Category Archives: 井上卓也 - Page 33

オーディオテクニカ AT-34EII

井上卓也

ステレオサウンド 58号(1981年3月発行)
「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」より

 カッターヘッドと相似形動作を設計ポリシーとする独自のデュアル・ムービングコイル型カートリッジのトップモデル、AT34を改良発展した同社のトップモデルである。構造上はシェル一体型のインテグレーテッドタイプで、主な特長はカンチレバーに先端0・2mm、基部が0・3mmのテーパード形状のベリリウムのムク材を使い、表面には耐蝕と制動を目的として0・3μm厚の金を真空蒸着して使用している。スタイラスは0・07mm角ダイヤブロック使用でAT34の0・09mm角より一段と小型化された。カンチレバーとの接着部分は銀蒸着を施し、セラミック系接着剤で加熱溶着し剛性を高めている。コイル部分はアニール銀銅線をバナジウム・パーメンダーコアに巻き、磁気回路はバナジウム・パーメンダーヨークとサマリウムコバルト磁石で磁気エネルギーは従来より30%向上しているとのことだ。
 試聴はAT650との組合せで行なった。従来のAT34とくらべ、音の粒子が一段と細かくシャープになり、分解能が向上した点が大きい変化である。テクニカらしい安定したサウンドと、トップモデルらしい安定度をもつ優れた製品だ。

リン Asak

井上卓也

ステレオサウンド 58号(1981年3月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 ターンテーブルでの情報損失を重視した高性能33 1/3回転専用ベルトドライブ型ターンテーブル、LP12で特異な存在として知られる英国のスコットランドにあるリンから今回、同社初のMC型カートリッジ、リン・アサックが発売されることになった。
 この製品の特長は、カートリッジボディを剛体化し、トーンアームに強固に取り付ける目的で、可能なかぎり幅広いプロポーションを与えた点にある。これは、針先の振動がカンチレバーを介してボディや磁石を振動させる情報損失をトーンアームとターンテーブルのマスを利用して防止しようという構想に起因した必然的な結果らしい。
 発電メカニズムの詳細は不明だが、規格から推測すれば、コイル巻枠に磁性体を使った、いわゆるオルトフォンタイプのようで、インピーダンス3・5Ω、出力電圧0・2mVと発表されている。
 試聴はLP12とリン・イトックLVIIを組み合わせて行なった。スケールが大きく重厚な低域をベースに、適度に輝きがあり、コントラストがクッキリとついた中域から中高域が個性的である。ローエンドを適度にカットしたことによって得られる安定感が他にはない独特のポイントだ。

ADC Astrion

井上卓也

ステレオサウンド 58号(1981年3月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 現在の軽質量、軽針圧型カートリッジの原型とも考えられるADC1をステレオ初期に開発し、一躍注目を集めたADCから同社のトップモデルとしてASTRIONが新しく発売された。
 発電方式は、当然、振動系外部に固定された磁石で振動系のミューメタルを電磁誘導し磁化してMM型と同様な動作をさせる独自のIM(電磁誘導)型である。ASTRIONは、カンチレバー材料にレーザー加工で作られたサファイアシャフトを採用した点が同社初のチャレンジである。硬度が高く、制御が難しい宝石カンチレバーを使いこなすために、振動系支持機構に新しくOrbitalピボットを開発して採用している。IM型独特のカンチレバー重心位置を振動系支点とするためには支持機構が重要な部分だが、ここではミューメタルの精度加工とS9サスペンションブロックという構造で見事に解決を与えている。
 聴感上の帯域バランスは典型的な広帯域型で、伸びた重低音は印象的である。音は滑らかで細かく、余裕のある穏やかさが目立つ。また宝石カンチレバーに聴取れやすい固有音はほぼ完全に制御され、現在市販されている製品ではベストの完成度をもつ。

