せにより、見事な音の純度の高さとダイナミックな表現力の豊かさが聴かれる。
井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
CDプレーヤーCDP−XA50ES/30ESは、光学固定方式、カレントパルスDAC、Rコアトランスに加え、ジョグダイアル操作の機能として新たに20kHz以上の帯域を合計9種類の遮断特性とする、可変係数ディジフィルを採用。ただ、微細な調整が可能だが、一方では悩みの種にならないだろうかと思わざるを得ない面もある。50ESのみ亜鉛ダイキャスト光ピックアップベースと、2電源トランスが追加される。
井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
新製品TA−FA70ES/50ESは、終段にMOS−FETを使用した全FET構成回路の採用をはじめ、一次巻線を内側に変更した継ぎ目のない新円断面コア電源トランス、ツインモノ構成5分割筐体構造、機械的ストレスを解消した新構造、電源トランス下部のMDFダンパーなどの採用が特徴。70ESにはメタルコアモジュールによる平衡入力が備わる。
井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
三菱電機ほどの大企業が、すでに50年間オーディオ用のスピーカーシステムを開発し続けてきた例は他社にはない。
その発端は、戦時中に東工大で開発された酸化鉄系のオキサイドパウダー(OP)磁石を製造していたが、戦後になって、その平和利用の一つとしてスピーカーの製造が発想されたことに始まる。好都合なことにNHK技研のバックアップで、ラジオ用としては異例に高域が伸びた全域型を完成。そして整合共振理論に基づくコーン制御により、後のベストセラーモデルP610の原形P62Fを生む。
さらにNHK技研と共同開発により、2S660/205放送用モニターシステムの完成へと続き、厳しい基準であるBTS(放送技術規格)をクリアー。1958年には有名な2S305が完成し、コーン型2ウェイ放送モニターシステムの形態が確立された。
一方、計測データの必要性から民間初の無響室が1953年に設置された。それまではカット・アンド・トライで、コーンのコルゲーションの位置を検討するのにも莫大な時間が必要であったことを、本誌企画のダイヤトーン三代記のインタビュー取材で、当時の設計スタッフから聞いた記憶がある。
民生用スピーカーシステム開発の第1号機DS32Cの内容が2S305系ユニットであったことも、スピーカーシステムの設計に当って、平坦な周波数特性を現在でも最優先させているダイヤトーンならではのことだ。こうした、最も完成度が高く信頼できるユニットでシステムアップすることは、まさしく正統派の設計・開発である。
放送用モニターの2S305、2S208という2ウェイ型や、全域ユニットP610の開発過程で得られた技術データとノウハウをもってすれば、民生用システムの開発は比較的に容易であったと思われる。
民生用として’68年に発売されたDS11S/12S/31C/32Cは基本的に2ウェイ型で、これに続いて3ウェイ型のDS33B/34Bが発表された。そして、スーパーダイヤトーン・シリーズとしてハイエンドを狙う3桁ナンバーのDS251/301が、3ウェイ、4ウェイ型として登場し、ラインナップを拡げていくことになる。
これらの一連の製品は、非常にフラットなf特をもっていたため、2S305の特性とオーバーラップし、定規で直線を引いたようなf特といわれた。また、3桁シリーズにはスーパートゥイーターが採用され、超高域レスポンスが表示されたこともあって、ダイヤトーン≒フラットレスポンスというイメージが一段と強調されたように思われる。
優れたスピーカーシステムは、基本特性に優れたユニットとエンクロージュアの組合せが、まず基盤としてあり、これを無限ともいえる時間をかけてヒアリングし、システムを磨き上げていってはじめて完成する、ということが、当時から同社の伝統であるようだ。そのために、優れた振動板を求めてアラミドハニカム、ボロン化チタン、B4Cなどを開発する一方で、駆動歪みを低減するADMC磁気回路を開発するなど、常に基本からリセットして開発が始まっている。こうした製品作り姿勢が、製品に対する信頼感を高めているが、技術集団的なイメージがあまり感じられないことは、大変に興味深いことである。
井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
ポータブルDATのTCD−D10プロIIは、アルミダイキャスト筐体採用の小型で信頼性の高いモデルだ。室外、室内を問わず、録音結果も優れ、最も信頼度の高い、レコーディングファンには必携の最優秀DATである。
井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
DATのDTC2000ESは、DATとしては珍しく4ヘッド・4DDモーターメカを搭載。モニターヘッドによる録音同時モニターが可能だ。また、DAC出力の24ビットデータをディジフィル処理し、16ビットフォーマットを守りながら20ビット相当の録音を可能としたスーパー・ビット・マッピング(SBM)を採用している。さらに、44・1kHzでのアナログ録音が可能など、現時点で最高の性能・機能を備えたDATのリファレンスモデルである。
井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
