Category Archives: 井上卓也 - Page 63

デンオン PMA-501

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オーソドックスであり、やや保守的な路線を進んでいたデンオンのプリメインアンプは、要求に答えてか、このモデルの登場により、かなり今日的な姿に衣がえしたようである。このモデルは、質と量のバランス点を保ちながら、カートリッジのクロストークをキャンセルする機能をも備えているのがユニークだ。

ラックス CL32

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 薄型コントロールアンプとしては、もっともオーソドックスともいえる、最小限度の機能をもつクォリティ志向型の製品である。しかし、このモデルは、増幅素子に真空管を採用している点が大変にユニークな存在であり、別にキットフォームのモデルをもつのも、いかにもラックスらしさがある。現代アンプらしく物理的特性が優れ、音質的にも新しさがある点では、ラックス管球コントロールアンプ中では抜群の存在である。

ビクター P-3030

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 フラット型のプロポーションをもつ、コントロールアンプのなかでも、もっとも薄い製品が、このP−3030である。一般的に、シンプルなデザインのフラット型は、機能面でもディスク再生を重点的にし、必要最小限度まで省略することが多いが、このモデルは、ほぼ標準的な機能を備えているために、いわゆるセパレート型アンプらしい使用法よりも、メカメカしくないオーディオとして小型の利点を活かして使いたい。

マランツ Model 510M

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 250W+250Wのパフォーマンスを、かなりコンパクトな寸法にまとめたマランツの第二世代のハイパワーアンプである。コンストラクションは、外観から受ける印象を完全に覆す見事さであり、電源部は、ハイパワーアンプらしい底力が感じられる。標準アンプ的に使えるマランツの伝統をもつ音は信頼度が高い。

デンオン SC-107

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 デンマーク・ピアレス社製のユニットを採用した、SC−104につぐ第2弾のシステムである。エンクロージュアのデザインはリファインされて明るく家具調となり、3ウェイ構成の低音と高音が同種ユニットの並列使用であることが目立つ点である。このシステムは、ハイファイ志向といった音ではなく、音楽を楽しむためにつくられた印象が好ましい。スケールが豊かで、落着いた音だが、かなり激しい音もこなせる実力がある。

ラックス 5M21

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 まったくのイメージチェンジをした、シンプルで機能的なデザインに装いを変えた、ラックスのラボラトリー・リファレンスシリーズのパワーアンプである。歪み感がない滑らかでナチュラルな音は、従来とは一線を画したダイナミックな表現を可能としているが、そこにラックスらしさが残っているのが好ましい。

サンスイ CA-2000

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 セパレート型アンプは、本来はコントロールアンプ、パワーアンプともに、完全に独立した存在であり、汎用性があるべきではあるが、実際には、ペアとなるべきそれぞれの組合せで最高のパフォーマンスを示すことのほうが好ましい。このモデルも、BA−2000とのペアで現代アンプらしさが発揮できる。

ロジャース LS3/5A

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 超小型の、ポータブル用モニターシステムで、英BBC放送のモニター用に採用されていることは、型番からも明らかである。本来の特長を活かすためには、低域をコントロールしてあるQUADの405パワーアンプなどがドライブ用に必要であり、しかも、1m以内の近接位置で聴かなければならない。ヘッドフォン的な聴き方だけに、組み合わせコンポーネントは高品質が要求され、さもなければ、見えるような臨場感は得られない。

ラックス 5C50

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ラックス新しいラボラトリー・リファレンスシリーズのコントロールアンプであり、シリーズの名称が示すように、最新の技術動向を反映して、アンプ系のDCアンプが全面的に採用されている点に特長がある。ペアとなるパワーアンプもDCアンプであるために、入力に直流分が混入しているとスピーカーを破壊しかねないため、完全な保護回路と表示ランプを備えているのは、実用上での大きな利点である。

AGI Model 511

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 パネルフェイスは流行の薄型ではないが、機能は単純化され、トーンコントロール、フィルターはもたない。増幅系は整然としたプリントボード上に配置され、視覚的にも美しく、見るからに現代アンプらしい応答性の速い音がしそうな雰囲気が感じられる。ともかく、ダイレクトなサウンドは大変に快適である。