KEF Model 105.4

井上卓也

ステレオサウンド 58号(1981年3月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 KEFが、1976年夏のシカゴのCESでプロトタイプとして発表した105は、フロアー型スピーカーシステムに要求される技術的な要素を独創性のあふれたデザインにまとめあげた特異な存在の製品であった。今回、発表されたMODEL105・4は、105の子供に相当する位置づけにあり、より安い価格帯の製品でありながら、出力音圧レベルを向上。当然のことながらMODEL105の特長をすべて受け継いだ注目の新製品である。
 フロアー型のエンクロージュアは、内容積40ℓの密閉型。低音用と、上部に乗った独自のピークレベルインジケーター兼最適聴取位置を指示するリスニングウインドウ付の中音と高音用の独立した8・5ℓの密閉型エンクロージュアの2重構造を採用。上部の中・高音用は上下方向に首を振り、聴取位置の調整が可能の設計である。
 ユニット構成は、口径20cmのベクストレンコーン採用のB200ユニットを2個直列接続で使用するパラレル駆動ウーファーをベースに、口径11cmベクストレンコーンとPVCロールエッジ、直径25mmボイスコイル採用のB110スコーカーと、口径2・5cmドーム型T33トゥイーターの3ウェイ方式である。
 ネットワークは、この製品で最も興味深い点だ。その第一は、スピーカー入力端子直後に480μFの超低域カット用コンデンサーが使用してあることであり、その第二は、中音用の能率を向上する目的でローカット用Lを利用したオート・トランス方式である。その他、中音のハイカット以外はすべて18dB/oct型であることも国内製品と比較して変っている点といえるだろう。
 付属機構の主なものは、聴取位置に座り、視覚的にスピーカーの音の主軸をチェックするリスニングウインドウと200W入力時に点灯するピーク表示を兼ねたLEDインジケーターと過大入力保護用S−STOPプロテクターがある。なお、取扱説明書は詳細をきわめ、部屋の設置例やスピーカーコードの長さと太さの相関関係など親切なハウ・トゥが記されている。
 柔らかく伸びやかな低域をベースに少し抑え気味の滑らかな中域と繊細な高域がバランスしプレゼンス豊かな音が105・4の特長である。使用アンプは音場感の優れた現代型アンプが105・4のマストである。

セレッション Ditton 300

井上卓也

ステレオサウンド 58号(1981年3月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 英国のスピーカーメーカーとして屈指の伝統を誇るセレッションの製品は、以前から、その独特の技術と穏やかで安定したサウンドをもつDITTONシリーズで高い評価を獲得しているが、昨年来、新しいシリーズ製品に装いを変えて置き換えられている。
 すでに、DITTON130、150それに200の3モデルが登場しているが、今回、この新シリーズの最上級モデルとしてDITTON300が発表された。これによって〝スーパー・ナチュラル〟サウンドと名付けられた新シリーズの全製品のラインナップが揃ったことになる。
 DITTON300の特長は、新シリーズ中で唯一のオーソドックスな3ウェイ方式を採用し、ベーシックトーンを受け持つウーファーに、口径25cmの専用ユニットを採用している点にある。
 使用ユニットは、高音用に、シリーズ共通に採用されており、口径2・5cmのトゥイーターとしては定評の高いHF1001を、中音用には、口径12cmのコーン型スコーカーを組み合わせ、クロスオーバー周波数は、4・5kHzと650Hzである。
 エンクロージュアは密閉型で、外形寸法状ではDITTON200よりひとまわり大きいが、内容積は同じ37ℓ、±3dBの再生周波数帯域では、低域で52Hzと発表され、5Hzほど伸びていることになる。
なお、出力音圧レベルは87・5dBで、英国製のシステムとしては比較的に高能率タイプに属する。
 DITTON300は、新シリーズのトップモデルらしい質感をクッキリと安定に表現する高級機らしい雰囲気を感じさせる低音に特長がある。帯域バランスは、中域の情報量がタップリとした、いかにも、3ウェイ構成らしい独特のバランスであり、他の新シリーズのシステムとは一線を画している。スピーカーシステムの基本的キャラクターは、英国の製品としては中域を含み、音にクッキリとコントラストをつけて、ストレートに聴かせるタイプで、サランネットを外して聴くと一種のモニターサウンド的傾向が明確に感じられる。聴感上の能率は実用上で十分のレベルにある。音色は低域が少し重く、暗い傾向があるが、力強さもあり安定感につながる。トータルバランスの優れた好感のもてる製品である。

