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テクニクス SL-1200MK3

井上卓也

オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド別冊・1994年春発行)
「世界の一流品 アナログプレーヤー/カートリッジ/トーンアーム篇」より

 本機は、超ロングランモデルであるとともに、全世界に輸出され、現在でも月産1万台は下らない生産量を誇る、ベストセラー中のベストセラー機だ。
 筐体構造をはじめ、ターンテーブルやトーンアームは、耐ハウリングマージンが大きく、比較的設置場所を選ばない。そして、ターンテーブル外周部の照明ランプ付ストロボスコープ、大型スライドレバーによる可変ピッチコントロール、盤面照明ランプなど、その操作性の高さは抜群である。トーンアームも、インサイドフォース・キャンセラー、アーム高さ調整機構、アームリフタ一等を備え、各調整が容易にできるため、使用するカートリッジに最適の条件が確実に設定できる点はうれしい。
 本機は、いまもって世界中のディスコなどで業務用に数多く使用されている。それだけに、長期間にわたる生産期間の中で完成度が向上するというメカニズム特有の熟成条件を完全に満たしており、外観から受ける印象よりは、はるかに高い安定度と信頼性をもっている。アナログプレーヤー全体の中でも傑出した、価格を超えた世界の一流品である。
 また、各国、各様なFCC、FTZに代表される不要輻射対策はすべてクリアーしており、電源系のノイズやTV、FMなどの高周波妨害に強いことが、その最大の特徴となっている。この妨害波に強いメリットは、東京タワーに近接して強力なTV電波が8波もある本誌試聴室における試聴でも、その真価を発揮した。バス妨害が皆無に近く、高域に薄くモヤがかかったようになる高周波妨害がなく、他の高級プレーヤーに比較しても予想を超える安定度がある。彫りの深いアナログならではの音が聴かれ、本機の実力を見事に示してくれる。
使いこなしポイント
 電波障害の少ない地域にあっても、AC電源の汚れが全国的に及んでいる現在、本機の特徴はアナログ再生の大変に強い味方となるはずだ。

テクニクス SE-A5000

菅野沖彦

オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド創刊100号記念別冊・1991年秋発行)
「世界の一流品 アンプリファイアー篇」より

 テクニクス・ブランドというのは、いまさらいうまでもなく、松下電器がオーディオ製品の本格派にだけ使うブランドとして誕生したものである。しかし、一時は大メーカーの節操のなさといおうか……このブランドが作ったイメージの良さを普及製品に大々的に使って、ナショナル・ブランドと差のないものにしてしまった。ここ20年間くらいのことだろうか……。かくしてオーディオという理想郷は消滅し、ただのファッショナブル電機産業と堕してしまったかの観がある。〝テクニクス〟がその本来の主旨を一貫して守り、それにふさわしい〝クォリティセールス〟の体質を築き上げていれば、いまのオーディオ業界もファンの質も違っていただろう。そうした意味で、このブランドの歩みは象徴的であった。同社の一般ブランドはナショナル、そして音響機器にはパナソニックを用いているが、そうした中でこの〝テクニクス〟は今後、本来のクォリティオーディオに使われるようになるらしい。それにしても松下は、長年オーディオの研究開発に終始一貫して真正面から取り組むメーカーであり、とっくに撤退してしまった他の大電機メーカーとは異なる。〝テクニクス〟が本格的なクォリティオーディオの象徴として新しい時代を築くことを信じている。このSE−A5000は、そうした背景の中で〝テクニクス〟を厳選したスペシャルブランドとすべく誕生したパワーアンプであって、プリアンプSU−C5000とペアを成すものである。多様化した現代のプログラムソースをコントロールする多目的プリアンプであるが、フォノイコライザーも持つ。それだけにその出力をパワードライブするSE−A5000の質へのこだわりにはテクニクス・ブランドに恥じないだけの内容を実現した。きわめて繊細な美しさを持つ音のマチエールは独特の魅力をもち、日本の製品ならではの精緻さといってよいもの。決して濃厚ではないが、透明でしなやかだ。

テクニクス SL-Z1000 + SH-X1000

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「最新CDプレーヤー14機種の徹底試聴」より

 柔らかくフワッとした、温和な音を聴かせるモデルであるが、ローレベルのこまやかさが描けるようになり、音の消えた空間の存在がわかること、帯域バランス的には中域の質感が改善され、硬さの表現ができるようになったことが、従来と変った点だ。なお、聴取位置は中央の標準位置である。ロッシーニでは、空間の拡がりを感じさせる暗騒音も充分に聴かれ、柔らかい雰囲気を持ちながらこまやかさがある素直な音である。音像は小さくソフトに立つ。ピアノトリオはプレゼンスよく、光沢を感じさせる、ほどよく硬質な各楽器のイメージは、かなり聴き込めるが、低域はいまひとつ分離しない。ブルックナーは、ややこもった音場感でスケール感もあるが、アタックの音が軟らかく、抑揚が抑え気味となり単調に感じられる。平衡出力では,ベールが一枚なくなったようなスッキリした音場感、各パートの楽器の分離などでは優れるが、鈍い低域が問題で、再生系と相性が悪い。