ダイヤトーン DS-40C

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 トールボーイ型のバスレフ・エンクロージュアに、30cmウーファーをベースとし、コーン型トゥイーターを組み合わせた、モニターシステム的な印象の製品である。ウーファーには、独得な低歪化のための磁気回路が使われ、トゥイーターコーンの中央に軽金属キャップが付いているあたりは、新しい製品らしいところで、DS−50Cの重厚さにくらべれば反応が速く、鮮明で伸びやかな音が、このシステムのフレッシュな魅力である。

ヤマハ CA-X11

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 CA−X1をベースとし、より上級モデルのCA−R1的な蛍光を採り入れて改良されたプリメインアンプである。機能面でも、より一段と充実し、性能面でも、ほぼ1ランク上の製品となっている。レスポンスがフラットで伸びやかとなり、音の粒子が細かく、より緻密になったため、普及価格の高級機といえる機種だ。

スキャンダイナ A-403

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 スピーカーシステムの中級機の価格帯では、一時のように海外製品の存在が目立たなくなっている。スキャンダイナのシステムも同じことで、トータルバランスが優れていることは認められても、魅力とは感じられなくなっている。これの解答とも思われるのがA403であり、構成が3ウェイ化されたことにより、中域のエネルギーが大幅に改善され、システムとしては飛躍的に向上した音となっている。注目したいシステムである。

ヤマハ NS-L325

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ヤマハのスピーカーシステムのなかでは、モデルナンバーの頭にLが付いていることからも、従来のシステムとは異なった性格をもつ製品であることがわかる。構成は3ウェイ方式で、中域での十分なエネルギーレスポンスを得るとともに、より明るく、よりナチュラルなサウンドとするために、軽量コーンのウーファーとソフトドーム型トゥイーターが組み合わせされている。このシステムは、音を聴くより音楽を聴きたい雰囲気だ。

B&W DM5

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 B&Wが自社製ユニットを小型システムに採用した最新の製品である。このシステムは、英国的といわれるサウンドから、よりインターナショナルなサウンドに変わったのが、B&Wのシステムとして際立っており、活気にとんだ、伸びやかな音を聴かせることでは、最近の海外製品中でもとくに目立つ存在である。

サンスイ SP-L100

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 サンスイが最近発表したLシリーズの3機種のシステム中で、もっとも小型な製品である。構成は、コーン型ユニットによる2ウェイ方式だが、ユニットに重点的にコストがかけられてあるためか、基本的なクォリティが高く、開放感があり、ダイナミックさが魅力だ。テープ用小型モニターとしても使いたい。

ラックス SQ38FD/II

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 最新の技術を駆使した、いわば、電算機的なプリメインアンプが登場してくると、旧型アンプの存在価値が薄れるのが当然であるが、そこは、趣味としてのオーディオであるだけに、アナクロ的な典型ともいえる、古き良き時代の真空管プリメインアンプが、現在に生きているのも大変に楽しいことなのである。プロトタイプ以来10年に近い歳月を経過したこのモデルは、いわば、SL的な新しさであり、懐かしさがある音を聴かせる。

サンスイ SP-G300

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 本格的なトールボーイ型フロアーシステムで、とかくこの種のシステムは、いかに大音量、高品質な音を再生可能かがポイントにされやすいが、このシステムの最大の魅力は、逆に家庭内の実用レベルで、クォリティが高く余裕があるフロアー型ならではの音が得られることであり、ホーン型らしからぬ滑らかさがある。

ヤマハ CA-2000

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ヤマハのプリメインアンプのトップランクのモデルとしてすでに定評を得ている製品である。とくに、パワーアンプ部はA級・B級動作切替と、AC・DCの増幅切替があり、これを組み合わせ使用すれば、実質的に4種類のアンプをもつのと等価的になる。性能が高いだけに、聴感上でも変化はかなり明瞭であり、この利点は他では望めないものがある。

