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ダイヤトーン 2S-305

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 ダイヤトーン2S305は、おそらく現役国産システム中、最も長い歴史をもち、国産スピーカーの数少ない名器として君臨しているものだ。30cmウーファーと5cmコーン・トゥイーターの2ウェイという、いまやごく平凡なユニット構成ながら、スタジオモニターらしい妥当なバランスをもつ。

ダイヤトーン DS-70C

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 スピーカーとは正直なもので、エンクロージュアがこのぐらい大きくなると、それだけでもう相当のスケール感が出る。ただ、このまま床の上に置いたのでは音の抜けが少々よくないように思えたので、ブロック(平置き)一個だけ持ち上げた。少し前までのダイヤトーンの音は、なかば意図的に、そしておそらくなかば無意識に──というよりダイヤトーン側の好みで、中〜高域をかなりカチッとと張り出させていて、それがポップスでは一種独特の迫力になっていたものの、クラシックを聴けるバランスではないというのが多かった。その点この70Cでは、大づかみなバランスは一応整っている。やや爽やかさを欠くことと、その結果ステレオのひろがりや奥行きよりも、音のマッスとしての量感を出すタイプである点は以前からの作り方だ。しかしヴァイオリンの音に関しては、どうもこのメーカーはにが手なのか、それとも音のとらえ方が我々と違うのか、厚手の音。そしてオーケストラはいくぶん映画音楽的、スペクタクル的に響く。

総合採点:7

●9項目採点表
音域の広さ:7
バランス:7
質感:7
スケール感:8
ステレオエフェクト:7
耐入力・ダイナミックレンジ:9
音の魅力度:6
組合せ:普通
設置・調整:普通

ダイヤトーン DS-32B

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 この価格帯のスピーカーでは傑出したものと思う。むろん、大編成のオーケストラが力のかぎり演奏した音楽の迫力を十全にあきらかにしているなどといったら嘘になる。しかし、無理なく、そして誇張感なく、レコードにおさめられている音楽の性格をききてに伝えようとする、このスピーカーのこのましさは、誰もが認めることだろう。ひびきが、すっきりしていて、あかるさのあるがいい。たとえば、❷のレコードできかれるグルダによる強い打鍵の音など、たしかに充分とはいいがたいが、ききてがふみこんできこうとすれば、その音の強さを感じとることができる。❸のレコードでの、充分にひろがったオーケストラのひびきの中央から、声がくっきりときこえるあたりは、なかなか見事だ。さまざまな音に対して、かたよりなく素直に反応するために、安心してつかえるスピーカーということもできるはずだ。

総合採点:9

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(好ましい)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(好ましい)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(好ましい)

ダイヤトーン DS-70C

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 3ウェイ・3スピーカーのフロアー型システムで、エンクロージュアはバスレフ。ウーファーは33cmと大き目だが、全体はフロアー型としてはスリムで、締ったまとまりである。ユニットそれぞれも構成も大変オーソドックスなシステムといってよいが、このシステムの最大の特徴は、ウーファーにHCコーンを使っていることだ。音は、バランスはよいが、透明度がやや物足りなく、俗にいう抜けの悪さが感じられる。ヴァイオリンは滑らかで、耳障りな刺々しさは出ないが、逆に、少々細かい音の再現が不十分で鈍い感じを受ける。ピアノも精緻な音ではなく、大掴みに、まろやかに聴きよく響くタイプ。低音は、しなやかさがなく、コンコンという癖がつきまとう。ダイヤトーンとしては、音像のエッジのシャープさもやや期待はずれという感じだ。しかし、全体にスムーズで聴きよい響き、ローレベルからハイレベルまでのリニアリティのよさ、帯域バランスのよさなどは、さすがにキャリアのあるメーカーらしく、広い音楽の適応性をもつ。

