Category Archives: 国内ブランド - Page 100

ラックス CL32

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ことさら管球とかTR(トランジスター)とかを意識させない、現代の最新アンプに共通の解像力のよい、レンジの広いフレッシュな音を聴かせる。が、弦やヴォーカルの音が冷たい金属質にならず、どこか暖かい滑らかさで響くところが、やはり球ならではという感じ。ただ、旧録音を含めて数多くのレコードを楽しみたいとき、ラックス得意のリニアイコライザーだけでは、音のバランスを補正しきれない。簡単なものでもトーンコントロールが欲しい。

パイオニア Exclusive M4

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 エクスクルーシヴ・シリーズは、パイオニアの看板商品であるばかりでなく、内外ともに質の充実した高級アンプとしての風格と実力を持ったものだ。中でこのM4は、Aクラス動作のパワーアンプだが、きわめて質の高い、品位の優れたアンプで、音のよさでは、世界中にこれを上廻る純度を持ったアンプはざらにはあるまい。この大きさで50W+50Wというパワー、そのギャップは全部、質のほうにまわされたハイクォリティだ。

ビクター P-3030

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 プリアンプ単体としては最もローコストの部類だが、必要にして十分なコントロールファンクションを備えていて、機能の省略なしによくここまでまとめたものだと感心させられる。MCヘッドアンプも内蔵型としてはS/N抜群。やや華やいだハードな傾向で、解像力のよい音が特長だが、この価格からみてもあまり高価なパーツを使えないせいか、音の品位という面では、より高価な製品より聴き劣りするのはやむをえないだろう。

パイオニア M-25

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 M22というAクラスのアンプでまとめあげたコンストラクションに、全くそれとは異なるアンプを組みつけたもので、形はほとんどM22と同じである。しかし、出てくる音は、大分ちがう。当然のことで、M22とは全く別もののアンプなのだ。ワイドレンジ感がうまく聴感域のバランス内を効果的に聴かせる。堂々たる低音、中、高域の優れたディフィニション、さすがにベテランメーカーらしい完成度の高いパワーアンプである。

トリオ KA-7300D

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 トリオでは同社で確立したというダイナミック・クロストーク理論に基づいて、ステレオアンプの左右チャンネルの電源部を独立し、さらにDCアンプ化するなど現在のオーディオアンプの動向をリードしてきたが、今回はさらに音質を改善するために、スピーカーとパワーアンプ間の問題に焦点を絞ったダイナミック・ダンピングファクター理論に基づいて設計された、新しいプリメインアンプKA7300Dを発売することになった。
 ダイナミック・ダンピングファクター理論とは、スピーカーからの逆起電力がパワーアンプに及ぼす影響をテーマとしたもので、簡単に考えれば、超低域でのスピーカーに対する制動力で従来のACアンプにくらべDCアンプが優れていることの証明であるといったらよいであろう。
 回路面は、初段にカレントミラー負荷をもつFET差動アンプ、出力段にSEPPピュアコンプリメンタリー回路を使い入力コンデンサーを使わないイコライザー段、ICL化したフラットアンプと独立した低音、高音トーンコントロールアンプ、DC構成の75W+75Wの出力をもつ同じくICL化した差動増幅3段のピュアコンプリメンタリーSEPP・OCL方式のパワーアンプが組み合わされ、電源部は左右チャンネルが完全に独立した電源トランスと各チャンネル10000μF×2のコンデンサー、定電圧化したプリアンプ電源をもつ。

ダイヤトーン DA-A15

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ダイヤトーンのセパレートアンプでは、この上にDA−A100があるが、シリーズとしては別もので、これは、プリアンプのDA−Pシリーズとドッキングして一つのユニットになる新シリーズである。中でのトップモデルにふさわしく、このA15は、150Wのパワーの余裕に裏づけられた、信頼感のあるもので、大パワーながら優れた分解能をも聴かせ、音楽を大づかみにするに止まらない、力作である。

ソニー TC-5550-2

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 国内製品としては、現在唯一のオープンリール・ポータブルデッキである。サーボコントロールされる走行系はさすがに抜群の安定度を誇り、ワウ・フラッターも大変に少ない。歪み感がなく、スッキリとした粒立ちの良い音は、やはり、2トラック・19cmならではのもので、生録音などでの音場感はナチュラルに拡がり、とくに前後方向の奥行きをクリアーに聴かせる。やや重いのが気になるが、38cmが使えればと望みたくなる。

ヤマハ C-2

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 フラットなプリアンプとして比較的早く発売された製品で、コントロール機能は、経たな厚手のプリアンプに劣らず、実用上十分な配慮がある。ブラックフェイスのパネル・デザインは、ヤマハのセパレートの共通イメージだが、シンプルで、メカニックなフィーリングがよく消化されたものだ。音は、力感のみなぎる充実したもので、重厚な響きはフラットなスタイルと異和感を感じるほどだ。