テクニクス SE-A100

井上卓也

ステレオサウンド 84号(1987年9月発行)
特集・「50万円未満の価格帯のパワーアンプ26機種のパーソナルテスト」より

軽快で、スッキリとした滑らかさで、キレイな音をもつアンプだ。プログラムソースにはやや間接的な反応を示し、リアリティではやや不足気味だが、力感もあり、一種の安定感がある音だ。電源の安定度、応答性が高く、不安は皆無で正確に作られたアンプという印象が強い。基本的クォリティは充分に高いが、音の鮮度感や、反応の早さは抑え気味で、パイオニアM90と好対照な性格のアンプだ。

音質:85
魅力度:90

テクニクス SE-A100

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「最新パワーアンプはスピーカーの魅力をどう抽きだしたか 推奨パワーアンプ39×代表スピーカー16 80通りのサウンドリポート」より

(ダイヤトーン DS10000での試聴)
 これは素晴らしい組合せといえる。弦が大変しっとりして柔軟でしなやかな美しさを聴かせる。JBLで鳴った高域とは同じアンプとは思えない違いである。清々しく端正で、しかも力強い音だ。大編成のオーケストラでは各楽器の特色の響き分けに優れ、金管は鋭く、弦はしなやかに、そしてffでの安定度が高く重厚なバランスをくずさない。このスピーカーシステムのもつよさをもっとも素直に出してくるというような鳴り方に好感が持てた。

テクニクス SE-A3MK2

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 デリケートで美しい音のアンプ。しかし、ソプラノとバリトンの二重唱は少々にぎやかで、高域がうるさく神経質になる。ヴァイオリン群にも同じ傾向があって、しっとりした落ち着きがほしい。残響感などはデリケートで美しいのだが、少々全体に線が細く高域が神経質になるのである。そのため、音の感触が肌寒く感じられ、気温に例えると16度Cといった感じ。大編成オーケストラも、pp〜mfぐらいまではよいが、それ以上に熱烈なクレッシエンドがない。厚みと重厚さに欠けるようだ。

音質:7.5
価格を考慮した魅力度:7.5

テクニクス SE-A3MK2

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 粒立ちが細かく、柔らかく滑らかな音とナチュラルな帯域バランスをもつ、丹念に作られた印象の音を特徴とするアンプだ。表情はやや内省的で、アクティブさは少ないが、キャラクターが少なく、プログラムソースとの対応もナチュラルであるのは、さすがにハイパワーアンプならではの安定感だろう。今回の試聴のセッティング上の特徴が直接的に音に影響を与えていないのは、やはり高級機独特の領域である。基本的クォリティが十分に高い特徴を活かして、使いこんでみたいアンプだ。

音質:8.3
価格を考慮した魅力度:9.1

テクニクス SE-A100

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)
特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 充実した密度の高い音で、音に熱い生命感が感じられる。立体感や、空間の透明感も第一級のアンプである。しかし、バッハのカンタータにおける弦合奏は、特に高域のヴァイオリン群にキャラクターがあって少々うるさい。繊細でしなやかな弦特有の音の魅力が変えられている。ヴォーカルも少々にぎやかで派手め。大オーケストラは豪華絢爛な効果が上がり高弦とブラスはかなり派手。ジャズのピアノはいかにもスタインウェイらしい素晴らしさが演出され輝かしく生き生きと躍動感が見事だ。

音質:9.0
価格を考慮した魅力度:9.0

テクニクス SE-A100

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)
特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 歪感が少なく、ワイドレンジ型の帯域バランスと、物理的な性能の高さを感じさせる情報量の多さを特徴とする、現代アンプらしい製品だ。聴感上の帯域バランスは、中高域に今回の試聴に共通の一種のキツさがあるため、ややハイパランス気味で、全体に音が薄く、JBL4344が、良い意味でも悪い意味でも、らしさが出ない。基本的な性能の高さが感じられるだけに、アンプ自体にあるいくらかの味付けが、ある意味でのネックになり、せっかくの素直さが出きっていない印象の音である。

音質:8.1
価格を考慮した魅力度:9.0

テクニクス SU-A4 MK2

菅野沖彦

ステレオサウンド 76号(1985年9月発行)
特集・「CD/AD 104通りの試聴テストで探る最新プリアンプの実力」より

 淡白な味わいで、色に例えると、明るめのグレーといった感じの音である。温度でいうと20度Cぐらい。つまり、熱っぼい表現でもなければ、冷たいわけでもない。そして、音が軽目の印象でマッシヴな実体感は感じられない。高域に独特の木目の細かさがあって繊細感があるが、迫力は物足りない。絵に例えると水彩画の味わいで、決して油絵ではない。そんな印象の音である。特性のよさは感じられるのだがエネルギー感が不足しているのだろうか。
[AD試聴]ヴァイオリン群の高域に、独特のキャラククーがあって、ある種のリアリティを演出する効果があるが、少々線が細いようだ。音の出方が平板で、立体的な丸味が感じられない。空間のイメージは透明で、決してべたつかないのだが、音に実在感が不足する。いかにも日本的な、やや動物性蛋白質の不足した感じの音だ。だから、血がさわぐ情熱的な表現は苦手だが、趣味のよい端正さが特徴。ジャズよりもクラシックの静的な音楽に向く再生音である。
[CD試聴]CDらしいダイナミックレンジの広さと、がっしり安定した音の実在感が稀薄だが、反面、さわやかで押しつけがましくない音が楽しめる。物理的なダイナミックレンジは不足するわけではなく、音色から受ける印象である。ピアニッシモの透明な残響感などの再現は大変よく、SN比のよいCDの魅力を味わわせてくれる。B&WよりJBLのほうが、このアンプの特質を補って、より表現力の豊かな方にもっていってくれる。粗さのない滑らかな音だ。