フィデリティ・リサーチ XF-1

井上卓也

ステレオサウンド 58号(1981年3月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 最近でこそ、ほとんどのプリメインアンプはMC型カートリッジをダイレクトに接続して使用できる機能を備えているが、MC型のファンにとって、最新のエレクトロニクス技術の粋を集めたヘッドアンプか、それとも古典的な昇圧トランスかの選択は以前から論議の集中するポイントであった。
 今回、空芯の純粋MC型カートリッジを作るメーカーとして独特の存在であるFRから、低インピーダンスMC型専用昇圧トランス、XF1が新しく発売された。
 FRの昇圧トランスは、1967年に民生用として初めてトロイダル巻線を採用したFRT3以来、独自の巻線機を開発して一貫してトロイダル巻線を使用している点に特長がある。この方法は鉄芯に同心円状に積層構造をしたリング型コアを使い、これに巻線をくぐらせて巻いたタイプで、信号伝達損失が一般型にくらべ少なく、低出力のMC型には最適の構造といわれている。
 XF1は、鉄心に厚さ0・005mmのスーパー・パーマロイ系の最新材料を何百層もラミネートした従来の同社製品の約4倍のボリュウムをもつ広帯域型を使用し、コア表面に特殊絶縁処理を施し密着巻に近く、コアのケーシングを除いた新方式を採用したトランスがポイントである。
 ステレオの左右チャンネルを同じケース内で取り扱うトランスの内部構造は、現実のトランスでは、優れたトランスそのものの性能を充分に発揮させるために不可欠の要素である。XF1では、入力系、トランスユニットとトランスのシールドドレイン及び出力コードを完全に左右独立構成として、左右チャンネル間の電気的、磁気的クロストークを極限にまで抑え、再生音的に優れたステレオフォニックな音場感を得ることに配慮されている。なお、トランスユニットは、それ自体の性能が高いほど外部誘導の影響を受けやすいため、ここでは78%パーマロイの4層積層シールドを使用している。
 XF1は、3Ω以下の低インピーダンスMC型専用トランスであり、一般的なバイパスを含むスイッチは全て高性能化のため使用されていない。FR7fやMC30などを使って試聴をすると音の表情は非情に細かく滑らかでナチュラルな反応を示し、それにトランス独特の力強さも加わった見事な音を聴かせる。やはり、低インピーダンスMC型はトランスに限るといった感想だ。

ナカミチ Nakamichi 1000ZXL

井上卓也

ステレオサウンド 57号(1980年12月発行)
「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」より

