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ADC QLM30MKII, QLM32MKII, QLM36MKII, VLM MKII, XLM MKII, SuperXLM MKII

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 ADCのカートリッジは、初期にはMM型の発電方式を採用したモデルがあったが、その後、発電方式をこの社独自に開発したIM型に変更し現在に至っている。度重なる改良で構造・内容は高度になり、完成度が高い一連のシリーズ製品に発展している。音色は滑らかで、落着いた陰影の色が濃く、大人っぽい、磨き込まれたという感じの魅力がある。
 SuperXLM MKIIは、ADC最初のCD−4システムに使用できるモデルであり、最新の製品である。音の傾向は、比較的にカラリゼーションが少ないワイドレンジ型で、XLM MKIIよりも全体に引き締まり、クリアーで抜けがよく、音の芯もシッカリとしている。低域は明快でソリッドな点は、VLM系の発展型という印象があるがスケール感はさほどでもなく、腰が甘いタイプである。ヴォーカルはスッキリとして細身になり、子音を強調する傾向があり、ピアノもXLMよりもメリハリが効いて輝かしい。音場感の拡がりは標準的で、音像は比較的クリアーに立つタイプである。
 XLM MKIIは、ウォームトーン系の音で、表情がおだやかで落着いている。中低域には独得な柔らかい滑らかな艶がある響きがあり、拡がりがある。低域はやや甘いが弾力があり、中域以上の粒立ちが滑らかで、ゆったりとくつろいだ雰囲気があり、ベルベットトーンと呼ぶに相応しい艶がある。音場感はホールトーン的な拡がりで、音像は少し大きくなるようだ。
 VLM MKIIは、粒立ちはXLMよりも僅かに粗いがSN比が気になるほどではない。音は寒色系のソリッドでクリアーなタイプで、表情はフレッシュで反応が早く、とくに低域の腰が強く、姿・形が明瞭なことは抜群で素晴らしい。音場感はスタジオ的にスッキリとし、音像がクッキリと立つ。ともかく、力強くエネルギッシュな音は一聴に値する。
 QLM36MKIIは、VLM系の音である。粒立ちはやや粗く、僅かだがSN比が気になるようだ。音の傾向は、やや乾いた明快型で帯域がVLMより狭く、低域の量・質ともに及ばぬため、スケールが小さく、硬調な音といってよい。音場感は、小さなスタジオ的で音像は立つが、拡がりは不足する。
 QLM32MKIIは、やはり、VLM系の音である。粒立ちは36よりも粗く、SN比が気になる。音の傾向は、明快で乾いた感じがあり、コントラストをつけたメリハリ型の表現である。ヴォーカルは、ドライでソリッドであり、ピアノは硬質でカッチリとしているがスケール感はあまりない。価格を考えれば、トータルな魅力は36より上だ。
 QLM30MKIIは、XLM系の音で低域から中低域が柔らかく量感があり、おだやかな印象がある。これにたいして、中域から中高域は、やや硬調で音の輪郭を浮彫りにする傾向があるが、サポートをする低域が安定しているために、あまりバランスを崩さず、適度に音にコントラストをつける効果として働いているようだ。帯域バランスはナローレンジ型だが、無理がなく好ましい感じである。