テクニクス EPC-100C MK4

井上卓也

ステレオサウンド 75号(1985年6月発行)

特集・「いま話題のカートリッジ30機種のベストチューニングを探る徹底試聴」より

 標準針圧では、柔らかい低域ベースの細やかで滑らかな音。音場は奥に拡がるが、見通しは良く、楽器の質感も素直に引出し、サラッとした雰囲気は軽量振動系ならではの音。
 針圧上限は、キャラクターが少なく、穏やかな音だが、品位が高く、音場感も豊かで表情もあり、安定度は抜群。帯域感は、この上限でも十分に広帯域型で、基本性能の高さが、素直に音に出た印象。
 針圧下限では、全体に軽いタッチの音になり、雰囲気よく拡がった音は独特の味だ。線は細く、滑らかであり、反応は適度で、ナチュラルの表現が相応しい素直さが特徴。
 針圧対音の変化量は、連続的であり、大きくキャラクターが変わらないのがこの製品の特徴。針圧は、ここでは1・25gプラス0・125gとする。安定感とフレッシュさがミックスした、ほぼ標準と上限の中間の音だ。ファンタジアは情報量の豊かさがあり素直な音、アル・ジャロウは、少し小型になる。

テクニクス SU-V10X

井上卓也

ステレオサウンド 73号(1984年12月発行)
「BEST PRODUCTS」より

 CD、PCMプロセッサーなどのデジタルプログラムソース、ハイファイVTR、ビデオディスクなどのAVプログラムソースなど、多様化するプログラムソースに対応する現代のプリメインアンプとしてテクニクスから登場した新製品がSU-V10Xである。
 アンプとしての基本構成は、テクニクスが理想のパワーアンプを目指し、クロスオーバー歪とスイッチング歪を解消するシンクロバイアス回路ニュー・クラスA、トランジエント歪に対するコンピュータードライブ、理論的に歪を0とするリニアフィードバック方式などの技術と、大電涜が流れる出力段で発生する電磁フラツクスを抑えるコンセントレイテッド・パワーブロック構造の採用などが、従来からのテクニクスアンプのストーリーだが、今回さらに、駆動電圧と電流間に位相差をもつ実スピーカーに対し、リニアな駆動とドライブ能力を向上するコンスタントゲイン・プリドライバー回路を採用したことが特徴で、オンキョーのアプローチとの対比が興味深い。
 機能面では、AVシステムの中心となるアンプらしく、AV信号を連動切替するAV入力セレクター、単独切替のRECセレクターとグラフィックイコライザーなどを使用する外部機器専用端子、ターンオーバー可変型トーンコントロールなどが備わるが、AUX1/TV、AUX2/Video、TAPE2/VTRと3系統のAV入力端子のうち、AUX2/Video端子は、フロントパネル面にもあり、フロントとリアがスイッチ切替可能である。
 パワーアンプは、150W+150W(6Ω負荷)の定格をもつが、電源部は、従来のトランスと比較し10~20%以上太い線を高密度に巻ける尭全整列巻線法を採用し、レギュレーションを改善している。線材は無酸素銅線、3重の磁気シールド内に特殊レジン封入で振動が少ない特徴がある。なお、電解コンデンサーは全数300Aの瞬間電流テストを行なう特殊電解液使用のオーディオ専用タイプで強力な電源部を構成し、310W+310W(4Ω負荷)、400W+400W(2Ω負荷)のダイナミックパワーを誇っている。
 JBL4344とLC-OFCコードによるヒアリングでは、ナチュラルに伸びた広帯域型のバランスと、聴感上でのSN比が優れ、前後方向のパースペクティブを充分に聴かせる音場感と実体感のある音像定位が印象的である。優れた物理的特性に裏付けられたクォリティの高さ、という従来の同社アンプの特徴に加えて、スピード感のある反応の早さ、フレッシュな鮮度感のある表現力が加わったことが、魅力のポイントである。新製品が登場するたびに、ひたひたと潮が満ちるようにリファインされているテクニクスアンプの進歩は見事だ。