総合採点:8

ダイヤトーン DS-32B

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 ダイヤトーンのスピーカーに共通の、中音域のカチッと張り出した硬質でクリアーな音が、これはおそらくブラインドテストでも聴き分けが可能であろうほど、特徴的に鳴ってくる。楽器が聴き手のごく近くで鳴る感じ、ないしは楽器を自分でいじる人が納得する傾向の音、ともいえようか。言いかえれば、自然の楽器が、響きの良いホールで鳴ったときの、あの広い空間にどこまでも広がり、漂い、美しい余韻を残しながら消えてゆくあの感じの出にくいところもまた、ダイヤトーンのスピーカー各機種に共通の性格だといえる。トゥイーターの上限がスッと伸び切っていないという感じのする点が、いっそうそのように聴こえさせる。
 その結果、ややハードな傾向のポップス、ないしはアコースティックの楽器でない、電気楽器系の音を多用した音楽を、相当にパワフルに、手ごたえのある音で楽しめるというのが、このスピーカーの特徴だろうと思う。

総合採点:8

●9項目採点表
音域の広さ:6
バランス:6
質感:7
スケール感:7
ステレオエフェクト:6
耐入力・ダイナミックレンジ:7
音の魅力度:7
組合せ:やや選ぶ
設置・調整:普通

ダイヤトーン DS-32B

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 オールコーンのオーソドックスな3ウェイで、エンクロージュアはバスレフのブックシェルフ型となれば、ダイヤトーンが最も作りなれたフィーチュアで、当然あるレベル以上の信頼感が持てるシステムと予想した。私の鳴らし方がよほど悪かったのか……つまり、使ったアンプなどのマッチングが不幸にして悪かったのか、残念ながらこのシステムは予想に反するものだった。周波数帯域では十分な能力を持つシステムであることはわかったが、全体のバランスは決してよいものではなかった。各ユニットの質的なつながりは、ベテランのダイヤトーンらしからぬものがあるといいたいほどだ。特に指摘したいのはトゥイーターの音で、かなりノイズが目立つ。音も決してしなやかさと滑らかさをもったものではない。ヴァイオリンはトゲが気になるし、ピアノの中域は明らかに不明瞭だ。ジャズでも、ハイハットやシンバルの高域の質感は決して品位の高いものではなく、少なくともジルジャンの音ではなかった。

総合採点:6

ダイヤトーン DS-70C

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 くせのない音──といっていいだろう。しっかり基本をおさえた安定のいい音といういい方もできるにちがいない。ただ、シャープな反応に不足するところがあるというべきか、角のある音の提示に甘いところがある。たとえば、❸のレコードでのブラスのひびきなど、もう少し力と光をもって示されると、音色的な対比ということで、まろやかな音もはえるにちがいない。声についていえば、❸できかれる強い声より、❷できかれるかすれぎみの声の方で、このスピーカーのよさが示される。❶のレコードできかれるサウンドは、もう少し軽やかさにきこえる方がのぞましいが、それぞれのサウンドキャラクターは、一応つつがなく示されている。とはいっても、このスピーカーとしては、❶より、❷や❸のレコードの方が、その本領を発揮しやすいということはいえるだろう。まとまりのいい、くせのない音をきかせるスピーカーだ。

総合採点:7

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(ほどほど)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(ほどほど)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(好ましい)

ダイヤトーン DS-32B

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

優れたバスレフ型の設計では定評がある伝統的な技術を活かし、コーン型3ウェイとしてまとめた製品。クリアーでフラットに伸びたレスポンスと明解な音像定位が特徴。

ダイヤトーン DS-32B

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 従来では、大口径ウーファー採用の2ウェイ構成システムで製品ラインアップを形成していた価格帯に、ダイヤトーンが初めて登場させた、3ウェイ構成かつ、エンクロージュアにバスレフ型を採用している点が特長の新製品である。
 25cmウーファーは、独自の NFリング採用の低歪磁気回路使用で、コーンはプレス圧を下げたノンプレス型に近く、ボイスコイルは特殊合成ゴムダンプリング付で、全体に内部損失を増加した設計。10cmコーン型スコーカーは、カテリーナカーブにコルゲーションを配した整合共振型とし、ドライブレス法で造ったコーンと横ゆれに強いV字型エッジ採用。4cmセミドーム型トゥイーターは、小口径コーン型に円錐型チタンセンタードーム採用である。エンクロージュアは、モーダル解析法により100Hz以下で振動発生が少ない木製ダクト付バスレフ型で、従来より奥行きを深くした新設計である
 ナチュラルな帯域バランスと明るく明快な、本来のダイヤトーンサウンドをもつ優れた製品だ。音の粒子は従来より滑らかで反応も速く、正統派の音。

