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ラックス C-12

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 全体に音をスケール小さく、箱庭のようにキレイに縮小して聴かせるアンプである。
 聴感上の周波数レンジは、かなりスッキリと伸びた印象があり、バランス的には、低域が抑え気味、中域は薄さがある。音色は、全体に軽く、フワッとした明るさを感じるタイプで、小さいながら、音楽のステレオフォニックな音場感を含めたプレゼンスを、かなり正確にきかせる。
 マランツ♯510Mと組み合わせても、M12の場合と決定的な変化は見せず、やや緻密な、シャープさが出てはくるものの、スケールは小さく、250W+250Wのエネルギー感は、ボリュウムを上げなければ得られない。

GAS Thoebe

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 トータルの音のキャラクターは、かなりテァドラIIとよく似ているが、バランス的には、低域の量感が少し抑えられてソリッドな印象となり、全体にスッキリとし、音の反応が少し早くなったように感じられる。
 聴感上での周波数レンジは、割合にフラットレスポンスのナチュラルに伸びたタイプで、音色は明るく、適度のクリアーさがあり、クォリティは高く、やはりこの音はセパレート型アンプならではのものだ。
 音の表情は特に豊かなタイプではないが、国内製品の優等生的なキャラクターから比較すれば、伸びやかで活気があり、ダイナミックである。また、色彩感の豊かな表現力はGASの製品らしい特長であろう。

Lo-D HCA-7500

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 おだやかな音をもつコントロールアンプである。聴感上での周波数レンジは、ややナローレンジ型で、バランス的には、低域が安定し、中域の厚みも感じられる。高域は、ハイエンドを少し抑えているが、低域とのバランスはよく保たれている。
 ステレオフォニックな音場感は、少し狭く感じられ、音像の定位と音像の大きさ、輪郭は、セパレート型の平均的と思われる。
 音の表情は、基本的にはマジメなタイプだが、ときにはアクティブさも感じられる。音や音楽をマクロ的に外側から掴んで聴かせるタイプのアンプとして、オーバーオールのバランスは、よくコントロールされており、安定感がある。

ダイヤトーン DA-P15S

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーアンプ♯510Mと組み合わせると、A15DCの場合よりも、全体にソリッドで、引締った音になる。しかし、音が薄く、予想よりもコントラストが付かない。音色は、軽く明るいタイプで、低域は少し柔らかく、中高域に一種の色付けがあり、アクセントをつけている。
 MCカートリッジ用ヘッドアンプは、柔らかく細やかで、音色が明るい。聴感上の周波数レンジは広く、伸びているが、MC20では、スケール感が一段と小さくなり可愛らしい音になる。DL103Sのほうが、ワイドレンジ型で、クッキリと粒立ちがよい鮮度の高い音だ。音像定位もスッキリとし、輪郭がクリアーで表情が若々しくなる。

デンオン PRA-1001

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 PRA1001は、比較的にスタンダードな性格をもっている。聴感上での周波数レンジも適度で、帯域の音色バランスもよくコントロールされ、音色的な違和感は少ない。スケール感も、このクラスのコントロールアンプとして応わしいが、音の鋭角的な切れ込みでは、リファレンスのLNP2Lに一歩譲る。また、中域のエネルギー感も、いま一歩といった印象である。
 音の表情は、かなりマジメ型で、ややパッシブな面がないでもない。♯510Mとの組合せでは、音に伸びやかさがあり、音場感がかなりスッキリと広がるようになる。これは、♯510Mの力強さと緻密さが素直に出ている結果であろう。

GAS Thalia

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 クリアーで反応の早い音をもつコントロールアンプである。
 聴感上での周波数レンジはかなりフラットレスポンス型で、バランス的にはローエンドが抑えられており、中域は米国系のアンプとしてはやや薄いタイプである。音色は明るく軽く、音の粒子は細かく充分に磨かれている。
 音の表情はフレッシュでみずみずしく、キメの細かい鮮鋭さでは、上級機種のテァドラIIやセータよりも明らかに一枚上手である。基本的なクォリティは充分に高く、音の緻密さがあり、この価格帯の国内製品と比較すれば、いきいきとした伸びやかな音をもつ点で出色のコントロールアンプと思う。