カセットデッキTC−KA7ESは、現在やや注目度が薄らいでいる中堅機ではあるが、さすがに録音機での伝統を誇るソニーらしく、デュアルキャプスタンDD駆動メカの供給・巻取り双方のキャプスタンモーター軸受にサファイアを使用し、長期走行安定度を向上。加えて、Rコア2電源方式、銅メッキFBシャーシの採用など、手堅いESならではの処理が行なわれ、この十分な技術が投入された成果は大だ。
井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
CDプレーヤーCDP−XA7ESは、光学固定方式採用の初の中堅機で、フル・フィードフォーワード・ディジフィル、FET駆動DCサーボ出力アンプ、スタティック点灯FL表示管などを備え、手堅く安定した音は正統派で、幅広いソースに確実に応答を示す音だ。
井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
パワーアンプTA−NR1は、純A級Trモノーラルパワーアンプで、NR10のベースとなったモデルだが、全帯域にわたり独特の硬質の光沢をもつ音がビッシリと詰った純度の高い音を聴かせる。これは、上級種とは異なる本機ならではの魅力であり、最もソニーらしい音が聴かれる珠玉の名作だ。
井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
CDプレーヤーCDP−X5000とプリメインアンプTA−F5000は、さりげなくグレードの高いオーディオを楽しみたいファンへのソニーの回答であろう。コンパクトなモデルながら、CDは光学固定方式、カレントパルスDAC、外部振動打消し偏心インシュレーター、アンプはツインモノ構成、MOS−FETパワー段、楕円断面コア・トロイダル電源トランス採用など、細部にこだわらず要所を押さえた、程よく息の抜けるサウンドは大人の味わいがあり、ソニー製品中ではひと味違った安心して音楽が楽しめる製品だ。
井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
SS−R10は、従来のトップモデルSS−GR1が、ドーム型ユニット採用のスピーカーとして頂点を狙って開発され、所期の目的が達成されたため、次なる未知の領域を求めて静電型にチャレンジし、完成したモデルである。
静電型は、基本的にフルレンジ型として使えることとトランジェント特性に優れ、現状では最も理想のトランスデューサーではあるが、現在のパワーアンプが低電圧・大電流のソリッドステート型なのに対して、極端に超高電圧かつ、ほとんど電流を必要としない、いわば電圧のみに依存する変換器であり、この両者をいかに効率良く結びつけるかに最大の問題があるようだ。つまり、変換器(トランスデューサー)として理想の変換結果が得られるが、最大音圧レベルが低いことを、どのようにクリアーするかが最大のテーマとなる。
逆説的に考えれば、非常に特徴的な変換器では、すべての幅広いプログラムソースに対応する必要はなく、特別なジャンルでならこれならではの、かけがえのない音や音楽を再生できればよいと、潔く割り切ることもハイエンドオーディオでは認められなければならない、とも考えざるを得ない両刃の剣的な性質を、静電型は備えているのである。
SS−R10は3ウェイ構成で、指向性の改善と各帯域ごとの最適設計が可能なことをメリットとした開発だ。ネットワークはソニー伝統の18dB型で、ユニット正相接続とすること、最低の素子数とし、ユニットの特性を損なわないことを条件としている。ネットワーク出力には昇圧トランスが必要で、アンプ負荷が重くなるため並列抵抗を入れて、システムインピーダンスを4Ωとし、インピーダンスカーブを普通のスピーカーなみとしているとのことだ。固定極はエポキシ樹脂を自動塗装設備により流動侵積塗装を施すことで絶縁耐圧を高め、固定極と振動膜を支えるフレームには、アクリル樹脂を採用している。
バイアス電圧は、ダイオードとコンデンサーを積み重ねたコックフロフト・ウォルトン回路で取り出し、バイアス電圧変動を防ぐツェナーダイオードによる定電圧回路の採用で、高域1・8kV、中域3・9kV、低域8・8kVという安定した高い電圧を得ている。低域は2段重ねのタンデム型で、空気付加質量を半分とすることで出力音圧を6dBアップ。これによるf0の上昇は、膜テンションで調整している。
全体に手堅く、正統派の設計で徐々につめていくアプローチは、技術的に最先端に挑戦するソニーとしては「イッツ・ア・ソニー」という印象が少ないが、静電型に初挑戦し、十分な成果が得られたことは認めたい。だが、ブラウン管製造技術を活かした昇圧トランスレス化ぐらいは望みたくなるのは、技術集団のソニーを認めていればこその願いである。
井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
TA−NR10は、シリーズ製品のTA−NR1をベースに出力段をカスタムメイドMOS−FET化し、純A級100W/8Ωとした上級機種。電源は重量10kgの巨大トロイダルトランスとスタッキング構造の分割・積層型電解コンデンサーによる構成だ。また、純銅製放熱版の採用をはじめ、ハイカーボン鋳鉄シャーシを用いた筐体には、スピーカーの音圧、床振動を低減させる音響的チューンが施されている点がユニークだ。
非常に力強くマッシヴな低域をベースに、伸びやかで、ナチュラルに高域に向かってレスポンスが伸び、表現力にも豊かさがある。ER10との組合せで、かつてのTA2000+TA3120F的な、現代のリファレンス・セパレート型アンプとして、じっくりと聴き込んでほしいモデルである。
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