「私はベストバイをこう考える」

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 本誌43号の特集テーマは、現在、国内に輸入されており、入手可能な海外製品と発売されている国内製品の数多くのオーディオコンポーネントのなかから、ベスト・バイに値するコンポーネントを選出することである。
 何をもって、ベスト・バイとするかについてはその言葉の解釈と、どこに基準を置くかにより大幅に変化し、単にスーパーマーケット的なお買得製品から、特別な人のみが使いうる高価格な世界の一流品までを含みうると思う。
 今回は、選出にあたり、ある程度の枠を設定して、本誌41号でおこなわれたコンポーネントの一流品と対比させることにした。その、もっとも大きなポイントは、業務用途に開発された製品は、特別を除いて対象としないことにしたことだ。これらの製品は、第一に、使用目的がコンシュマー用ではなく、そのもつ、性能、機能、価格など、いずれの面からみても、一般のオーディオファンが、容易に使いこなせるものではなく、また、入手可能とは考えられないからである。第二に、業務用として、優れた性能、機能をもつとしても、コンシュマー用としては、必ずしもそのすべてが好ましいとはかぎらないこともある。例えば、定評あるアルテックA7−500スピーカーシステムにしても、業務用に仕上げた色調やデザインは、どこのリスニングルームにでも置けるものではない。また、同じく、JBLのプロフェッショナル・モニターシステムである4350にしても、誰にでも、まず使いこなしが大変であるし、家庭内のリスニングルームで再生をする音量程度では、らしく鳴るはずがない。ハイパワーアンプとの組み合わせで、それもバイアンプ方式のマルチアンプシステムを使って、少なくとも小ホール程度の広い部屋で、充分な音量を出して、はじめて本来の鳴りかたをすることになる。このような使用法では、他には得られない性能をもっているために、製品としては当然ベスト・バイとなろうが、少なくとも一般のオーディオファンとは、関係がないカテゴリーでのベスト・バイである。
 また、高価格になりやすい一流品は、価格的な制約を除けばそれぞれに大変な魅力をもっているとはいえ、誰にとっても、ベスト・バイたりえないことは当然である。ここではコンポーネントのジャンル別に、価格的なボーダーラインを設定して、一流品とベスト・バイを区分することにしている。
 スピーカーシステムは、このところ国内製品の内容の充実ぶりが目立つジャンルである。例えば二〜三年以前であったら、10万円未満の価格帯で海外製品に優れたシステムが多くあったが、海外メーカーで自社開発のユニットをつくるメーカーが減少し、最近では個性的な製品が少なくなっている。10万円以上、15万円未満の価格帯が、現在ではベスト・バイ製品の上限に位置すると思う。昨年末以来、このランクに国内製品のフロアー型システムが各社から発売され、ユニット構成にも、従来には見られなかった個性があり新しい価格帯を形成している。現在では、7〜8万円以上ではフロアー型システムが主流を占めつつあるが、逆に比較的に小型で充分な低音が得られるブックシェルフ型システムのメリットが見直されてよいと思う。一方、5万円未満の価格帯では、最近注目されている超小型システムを含み、比較的小口径ウーファーを使った小型なシステムに、内容が濃い製品が多くなってきた。
 プリメインアンプは、従来からも、おおよそ15万円あたりが価格の上限であったが、これは基本的に現在でも変化はない。最近の製品の傾向からみれば、10万円未満の価格帯では、モデルチェンジがかなり激しく、それに伴なって質的な向上が著るしく、ややファッション的な印象が強くなっている。これにくらべると10万円以上の価格帯は、プリメインアンプの特別クラスで、最新の技術を背景に開発された新製品から、伝統的ともいえる長いキャりアをもつ製品までが共存し、かなり趣味性を活かして選びだすことができる。
 セパレート型アンプは、いわばアンプの無差別級的存在であり、性能、機能、価格などで幅広いバリエーションがある。ここでは、プリメインアンプを形態的にセパレート化したと思われるものは除くとしても、開発のポイントがセパレート型アンブ本来の質、量、二面のバランスに置かれたものは、とかく高価格となりやすく、一面的に質か、または量にウェイトを置いた製品は、比較的に入手しやすい価格にある。ここでは、ある程度、価格的な枠を拡げて選んでいるが、基本はやはり質優先型である。パワーアンプは、スピーカーシステムと対比すると、出力が多すぎるように思われるかもしれないが、最近のようにダイナミックレンジが広いディスクが登場してくると、平均的音量で再生していても、瞬間的なピークの再生の可否が大きく音質に影響を与えることもあり選んでいる。
 FMチューナーは、プリメインアンプと組み合わせる機種については、あえてペアチューナー以外を使用する必要がないほど、相互のバランスが現在では保たれている。ペアチューナーの性能が高くなっているのも理由であるが、現実のFM放送の質を考えれば、高級チューナーの使用は、効果的とは思われない、つまりプリメインアンプを選べば、自動的にFMチューナーは決まることになる。ここではセパレート型アンプに対応する製品を、最近のFMチューナーの傾向をも含んで選出することにした。
 プレーヤーシステムは、現在のコンポーネントのなかで、場合によればもっとも大きく音を変えるジャンルである。基本的には、システムを構成するトーンアーム、フォノモーター、プレーヤーべースなどが優れていれば、よいシステムになるが、例え個々の構成部品が抜群でなくても、システムプランでまとめられた製品は、好結果が得られるあたりが、システムならではのポイントである。実際に試聴をした結果から、各価格帯で、いわゆる音の良いプレーヤーを選出してある。また、価格的に少しハンディキャップはあるがオートプレーヤーにもマニュアルプレーヤー同等に良い製品がある点に注目したい。
 フォノモーター、トーンアームの単体発売品は、需要としては、さして多くないはずだが、選んだ製品の大半は、優れたプレーヤーシステムの構成部品であり、残りはそれぞれ単体として定評がある製品である。
 カートリッジは、主として現在の一般的なトーンアームと組み合わせた場合を考えて選んだ。最近の高性能化した製品は、特定のトーンアームとの組み合わせで本来の性能を発揮する傾向が強く、ユニバーサル型アームの形態をとってはいるが、むしろ専用アームとペアのピックアップアーム化している。これらは今回は除外した。
 テープデッキは、カセットデッキでは、システムに組込み固定するコンポーネント型は、現実にエルカセットが登場してくると10万円が上限である。しかし、ポータブルの小型機は、コンパクトであるだけに10万円以上でも概当することになる。オープンリールデッキは、30万円程度が上限であり、この価格帯では19cm・4トラック機に総合的に優れた製品が多い。ポータブル機は、機種が少なく、実質的な価格内ではベスト・バイというより、それしかないのが残念である。