テクニクス SE-A1、ヤマハ 101M

井上卓也

ステレオサウンド 72号(1984年9月発行)
特集・「いま、聴きたい、聴かせたい、とっておきの音」より

 セパレート型アンプのジャンルでは、コントロールアンプに比較して、パワーアンプに名作、傑作と呼ばれる製品が多い傾向が強いように思われる。
 こと、コントロールアンプに関しては、管球アンプの以前から考えてみても、いま、残しておきたい音というと、個人的には、管球アンプのマランツ♯7と、ソリッドステート以後ではマーク・レヴィンソンLNP2の2モデルしか興味がない。
 これに比較すれば、パワーアンプではいま聴きたい音、あるいはとっておきたい音は数限りなくあるといってもよいし、個人的にもパワーアンプのほうが好きなようで、手もとに残してある製品を考えても、パワーアンプの総数はコントロールアンプの3倍はあると思う。とくに、この号が発刊される頃(秋)は、感覚的にも、管球アンプを使いだすシーズンであり、音的には体質にマッチしないが、マッキントッシュMC275を再度入手したいような心境である。
 国内製品でも、パワーアンプには興味深い製品が数々あり、AクラスパワーアンプのエクスクルーシヴM4、全段FET構成のヤマハBI、 ハイパワー管球アンプのデンオンPOA1000Bなどは、オーディオの夢を華やかに咲かせた。それぞれの時代の名作であり、コレクション的にも興味のある作品と思う。
 パワーアンプでAクラス増幅の高品位とBクラス増幅の高効率が論議され、各社から各種のBクラス増幅のスイッチング歪とクロスオーバー歪を低減する新方式が開発された時点で、スイッチング歪とクロスオーバー歪の両方が発生せず、しかもAクラス増幅で350W+350Wという超弩級のパワーをもつ驚異的なパワーアンプとして、テクニクスから1977年9月に登場した製品がテクニクスA1だ。
 テクニクスの伝統ともいうべきか、全段Aクラス増幅のDCコントロールアンプのテクニクスA2と同時に発表されたA1は、独特のコロンブスの卵的発想によるAプラス級動作と名付けられた新方式を採用した点に最大の特徴がある。
 基本構想は、スイッチング歪とクロスオーバー歪が発生しない低出力A級増幅パワーアンプの電源の中点をフローティングし、別に独立した電源アンプで信号の出力増幅に追従するようにA級増幅アンプの電源中点をドライブするという2段構えの構成での高効率化である。
 これにより、アンプの外形寸法はA級増幅の100W+100Wなみに抑えることが可能となり、しかも強制空冷用のファンなしの静かなパワーアンプが可能となったわけだ。またこのモデルは、入力や出力のカップリングコンデンサーや、NFBループ中にもコンデンサーのないDCアンプを採用しながら、DCドリフト対策として、出力のDCドリフト成分を信号系とは別系統の系を通してDCドリフトの要因となる回路素子に熱的にフィードバックし、素子間の温度バランスを補正し、DCドリフトの要因そのものを打消すアクティブサーマルサーボ方式を採用していることも特徴である。
 機能面は、4Ω、6Ω、8Ω、16Ωのスピーカーインピーダンスによる指示変化を切替スイッチで調整可能の対数圧縮等間隔指示のピークパワーメーター、レベルコントロールによりプリセット可能な4系統のスピーカー端子、2系統の入力切替、電源のON/OFFのリモートコントロールなどが備わっている。
 周波数特性、DC〜200kHz −1dB、スルーレイト70V/μsec、350W+350W定格出力時(20Hz〜20kHz)で0・003%のTHDと、スペックのどれをとってもパワーアンプとして考えられる極限の性能を備えていた。しかも、業務用ではなく、純粋にコンシュマーユースとして開発された点に最大の特徴がある製品だ。
 柔らかく、穏やかな表情と、しなやかで、キメ細かい音が特徴であったが、余裕たっぷりの絶大なスケール感は、ハイパワーであり、かつ、ハイクォリティのパワーアンプのみが到達できる独自の魅力で、現在でも鮮やかに印象として残るものである。今あらためて、ぜひとも最新のプログラムソースと最新のスピーカーシステムで聴いてみたい音だ。また、このAプラス級増幅方式と共通の構想として、それ以後、エクスクルーシヴM5、ヤマハB2xなどが誕生していることも、見逃せない点だ。
 1982年末に、500W十500Wという超弩級ステレオパワーアンプとして初登場したモデルが、ヤマハ101Mである。外観のデザイン面からも判然とするように、ヤマハ一連のアンプデザインと異なった印象を受けるが、基本構想はレコーディングスタジオでのモニターアンプ用として開発されたモデルでナンバー末尾のMは、モニターの意味であると聞いている。
 構成は、筐体は共有しているが、内部は電源コードまでを含み完全に左右チャンネルは独立した機構設計をもっている。人力系は、欧米でのスタジオユースを考えオスとメスのキャノン型バランス入力とRCAピンのアンバランス入力とレベルコントロール、さらに、BTL切替スイッチが備わり、BTL動作時は、1500W(8Ω)のモノパワーアンプになる。なお、出力系は、切替スイッチはなく、1系統のダイレクト出力端子のみ、というのは、いかにも、プロフェッショナル仕様らしい。
 パワー段は、+−70V動作のメタルキャンケース入り、Pc200Wパワートランジスター5パラ動作をベースに、+−120V動作の4パラ動作が必要に応じて加わる方式で、ヤマハ独白のZDR方式採用でパワーパワー段での各種歪、スピーカーの逆起電力による歪までをキャンセルし、定格出力時THD0・003%は、見事な値だ。
 音の輪郭をシャープに描き出し、ストレートに力強い表現をする音は、一種の厳しさをも感ずる凄さがあり、国内製品として異次元の世界を聴かせた印象は今も強烈だ。

ソニー APM-8, APM-6、パイオニア S-F1、テクニクス SB-M1 (MONITOR 1))