ADC QLM30MKII, QLM32MKII, QLM36MKII, VLM MKII, XLM MKII, SuperXLM MKII

岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 Qシリーズは、これまでのADCの行き方とは違う路線の新シリーズのカートリッジであった。それまでのデリケートで繊細なる音から方向転換して、大胆な変身を遂げ、明るく健康そのものの音になった。それまでの息をひそめるような音にくらべいく分かラフな所があるが、逆に気楽に音楽を楽しめる、ともいえる。Qシリーズでは、若いファンを考慮しているに違いないから、こうした新傾向は当然すぎる変化といえる。
 針圧の点でも、それまでの、極めて入念な調節を必要とするクリティカルな傾向から一転して、適正値がかなり幅をもったラフな調節ができるようなものとなった。つまりQシリーズとなり体質的にすべてが変ったのである。
 QLM30MKIIは、Qシリーズの中でもっとも安価なクラスである。Qシリーズとしての共通的なローエンドまで延びているわけではないが弾力ある低音は30MKIIでは、ひときわ力強いが、かなり意識的な低音感で、必ずしも、入力に忠実というわけではない。中声部はややソフトで聴きやすいが、これも細やかな表現を薄めてしまう結果となっている。中音域全体にソフトな快よさがあるが特にこの30MKIIでは、中域である特定の周波数成分の華かさがある。これは、器楽曲では豊かさをもたらして有効だが、ヴォーカルでは音程を高めるような傾向を作ってしまう上、音像にも不自然さを感じさせる。
 QLM32MKIIは、Qシリーズの中級機で、中域におけるくせはずっと薄らぎ、Qシリーズ本来の耳当りのよい中声域がはっきりと感じられる。低音域での力強さが豊かさを加えて、力まかせの30MKIIにくらべてずっと質を高めている。
 QLM36MKIIは、XLMとは明らかに一線を画してはいるものの、帯域をひときわ拡大して、全体に明るく、刺戟のない快よい音を感じさせる。しかも粒立ちはくっきりとしているので分解能力もあり、音のディテールもよく表現する。ただ、あまりこまやかな表現は十分でなく、そこに適度のあまさがあって、それがソフトな聴き安さとなり、それなりの魅力となっている、といえよう。針圧に対する許容幅のゆとりある所はこの上級機も変りなく、針圧を倍にしてもトレースは安定で使いやすい。ステレオ感はこの36MKIIではずっと拡がりもよく、音像の定位もはるかに自然になって、30MKIIのような不安定な所がない。Qシリーズは、やはり価格に相当して初級ほどはっきり質の向上が確かめられ、分解能力、特に音の粒立ちのこまかさは、価格に比例しているといえる。
 XLM MKIIはADCのオリジナル高級製品10E直系の最高品種だ。かつては針圧のあまりにデリケートな点を指摘されたものだが、現機種ではそれもずっと改められている。とはいうものの針圧はかなり正確に適正値を保たねばならぬ。軽針圧用として使用上当然で、1gを切る針圧でも正確なトレースを果してくれる数少い実用的な高級品だ。きわめて広い広帯域感は、よく延びきったハイエンドとローエンドから感じられ、線の細いスッキリしたサウンドイメージが品の良さをもたらす。フワッとした低域は力強さこそないが、さわやかな豊かさにおいて、独特の魅力を作っている。
 VLMは、XLMよりいく分か針圧を要求されるが、トレースの安定性がかえって向上しているほどで、低音感がいく分どっしりしている。
 シバタ針つきのスーパーXLMは、高域で一段と輝きを増し、XLM/IIより高音に緻密さが加わっている。

ADC XLM/II

ADCのカートリッジXLM/IIの広告(輸入元:BSRジャパン)
(オーディオ専科 1975年4月号掲載)

XLM

ADC ADC220X, ADC220XE, ADC10E/MKIV, ADC25, ADC26, XLM

ADCのカートリッジADC220X、ADC220XE、ADC10E/MKIV、ADC25、ADC26、XLMの広告(輸入元:今井商事)
(ステレオ 1972年12月号掲載)

adc

ADC ADC220X, ADC10E/MKIV, XLM

ADCのカートリッジADC220X、ADC10E/MKIV、XLMの広告(輸入元:今井商事)
(ステレオ 1972年11月号掲載)

adc

ADC XLM, ダイナコ A-35

ADCのカートリッジXLM、ダイナコのスピーカーシステムA35の広告(輸入元:今井商事)
(ステレオ 1972年10月号掲載)

