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テクニクス SU-V6

瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 電子回路の部品や技術が日進月歩して、ローコストで音の良いアンプが容易に作られる時代になったものの、極限までコストダウンして、しかも性能をどこまで落とさずに作れるか、というテーマに関しては、やはり「挑戦する」という言葉を使いたくなるような難しさがある。SU−V6はそれに成功した近来稀な製品。鳴らし出してから本調子が出るまでにやや時間のかかるのが僅かの難点。そして、外観の野暮なこと。だがそれを補って余りある内容の良さ。

テクニクス SU-V6

瀬川冬樹

ステレオサウンド 57号(1980年12月発行)
特集・「いまいちばんいいアンプを選ぶ 最新34機種のプリメインアンプ・テスト」より

●総合的な音質 今日の時点で改めて厳しいテストに参加させても、相変わらずこのアンプは一頭地を抜いた素晴らしい出来栄えだと思った。むろんそれはあくまでも、5万9800円という価格のワクの中での話にせよ、同クラスのアンプの中では、特に音の支えがしっかりして全体に充実感があり、音のバランスが妥当で特にうわついたり低域をひきずったりというところもなく、その意味ではむしろ、作為がなさすぎると思わせるほどだ。このアンプはテクニクスの製品としては珍しく、スイッチを入れシグナルを加えてから時間が経過するにしたがって、音質が滑らかにこなれてゆくタイプで、音がこなれてからはとても価格が想像できないほどクォリティの高い音を聴かせる。しいて気になる点を指摘すれば、基本的に持っている音の質感がややウェット、あるいはいくぶん暗く、全体に少し線の細い傾向を持っている点火。
●カートリッジへの適応性 オルトフォンVMS30/IIが特にこのアンプの良さを生かしたように思う。テストソースの中でも比較的難しいベートーヴェンの第九(ヨッフム)の第4楽章のテノールのソロからコーラスのフォルティシモに至る部分でも、音楽的に優れたバランスを聴かせ、十分納得のゆく音を楽しませてくれる。
 MCポジションの音質は良く練り上げられていて、SN比も良好。特にDL303の持っている繊細な切れこみのよさが十分に楽しめる。ただし、フォーレのヴァイオリン・ソナタではヴァイオリンの胴のふくらみがやや減った、いくぶん細い感じの音になり(むろんこれはDL303のキャラクターでもあるが)このレコードの微妙なニュアンスの再現に関しては、このアンプでさえも物足りない面もある。
 本機のMCポジションは、オルトフォンのような低出力低インピーダンスタイプではさすがにノイズがいくぶん耳ざわり。音質もオルトフォンの特徴をおさえこむ方向だ。エラック794Eで傷んだレコードをトレースした場合は、音の粗さは目立ちにくいものの、レコードの傷みや歪をさらけ出してしまうタイプなので、古い傷んだレコードでも楽しめるアンプとはいいにくい。
●スピーカーへの適応性 アルテック620Bのような気難しいスピーカーを、十分とはいえないまでも、価格を考えれば一応満足すべきレベルで鳴らす。その意味から、スピーカーの選り好みの比較的少ないアンプといえそうだ。
●ファンクションおよび操作性 ボリュウムを上げたままで各種のスイッチを動かしてもノイズはほとんど耳につかず、安心して操作でき、操作性もこなれている。MM/MC切替スイッチを操作してもノイズはなく、この点は立派。ただし、ストレートDCとヴィアトーンを切替えるレバースイッチをゆっくり動かすと音が途切れる。フォノ聴取時のチューナーからの音洩れは全くなかった。
●総合的に この価格帯では抜群の出来栄えのアンプ。ただし、以前から何度も発言したことだが、このアンプのデザインはいただけない。

チェックリスト
1. MMポジションでのノイズ:小
2. MCポジションでのノイズ:中
3. MCポジションでのノイズでの音質(DL-303の場合):2
4. MCポジションでのノイズでの音質(MC30の場合):1
5. TUNERの音洩れ:なし
6. ヘッドフォン端子での音質:2+
7. スピーカーの特性を生かすか:2
8. ファンクションスイッチのフィーリング:2
9. ACプラグの極性による音の差:小