井上卓也

ステレオサウンド 72号(1984年9月発行)
特集・「いま、聴きたい、聴かせたい、とっておきの音」より

 平面振動板採用のユニットを使ったスピーカーシステムといえば、1970年代の末期に急激に開花した徒花といった表現は過言であるのだろうか。
 毎度のことながら、国内のオーディオシーンでは、これならではのキャッチフレーズをもった、いわば、究極の兵器とでもいえる新方式や新材料を採用した新製品が、開発され、ある時期には、各社から一斉に同様のタイプの新製品が市場に送り込まれ、盛況を見せるが、それも長くは継続せず、急速に衰退を元す、といった現象が、繰返されている。平面振動板を採用したユニットによるスピーカーシステムも、その好例であり、現在では継続してこのタイプのユニットによるシステム構成を行なっているのは、テクニクスとソニーの2社といってよいであろう。
 平面振動板は、スピーカーユニットの振動板形態としては、もっとも、シンプルなタイプであり、振動板の振動モードを検討する場合に、オルソンの音響工学にもあるように、常に引合いに出されるタイプだ。
 従来からも、平面振動板を採用したダイナミック型のユニットは、特殊なタイプとしてはすでに1920年代から存在することが知られているが、いわゆる、コーン型ユニット的に、ボイスコイルで振動板を駆動する製品としては、かつて、米エレクトロボイスにあったといわれる、木製の板を振動板としたユニット、ワーフェデールのコーン型ユニットの開口部を発泡性の合成樹脂の平らな円板でカバーしたウーファーなどが一部に存在をしたのみである。これが、急速にクローズアップされたのは、宇宙開発や航空用に開発された軽金属製のハニカムコアが、比較的容易に入手可能となり、これに、各種のスキン材を使って、振動板として要求される、重量、剛性、内部損失などの条件がコントロール可能になったためである。簡単にいえば、新しい材料の登場が、急速な平面振動板ユニット開発のベースとなっているのである。
●ソニーAPM8/APM6
 平面振動板を採用した原点は、全帯域にわたり完全に近いピストン振動をする、いわば、スピーカーの原器ともいえるシステムを開発するためといわれ、アキユレート・ピストニック・モーションの頭文字をとりAPMの名称がつけられている。
 APM8は、11978年1月に開発されたAPMスピーカーをベースに製品化された第一弾製品で、ハニカムサンドイッチ構造の角型板勤板ユニットを4ウェイ構成とし、フロアー型バスレフエンクロージュアに組込んだシステムである。アルミ箔スキンの低音は、4点駆動で、中心にローリング防止ダンパー付。中低域以上は、カーボンファイバーシートをスキン材に採用している。
 磁気回路は、アルニコ系鋳造磁石を採用し、プレートとセンターポールの放射状スリットと、磁気ギャップ近傍のプレートやボールに溝を設けるなどの機械加工による電流歪低減と、各ユニットのインピーダンスを純抵抗と純リアクタンスに近づけ、単純化し、ロスを減らし、特性をフラット化する設計が見受けられる。
 エンクロージュアは、200ℓ、自重60kgで25mm厚高密度パーチクルボード製。ネットワークは、SBMCの高圧成形の防振構造を採用している。
 ユニット性能を最重視した基本設計は、国内製品として典型的な存在である。物理的な性能は超一流のレベルにあるが、システムとしての完成度に今一歩欠けるものがあり、発表以後、改良が加えられた様子はあるが、サウンド的には未完の大器であり、非常に残念な存在である。完全にチューンナップした音が聴きたいモデルだ。
 APM6は、APMユニットをモニターとして最適といわれる2ウェイ構成とし、エンクロージュアをスーパー楕円断面の特殊型として、デフテクションの防止を図ったAPM第二弾製品である。2ウェイ構成のため、セッティングは非常にクリティカルな面を示すが、追込めばさすがに、従来型とは一線を画したスピード感のある新鮮な音を聴かせる。使い手に高度の技術を要求する小気味のよい製品だ。
●パイオニア S−F1
 世界初の平面同軸4ウェイユニットを開発し、採用した、極めて意欲的、挑戦的モデルである。基本構想は、音像定位、音場感を最優先とした設計であり、混変調歪やドップラー歪に注目して一般型としたソニーAPM6と対照的な考え方と思う。
 角型ハニカム振動板は、低域と中低域のスキン材にカーボングラファイト、中高域と高域用はベリリュウム箔採用だ。磁気回路は、同軸構造採用のため、ウーファー振動板40cm角に対して32cm型のボイスコイルであり、背面の空気の流れを確保するため非常に巧妙な考えが見受けられる。とくに、高域と中高域の同軸構造磁気回路は、シンプルでクリーンな設計である。
 エンクロージュアは、230ℓのバスレフ型で、システムとしての完成度は、相当に高いが、今後のファインチューニングを願いたい内容の濃いシステムである。
●テクニクス/モニター1
 SB7000で提唱した位相特性平坦化を平面振動板採用で一段とクリアーにした理論的追求型のシステムだ。独特のハニカムコア展開法は、振動板外周ほどコアが大きくなり、軽くなる特徴をもち、4ウェイ構成のユニットはすべて円型振動板採用。
 低域用の特殊構造リニアダンパー、高域用のマイカスキン材をはじめ、磁気回路の物量投入は、価格からみて驚威的で、非常に価格対満足度の高い製品である。特性は充分に追込まれているが、システムアップの苦心の跡としてバッフル前面のディフューズポールや、内部定在波を少し残して低音感を調整したあたりは巧みである。この製品の内容を認めて、使いこなせる人が少ないのが、現在のオーディオの悲劇であろうか。

