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サンスイ AU-X11

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 サンスイのプリメインアンプは、現在のシリーズの出発点であるAU607、707から第2世代のAU−D607、D707、D907を経て、現在はAU−D607F、D707F、D907Fの第3世代に進化しているが、それぞれの特長として第1世代はDCアンプ構成、第2世代がダイヤモンド差動増幅方式採用、第3世代のスーパー・フィードフォワード方式が技術的な特長になっている。
 今回発売されたAU−X11は、従来サンスイプリメインアンプのスペシャリティモデルとして第2世代のプリメインアンプの時期に登場したAU−X1の後継モデルとして開発された製品である。
 基本的なデザインはAU−X1と同じだが、新しくヴィンテージの名称が付けられ、パネルサイドに木製サイドボードが加えられたのが異なった点だ。
 基本的構成は、ゲインと負荷抵抗切替可能なMCヘッドアンプ、イコライザーアンプ、フラットアンプとパワーアンプの4ブロック構成で、トーンコントロール回路はない。イコライザーアンプのダイヤモンド差動増幅DCサーボ回路、パワーアンプ部のダイヤモンド増幅スーパー・フィードフォワード方式に特長がある。
 電源部は伝統的な協力電源採用のポリシーを感じさせるもので、MCヘッドアンプ、イコライザー、フラットアンプ、それにパワーアンプがそれぞれ独立した左右独立型を採用。電源トランスはパワー段専用に左右独立巻線の大型トロイダル型、プリドライブ以前の回路用に左右独立の大型EIトランスを使う2電源トランス方式である。
 機能面は、イコライザー付パワーアンプともいえるシンプルなタイプで、左右独立のレベルコントロールをバランサーの代りに使う方式。イコライザー出力を直接パワーアンプに結ぶジャンプスイッチをもち、この場合にはゲインは−14dBとなる。また、サブソニックフィルターは、16Hz−3dB、6dB/oct型だ。
 コンストラクションは、オーディオアンプでその性能と音質を決定的に支配するところだが、AU−X1に比べAU−X11は、かなり大幅な変更が行なわれた。従来はパワートランジスター用左右チャンネルのヒートシンクが中央部に位置し、それをはさんで横一列に左右チャンネル各4個使用の電解コンデンサーが配置されていたが、今回は、この配置が入れ代り、8この電解コンデンサーを中央部に集中配置コンデンサーのタイプもより高性能型に変更されている。最近ではヒートシンクにヒートパイプを採用する例が多く、サンスイのFシリーズもこのタイプになったが、AU−X11のみは従来型の重量級ヒートシンクを採用している点は注目したいところだ。
 シャーシは、マグネティック歪対策としてAU−D907LIMITEDで採用した銅メッキが施され、ボンネットはアルミ製、サイドはローズウッドの木製に変っている。
 マイクロSX8000とMC20+AC3000MC及びDL305+DA401をプレーヤーに、JBL4343Bを使いAU−X11を聴く。AU−X1が、一般のアンプより1octほど伸びたように感じるソリッドな低域をベースに非常に押し出しの良いエネルギッシュなサウンドを特長としていたことに比べると、AU−X11は全体に音の粒子が細かくリファインされ、適度に力強い低域をベースとしたナチュラルな帯域バランスをもち、ディフィニションが優れた音場感の拡がりが加わった音になった。MC20、DL305ともに特長は素直に音となるが、MM型使用時の方がX1のイメージを強く持つようだ。ヴィンテージの名称の如く、パワーで押す若者が年月を経て余裕のある大人の魅力を備えた印象。

フィデリティ・リサーチ XF-1

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 低インピーダンス専用のスイッチレス型トロイダル巻線採用の高性能トランス。
 聴感上でナチュラルに伸びたワイドレンジ型に近いレスポンスと、音の粒子のキメが細かく、滑らかに磨込まれた美しく爽やかな印象が特徴で、クォリティはFRT3Gより一段と高い。
 MC20IIとの組合せは、豊かに量感タップリに鳴る、低域から中低域をベースとした情報虜が多い音である。音色は暖色系で滑らかさがあり、楽器の固有音をかなり正確に鳴らす。
 FR7fとすると帯域バランスはナチュラルとなり、音色もニュートラルになる。素直に聴かせる分解能の高さ、ダイナミックで余裕のある表現力、ナチュラルに拡がる音場感のプレゼンスなど、優れたカートリッジの性能をフルに引出した音。