ADC

ADC XLM

ADCのカートリッジXLMの広告(輸入元:今井商事)
(スイングジャーナル 1972年8月号掲載)

xlm

ADC XLM

菅野沖彦

スイングジャーナル 7月号(1972年6月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 ADCのイニシアル・ブランドで親しまれているオーディオ・ダイナミックス・コーポレーションはカートリッジやスピーカーなどの変換器メーカーとしてアメリカ有数の会社である。MM型の特許がシュア一によっておさえられているために、このメーカーはIM型で市場に多くのシリーズをおくり出している。中でも10EMKIIはその抜群のコンプライアンスの高さと繊細なトレーシング・アビリティで話題をまいたが、これはもう旧聞に属することだ。この10Eは現在ではMKIVにまで発展している。今回御紹介するXLMはそうした10Eのシリーズから独立したまったく新しい製品で、振動系、本体モールディングなどすべて新設計になるもので、スタイリングもずいぶん変った。変換方式はもちろんIM型で同社がCEDと呼ぶ(Controled Electrodynamic Damping)システムで極めて軽い針圧(推奨針圧0・6g)でトレースできる軽針圧カートリッジの最右翼である。実用的には1gぐらいが適度で、1・5gになるとカンチレバーの変位が激しくボディの腹(実際には振動系を支えるホルダー)がレコード面をこする危険がある。したがって重いほうの限界は1・2gと考えるのが妥当であろう。だいたい、こうした軽針圧カートリッジは繊細な再生音をもつ傾向にあるが、この製品は必らずしもそうした在来のイメージにそったものでなく、肉厚の中低域が豊かな音像を再現するのが好ましく感じられた。ADCの発表するところでは10Hz〜20kHz(±2db)となっているが、たしかに相当な高城までレンジがのびていることが認められる。ただ欲をいうと音に芯の強さがやや足りないようで、シンバルの衝撃音などが、切れ味に欠ける嫌いがないでもない。私の体験上、IM型はどうもレコーード面の静電気による影響を受けやすいようで、湿度やディスク材料の質によって帯電状態が変わるにともなって、トレーシングが不安定になるという傾向が感じられる。従来10Eシリーズが、私の手許ではトレーシングが不安定であったことが多いのだが、いろいろやってみると、それ以外に考えられないのである。普通、カートリッジのトレーシングが不安定になるというのは、ホコリによる影響力が大きいが、静電気によって音が独特のカスレ音になるということもあり得るらしい。そうした現象が、特にIM型において著しく出るという傾向を感じ始めているわけだ。これは全く私の体験と推測の域を出ないことなのだが、このXLM型カートリッジについても同じことがいえそうで、手持ちのレコード中、帯電の激しいレコードは時としてやはり不安定なトレーシングになる。しかし、そうした現象が起きない時のこのカートリッジの再生能力は実に優れていて、デリケートな細部を克明に再現してくれる。大振幅に対する追従もよくやはり第一級のカートリッジであることを強く感じさせてくれるのである。レコードの帯電というのは実に困った現象で、製品によってはパチッと火花がとぶほどひどいもの、レコードを持ち上げるとゴム・シートも一緒に上ってくるようなものがある。こんな状態では空気中のホコリを強引に引きつけてしまうしホコリによる害と相乗してくるから手に負えない。もし、私の考えることがはずれていないとしたら、ADCにとってレコードの帯電は大変な迷惑なことにちがいない。またこの帯電は場所によってもずいぶんちがうので、私の所でなんでもないのが、人の家でほもっとひどい場合もある。レコード会社になんとかしてもらいたい問題ですね。
 帯電のおかげで、肝心のADCの新製品XLM型カートリッジにケチがついたような恰好になって申し訳けないが、非常に優れたカートリッジであることが前提での話しとして解釈していただきたいと思う。
 試聴レコードはジャズからクラシックと,かなりの種類に及んだが、いずれにも満足感があり、特にMPSレーベルのバーデン・パウエル、エロール・ガーナー、あるいはフランシー・ボラーンなどの、レコードの中低音の厚味と豊かさ、パルスへの追従などはすばらしかった。1g以下の針圧でトレースするハイ・コンプライアンス型なので当然トーン・アームには精度の高いスムースな動作のものが要求される。

ADC ADC220X, ADC10E/MKIV, XLM

ADCのカートリッジADC220X、ADC10E/MKIV、XLMの広告(輸入元:今井商事)
(スイングジャーナル 1972年6月号掲載)

ADC