テクニクス SB-M3

井上卓也

ステレオサウンド 71号(1984年6月発行)
特集・「クォリティオーディオの新世代を築くニューウェイヴスピーカー」より

 平面型振動板採用のシステムは、一時期各社から開発され、盛況を呈したが、現状では、ひとつのユニット形式として市民権を獲得していると思う。
 もともと、振動板解析の基本には、円形の平板を使う手法が古くから行われているように、平面振動板は、ある意味では、理想の振動板形態ということができる。この理想的な振動板を採用した数多くのシステムが、なぜ古典的なコーン型や、比較的に新しいドーム型ユニットなどと、少なくとも同等以上の成果が得られなかったのだろうか。短絡的に考えれば、平面型振動板駆動方式などを含めた、スピーカーユニットとしての完成度に問題があったようだ。
 各方式の平面型振動板を採用したシステムのなかにあって、テクニクスの製品は、ユニット自体の完成度がもっとも高いということが際立った特徴である。
 テクニクスの平面型振動板は、軽金属のハニカムコアを採用することでは標準的であるが、単純にコアをカットして両面にスキン材を張るという方法ではなく、コロンブスの卵的発想ともいえる独自の2段階のステップをもつコアの展開方法により、中央ではコアが密に、周辺ではコアが粗になる独特の構造を採用しているのが特徴である。いわば、コアが均一ではなく、質量分散型ともいえるコア構造のため、コア内部の空洞共振や共鳴が分散され、振動板の構造としては、通常型よりも好ましい。さらに、コア両面に張るスキン材が、外周の端末部分で両側から巻き込まれているために、端末部分の断面でコアが露出して不要共振が発生することを抑制している点も見逃せないところだ。
 また、ローリングを生じやすい平面型振動板をコントロールする目的で節駆動方式が採用されているが、ボイスコイルダンパーは、角型状に四方に対称形のギャザーを配した特殊形状のリニアダンパーが特徴的である。
 また、国内では比較的に軽視されやすいシステムの上下方向の指向特性を改善するために、トゥイーター用マグネットは、長方形型を採用し、スコーカーとの間隔を狭めたユニット配置としている。
 かつでSB7000で国内最初にテクニクスが提唱したリニアフェイズ方式は、当初においては、ユニットにドーム型やコーン型を混用していたため、エンクロージュア構造を変えて、ウーファーに対してスコーカー、トゥイーターを後方に偏らせることで実現されていた。しかし、平面型振動板の開発と全面的な採用により、通常型のエンクロージュアでリニアフェイズ方式としたアプローチは、いかにもテクニクスらしく、オーソドックスな、しかも、理詰めの手法であると思う。
 SB−M3は、4ウェイ方式フロアー型システムとして異例の価格で登場したSB−M1、その3ウェイ版であるSB−M2に続いて開発されたモニターシリーズの第三弾製品である。デジタル時代のモニターシステムとして、広大なダイナミックレンジ、SN比の良さ、音像定位の明解さが要求されるが、このSB−M3では、リニアダンパー採用のパワーリニアリティに優れたウーファーをベースに、振動板前面に音源中心がくる平面型ユニットの特徴が活き、シャープさ、リニアフェイズ方式独特の位相特性面での優位性が積極的に表われている。特に、音場感の空間情報の豊かさ、素直な広がりが目立つシステムである。
 基本的にキャラクターが少なく、ナチュラルで適度に抑制の効いたサウンドをもつだけに、使いこなしは容易なタイプだ。低域は軽く、いわゆる重低音を志向したものでないだけに、中低域の豊かさ、反応の軽快さを活かしたバランスをつくり、奥行き感のある平面型独自の魅力に加えて、実体感のある音像を充分に前へ引き出すことを狙うのが使いこなしのポイントになる。
 置台は、ブロック一段なら間隔は基準よりも狭めとし、やや、柔らかい傾向をもつエンクロ−ジュアの音を引締める。前後方向は、基準より少し前方とし、重低域を狙わず、中低域と低域のバランスを重視して決める。いわゆるモニター的サウンドを志向するならば、コンクリートブロックよりも密度が高く、重量がある台形のコンクリートを置台に使い、その上に、数mm程の厚さのフェルトを敷くのがよい。
 左右は、バスレフポートを外側にするのが原則だ。残念なことは、SB−M3では、ポートと対称位置に二個のアッテネーターがあることだ。この部分の共振の影響は、素直な平面型振動板の特徴にデメリットとして働き、中域以上の分解能、SN比を劣化させている。試みに、1mmほどの薄いフェルトでアッテネーター前面をマスクしてみると音源が遠いと感じやすいSB−M3の個性が薄らぐ。しかし、抜けがよくなり、音像は一段と前に定位し、実体感が加わって、積極的な意味での平面型振動板の良さと、リニアフェイズ方式のメリットが聴感上にはっきりと感じられるようになる。
 この中高域以上の改善は、本来、柔らかく、穏やかな性格のウーファーにも影響を与え、反応は一段と早まり、鮮度感や力感の表現すら可能になる。この変化は、現実に体験をしないと判からないほどに劇的なもので、スピーカーならではの使いこなしの楽しさであり、魅力である。
 ネジ関係の増締めは、素直に反応を示すが、前面から鬼目ナットを装入するタイプで、2〜3回転は簡単に廻わり、最後でジワッと固くなる特徴がある。なおスピーカー端子は、ゆるみが少ないことが、M2ともどもテクニクスの特徴と思う。
 コード類は、太い平行二芯やFケーブルは不適当で、無酸素銅同軸の外皮を+に用いる使用が好適であった。最新のLC−OFCも、その情報量の多さから試みたいコードだ。
 組合せには、素直でキャラクターが少なく、適度に伸びやかさが加わったアンプと、軽快なワイドレンジタイプの音をもつCDプレーヤーを使う。