ダイヤトーン M-U07

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 このアンプは一見してわかる通り、いわゆるミニアンプの系統に属する。今回のテストのように、ごくスタンダードのプリメインアンプをテストの対象としている中に、ミニアンプを混ぜるということは、テストとしてはあまりフェアーではない。これを承知のうえで取り上げた理由というのは、現在ダイヤトーンのアンプのカタログの中に、この価格ランクのものがほかにあまり見当たらない、ということと、これが比較的新しい製品であるということなので、あえて取り上げてみた。そのミニであることのハンデというのは、何かというと、当然同じ価格で極力小型化するためには使うパーツ、あるいはそれに付随する回路設計にいろいろ制約が出てくる。同じ価格でより小型化した場合に、無理に小型化しないで普通にゆったり作ったアンプに比べてどこか性能が劣るということは、これはやむを得ないことだ。したがって、ミニアンプは、ミニアンプの仲間の中に混ぜて、ミニアンプ同士のテストというのをすべきで、このアンプに関しては多少そういう点、ハンデをあげた採点をしようと思う。
音質 まず音全体の印象だが、割合に柔らかい、フワッとした、どちらかといえば甘口とも言えるような聴きやすい音が第一印象だ。これは実はダイヤトーンのアンプということをわれわれが頭に置いて聴くと、意外な感じを覚える。ダイヤトーンのアンプというのは、比較的カチッと硬めの音を出す。これがダイヤトーンのスピーカーにも共通する一つのトーン・ポリシーだと思っていたが、このミニアンプでは反対に割合に柔らかい音が聴こえてきた。
 柔らかい音というのは、また別な言い方をすると、少し音の芯が弱いという感じがする。これは繰り返すようだが、ミニアンプだからそう高望みをしても仕方がないことだと思う。この価格、そしてこの大きさ、それから公称出力が25Wということを頭に置いて聴くと、意外にボリュームを上げても音がしっかりと出てくる。これはミニとしてはむしろよくできた方のアンプだという印象を持った。
トーン&ラウドネス このアンプにはMCヘッドアンプは入っていない。そういう点は非常に作り方としては、割り切っている。スピーカーもA、B切り替えというものはなく、一本きり。その割にはテープが二系統あるというようにテープ機能を、かなり優先させている。また、トーン・コントロールの効きは、比較的大きい方で、ラウドネスも割合にはっきりと効く。ということはこういうミニサイズのアンプにはミニサイズのスピーカー組み合わされるというケースが多いだろうということを考えると、特に低音の方で効きを大きくしたという作り方は妥当だと思う。
ヘッドホン ヘッドホン端子での音の出方というのは、ヤマハA5のところでも言ったように、ボリュームの同じ位置で、スピーカーを鳴らしていると同じような音量感で、ヘッドホンが鳴ってくれるのが理想だが、このアンプもヘッドホン端子での出力をやや抑えぎみにしてある。
 テストには主にエラックのカートリッジ794Eを使った。多少シャープな感じのするカートリッジだ。それよりはスタントンの881S、比較的音の線が細くない厚味を持った音のカートリッジだが、その方がこのアンプの弱点を補うような気がする。つまりカートリッジには線の細いものよりは、密度のある線の太い音のカートリッジ、スピーカーも含めてそういう組合せをすると、このアンプはなかなか魅力を発揮する音が出せると思う。
 最後に、このアンプのマイクロホンの機能が充実しており、レベル設定やミキシング、それにリバーブが付けられるなど、カラオケを意識したようなファンクションもあり、楽しめる。

ダイヤトーン 2S-305(組合せ)

瀬川冬樹

続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第20項・ダイヤトーン2S305 栄光の超ロングセラー」より

