黒田恭一
ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より
音のきかせ方のタイプとしては、フィリップスAH484と同系列にあるものといえようが、あきらかにひとランク上だ。音の基本エネルギーをしっかり示そうとするところに、このスピーカーの一種の誠実さが感じられらる。ただ、くっきり輪郭を示すことに重点がおかれていて、こまやかな表情の提示ということでは多少ものたりなさを感じる。多分、そのことと無関係とはいえないと思うが、声が、総じて、太くきこえる。そして、木管楽器の音も、硬めだ。ただその反面、たとえば低音弦のひびきがあいまいにぼけるようなこともなく、金管楽器が加わっての迫力にとんだ音楽が腰くだけになることもなく、はなはだこのましい。つまり、そのことによって、音楽の骨組がしっかりと示されるからだ。あいまいさを拒否して、足腰を充分にきたえた音とでもいうべきか。使い手をえらばないスピーカーということもできよう。
総合採点:8
試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(好ましい)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(好ましい)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(ほどほど)
最近のコメント