テクニクス SB-M2 (MONITOR 2)

黒田恭一

ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
特集・「2つの試聴テストで探る’83 “NEW” スピーカーの魅力」より
4枚のレコードでの20のチェック・ポイント・試聴テスト

19世紀のウィーンのダンス名曲集II
ディトリッヒ/ウィン・ベラ・ムジカ合奏団
❶ではすべての楽器が音像的に大きめに示された。❷でもヴァイオリンがたっぷりとしたひびきで示された。音色的にかげりがないのがこのましい。❸でのコントラバスのひびきは、ひきずりぎみにならないところはこのましいとしても、音像的にはかなり大きい。❹のフォルテでもひびきがぎすぎすしない。この辺にこのスピーカーのききやすさがあるといえよう。❺でのリズムは少し重くなりがちである。

ギルティ
バーブラ・ストライザンド/バリー・ギブ
❷での吸う息はくっきりと示される。ただ、ストライザンドの音像は大きい。❶でのエレクトリック・ピアノは、ひびきの特徴をよく示しはするものの、多少量感をもちすぎているように感じられる。❹でのストリングスについても似たようなことがいえる。たっぷりひびくが、もう少しさらりとした感じがほしい。❸でのギターもほどほどにシャープである。音色的な面でのトータルバランスのいい音というべきか。

ショート・ストーリーズ
ヴァンゲリス/ジョン・アンダーソン
この種の音楽の再現を特に得意にしているとはいいがたいようであるが、外面的な特徴は一応示しえている。ひびきそのものに多少重みがあるので、❹での疾走感は、ものたりないところがでてくる。それにしても、同じく❹でのブラスの力強いひびきにはそれなりに対応できているので、音色的な面での全体的なコントラストはほどほどにつけられている。❺でのポコポコはもう少しくっきり示されてもいい。

第三の扉
エバーハルト・ウェーバー/ライル・メイズ
❶でのピアノの音に独自のあたたかさがある。しかもピアノの音とベースの音のバランスもわるくない。ただ、❺での、これまでの部分との音色的対比ということになると、ピアノの音の硬質なところがかならずしも十全に示されず、充分とはいいがたい。さらに、❷でのピアノの音は、かなりひろがる。しかし、このレコードの音楽がめざすぬくもりのあるひびきにはこのましく対応しているとみるべきである。

テクニクス SB-M2 (MONITOR 2)

黒田恭一

ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
特集・「2つの試聴テストで探る’83 “NEW” スピーカーの魅力」より

 ②のレコードと④のレコードでのきこえ方がこのましかった。このスピーカーの性格としては、①のレコードでの結果がよさそうに思うが、低い方の音、たとえば❸ないしは❺でのコントラバスの音がいくぶんひびきすぎの傾向があって、もう一歩といった印象である。
 これで低い方の音がもう少しくっきりすれば、全体的な音の印象はさらにすっきりするのだろうし、たとえば③のレコードできけるような音楽への対応のしかたでも前進が期待できるのであろう。このスピーカーのつかい方のこつとしては、俗にいわれるガンガン鳴らすのではなく、いくぶんおさえめの音量できくことが考えられる。そうすることによって音像のふくらみをある程度おさえられるし、おまけにこのスピーカーの音色的な面でのトータルなバランスのよさがいかせるのかもしれない。このスピーカーのきかせる暖かみのある音はききての気持をやさしくする。

スレッショルド FET two + テクニクス SE-A3MK2

菅野沖彦

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
特集・「高級コントロールアンプVSパワーアンプ72通りの相性テスト」より

 明るく透明な音だが、オーケストラが極彩色の華美さをもって響き、このオーケストラの陰影あるテクスチュアとは異質の音だ。ハーモニーは、もっと分厚く重厚な響きでなければならないのに……。フィッシャー=ディスカウの〝冬の旅〟も、〝春の旅〟のように聴こえ、声質もバリトンよりテノールに近づいた響き、発声の雰囲気である。明るい響きにマッチした音楽なら効果をあげるであろう。その点、ローズマリー・クルーニーはよい。

テクニクス SB-M2 (MONITOR 2)