 アルテックの604シリーズ(17項UREI参照)というスピーカーが、アメリカを代表するかつてのモニタースピーカーだったとすれば、日本で、NHKをはじめ各放送局や録音スタジオ等、プロフェッショナルの現場で、いまでも主力のモニターとして活躍しているのが、三菱電機・ダイヤトーン2S305だ。このスピーカーの古いことといったら、何と昭和三十一年に最初の形が作られて以来、ほとんどそのまま、こんにちまでの約二十年以上、第一線で働きつづけているという、日本はおろか世界で珍しい超ロングセラーの長寿命スピーカーなのだ。ただし、放送規格(BTS)での型番はBTS・R305。またNHK収めの型番をAS3001という。数年前からNHKでは、改良型のAS3002のほうに切替えられているが、一般用としての2S305は最初の形のまま、しかも相変らず需要に応えて作り続けられている。モデルチェンジの激しい日本のオーディオ界で、これは全く驚異的なできごとだ。
 2S305は、スタジオでのモニター仕様のため、原則として、数十センチの高さの頑丈なスタンドに載せるのが最適特性を得る方法だと指定されている。が、個人の家で、床に直接置いて良い音を聴いている例も知っている。部屋の特性に応じて、原則や定石にこだわらずに、大胆に置き方を変えて試聴してきめるのが最適だ。そしてもちろんこの方法は、ダイヤトーンに限らずあらゆるスピーカーに試みるべきだ。スピーカーの置き方ばかりは、実際その部屋に収めて聴いてみるなり測定してみるなりしないうちは、全く何ともいえない。原則と正反対の置き方をしたほうが音が良いということは、スピーカーに関するかぎり稀ではない。
          ※
 ところで2S305は、さすがに開発年代の古い製品であるだけに、こんにちの耳で聴くと、高域の伸びは必ずしも十分とはいえないし、中音域に、たとえばピアノの打鍵音など、ことさらにコンコンという感じの強調される印象もあって、最近のモニタースピーカーのような、鮮鋭かつ繊細、そしてダイナミックな音は期待しにくい。けれど、総合的なまとまりのよさ、そして、音のスケール感、いろいろの点で、その後のダイヤトーンのスピーカーの中に、部分的にはこれを凌駕しても総合的なまとまりや魅力という点で、2S305を明らかに超えた製品が、私には拾い出しにくい。いまだに2S305というのは、そういう意味もある。
 スピーカーとはおもしろいもので、基本があまり変化していないものだから、古いと思っていたスピーカーでも、新しいアンプや新しいレコードで鳴らしてみると、意外に新しい音が出てびっくりすることもある。そういう見地から組合せを考えてみると、できるかぎり新しいパーツ類、しかも、かなりグレイドの高いパーツでまとめるのが、結局最良のように思う。またこれはマニア向けのヒントだが、ここにパイオニアのリポンやテクニクスのリーフのような、スーパートゥイーターを加えると、2S305は、またかなりフレッシュな音を聴かせる。

スピーカーシステム:ダイヤトーン 2S-305 ¥250,000×2
プリメインアンプ:マランツ Pm-8 ¥250,000
チューナー:マランツ St-8 ¥135,000
プレーヤーシステム:ダイヤトーン DP-EC1MKII ¥128.000
カートリッジ:デンオン DL-103D ¥35,000
計¥1,048,000

ダイヤトーン DA-P15S, DA-A15DC

菅野沖彦

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか 最新セパレートアンプ32機種のテストリポート」より

 細かい音色のニュアンスを再現しきれないので品位の高い再生音とはいいにくい。全体に、音の汚れが耳につく感じで、それぞれの楽器の固有の魅力を味わいにくいアンプだ。派手で、効果のある音ではあるが、セパレート型としての品位の点では物足りない。