テクニクス SU-V6

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

Aプラス級動作に続く、ダイオードスイッチング方式の独特な高能率A級動作をプリメインアンプに採用した第3弾製品。ユニークな超低音と超高音トーンコントロールの採用と磨き込まれた音が特長。

テクニクス SU-V6

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 前号での試聴記で、とてもいいアンプだと思ったが、今回、ローコストのアンプを並べて聴いてみても、相変らずいいアンプの一つだという印象を持った。
音質 いいアンプという表現はかなり抽象的だが、とにかくクラシック、ポップス、そのほかいろいろなソースを随時、任意に片っ端からかけて音を聴いてみる。どこか薄手なアンプでは、プログラム・ソースによっては、いいところと悪いところが目立ってきて、何となく聴いていることがつまらなくなってくる。ところが、このテクニクスのV6はいつまででも音を聴いていられる。どんなプログラム・ソースでも、すべての音がきちんと聴こえるということが大変すばらしい点で、一言でいうと、比較的ローコストのアンプにもかかわらず、いわゆるコストダウンの手抜きをほとんどしていないのではないかと思う。
 例えばストラヴィンスキーの『春の祭典』のティンパニーとバスドラムが活躍するフォルティッシモの連続の部分でも、このアンプは少しも混濁しない。すべてのおとがきちんと分離し、よく調和しながら聴こえてくる。それからキングス・シンガーズのように、それと正反対の大変柔らかい美しいエレガントなハーモニーを要求するようなコーラスでも、その魅力が十分伝わってくる。とにかく一つ一つの曲について言い出せばきりがないが、すべてのプログラム・ソースがきちんと聴こえてくるということが言える。
 特にこの五万九千八百円という価格帯の一つ下のグループ、例えばビクターのA-X3、トリオのKA80、それぞれにいいアンプだが、それがここにくるとグンとランクが上がる、つまり音の品位が上がったという感じがする。
 このクラスではヤマハのA3も大変いい音を聴かせてくれたが、このV6とA3を比較すると、なかなか対照的な音を持っている。ヤマハのA3は比較的明るい、よく乾いた、応答の早い音がするのに対して、V六は少しウェットだ。それとヤマハの明るさに対して、少し音に暗さがある。
 それからもう一つ、ヤマハに比べると高域が少し線が細い気がする。しかし、それは音の繊細感、きめ細かさという印象を助ける部分なので、そのことは決してネガティブな意味で言っているわけではない。
MCヘッドアンプ このアンプもMCヘッドアンプが内蔵されている。オルトやぉんのMC20MKIIのようなローインピーダンス(低出力)のカートリッジでは、このアンプではさすがに能力いっぱい。ボリュームをかなり上げなくては無理だし、そこのところではかなりノイズに邪魔される。
 やはりデンオン103Dのようなハイインピーダンス(高出力)のカートリッジがMCヘッドアンプの設計の基準になっているように思う。デンオンの場合にはもちろん十分にMCのよさが味わえる。
トーン&ラウドネス このアンプにもオペレーションというボタンがあり、ストレートDCとリアトーンというポジションがある。ストレートDCではトーン・コントロールは効かない。トーンを使う時にはリアトーン側に倒すが、その場合にごく注意深くきかなければわからないわずかな差だが、このアンプの持つ基本的な音のよさから比べると、ほんの少し音が曇るような気がする。
 トーン・コントロールは大変軽い効き方をして、あまり低音、高音を強調しないタイプだ。
ヘッドホン ヘッドホン端子での音の出方だが、これは同じボリュームの位置でスピーカーからの音量とヘッドホンをかけての音量感とが、割合近いところまで、うまくコントロールされている。ヘッドホン端子での音の出方は大変よい部類に属する。