6万円以上の価格帯の特徴(カートリッジ)

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 6万円以上の製品では、実質的には10万円がカートリッジとしての上限である。もちろん、それ以上の価格の製品も存在はするが、カンチレバー材料やボディ部分に、ダイヤモンドやサファイアなどの宝石材料を使用するスペシャリティな製品で、ベストバイの意味では、対象の範囲に入らぬ、特別な需要を満たすためのカートリッジといえるだろう。
 6〜10万円の価格帯では、国内・海外製品ともに、各社のトップモデルが置かれるところで、それぞれのメーカーのサウンドポリシーがもっとも強く現われているだけに、その選択は大変に興味深いものがある。何れを選択するにせよ性能が高いだけに、プレーヤーや、MC型では昇圧の方法など、使用するコンポーネントにより音質が大幅に変わるデリケートさをもっているために、各カートリッジに対する使いこなしはかなり時間をかけて取組まないと、せっかくの性能・音質が引出せない点に注意したい。

フィデリティ・リサーチ FRT-3G

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 リング型コアにトロイダル巻線を採用した入力インピーダンス2段切替の製品。
 最近の製品らしく、昇圧トランスとしては帯域の狭さを感じさせないレスポンスと、キメ細かく滑らかでありながら適度に力感もある音に特徴がある。
 MC20IIは、少し細身のスッキリした音になるが、音場感はスムーズに拡がり、再生の難しいディスクの大振幅でも、破綻を見せずこなしてしまう。音の表情は素直で、適度なダイレクトさもある。
 DL305では、MC20IIよりもトランスのキャラクターにマッチし、伸びやかなレスポンスと一段と分解能が高い音を聴かせる。音色は明るく軽く、反応も適度に速い。FR2は穏やかで素直な表情と爽やかでバランスが優れた音である。

4万円〜6万円未満の価格帯の特徴(カートリッジ)

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 4〜6万円の価格帯も、さらに5万円でボーダーラインを引きたい。5万円未満の価格帯は、特例を沿い手国内製品MC型実質的な高級モデルが数多く存在する。カートリッジは高級モデルになるに従い、軽量振動系を採用したワイドレンジタイプになるが、国内製品の高級MC型がほとんどこのタイプで、繊細さ分解能の高さを聴かせることに較べ、オルトフォン系は重針圧型のダ円針付、と好対照である。一方MM型は、海外製品の高級モデルのそれぞれ魅力的な個性が十分に楽しめる。
 5万円以上は事実上のカートリッジのトップモデルが顔を揃える価格帯である。MM型は海外製品が多く、軽質量振動系採用のワイドレンジ型であり、振動系のカンチレバー材料に宝石パイプ採用のモデルも登場しはじめる。MC型はトップモデルの置かれる価格帯で、このクラスとなれば、せびとも専用の昇圧トランスかヘッドアンプを組み合わせたい。

アントレー ET-200

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 高性能化を目的として入力スイッチを取除いた低インピーダンス専用トランス。
 ET100と比べると全体に音のキメが細かく、一段とワイドレンジ型になったのが判る。MC20IIは、やや細身の高域にアクセントがついたスッキリ型になり、爽やかさはアルが、やや実在感不足の傾向がある。FR7fは、予想より低域バランスの線が太い大味な音になる。アントレーEC30を組み合わすとやはり、それなりに納得のいくバランスとなり、力強いMC型というEC30の特徴が素直に聴かれる。
 このトランスもRCAピンコードによる音の変化があり、ET15でナチュラルなバランスとなったコードはメリハリ強調型となり、付属コードですっきりした音になるが、今一歩なのだ。

4万円未満の価格帯の特徴(カートリッジ)