 カセットデッキは、現在ではオーディオコンポーネントシステムに不可欠の存在となった。一部ではデッキ中心のコンポーネントシステムが愛用され、いわゆるカセット時代が到来し、その性能、音質ともにハイファイのプログラムソースとして充分に使えるだけに成長を遂げている。
 このカセットデッキが、オーディオのプログラムソースとして、あれほどの小型なカセットハーフと低速度ながら素晴らしい将来性を持つことを最初に印象づけたのは、昭和48年に発売されたナカミチ1000が登場したときであった。
 カセットデッキとしては異例に巨大な業務用ラックマウントサイズのパネルを採用した1000は、たしかに価格的にも異例なほど高価格な製品ではあったが、ダブルキャプスタン・スタガ一方式の走行系メカニズムとパーマロイ系のスーパーアロイを採用した独立3ヘッド構成をベースに、独自のヘッドアジマス調整機構、ユニークな3チャンネルマイクアンプ、リミッター機構などを備え、驚異的な性能と音質により聴く人を唖然とさせたことは、現在でも鮮烈な印象として残っている。
 当時、オープンリールを超した性能と音質といわれたが、確かに、3モーター・3ヘッド構成の2トラック19cm/secのデッキとの比較試聴でも、誰にも明瞭に聴き取れる優れた音質を1000は聴かせてくれた。
 それから4年後に発展、改良して登場した1000IIは、テープの多様化に対応してバイアスとイコライザー単独切替、アタックタイムを早くし、従来の−20〜+3dBから−40〜+10dBにレンジを拡大したピークレベルメーター、走行系の操作ボタンが機械的な押ボタン型から電気的なタッチセンサーに改良されるなどをはじめ、巻本的な走行系の中間プーリーの改良、耐久性を向上したスーパーアロイヘッド改良のステイブルレスポンスヘッド採用などかなり大幅な変更を受けた結果、聴感上でもよりナチュラルに伸びたワイドレンジ感と分解能の向上として聴きとれ、その内容が一段とリファインされた。
 しかし、時代背景として各社の開発競争の激化、とくに中級機から普及機ランクでの性能、音質が急激に発展し、高性能テープの登場とあいまって、1000が登場した当時ほどの格差は実感的に感じられなかった。世界最高のカセットデッキとしての座は不動のものではあったが、この第2世代の王者は完成度が高まった内容を持ちながら、印象度としてはさほど強烈なものではなく、いわば、安定政権とでもいった存在であったと思う。
 昭和53年になるとメタルテープの実用化が発表され、カセットデッキは激しい動乱の時代に突入し再スタートを強いられることになった。メタルテープの実用化に先だち、海外テープメーカーとも密接な関係をもつナカミチでは、早くからメタル対応モデルの開発が行なわれており、メタル対応デッキの技術開発は発表されていた。しかし、製品化はメーカーとしては比較的遅く、かつての1000の登場当時に似た、いかにもナカミチらしい凄さを感じさせた製品の登場は、1000IIのメタル対応機ではなくそれまでの500シリーズと700の中間を埋める位置づけにある680であった。
 この680の優れた性能とクリアーで抜けきった鮮明な音質は、またもやメタルテープ時代での新しいナカミチの独自の魅力を聴く人に印象づけた。680は、短期間のうちに自動アジマス調整機構を新採用した680ZXに発展し、670ZX、660ZXとでシリーズ製品を形成する。
 この時点から1000IIのメタル対応機の登場は時間の問題として噂され、すでに限界とも感じられる680ZXに、どれだけの格差をつけて登場するかが話題であった。
 今回、ベールを脱いで登場した1000ZXLは、第3世代のカセットデッキの王者の座に相応しい見事な製品である。
 フロントパネルのデザインは一新され、外形寸法的には、1000IIにくらべ高さが40mm低く、奥行きが103mm深くなり、重量は17kgから19kgとなった。ディスプレイ関係は大幅に充実し、相口径の操作ボタンがカラフルに照明され、全体に華やかな印象となったが、もっとも大きい変更点はカセットリッドで、テープが左から右に走行する標準型のタイプとなり、テープ残量が視覚的に確認できるようになったことだ。
 内容は完全に一新され、現時点での世界最高級機たるべく電子制御回路が多用されているのが特長である。代表的なABLE(アジマス・バイアス・レベル・イコライザー)機構は、8ビットのマイコンを使い、自動調整されたテープは−20dBの録音レベルで20Hz〜20kHz±0・75dB、18Hz〜25kHzで±3dBの特性となる超高精度の自動キャリブレーション機構である。また、最適MOLバランスにバイアスが調整される特長があり、手動でOVERとUNDERに切替可能だ。調整データはメモリー機構により、ノイズリダクションの情報を含みメモリー可能である。
 その他新しく5Hzの信号を使う30曲自動選曲、15ポイントコード化可能のRAMM、デジタルテープカウンターをはじめ、パラメトリック消去方式、共振拡散型走行系、クリスタロイ独立3ヘッドなどが特長である。
 1000ZXLは、異例に豊かで深々とした低域をベースとしたスケールの雄大な音である。これと比較すると、さしもの680ZXも大人と小人の対比にすぎず、またもナカミチはカセットの限界を一段と拡大した。

デンオン SC-5000

井上卓也

ステレオサウンド 56号(1980年9月発行)
「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」より

 デンオンのフロアー型システムは、古くはコロムビアブランドの時代から常にシリーズのなかに核時代を代表するモデルが存在していた。70年以降の最近の例でも、デンオンが輸入をしている米ボザーク社の大型システムの陰にかくれた印象があったが、41cm口径コラーゲンウーファーと中音及び高音にホーン型を採用したVSS8000、40cmコーン型ウーファーをベースに独特な音響レンズを持つホーン型の中音と高音を組み合わせたD9があった。
 今回のSC5000は、デジタル録音やダイレクトディスクに代表されるプログラムソース側の高性能化に対応すべく高能率、高耐入力、低歪率なスピーカーシステムを実現する目的で開発された新製品だ。その最大の特長は、High−M(高剛性)振動板を開発し採用した点にある。この新タイプ振動板は、低域用にはPタイプと呼ばれる、伝統的な紙の利点を最大限に活用し、特殊なリブ一体成型の特性ラミー繊維を木材パルプに配合し剛性を高めながらも軽量化が可能で、ピストン振動帯域を従来の約1・5倍の1kHzにまで高めたタイプを採用している。磁気回路は、直径220mmのフェライト磁石使用で低歪化がおこなわれ、直径100mmのボイスコイルの磁束密度は11、000ガウスを誇っている。
 15cm中域用と5cm高域用ユニットは、Tタイプと呼ばれる高弾性アラミド繊維織布を特殊樹脂で強化したコーン採用だ。磁気回路は中域用が直径140Mmフェライト磁石、高域用が直径120mmストロンチウムフェライト磁石採用で、それぞれ97dB、97・5dBとコーン型としては異例の高能率を発揮している。
 エンクロージュアは、側板が3種類の高密度パーチクル板をサンドイッチ構造とした35mm厚。他は25mm厚高密度パーチクルボード使用の185ℓのバスレフ型である。
 SC5000は、充分に余裕のある安定した低域をベースに比較的反応が速く、明るく軽快な音色の中域と高域がスムーズなレスポンスでつながるワイドレンジ型の音である。キャラクターが少ないため97dBという高能率ながら刺激的な感じがなく、ゆたりとエネルギー感のある音が聴かれる。アンプ、カートリッジに対する反応はかなり鋭敏で、固有のキャラクターの少ないタイプでないと本領が発揮されない。