ダイヤトーン LT-5V

井上卓也

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ダイヤトーンのプレーヤーシステムは、昭和51年に電子制御のECフルオートプレーヤーを開発して以来その性能、機能、操作性の優れたメリットが認識され、国内はもとより、海外でも高い評価をえて、オートプレーヤーのひとつの方向を示しているが、今回は、このECプレーヤーの技術をベースとして、いわば、プレーヤーのコペルニクス的転換ともいえる、レコードを垂直に保持して使うユニークな方式を開発し、世界に先駆けて発売することになった。LT5Vはカートリッジレスで、LT5VCはカートリッジ付である。
 垂直型を採用したメリットは、設置場所の制約が少なくなったことをはじめ、トーンアームにリニアトラッキング方式を必要とすることによって得られるアームの慣性質量の低減、水平トラッキングエラーによる歪率の改善などの他に、床からの振動に対してカートリッジの感度がなく耐ハウリング性が非常に強い。また、カートリッジの自重による針圧変化が少なく、気軽にカートリッジ交換が可能など数多くの、このタイプならではの特長をもつ。
 フォノモーターは、現在のDD型が横位置では軸受が焼付くため使用不能で、PLL・DCサーボモーターによるベルトドライブ方式が採用されている。モーターからの動力は、キャビネット内部に軸受をはさんでターンテーブルと相対的に位置し、バランスをとった大型フライホイールにベルトで導かれる。このダブルフライホイール構造により、総重量は2kgを超す。レコードの保持は、特殊カーブに凹んだゴムマットと腕木状に移動するステーの中央に取付けてあるホルダー兼スタビライザー内部のスプリングで安定に支持することが可能。
 トーンアームは、ステンレスパイプ使用の垂直、前後、左右方向のバランスをとったユニバーサル型のスタティックバランス方式で、アームベースは、2組の光センサーによるサーボシステムにより、専用モーターで精密仕上げのステンレス棒上を、0・05mm×49本のステンレスワイヤーで駆動される。トラッキングエラーは0・1度以内に収まり、一般のタンジュンシャル型の約2・5度と比較すれば格段にトラッキングエラーによる歪は少ない。
 オート機能は、専用LSIを使う光学式無接触型のレコードサイズ検出、オートスタート、オートストップ、回転数の自動選択などの数多くの特長をもつECフルオート方式で、動作は節度があり、しかも、確実に、敏速に動作をする特長がある。操作は、ソフトタッチのスイッチで振動の発生が抑えられ、トラッキング誤差表示、回転数、リピートなどはオプティカルディスプレイに表示される。脚部を外して本体奥行15cmと薄く壁掛け可能なLT5Vは、各種カートリッジの音色を素直に引出し、リニア型特有の広い音場感とシャープな音像定位が聴かれ、その基本性能は同価格帯の在来型以上に高い。

ダイヤトーン DS-25BMKII

井上卓也

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 数多くの機種を揃えているダイヤトーンのスピーカーシステムのなかでも、2ウェイ構成で、バスレフ型エンクロージュアを採用したタイプは、放送用モニターとして高い評価を得ている2S305以来の伝統的な同社の基本路線を踏襲したシステムである。DS25Bは、この路線のもっとも小型なブックシェルフ型システムであったが、今回、細部にいたるまで改良がくわえられて、MKIIとしてフレッシュアップされた。
 外形寸法、ユニット構成などはDS25Bを受継いでいるのは当然のことながら、外観上での大きな変化は、バッフルボード面でのユニット配置が、音像定位の明確化を計ったため左右対称型となり、各ユニットの仕上げが、メタリック調を強くした明るくシャープな感覚になったこと。細部では、トゥイーターのレベル調整が従来の3段切替から−方向に一段多くなった4段切替になったことであろう。
 25cmウーファーは、中域のレスポンスを改良するためにメカニカルフィルター装備であり、新設計による5cmコーン型トゥイーターは、ダイヤトーン独自のオリフィス構造とフレーム共振を低減する剛性が高い新しいフレームと、センターキャップに高域レスポンスを伸ばす目的のチタンドームを採用した点に特長がある。また、ネットワークは、伝送ロスを抑えた低歪コア入りコイル、要所要所にはメタライズドポリエステルフィルムコンデンサーを選択して使用しており、歪特性の改善をポイントにしている。
 MKIIとなって、スピーカーシステムの性質は従来のモニター的なタイプから一段とバーサタイルなタイプに変ったようだ。音色は明るくなり、ステレオフォニックな音場感の、とくに前後方向の再現がナチュラルになり、中高域のキャラクターが抑えられて、この帯域の音が滑らかで透明になったのがDS25Bとの比較で明瞭に聴きとれる。

ダイヤトーン DS-401

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 スケールの大きな再生音を聴かれる人に適したワイドレンジ型。音の緻密さやキメの細かさもダイヤトーンらしい密度の高さをもっている。

ダイヤトーン DS-35BMKII

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 いわゆるハイフィデリティ再生を志向したスピーカーらしい、輪郭のはっきりした明快な音がする製品である。精緻な再生というべきか。

ダイヤトーン DS-40C

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 先の401同様ハニカム構造コーンを採用したウーファーをもつ3ウェイだ。やはりクリアーで濁りのない、あくまで屈託なく音を前に押し出してくる大型フロアーの良さが満喫できる。

ダイヤトーン DS-35B MKII, DS-401, DS-70C

ダイヤトーンのスピーカーシステムDS35B MKII、DS401、DS70Cの広告
(ステレオ 1979年2月号掲載)