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 スピーカーシステムのような外形寸法が大きく、重量もあるコンポーネントに比べ、カートリッジは小型軽量であるため、海外製品の実売価格が非常に低く、特例を除いてこの4万円未満で入手できるのが、特長であり、今回のような価格帯別のベストバイを考えるときに大きな問題点になってくる。従って、ここでは、国内製品を中心にして価格帯を考えてみよう。
 4万円未満でも2万円と3万円は、さらに、それぞれボーダーラインとなる。
 2万円未満はMM型も数あるが、狙うならMC型で古典型から現代型まで数機種が並ぶ。
 2〜3万円は高性能で信頼性の高いMM型とMC型の中級機種が存在する価格帯で、MM型の高性能化、MC型の実質的魅力かが選択のキーポイントになるだろう。
 3〜4万円は、実売価格が高いデッカ、オルトフォンの製品が存在し、これらは4万円以上と互角の魅力をもっている。

アントレー ET-100

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 入力インピーダンスが3Ω、10Ω、40Ωの3段切替で使える昇圧トランスで、定評の高かった初期の製品を改良したのが現在のモデルである。
 聴感上の帯域は、安定感がある低域をベースに少し抑え気味の中域と輝きがある中高域から高域が適度のバランスを保つ。音色は明るく、音表情は穏やかで安定感がある。
 MC20II、FR2、DL305の3種のMC型に対し、それぞれの特徴を引出しながら適度にクッキリとコントラストの効いた、プレゼンスのある音として聴かせる。価格的にみて、現状では高価な製品ではないが、昇圧トランスの一種の基準尺度として使えるだけの信頼性の高い音は見逃せない。ET100は付属コードでバランスがとれる。

アントレー ET-15

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 3Ω、40Ω切替型の昇圧トランスである。
 聴感上の帯域バランスは、柔らかく軟調の低域、抑え気味の中域、硬質でコントラストをクッキリとつけるがやや粗い中高域から高域をもつ、個性の強いタイプだ。
 MC20IIとDL305ともに、トランスの個性のために大きな傾向の差が出ないが、音色が明るく細かさも出てくる点でDL305の方が良い。
 パスを含むスイッチ切替実験の結果、付属RCAピンコードを普通のタイプに交換してみると、個性の強さは大幅に減り、トランスとしては素直でキャラクターが少なく、ナチュラルな帯域バランスをもっていることが判った。昇圧トランスやヘッドアンプでは、使用するRCAピンコードで音が大幅に変わることが多い点に注意したいものだ。

20万円〜40万円未満の価格帯の特徴(プレーヤーシステム)

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 20〜40万円の価格帯になると、スピーカーシステムでいえば中型フロアーシステム、アンプでいえば中級セパレート型に相当する性能・音質をもつ製品が存在するところでややベストバイの意味からは外れた位置づけにあるプレーヤーシステムである。
 選択のポイントは、①性能と機能のバランスを重視してフルオート機を選び、イージーオペレーションで、適度にクォリティの高い音質をリラックスして楽しむか、②高性能さを優先させて大型/重量級のマニュアル機を選び、普及機では再生し得ない、ディスクにカッティングされている底知れない情報量を汲みとるか、の二者択一であろう。また、このクラスならシステムとは別にアームレス型を選び、使用するカートリッジにマッチしたトーンアームを組込んで、セミカスタム型のシステムを作るのも効率の高い選択である。当然、選択にはある程度のキャリアが必要だが、その結果には夢がある。

EMT STX20

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 EMTのTSD/XSD15専用の昇圧トランスであり、今回は当然、TSD15を組み合わせて使う。適度に伸びた重厚で力強い低域をベースに、厚みが充分にある中域と、ハイエンドを抑えた高域が、安定感のある帯域バランスを形成している。
 全体に音の芯がクッキリとし、やや硬質で線の太さが感じられる音だが、楽器それぞれに固有の振動を見事に聴かせるのはさすがだ。プログラムソースに対しては適度に反応を示し、ソリッドな魅力があるが、カシオペアのようなジャンルは不得手である。
 試みにMC20IIを使ってみる。バランス的に低域を抑えたクリアーで小柄な音になり、低域が豊かすぎてカブリ気味のスピーカーには効果的に使えそうだ。