ダイヤトーン DS-505

井上卓也

ステレオサウンド 56号(1980年9月発行)
「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」より

 ダイヤトーンのスピーカーシステムは、長期間にわたる放送用モニタースピーカーを主とした業務用機器での技術開発と実績を背景として、これをコンシュマーユースの製品開発に活かすという、他のメーカーにはない特長がある。
 業務用機器では要求される物理的な特性をベースに、高信頼度、高安定度が必須の条件である。たとえば、ユニット構造ひとつを例にあげても、同社の製品はコーン型ユニットを主とし、これにドーム型ユニットを中域、高域に配する手法が基本的である。振動板材質でも長期にわたり安定した性能を備え、充分に使いこなした紙がメインであり、高分子化合物のフィルムや金属などの採用は、むしろ例外的な使用ということもできるほど同社の設計方針は堅実である。
 今回発表されたDS505は、ユニット構成、新種振動板材料の全面採用、新型ネットワークなど、いずれの点からみても従来の製品とは一線を画した80年代の新システムともいうべき意欲的な製品である。エンクロージュアは完全密閉型を採用した大型ブックシェルフ型であり、同社の製品のなかでの位置づけは、小型、高密度設計をテーマとした高性能ブックシェルフ型の3桁のモデルナンバーをもつ、最初期のDS301、これに続くD303という、それぞれの時代に存在したブックシェルフ型システムのトップモデルを受け継ぐ同社のプレスティッジモデルである。
 DS301、DS303、DS505はともに4ウェイ構成である点は共通であるが、それぞれの時代のプログラムソースであるディスクの基本性能、それを再生するスピーカーシステムに対する要求の相関性から、4ウェイ構成のクロスオーバー周波数の設定には非常に興味深い変化があることに気付く。
 DS301が低域と中域のクロスオーバー周波数を比較的高い1・5kHzとし、それ以上を3ウェイ構成とした、いわば2S305のトゥイーター帯域を3個のユニットに分担させた高域重視の設計であったのに対して、次のDS303は、低域と中域のクロスオーバー周波数が約1オクターブ下った600Hzとなり、標準的3ウェイ構成プラス・スーパートゥイーターという設計に発展している。今回のDS505は、さらにクロスオーバー周波数が低く、350Hzとなり中低域と中高域が1・5kHz、中高域と高域が5kHzというブックシェルフ型システムとしては異例の本格的な4ウェイ構成に発展している。
 また、中域以上の振動板材質でも、DS301が紙系を主としたドーム型と超高域にメタルコーン型を採用していたのに対して、DS303では中域がフェノール系ダイアフラムのドーム型、中高域がパルプ系のドーム、超高域が軟質アルミのドーム型という材料の分散使用に変る。D得する505は、定位機中低域が数年前にダイヤトーンで開発し、製品に一部採用されたハニカムコンストラクションコーンのスキン材を改良し、新しくスキン材に芳香族ボリアミド系樹脂であるアラミド繊維で強化された可撓性レビンを特殊配合し、内部損失をもたせた新ハニカムコンストラクションコーンを採用した32cmと16cm口径のコーン型を使用している。
 一方、中高域と高域には、従来のドーム型の構造を抜本的に発展させた、ボイスコイルボビン部分とドーム型ダイアフラムを深絞り一体構造とし、 
これにサスペンション用のダンパーを接合した直接駆動型ボロン化ダイアフラムを採用している。ボロン化は、チタン箔を深絞り加工した後に、高温ボロン化処理をしたサンドイッチ構造の従来の方法とは異なるタイプで、全て社内で製造されている。
 その他、低域、中低域ユニットボイスコイルボビンを従来のポリアミドフィルムの約3倍のヤング率をもち、耐熱性、耐寒性が優れたポリイミドフィルムの採用、磁気回路のストロンチウム磁石と独自のニッケル系磁性合金を使った低歪磁気回路などがユニットで注目すべきところだ。
 エンクロージュアは、モーダル解析をベースに、ヒアリングをも加えて検討された完全密閉型であり、丈夫の中低域ユニット部分は独立した大型のバックチャンバーを備え、高音ユニットは、このバックチャンバー部分に取り付ける構造を採用している。ネットワークは、12dB/Octタイプだが、コイル関係の硅素鋼板を特殊樹脂で熱圧着積層した新タイプの採用、二重防振構造のポリエステルフィルムコンデンサーなどの主な素子を分散配置し、配線剤の無酸素銅化をはじめ、素子や配線の圧着方式によるワイヤリングをベースに新しい構想に基づくネットワーク理論の導入により、従来とは一線を画した低歪ネットワークとし、各ユニットの基本性能を充分に発揮できるように検討されている。
 DS505は、ステレオサウンドのリファレンスシステムで駆動したときに、従来には聴かれなかった広い周波数レスポンスとナチュラルなエネルギーバランス、全域にわたる高い分解能を示し、ここには、慣例的に持っていた、いわゆるダイヤトーンサウンドを感じさせるイメージはほとんど存在しない。
 とくに、各種ディスクの録音状況、製盤プロセスの優劣に対する反応はシャープでありマルチトラック録音でトラックダウンをしたディスクでは、エンジニアのテクニックが目に見えるように聴き取れる。また、使用コンポーネントに対する反応もシャープでアンプやカートリッジの得失をクリアーに引き出す。
 したがって、使用方法、使用条件によって、結果としての音はかなり変化をし、短時間の試聴では新世代のリファレンスモニター的傾向は把握できるが、にわかには、これがDS505の音と判断することはできない。それほど、異次元のシステムであるわけだ。