DBシステムズ DB-1

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 スッキリとしたシャープな音をもつコントロールアンプである。
 このタイプの音は、とかく小柄でエネルギー感がなくなりがちであるが、DB1では、柔らかさと適度の粘りのある弾力性があるために、抑えの効いたグイッと伸びる力感があり、独得の音に抑揚をつけて聴かせる。
 DB6との組合せのときのキャラクターは、コントロールアンプ側にその要素が多くあるようで、中低域あたりの甘さと、粘りのある弾力的なキャラクターは独得のものである。音の伸びは、リファレンスパワーアンプ♯510Mのほうが格段に優れ、鋭角的に、適度のしなやかさをもち、ストレートでエネルギッシュである。

デンオン PRA-1003

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 聴感上の周波数レンジが、ワイドレンジタイプで、反応が早く、鮮度が高い音を聴かせるコントロールアンプである。
 音の厚みと低域の重量感は求められないが、中域が少し薄く、爽やかに伸びた音は、オーディオ的に魅力があり、ステレオフォニックな音場感が広がり、音楽の雰囲気をかなり正確に伝えるのは、このコントロールアンプのメリットである。
 音楽への働きかけは、適度に聴いて楽しい音にするという意味ではなく、色付けが少なく素直にディスクに刻まれた情報量を増幅するという意味で、かなりアクティブといえる。価格的にも10万円を割るクラスにあり、出色のコントロールアンプという感じだ。

スレッショルド 400A Custom

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 おだやかで細かく、大人っぽい熟成された、クォリティが高く安定した音である。
 聴感上での周波数レンジはナチュラルに伸びており、バランス的には、低域が柔らかく豊かで適度の芯があり、まろやかさは非常に素晴らしい。音色は、軽く明るく清らかなタイプで、音の粒子は、全帯域にわたり細かく磨き込まれている。
 CAS1カスタムと比較すると、低域は、エネルギー感として感じられる帯域が少し高く、腰高の印象があるが、エネルギー感は格段に異なり、中域の緻密さも一枚上手である。高域もハイパワーアンプとしては粒子が細かく滑らかで、スッキリとしており、この面でもグレイドが一段と勝っている。

スレッショルド CAS1 Custom

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスコントロールアンプLNP2Lとの組合せでは、NS10カスタムの場合よりも、中域の緻密さが一段と向上し、音像が引き締り、標準以上にクリアーな定位感となる。
 聴感上の周波数レンジはかなりナチュラルに伸びた印象があり、バランス的には、低域の量感は豊かであるが、やや軟調傾向があり、ウォームトーン系の音色である。中域は量的に充分あり、クォリティが高く、高域は予想よりも粒子が細かくはない。
 音の表情は、伸びやかさがあり、定格出力以上のエネルギー感があって、かなりシャープで活き活きとした、鮮度の高い音を聴かせる。米国系としてはユニークな音である。

スチューダー A68

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 業務用のパワーアンプであるだけに、コンシュマー用のルボックスA740とはやや異なった音である。聴感上での周波数レンジは、ローエンドとハイエンドをカットしたフラットレスポンス型で、中域は緻密さがあり、かなりクッキリと粒立つ。
 音の表情は、ややスタティックな面があり、一種独得のリファインされたような端正さがあり、冷たさが感じられるが、表現力はかなりナチュラルで、プログラムソースに対して正確さがある。音色は、フワッと明るく軽いタイプでキメ細かい。
 ステレオフォニックな音場感は、空間がやや狭く感じられるが、クッキリと箱庭的に広がり、一種の精緻さがある。

スペクトロ・アコースティック Model 202

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 コントロールアンプ♯217とほどよく似たキャラクターとクォリティをもったパワーアンプである。
 リファレンスコントロールアンプLNP2Lとの組合せでは、♯217の場合よりもクォリティが高く、緻密さが加わるが、さほど大きな変化ではない。バランス的には、低域は重量感、力感は抑え気味だが安定したベーシックトーンであり、中域は量的に充分あり、緻密さはいま一歩ではあるが、高域にかけて適度に粒立った印象があって、反応が早そうに聴こえる特長がある。ステレオフォニックな音場感は、左右のスピーカー間のすこし奥に広がり、音源が遠く感じられるが、鮮明さを失わないメリットは大きい。