8万円〜20万円未満の価格帯の特徴(プレーヤーシステム)

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 8〜20万円未満でも、さらに10万円、15万円は製品としての境界線である。10万円未満は、8万円未満の延長線上に位置する製品である。プログラムソースとして、ときにはディスクを使うという程度なら、8万円未満を選択したほうがよいが、やはりディスク中心のプログラムソースで楽しむのならこのクラスである。マニュアル、フルオート、リニアトラッキングアーム、ベルトドライブなどテーマも多いが、メカニズム的にもこのクラスは信頼性が高く、その音質にかなり聴きごたえする価格帯である。15万円未満は、実質的な高級モデルの存在する価格帯である。最近では高性能機はマニュアルという誤解も少なくなり、フルオート機がかなり登場している。また、リニアトラッキングアームの本来の特長が活かされるようになる価格帯でもある。20万円未満は15万円未満の延長線上で製品も少ないが、それ以上の価格帯に相当する好製品が存在する。

8万円未満の価格帯の特徴(プレーヤーシステム)

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 プレーヤーシステムは、コンポーネントシステムの入口を受持つ位置づけにあるため、その選択を誤ると、アンプやスピーカーシステムにいかに高性能な製品を使ったとしても、希望する音が得られなくなる点に注意したい。8万円未満の製品といっても実質的には6万円、7万円をボーダーラインとして3つのグループに分けて考えたほうが現実的だ。6万円未満の製品はプレーヤーシステムとしてベーシックなモデルであり各社の製品競争が激しいところで、比較的優れた製品が多い。最近の傾向としては、ストレートアームを備えたフルオート型が主流を占めるようであるが、選択は必ず比較試聴をして決めたい。7万円未満はいわば標準モデルで、6万円未満とは音質的に1ランク差があるようだ。8万円未満は、30〜40万円クラスのコンポーネントシステムの組合せに使えるだけの性能・機能・音質を備え、一般的にこのクラスの製品を選べば安心して使用できる。

ダイナベクター DV-6A

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 DVカートリッジ用に開発された、巻線を含む全ての線材に銀線を採用し、一次巻線はスイッチ切替でバランス型とアンバランス型に使用できるユニークな構想にもとづいた製品である。
 入力インピーダンス40ΩでDL305を使う。柔らかな低域をベースとした安定型の帯域バランスをもつことはDV6Xと似るが、音の基本クォリティは格段に高く、豊かな響きと少し硬質な中高域がバランスを保つ。音場感はナチュラルでスピーカーの奥に拡がる。
 試みにバランス型に切替えると帯域バランスはナチュラルに伸び全体にクリアーで表情豊かな音に変わる。とくに前後方向のパースペクティブがスッキリと感じられるのはバランス型の大きな特徴で、今後の発展が楽しみな製品である。

ダイナベクター DV-6X

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 DV6Aのジュニアタイプとして開発されたスイッチレスの昇圧トランス。
 入力インピーダンスは3〜60Ωと発表されているために、MC20IIとDL305を使う。
 聴感上の帯域バランスは、柔らかな低域をベースとした暖色系の音色をもった穏やかなタイプで、ハイエンドはなだらかに下降するレスポンスをもつようである。
 DL305は低域ベースで高域が下降気味となり、柔らかな雰囲気は楽しめるが、本来の、解像力があり爽やか音とは別のキャラクターに感じられる音になる。
 MC20IIは、DL305よりは明快さが出てくるが、やはり本来とは異なった穏やかな音になる。製品の性格からいっても、ダイナベクター・カートリッジ専用の昇圧トランスという印象が強い。