井上卓也

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
「PickUp 注目の新製品ピックアップ」より

 テクニクスのスピーカーシステムは、従来からマルチウェイシステムのひとつの問題点であった各ユニットの音源中心を、前後方向に揃えるリニアフェイズ化を重視したシステムづくりが最大の特徴だった。
 この考え方は、海外でも米アルテックのA7システムや、欧州ではフランス系のキャバスやエリプソンのシステムが先行していたものだが、音源中心が振動板面で決まる平面振動板ユニットの全面採用で、明らかに世界のトップレベルに位置づけされるようになった。
 M2には、木目仕上げのM2(M)と、シルバー塗装仕上げのM2(S)の2モデルがあるが、今回はM2(S)仕様の試聴である。基本構想は、既発売の4ウェイシステム、M1を3ウェイ化し、いわゆるスタジオモニターサイズにまとめた製品である。
 使用ユニットはすべて、扇を全円周に展開したような独自の構造の軽金属ハニカムコアを採用したことが特徴である。
 低域は直径200mm、重量3・1kgの磁石と直径75mmの高耐入力構造ボイスコイル、独自のリニアダンパーを組み合わせた38cm口径ウーファー、中域は直径140mm、重量1・2kgの磁石と直径50mmボイスコイル採用の8cmスコーカー、それにスキン材に積層マイカ使用、スコーカーとの取付位置を近接化するために特殊な角型磁石を採用した28mmトゥイーターを組み合わせている。エンクロージュアは、筒型ダクト使用のバスレフ型で左右対称型だが、M1でのバッフル面両側にあった金属製の把手兼補響棒がないのは大きな改善だ。なお、ネットワークは低域と中高域分割型、フェライトコア入りコイル、高域用コンデンサーはメタライズド・フィルム型採用で、高域にはサーマルリレー使用の保護回路付である。
 テクニクスらしく基本特性が世界のトップランクの見事さだけに、M2は使い方が最大の決め手だ。簡単な鳴らし方で概要を掴むと、柔らかく豊かな低域と素直で透明感があり、ややおとなしい中域から高域をもっている。低域を程よく引き締め、低域と中域のつながりを密にする使用が望まれる。置台に硬質コンクリート台型のブロックを3個使い、最低域の重量感を確保しながら同軸構造のスピーカーコードを併用すると、現代的なモニターライクな高分解能な音が聴ける。

テクニクス SH-8000, SH-8065

テクニクスの測定器SH8000、グラフィックイコライザーSH8065の広告
(オーディオアクセサリー 27号掲載)

SH8000

テクニクス SL-P10

テクニクスのCDプレーヤーSL-P10の広告
(オーディオアクセサリー 27号掲載)

SL-P10

テクニクス SU-A8 + SE-A7

黒田恭一

ステレオサウンド 64号(1982年9月発行)
特集・「スピーカーとの相性テストで探る最新セパレートアンプ44機種の実力」より

ヤマハ・NS1000Mへの対応度:★★
 もう少しシャープな反応を示すアンプの方が、このスピーカーのよさをあきらかにするであろう。④や⑤のレコードでのひびきのやわらかさはそれなりにこのましいが、音にべとつきがなくもない。そのために音像が心もち大きめである。③のレコードはこのましかった。
タンノイ・Arden MKIIへの対応度:★
 ④のレコードではしたっ:ている人と人との間が狭く感じられた。わざとしらい今日朝刊の内のはこのましいが、総じてひびきがったりするので、いきいきした感じがあきらかになりにくい。①のレコードでは細部の音の動きがいくぶんあいまいになっていたのがおしまれた。
JBL・4343Bへの対応度:★
 このスピーカーの反応としては思いもかけぬ反応というべきであろうが、ひびきがたるんで重く感じられた。④のレコードではきわだって音像が大きかった。③のレコードでのベースの音もふくらんで本来の迫力を示しえていなかった。①のレコードでの結果がもっともこのましかった。

試聴レコード
①「マーラー/交響曲第6番」
レーグナー/ベルリン放送管弦楽団[ドイツ・シャルプラッテンET4017-18]
第1楽章を使用
②「ザ・ダイアローグ」
猪俣猛 (ds)、荒川康男(b)[オーディオラボALJ3359]
「ザ・ダイアローグ・ウィズ・ベース」を使用
③ジミー・ロウルズ/オン・ツアー」
ジミー・ロウルズ(P)、ウォルター・パーキンス(ds)、ジョージ・デュビビエ(b)[ポリドール28MJ3116]
A面1曲目「愛さずにはいられぬこの思い」を使用
④「キングズ・シンガーズ/フレンチ・コレクション」
キングズ・シンガーズ[ビクターVIC2164]
A面2曲目使用
⑤「ハイドン/6つの三重奏曲Op.38」
B.クイケン(fl)、S.クイケン(vn)、W.クイケン(vc)[コロムビア-アクサンOX1213]
第1番二長調の第1楽章を使用

テクニクス SB-8

テクニクスのスピーカーシステムSB8の広告
(モダン・ジャズ読本 ’82掲載)

SB8

テクニクス SU-V7

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(別冊FM fan 33号掲載)

SU-V7

テクニクス SB-6

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(スイングジャーナル 1981年9月号掲載)を公開しました。

テクニクス