ソニー EL-7

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 エルカセットデッキは、現在まだ定着した存在ではないが、カセットデッキのマスターレコーダーとして充分に使える性能がある。このモデルは、何よりも小型であり、ドルビーを積極的に使える感度調整をもつ点が好ましい。走行系はカセットとは比較にならぬ安定度があり、音ゆれが少ないのはさすがである。

ラックス CL32

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ラックスのフラットなコントロール機能のシンプル化された管球式プリアンプである。別に、キットでも発売されている。このアンプの魅力は、なんといっても音が積極的によく前に出ること、それでいて、決して品位がわるくなく、艶ののったなめらかな質感は、感覚的に快い。暖かい肌ざわりも魅力だ。そして、ワイド・レンジと、管球式として最高の物理特性まで練り上げられたプリアンプだと思う。

サンスイ SC-3

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 海外市場では、以前よりサンスイはカセットデッキを販売しているが、このSC−3は、同社初めての国内販売に踏みきったカセットデッキである。5万円台のデッキは、比較的に実力をもつ製品が多いが、適度に帯域コントロールしたこのデッキの音は、使いやすく、それでいてかなりの活気もある。

ビクター P-3030

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 フラットなプリアンプが流行で、これもそうした背景から生れたものだが、いわゆる、コントロール機能の省略されたイクォライザーアンプとはちがう。簡略化されてはいるが、必要な機能をそなえている。音質は、純度の高さと、聴き応えのある色味をしまくバランスさせたもので、大変このましい。きりっと輪郭が決りながら、肉付も豊かな音像だ。ステレオフォニックなプレゼンスがやや不足気味なのが唯一の不満。

ビクター SX-3III

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ひとつのプロトタイプを(原形)を、時間をかけて少しずつ改良してゆけば、いつか必ずロングセラーの名作に成長するはずだが、そういう製品は残念ながら国産にはきわめて少ない。その数少ない中でも、かけ値なしに優秀と折紙のつけられるひとつが、SX-3IIIだ。初期のSX-3のあの耳当りのやわらかな音も貴重だったが、ジャンルを問わず万能的に音楽をこなすという点で、たしかにIII型になっていっそう成長している。

オーディオテクニカ AT-1501II

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 現在市販されている、この種のトーンアームとしては、異例に長期間の製品寿命を誇る製品である。基本型は、放送業務用のターンテーブルがステレオ化された時代に業務用のステレオトーンアームとして開発されたために、アーム基部からアンプをつなぐ、専用コードはなかったが、後になって改良され現在のようになっている。付属機構は、目的からいって何もなく、安定した音と長期間にわたる性能維持が狙いの製品である。

グレース G-545F

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 カートリッジ、トーンアームでは、もっとも長い伝統をもつグレースの代表製品となると、やはり最新モデルではなく、G−545Fをあげなくてはならない。たしかに、高価格化しているトーンアームのなかでは、目立たぬ存在であるが、信頼性、安定度、仕上げなど、他を寄せつけぬ完成度の高さが感じられる。

デンオン DP-7000

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 業務用ターンテーブルでは定評があるデンオンのコンシューマー用フォノモーターのトップモデルである。水晶制御による増速・減速のサーボシステムによりコントロールされるターンテーブルは、実際に使用して快適であり、とくに、スムーズに停止する止りっぷりは見事であり、音質的にも十分の信頼性がある。

サンスイ AU-707

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 607の上級機として開発されたこの製品は、607のところで述べたように、音の質感では、やや異なる。より充実したソリッドな音の質感であり、さすがにパワーの大きさを感じる。しかし、透明な抜け、しなやかさ、空気感の再現では、607に一歩を譲るようだ。しかし、これはやはり優れたアンプで、まず、いかなるスピーカーをもってきても、大きな不満は生れまい。持つ喜びが感じられる力作だと思う。

ビクター TT-81

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 TT−101のジュニアモデルとして開発された、いわゆるクォーツロックのダイレクトドライブ・フォノモーターである。TT−101には、モーターにコアレスタイプが採用してあるが、このモデルでは鉄芯入りの一般型となり、回転数の表示は、ストロボスコープに変わっている。基本性能は、TT−101に匹敵する高さがあり、音が良いプレーヤーシステムを製作する場合のベースとして使えば、十分に要求に答えられる製品だ。