サンスイ AU-707

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 AU−607の上級モデルとして登場したプリメインアンプである。左右チャンネル独立電源、パワーアンプのDCアンプ化など、市場の要求を満たすに十分な構成と、一貫して採用しつづけたブラックパネルが、製品としての完成度の高さを、十分にアピールしている。AU−607よりもパワーアンプされているために、独特のプレゼンス感は力感の裏側にかくれているが、しなやかに、よく弾む音は良いスピーカーが欲しくなる。

タンノイ Arden

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 従来のレクタンギュラー・ヨークの後継機種に相当する、英タンノイ社製のトップモデルである。使用ユニットがHPDタイプになり、とくに低域レスポンスの改善がおこなわれているため、いわゆるタンノイファンに好まれたサウンドと変化が感じられるが、より近代的な方向に発展しているのは明らかである。コンシューマー用としては量感タップリの低域は、実用レベルでは利点であり、制動を効かせるアンプ選びがポイントだ。

サンスイ AU-607

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 従来のイメージを完全に変えたサンスイの新しいプリメインアンプである。デザイン、増幅系のブロックダイアグラムなどでも、現代アンプの最先端をゆく新しさがあるが、とくに、このモデルの独特とでもいえるプレゼンス豊かな音は、素晴らしい魅力である。物理的な性能の高さをベースとした漂うような音場感と、クッキリと細やかな輪郭で浮上らせる音像は、ナチュラルであり、QS方式での音場再生技術が活かされている。

ヤマハ NS-1000M

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 数少ない完全密閉型のエアーサスペンション方式を採用した本格的なブックシェルフ型システムである。強力で伸びのあるウーファーをベースとし、ベリリュウム振動板を採用したこのシステムの音は、新素材の特長を生かした、クリアーで鮮度が高く、充分な距離にまで音をサービスできるのは、ホーン型に似た特長である。小音量でも音の姿、形が崩れず、大音量にも強い直線性の良さを活かすには余裕あるパワーアンプが必要だ。

B&W DM4/II

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 英国のスピーカーメーカーとしては、かなりユニークな存在であるB&Wの製品としては、いわば、中級機のランクに置かれたシステムである。構成は、20cmウーファーをベースとした、2ウェイ方式にスーパートゥイーターを加えたタイプであり、トゥイーターに、定評が高い、セレッション製のHF1300/IIを採用している点に注意したい。比較的に低い位置で聴いたときの、おだやかだがプレゼンスのある拡がりが好ましい。