★★

テクニクス SU-V6

瀬川冬樹

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「JBL♯4343研究(2)」より

 今回試聴したアンプの中で最もローコストの製品で、外観を眺め価格を頭におくかぎり、正直のところたいして期待をせずにボリュウムを上げた。ところが、である。価格が信じられないような密度の高いクォリティの良い音がして驚いた。ヤマハとオンキョーのところで作為という表現を使ったが、面白いことに、価格的には前二者より安いV6の音には、ことさらの作為が感じられない。
「つくられた音」ということをあまり意識させずに、レコードに入っている音が自然にそのまま出てきたように聴こえ、えてしてローコストのアンプは、安手の品のない音を出すものが多いが、その点V6は低音の量感も意外といいたいほどよく出すし、音に安手なところがない。
 他の機会にこのアンプを聴いて気づいたことだが、今回のテストのように、スイッチを入れてから3時間以上も入力信号を加えてプリヒートしておかないと、こういった音は聴けない。スイッチを入れた直後の音は、伸びのない面白みのない音で、もっとローコストのアンプだといわれても不思議ではない音なのだが、鳴らしているうちに音がこなれてきて、最低でも一時間以上、二時間もたってみると、聴き手をいつまでもひきつけておくような魅力的な音になっているのである。最近のローコストアンプの中でも傑出した存在だろう。内蔵のMCヘッドアンプも、価格を考えれば立派というほかない。
 しかし、あえて苦言を呈すれば、オリジナリティに欠けるデザインポリシーは、全く理解に苦しむ。この価格帯のアンプを買うであろうユーザー層を露骨に意識した──しかも当を得ているとはいいがたい──メカっぽさ。少し前の某社のアンプデザインを想い起させ、イメージもマイナスだし、いかにも機械機械した印象は、鳴ってくる音の美しさ、質の高さとはうらはらだ。

テクニクス SU-V6, ST-S5

井上卓也

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最近のアンプのジャンルでは、パワーアンプのB級動作の問題点であるスイッチング歪を軽減する目的で、B級動作のメリットである効率の高さをもちながら、本質的にスイッチング歪を発生しないA級動作と同等の低歪とする各種の新回路が開発され各社からその製品化がおこなわれていることが特に目立つ傾向である。
 テクニクスでは、さきにA+級と名付けられた新回路を採用した高級セパレート型アンプ、テクニクスA2を発売し、これにつづいてニュークラスAという、異なった発想による新回路を採用したプリメインアンプSU−V10を開発したが、今回は、最も需要層の多い価格帯に、このニュークラスA回路を採用したSU−V6を登場させ、低スイッチング歪を軽減しようとするテーマは、早くもプリメインアンプの分野にまで及び、今後とも各社から、それぞれの構想による低スイッチング歪軽減対策を施した回路を採用したプリメインアンプが、低価格帯と高価格帯に重点を置いて発売されることが予測できる。なお、ST−S5はSU−V6とペアとなる薄型にデザインされたクォーツシンセサイザーFMステレオチューナーだ。
 SU−V6は、B級動作の高い効率とA級動作に匹敵する低歪という、量と質を両立させたニュークラスA動作のパワーアンプを採用している点が特長である。ここでは、B級動作のスイッチング歪の原因となる出力トランジスターのON・OFF現象をシンクロバイアス回路で防止する方法を採用している。この回路は、パワートランジスターの入力にダイオードを使い、ダイオードの半導体としての特性を利用して信号をカットオフし、別のダイオードからバイアスを与えてパワートランジスターのカットオフを防止するタイプで、一種のダイオードスイッチング方式と考えられる。
 イコライザー段は、初段に超低雑音デュアルFETを差動増幅に使うICL構成で、アンプ動作モードスイッチをストレートDCに切替えるとフォノ入力からスピーカー端子までカップリングコンデンサーのないDCアンプとして使用可能であり、イコライザーのゲインを切替えてダイレクトにMC型カートリッジが使える設計である。
 電源回路は、電磁誘導歪みを防止するテクニクス独自の電源部とパワーアンプの出力段を一体化したコンセントレーテッドパワーブロックで左右チャンネル独立型2電源方式である。
 ST−S5は4連バリコン相当のバリキャップ使用フロントエンドをもち、6局までのプリセットが可能。RF系までを含めたDC増幅、DC・MPX回路などが特長。
 SU−V6は、やや音色は暗いが重量感のある低域とクッキリとシャープに粒立ちコントラスト十分な中高域がバランスした従来のテクニクストーンとは一線を画した新サウンドに特長がある。こだわらずストレートに音を出すのは新しい魅力。