Diatone

ダイヤトーン 2S-305

菅野沖彦

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「第1回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント49機種紹介」より

 2S305は昭和33年に完成されたスピーカーシステムで、実に20年の歴史をもっている。これほど長期間にわたって存続しえたということは、やはりそれなりに大きな力を備えていたということで、その輝かしい経歴だけでも〝ステート・オブ・ジ・アート〟の名にふさわしい製品だと思う。
 しかも、この2S305は、最も日本を代表する一つの個性をもっているのである。私の友人であるアメリカ人は、2S305を評して、アメリカにない音、決して欧米のスピーカーの代用品ではない音で素晴らしいスピーカーだという。私自身もそう思う。確かにキメの細かい、いかにも日本人が真剣に追求して完成させた音をもつスピーカーである。
 ご承知のように、この2S305は放送用のモニタースピーカーとして開発された、シンプルな構成による2ウェイシステムである。30cmウーファーと5cmコーン型トゥイーターというユニット構成で、クロスオーバー周波数は11、500Hzにとられ、音質を害する要素をできるだけ省略する意味で最もシンプルなクロスオーバーネットワークで構成されているのである。つまり、ウーファーとトゥイーターの能率は、ユニット開発時点で合わせてあり、しかもウーファーにはメカニカルフィルターが内蔵されている形で高域が自然減哀し、トゥイーター側はコンデンサーにより−6dB/octで低域を切っているだけなのである。このように単純明快な構成が採用された理由は、あくまでも放送用モニターとしての位相ズレがないこと、音像定位が明瞭であること、そして低歪率化 フラットレスポンス化など、厳しい条件を満たさなければならなかったからである。
 エンクロージュアは、約170ℓの内容積をもつバスレフ型で、音の回折現象による周波数特性上のピーク・ディップを極力少なくする意味で、エンクロージュア前面の両サイドに丸味がつけられている。表面は濃茶のカバ仕上げとなっており、大変に美しく、特に両サイドのRの部分は、完全に手づくりによって仕上げられるという、まさに日本を代表する質の高い堂々たるスピーカーシステムとなっている。
 この2S305も、開発当初から比べて徐々に改良が加えられ、現在のプログラムソースに適合できるスピーカーシステムになってきている。しかし、音質の傾向が全く異なった方向にそれたわけではなく、あくまでも初期の製品からもっていた明快なバランスのよい音という伝統を受け継ぎながら、より緻密さと洗練された味わいが加わったのである。以前のスピーカーがもっていた高域の鋭さが抑えられ、よりスムーズな滑らかな音になり、低域もより豊かさを増してきたように感じられるのだ。
 三菱電機は、総合電機メーカーでありながら、かなり以前からスピーカー部門において常に一貫した情熱を持ち続けてきている、数少ないメーカーである。P610という6インチ半のモニタースピーカーの傑作、2S305のあとで開発された、やはり放送用のモニターの小型版2S208、そして数多くのコンシュマー用スピーカーシステム、最近発表された4S4002P、AS3002P、2S2503Pなど一連のプロフェッショナルシリーズなど、数えきれないほど多くのスピーカーシステムを世に送り出してきたわけであるが、そのダイヤトーンの長い歴史の中で、トップモデルとして最も安定した評価を得たのは、やはりこの2S305だろう。ダイヤトーン自身もそれを理解しているのか、先ほども述べたように、この2S305を大事にいつくしみながら主張を曲げずに洗練しつづけてきたことが、これだけ長い間存在しつづけてこられた理由ともなっており、また信頼性をかち得た理由でもある。おそらく、このスピーカーを座右に置いて自分の好みとして使わない人でも、この2S305が〝ステート・オブ・ジ・アート〟として日本のスピーカーの代表として選ばれたことに異論をはさめないのではないだろうか。そうした一つの存在の力というものを万人が納得せざるを得ないような形でもっていることが、まさに〝ステート・オブ・ジ・アート〟にふさわしい製品ということなのである。

ダイヤトーン DS-70C

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 さきに発売された40cmハニカムコーン型ウーファー採用のDS90Cのジュニアタイプとして開発され、現代の標準型フロアシステムとして考えられる大きさのシステムである。33cmハニカムコーン型ウーファー、12cm口径コーン型スコーカー、4cm口径コーン型トゥイーターの3ウェイ構成だ。
 3ウェイらしく中域が充実し、スッキリとしたシャープな高域、ハニカムコーン独得な反応の早い豊かに響く低域が充分にコントロールされバランスしている。