B&O Beogram4004

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 光学センサーによる電子制御フルオートプレーヤーの、世界最初の製品4002の改良モデル。リニアトラッキングアームにはMMC20EN付、ターンテーブルはベルトドライブ型、操作軽の変更の他に、リモートコントロールが可能になったことが、このモデルの特長。

パイオニア PL-50(L)

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 独自のSHローター方式モーターとオイルダンプ型のアームを採用したマニュアルプレーヤーで、型番末尾にLの付くタイプは、オートリフトアップ機構を加えた製品。音は穏やかだが安定感があり、各種カートリッジのキャラクターを素直に引出し聴かせる。

デンオン SC-307

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 デンオンのSC304以上のシステムは、デンマーク・ピアレス社と共同開発のユニットを採用した点が国内製品としてユニークな存在であり、国産ユニットとはひと味ちがったユニットのキャラクターを充分に引き出した独自のサウンドと完成度の高さはすでに定評が高いが、SC304/306につづき、今回SC307が第2世代の300シリーズの型番で発売された。
 ユニット構成は従来のSC107を受け継いだ3ウェイ・5スピーカーシステムだ。ウーファーは、25cmユニット×2のツイン駆動方式。軽量振動系で35cmウーファーに匹敵する振動面積をもち、
ユニット振幅が少なくリアリティが優れる特長をもつ。10cmスコーカーはフレーム一体構造のダイキャストバックチャンバー付で、裏面に制動材を塗布したノンプレスコーンとアルミボイスコイルボビン採用。トゥイーターは5cmコーン型のパラレル接続ツイン駆動だ。
 エンクロージュアは65・5ℓ密閉型。2種類のグラスウール、アルミ箔ラミネート型ブチルゴム制動、補強棧レス、ユニットは独自のサンドイッチ支持方式取付け。ネットワークは、コンデンサーは全て2個並列使用、種類はアルミ・プレーン箔電解、メタライズドフィルム型だ。
 本機はSC107に比較し、フラットな帯域感、素直な高域の伸び、粒立ちの細やかさなど完成度が格段に向上した。

サンスイ XR-Q9

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 独自の構想に基く、最適支持方式を採用したストレート型アーム。磁気検出型の自社開発クォーツロックDD型モーター、大型の3本のダイキャスト型脚部に吊り下げ構造を組み合わせた、ユニークなサスペンション方式のプレーヤーベースを備えた高性能フルオート機。