SAE Mark 2600

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 スケール感をタップリに、充分なゆとりをもった、豊かで力強い音を聴かせる。
 リファレンスコントロールアンプLNP2Lとの組合せでは、2100Lとの場合よりは一段とクォリティが高くなり、ハイパワーアンプならではの、おおらかで伸びやかな音になる。バランス的には、低域が豊かで柔らかく、力感があり、中域は予想よりも密度が薄く、中高域は粗粒子型で、粒立ちはやや甘いタイプである。
 音の表情は、豊かさがあるが反応はむしろ遅いタイプで、音量を上げると包み込まれるようなパワー感があるが、インパクトの強烈なガツンとくるパンチ力はない。コントラストは少し薄く、網目の粗い表現である。

ルボックス A740

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 オーバーオールのまとまりがよく、滑らかで適度のしなやかさのある音を聴かせる。
 聴感上では、ナチュラルに伸びた周波数レンジをもち、ローエンドとハイエンドを巧みにコントロールして抑えている。バランス的には、低域は柔らかく落着き、中域は音の粒子の滑らかさ、細やかさはあるが、密度は少し薄いタイプである。
 音の表情はややパッシブで、ある範囲内でキレイに整理された音を聴かせるが表現力はかなりあるようだ。ステレオフォニックな音場感はスッキリと広がるメリットがあり、音源は少し距離感がある。低域軟調傾向は、4343とのマッチングがよくないせいのようだ。

QUAD 405

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 スケールは小さいが、機敏でシャープな音をもつパワーアンプである。
 聴感上での周波数レンジはかなりワイドレンジ型であるが、バランス的にはローエンドが抑えられ、中域から高域がスムーズに伸びている。低域は軽く、量感が4343に対してはやや不足するが、反面においてブーミーな音とならず、芯のしっかりしたシャープさがメリットになる。
 音の表情は、伸びやかで弾みがあり、軽快さが独得の魅力である。コンパクトにまとめられた、100W+100Wのパワーアンプとしてはトータルのまとまりに優れ、予想よりもゆったりとした音である。音場感はスッキリと広がり、音像はシャープだ。

QUAD 303

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ソリッドで硬質な音をもつパワーアンプである。聴感上での周波数レンジは、現在の水準からすればややナローレンジ型だが、トータルのまとまりがよい。バランス的には、低域はゆるやかにレスポンスが下降し、中域は量的には適度であり、高域もハイエンドが抑えられているように聴き取れる。
 電源電圧は定格110V使用となっているために、100Vでも関係ないと思いがちであるが、音の姿・型がやや崩れた、かなりナローレンジ型の、張りがない反応の鈍い古風な音となるために、110V使用が条件となる。この場合は、いわゆるQUADらしい、硬質な魅力をもった、シャープでクッキリとした独得の音である。

マッキントッシュ MC2205

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスコントロールアンプLNP2Lとの組合せでは、予想よりもソリッドで硬質な面が顔を出し、マッキントッシュらしい、豊かさ、力強さが充分に音として出ているとは思われないようだ。
 聴感上での周波数レンジはかなりナチュラルに伸びており、バランス的には、低域は量感があるが、重く、鈍さもあり、中域は量的にはタップリとし、厚みもあり密度も濃いが、やや硬質な面があり、音の粒子が少し粗粒子型である。コントラストは充分につくが、細部をクリアーに引き出せず、やや大柄な印象となる。ステレオフォニックな音場管は適度に広がり、音像はかなりクッキリと定位をするが、輪郭は粗いタイプだ。

マークレビンソン ML-2L

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 定格パワーからすると想像のできないパワー感があり、引き締った緻密な音をもつパワーアンプである。少なくとも、データ的なパワーと聴感上のパワーがこれほど大きく異なった例はなく、パワーとは何かをあらためて考えざるをえない。このモデルの特長は、スピーカーシステムに対して非常に強力な働きかけをすることであり、低出力アンプでは暗く、重く、鈍くなる4343の低域をキリッと締め上げて、タイトで反応のシャープな素晴らしい音に一変させてしまうには驚かされる。しかし、LNP2Lを一般的な仕様で使うと、中低域あたりの量感が抑えられ、反応が少し遅くなることだけが、唯一のパワー不足を感じさせる面である。

マランツ Model P510M

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーンアンプ♯510Mとは、デザイン面で異なるラックマウント仕様のパワーアンプであるが、同一ロットではPタイプから先にセレクトされているということで、聴感上での音質も少し異なっている。
 ここで試聴したモデルは、リファレンス用の♯510Mよりも余裕のあるスケール感タップリの音であり、ソリッドさ、タイトさの面では不足気味かもしれない。低域から中低域の量感の豊かさは充分にあり、音色が暖かく、適度の重量感があり、安定したベーシックトーンとなっているため、中域のソリッドさがあまり目立たず、トータルの音の姿・型がやや異なって聴こえる。エネルギー感が充満したクォリティの高い音である。