ダイヤトーン DS-35BMKII

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ベストセラースピーカーシステムとして高い評価を受けているDS35Bのグレイドアップ・モデルである。MKIIモデルであるだけに基本的な3ウェイのユニット構成は同様だが、各ユニットともに完全に新設計のユニットが採用されているのはユニットの型番からも明瞭である。
 新開発30cmウーファーは真空成形方式の新しいコーンとダイヤトーン独自の鉄・ニッケル合金製のFNリング使用の低歪磁気回路、さらに肉厚を充分にとった新設計の八角ダイキャストフレームを採用している。10cmコーン型スコーカーは、DS35B以来の独特な透明プラスチックエッジをもつコーン型で振動系は新設計のタイプだ。トゥイーターは、口径3cmのドーム型である。
 このシステムは、従来のDS35Bと比較して中高域の独得のキャラクターが一段と低く抑えられ洗練されたため、聴感上でのfレンジが滑らかで、かつ充分に広く、各ユニットはスムーズにつながり、システムとしての完成度は非常に高い。また、レベルコントロールが高音、中音ともに4段切替となったため、部屋とのマッチングの調整もより容易になったのが見逃せない。

ダイヤトーン DS-401

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 本格的なブックシェルフ型が要求される価格帯に投入された久し振りのダイヤトーンの新製品である。エンクロージュアはバッフル20mmその他17mmの板厚をもつ高密度パーチクルボード製の完全密閉型のアコースティック・エアサスペンション方式で、容積は約54立の適度な外形寸法をもつ。
 ウーファーは、アルミニュウムの薄箔で作った蜂の巣状パターンをもつハニカムコアの両面をGFRPのスキンでサンドイッチしたハニカム構造体使用の30cm型だ。きわめて強固で軽量なコーン材料の特長で固有振動が少なく完全密閉型に相応しいユニットで、磁気回路にはFNリング使用の低歪磁気回路を採用している。スコーカーは10cm口径の強力磁気回路採用のコーン型、トゥイーターも優れた高域特性をもつ4cm口径のコーン型で、完全な3ウェイ・コーン型システムとしているのが特長である。
 このシステムは、独特なハニカムコーン使用のウーファーを採用しているためか、完全密閉型としては低域の音色が明るく緻密で解像力が優れている。各ユニットの音色的なつながりもスムーズで充実したクォリティの高い音を聴かせる。

ダイヤトーン TW-25

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 放送用スタジオモニタースピーカー2S305用に昭和31年に開発されたコーン型トゥイーターで、AS3002Pモニターにも、ほぼ等しいTW25Aが使ってある。口径は5cm、振動系の等価質量は0・37gはTW501と同じだが、φ35×30mmMK5A磁石とパーメンジュール使用の磁気回路は18、000ガウスの磁束密度をもち出力音圧レベルは96dBの高能率型となっている。クロスオーバー周波数は、1・5kHzで、この周波数から実際に使用できるのが特長である。

ダイヤトーン TW-501

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 業務用モニタースピーカー、2S208用に開発されたコーン型トゥイーターで、2ウェイユニット2U208にも使われている。口径は5cm、振動系の等価質量は0・37g、φ25×20mmの鋳造磁石を磁気回路に使い、12、000ガウスの磁束密度をもつため、出力音圧レベルはTW503よりも2dB高い94dBとなっている。クロスオーバー周波数は、2・5kHz前後と、低い周波数から使用できる特長があり、20〜25cm口径クラスのウーファーと2ウェイ構成で使う製品だ。

ダイヤトーン TW-503

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 従来のTW23にかわるダイヤトーンの単体として発売されている3機種のユニット中で、もっとも新しい製品である。口径は5cmのコーン型で振動系の等価質量は0・392g、φ20×15mmの鋳造磁石を磁気回路に使い9、500ガウスの磁束密度を得ている。クロスオーバー周波数は2・5kHzという低い周波数から使用できる特長があり、16〜20cm口径程度のフルレンジ型ユニットの高音用として2ウェイ構成で使用するのが相応しい製品である。