デンオン HA-1000

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 DL103Dの発売とほぼ同時に開発されたセパレート型電源採用のヘッドアンプで、利得切替は24dBと32dBの2段切替型だ。
 MC20IIは、ローエンドを少し抑えたワイドレンジ型で、ハイエンドはやや上昇ぎみのバランスとなる。いわゆるスッキリとした細身のバランスで、音の表情は淡泊でサッパリとし、音を整理し凝縮して小さく聴かせる傾向がある。音場感はナチュラルでプレゼンスはかなりのものだ。
 DL305は情報量も多く、滑らかに伸びたレスポンスと、トータルバランスの優れたクォリティの高さ、やや抑制の効いた素直な表情が特徴である。全体に音楽を凝縮して聴かせる傾向は24dBの利得の方にもあるようで、一般的にはもう一段とスケール感が欲しい。

デンオン AU-340

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 広帯域、低歪をテーマに開発されたデンオン昇圧トランス中で最新の製品である。入力は、3Ωと40Ωの2種類が切替使用可能。
 MC20IIは、安定感のある低域をベースに、少しハイエンドを抑えた帯域バランスである。全体の線はクッキリと太く、楽器の基音成分をクッキリと聴かせるが、倍音の豊かさは今一歩という印象である。各プログラムには平均して対応しディスクのキャラクターを素直に引出す性能がある。
 DL305では、やや硬質でスッキリとナチュラルに伸びた帯域バランスと、細やかな粒だち、軽く明るい音色が特徴となる。全体に音を美しくキレイに聴かせる傾向があり、クォリティは充分に高いが、押し出しのよいパワー感とリアリティの面では少し不満が残る。

デンオン HA-500

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 HA1000に続いて開発された製品で、利得は24/32dBの2段切替だ。
 聴感上の帯域バランスはあまりワイドレンジを意識させないナチュラルなタイプで、適度に分解能がよく爽やかな、,軽く明るい音が特徴で、使いやすい音の傾向と思われる。
 MC20IIを32dBで使う。クッキリと粒立つシャープで整然としたやや硬質な音である。全体に力があり、音像がグッと前にせり出す傾向があり、各プログラムソースをコントラストをつけて明解に聴かせる。
 DL305を24dBで使うと、安定した低域をベースに滑らかでスムーズな音である。音場感は32dBとは逆に少し奥に拡がるタイプに変わる。試みにFR2を32dBで使う。滑らかさとメリハリが両立した快適な音だ。

デンオン AU-320

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 AU310の細身で素直な音と比較すると、低域の量感が一段と増加したことと、中高域に少し輝かしいクッキリとコントラストを付けるキャラクターがあり、トータルバランスを形成しているのが異なる点だ。
 MC20IIは、やや薄くシャープでクッキリとした音で、音場感の拡がりも一応の水準にある。しかし本来の音と比べると、中低域の豊かさが減り、中高域が硬質になっているのが判る。
 40Ωに切換えDL305にすると、全体に線が太い絵のように細部が見えず、音場の拡がりも狭くなる。DL103に替えると、低域の力強さと中高域の輝きが巧みにDL103の音にアクセントをつけて効果的に聴かせる。やはり、カートリッジとトランスの製作年代のマッチングの成果であろう。

デンオン AU-310

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 高インピーダンス専用トランスでDL103、103S用に開発された製品。
 DL305では、ナチュラルな帯域バランスと、少し細身のスッキリとしたシャープな音となる。音場感はやや後方に拡がるタイプだが、ホールのプレゼンスは一応の水準で聴かれる。
 ロッシーニは適度に軽快さがあり安心して聴けるが、気をつけて聴くと分解能が不足気味で、反応も少し遅い。ドボルザークとなると中高域に少しキャラクターがあり、ホールの後の席の音だ。峰純子はやや硬めで、小柄なボーカルながらまとまりはよく、カシオペアもそれなりに聴かせる。
 DL103にすると帯域バランスがピタリと決まり、これなら納得という音だ。この変化は大変におもしろい。

コッター Mark2/TypeL

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 低インピーダンス専用で、同社の他のモデルとはトランスが異なった仕様だ。
 聴感上では、トランスとしてはワイドレンジ型で、豊かな低域をベースに、適度に緻密で安定したトランス独特の魅力がある。全体に従来より幾らか穏やかになった印象のタイプP/PP/Sに比較して、クォリティの高さは格段に優れる。
 MC20IIは、暖色系の柔らかく豊かな低域をベースとした美しい音を聴かせる。この音は、ハイファイというよりは音楽を長時間聴くに相応しいタイプで、独特の抑えた光沢はコッターならではの魅力だろう。
 FR7fにすると帯域も一段と広く、力強く伸びやかな分解能が優れた音になる。音源は少し遠いが、カートリッジの性能差をかなり明瞭に聴かせるのは見事。