ダイヤトーン DP-EC3

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 光学センサーによる30cmと17cm盤の自動サイズ選択と速度、、ターンテーブル上のレコードの有無をはじめフールプルーフに使えるフルオートプレーヤーである。ナチュラルな帯域感と素直な音は常用するにふさわしい製品である。

ビクター QL-Y5

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 Y7とシリーズをなす最新のセミオートプレーヤー。トーンアームは、電子式ダイナミックバランス型で、針圧、アンチスケート、ダンピングは独立した調整ツマミで電気的にコントロールできるのが最大の特長。伸び伸びとした力強い音は、聴いていて大変に心地よい。

デンオン DP-40F

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 独自の開発による無接触式電子制御フルオート機構を採用したクォーツDD型プレーヤー。前面操作型でダストカバーを閉じたまま、レコード盤上の任意の位置に針先を落とせるポジションセレクター、電子式アンチスケートなどを備える。安心して使える中級機である。

ヤマハ MC-7

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 独特な垂直・水平発電系をもち、マトリックスにより出力を取出すユニークな構想によるMC型だ。力強く、ダイレクトな音は、このタイプ独特の魅力。

アントレー EC-15

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 MC専門メーカーらしいアントレーのヤング向けモデル。活気のあるフレッシュな表情とMC型らしい分解能の高い音はバーサタイルに使える。

ヤマハ P-750

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 低共振の左右対称ストレート型ARSアームがフレッシュな印象を与えるクォーツロックDDフルオートモデル。ヘッドシェルはネジで着脱可能であり、パイプ状をスライドする針圧ウェイとは大変に使いやすい。帯域感が広く、シャープでクリアーな音が特長である。

デンオン DL-103

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 独自の十字型巻枠を採用したデンオンMC型の原型ともいえる製品。ナチュラルなレスポンスと安定感のある音は、現在でもリファレンス的だ。

パイオニア PL-30(L)

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 中級機として定評があるPL50(L)のジュニアタイプのマニュアル機だ。上級機種と同等な重量級ターンテーブルをベースに、リジッドな構造のアームを採用し、安定感のある音が特長であり、まさしくベストバイだ。型番末尾のLはオートリフト付のモデル。

サンスイ FR-Q5

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 エレクトロニクス制御のトーンアームを備えたフルオード型のシステム。ーたーはクォーツロック方式のDD型で自社開発であるのが特長。付属カートリッジは、エンパイア製で2000の相当品だが、中域の充実した活気のある音は、このクラスでは抜群である。

グレース F-8L’10

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 10年間のロングセラーを誇るF8Lに、F9で得た技術を導入した、いわば記念モデルである。針先はアドバンスド・ルミナルトレース型。

10万円以上の’80ベストバイ・カセットデッキ

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 10万円以上は、いわゆる高級デッキの存在する価格帯である。基本的には、15万円台をボーダーラインとして分割して考えられる。
 10〜15万円の価格帯では、メタル対応モデルが各社から比較的早く製品化されたため、昨年のオーディオフェアを境に新旧の世代が分かれているが、やはり、新しいモデルにメリットが大きい。
 まず、10万円に近い価格では、基本的に、9万円台のわずかに性能向上や機能が増したモデルが多く、選択はシビアになる。高級機らしさを性能、機能、構造に求めれば、やはり14〜15万円台で、定評のあるメーカーのトップモデルか、昨秋以降の新製品を選べば、普及機では考えられないようなメタルテープの凄さを満喫できよう。また、このクラスはLH、コバルトテープの音が、一格異なった味であるのも楽しい。
 15万円以上は本来のスペシャリティで、メーカーも限定されるが、新世代のこのクラスデッキは、使い方さえ正しければ、普及型のプレーヤーシステムとは比較にならない、高性能と高クォリティの音を聴くことができる。

ナカミチ Nakamichi 680ZX

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 独立3ヘッド構成、クローズドループ2キャプスタン型の走行系に、世界初の自動アジマス調整機構をビルトインした半速を含めた2スピード型の高級機。ヘッドは半速で15kHzを保証可能な独自のタイプで、並のデッキの標準速度に匹敵する音を聴かせる。2速度型のキューイング、自動選曲など機能も充実し、現代デッキの頂点に立つデッキである。