マランツ Model 170DC

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 スケールは小さいが、滑らかで伸びやかな音をもつ、軽快な印象のパワーアンプである。
 リファレンスコントロールアンプLNP2Lとの組合せでは、♯3250との場合ほどワイドレンジに伸びた印象は薄らぐが、中域の音の密度は一段と向上して、小型のパワーアンプとしては、現代アンプらしいキャラクターをもったまとまりをみせる。バランス的にはかなりフラットレスポンス型で、低域は柔らかく甘いタイプであり、中域はこのクラスとしては活気があり、量的にも不足感が少ない。4343をドライブするにはややパワー不足の面があるが、音の鮮度はかなり感じられる音である。

ジェニングス・リサーチ The Amp

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 色付けが少なく、オーソドックスな音を聴かせるパワーアンプである。
 聴感上での周波数レンジはかなりナチュラルに伸びたタイプで、低域、中域、高域の音色はよくコントロールされ、明るく軽い。音の表情は、伸びやかで鮮度がかなり高く、ピークののびも充分にあり、ストレートに音を出す、ややドライな魅力がある。米国系のアンプとしては、中低域の量感が抑え気味で、中域の緻密さもわずかに不足気味であるが、国内製品よりは充分なエネルギー感があるのが特長である。ステレオフォニックな音場感はよく広がるタイプで、空間の広さを充分に感じさせ、左右のスピーカー間の少し奥にスッキリと広がる。

ハーマンカードン Citation 16A

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 おだやかで、かなりスケールの大きな音をもつパワーアンプである。
 リファレンスコントロールアンプLNP2Lとの組合せでは、聴感上でかなりナチュラルに伸びた周波数レンジをもち、低域は柔らかいが、音色は暗くならず、適度の量感があり、中域は厚さはあるも粒立ちが甘い面があり、中高域はやや硬質さがあって、弦のトゥッティがクリアーに分離しないようだ。
 音の表情はおだやかだが、反応も適度にあり、この面では♯17を上まわる。音をマクロ的に外側から掴み、細部にこだわらずまとめ、破綻なくまとめる、ふところの深さが特長である。

ガリエン=クルーガー 1000-1S

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスコントロールアンプLNP2Lとの組合せでは、おだやかで落着いた音となる。
 聴感上での周波数レンジはローエンドとハイエンドを抑えた平均的なレスポンスをもち、バランス的にはナチュラルであるが、低域の質感が甘くこもり気味となり、ドロンとして音色の変化が不明瞭となる。中域はおだやかで厚みは適度にあるが、中高域から高域にかけて音の粒子が粗く、ソフトであるために聴きやすさはあるが、スッキリとした分離のよさは望めない。ステレオフォニックな音場感は、全体に音源が遠く、左右のスピーカー間の奥に広がるタイプである。やはり専用のコントロールアンプが欲しい。

GAS Ampzilla II

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスコントロールアンプLNP2Lとの組合せでは、オリジナルな組合せとはかなり異なったキャラクターの音となる。
 大変に滑らかで豊かな音で、低域から中域にかけてのベーシックトーンが、オリジナルペアにくらべると柔らかく軟調傾向が増え、中域のエネルギー感が少し薄らぐようだ。音の粒子は、ハイパワーアンプとしては細かくよく磨かれたタイプで、滑らかさ、細やかさ、表情のゆったりとしたキャラクターは、パワーアンプのほうにかなりあることがわかる。基本的なクォリティは充分に高く、ステレオフォニックな音場感は、パースペクティブをかなり感じさせるタイプだ。

GAS Son of Ampzilla

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスコントロールアンプLNP2Lとの組合せでは、アンプジラIIと比較して、比較的に寒色系のソリッドで引き締った音になる。
 聴感上での周波数レンジは、ローエンドが抑えられたフラットレスポンス型であり、バランス的には、低域が引き締り中域の粒立ちがクッキリとしているために、アンプジラIIとくらべると反応の早さや音の鮮度の高さでは勝るが、スケール感の大きな安定した力強さではかなりの開きがある。しかし、その比較さえしなければ、定格出力から予想するよりはるかにパワフルであり、4343を充分にドライブするだけのエネルギー感があるのは見事である。