コッター Mark2/TypeP, Mark2/TypePP, Mark2/TypeS

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 タイプPがオルトフォンなどの低インピーダンス用、タイプPPがEMT用、それにタイプSがデンオンなどの高インピーダンス用となっている。基本トランスは完全に同じもので、トランスの多重巻線の接続を変更して使用を変えているために、3タイプ間の変換は後からでも可能である。
 タイプPにはMC20IIを使う。聴感上のf特は高域と低域をわずかに抑えた、トランスとしては標準的なタイプだ。柔らかに低域は安定感があり、中高域に独特のわずかのキラメキがある。音の分離は優れるが、ソーによれば今一歩の印象もある。音色はほぼニュートラルで、各プログラムを平均してそれなりのクォリティで聴かせる。
 タイプPPにはTSD15を使う。スケールが大きく、暖色系の豊かな音で、適度にスムーズさをもつが、TSDの本来の音を少し滑らかに角をとって聴かせるタイプである。
 タイプSにはDL305を組み合わせる。ナチュラルに伸びたf特と、耳あたりがよく抑えた光沢を感じさせる音は、大変にキレイであるが、峰純子は少しマイルドになりすぎ、カシオペアもムード音楽的になる。試みにMC20IIを使ったが、総合的にこれがベストである。

コーラル T-100

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 今回の特集に集めた唯一の一万円未満のトランス。
 3Ω専用モデルでMC20IIとFR7fを使う。全般的にはFR7fのスケールの大きな音がマッチするようだ。聴感上のf特は少しナローレンジ型で適度にコントラストをつけて、やや硬質の音を聴かせる。ロッシーニは生硬さがあるが雰囲気をひととおり聴かせる。低域が不足するためか演奏の店舗が少し速くなる。この点は、中高域にクッキリ輪郭をつけるMC20IIの方が、スケールは小さいが小粒にまとまりバランスよく聴ける。ドボルザークはFR7f、MC20IIともに硬質になりすぎる。峰純子、カシオペアは平均的に聴かせるが、カートリッジの個性を引出すには至らない。SN比を稼ぎ、小粒にカリッとまとまる音が特長だ。

オーディオテクニカ AT-650

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 3段切替スイッチ付のユニバーサル型トランスだ。
 MC20IIは、少し高質さはあるがスッキリとした爽やかな音で、聴感上のf特もスムーズに伸び、キャラクターの少ない穏やかな音である。プログラムソースとの対応の幅も広く、音をキレイに聴かせるのが特徴となる。
 DL305は、やや細部の描写が不足気味で、線が太く、本来のシャープさが出難い。
 AT34IIにすると中高域に少し硬いキャラクターが付くが、バランスの良さは、当然のことながらベストである。このトランスも付属コードを交換するとかなり音質が変化するため、使用にあたっては、コードを変えて使用システムに最適のバランスに調整するのが好ましい使用法と思う。

オーディオテクニカ AT-630

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 中間インピーダンスをもつオーディオテクニカのMC型カートリッジ用の昇圧トランス。
 ややミスマッチにはなるが、MC20IIを使うと、トランスとしては適度の帯域バランスと少し細身の滑らかな音となる。ロッシーニは程良く鳴るがドボルザークは音源が遠く、大ホールの後の席で聴く感じだ。峰純子は少し細身の穏やかなボーカルとなり、雰囲気はアルが少し実体感不足だ。カシオペアは小柄になるが、一応楽しくは聴ける。
 AT34IIを組み合わせると、やはり、f特をはじめトータルバランスは一段と向上し、ややラフな面もあるが、価格から考えれば、充分な昇圧トランスらしい安定した落着いて聴ける音が得られる。この意味でも専用トランスと考えたい。