サンスイ AU-607

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 サンスイの新しいシリーズで、ブラックパネルは同社の一貫したデザインだが、レイアウトが一段と洗練され、魅力的になった。607、707はシリーズで、パワーの差だけだといいたいが、やはり音質はちがう。このシリーズの特長である、音の透明度、空気感の再現ではむしろ607のほうが光る。キメの細かい再生音の純度は高く評価したい製品なのである。機能はさすがにやや簡略化されているものの、優れた製品。

ヤマハ CA-2000

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 プリメインアンプの高級品として、機能的にも内容的にも、きわめて充実した製品である。そして、デザインも、現代的な明るいトーンは好みの分れるところだが、仕上げの高さと共に評価できる。MCヘッドアンプを含めた豊富な入力回路、パワー段は、お家芸のA級、B級の切替つきで、それぞれ30W+30W、120W+120Wと強力である。

パイオニア Exclusive F3

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 自宅で数ヶ月モニターしたのち、返却して他のチューナーにかえたら、かえってF3の音質の良さを思い知らされて、しばらくFMを聴くのがイヤになったことがある。C3やM4と一脈通じる、繊細で、ややウェットではあるが、汚れのない澄明な品位の高い音質で、やはり高価なだけのことはあると納得させられる。

ソニー TA-N7B

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 TA−E7BとペアとなるDC構成の100W+100Wの出力をもつパワーアンプである。このモデルは、パワーアンプの機能を具現化した独得なスタイリングが特長であり、従来のソニー製品にないフレッシュな魅力がある。とくに、フロントパネル下側の空気取入れ口は、電力を扱うパワーアンプに応わしいデザインと思われる。
 回路面での特長は初段がデュアルFETを使ったカスコード接続の差動アンプで、カレントミラー回路によって出力を取り出し、2段目は定電流負荷のカスコードアンプによる2段構成である。このカスコード接続は、出力側からの帰還容量により生じるミラー効果がなく高域での伝送能力の向上と直線精を改善している。パワー段は、パルス応答性が優れたV−FETと高周波用トランジスターをカスコード接続し3組使うトリプル・プッシュプルのピュアコンプリメンタリーSEPP・OCL回路である。
 パワーアンプにとってはもっともベーシックな部分であり、性能に影響を与える電源部は、左右チャンネル感の干渉を避けるために左右チャンネル独立型であり、同じチャンネル内でも電圧増幅段用と電力増幅段用を独立させた4電源トランス方式で、電圧増幅段用にはFETを使った定電流バイアス供給式の定電圧回路により安定化が図られている。電力増幅段用電源トランスは新開発のトロイダル型、電源のコンデンサーは22、000μF×4である。

マランツ Model 150

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 かつて♯10Bという管球時代最高の名器を生んだマランツにしては物足りない印象はまぬがれないが、オシロスコープによるディスプレイで正確な同頂点を探し出せるという部分にもあらわれているように、内容的にはかなり凝ったチューナーだ。♯1250等のややハードで輝かしい音質が現代のマランツらしい。

オンキョー Integra T-433nII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 デジタルシンセサイザーという思い切った機能を、オンキョーが最初に製品化したという点に意表をつかれた思いだ。意匠的には必ずしも完成度が高いとは言いきれないが音質はかなりのもので、722nIIと一脈通じる繊細でしなやかな音色は、他社の製品からは見出しにくい特徴で、もっと評価されてよい製品。

ソニー TA-E7B

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最近のソニーのプリメインアンプ、FMチューナー、カセットデッキなど一連のコンポーネントは新しいデザインに装いを変えているが、今回発売されたセパレート型アンプも、当然のことながらシリーズ製品らしい新しいデザインとなっている。
 機能目では、現在のコントロールアンプと呼ぶに応わしい標準的な装備だが、伝統的なレバーとロータリースイッチを組み合わせたクイックアクセス方式のファンクションセレクターをはじめ、32ステップのアッテネーター型ボリュウムコントロール、2dBステップでターンオーバー周波数が各2段に切替可能な高音・低音コントロールの他に、VU、ピーク、サンプリングホールドの3通りに切替可能なメーターがあり、これは感度調整もできる。また、フロントパネルの優先割り込み式のテープ2用ジャックはテープファンには好まれるだろう。
 回路面では、単体のヘッドアンプHA55と同様な構成をもつLEC低雑音トランジスター使用のMC型カートリッジ用ヘッドアンプ、DC帰還回路付NF型イコライザー、初段にFETを使ったDC構成のユニットアンプなどが採用され、フォノ入力は切替はリレーを使ったリモートコントロールである。また、電源部は、ヘッドアンプ部、主信号系およびヘッドフォンアンプ部、メーカー回路用の4系統を分離し、主信号系とヘッドアンプ用にはFET定電流電源を使用した定電圧回路を採用している。