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ユニゾンリサーチ Simply Two. Simply Four, Simply 845

井上卓也

ステレオサウンド 130号(1999年3月発行)
「いま聴きたい魅惑のコンポーネント特選70機種」より

 世界的に管球アンプの開発が、予想を超えて絶えることなく継続されているようであるが、スピーカーシステムにおけるB&Wノーチラスのような、想像を超えたレベルで管球アンプのデザインを変えたメーカーは、イタリアのユニゾン・リサーチをおいてほかはないのではなかろうか。
 このメーカーは、ひじょうに大型で超重量級の管球プリメインアンプ、845アブソリュートが93年に輸入され、一躍注目を集めただけに、プリメインアンプのラインナップが充実しているのが大変に魅力的だ。
 その巨大プリメインアンプとは完全に逆転の発想で開発されたのが、このシンプリー・シリーズだ。出力トランスは自社製リッツ線巻きとのことで、筐体構造は金属材科とリアルウッドを組み合せた、ユニークで素晴らしい出来である。この組合せは、視覚的にも美しいが、金属の固有音を木材でダンプし、ほどよい木の鳴りを加味するという音質面でのメリットもあるようだ。
 シンプリーTWOは、6CA7シングル・ステレオアンプであるが、穏やかで豊かな音と言われやすい管球アンプのなかでは、反応もナチュラルで違和感がなく、伸びやかな表現力とほどよくフレッシュな音は、音楽をいつまでも聴いていたくなる、オーディオならではの楽しさがある¢
 シンプリーFOURは、シリーズ第三弾製品として登場した、6CA7をパラシングルとしたモデルである。定格出力は、シンプリーTWOの12W+12Wから14W+14Wに増加したにすぎない。しかし、音の傾向は明らかに1ランク上級機らしい佇まいがあれ、重心がいちだんと低く安定感があり、それなりに押し出しの良いパワー感は、さすがに兄貴分の貫禄というべきだろう2機種ともにNF量は2段切替可能で、NF量と音質の相関性を聴くことができる。
 短絡的な表現をすれば、小口径から中口径フルレンジユニットの駆動にはTWO、2ウェイ以上のシステムにはFOURということもできるだろう。
 シンプリー845は、モノ構成パワーアンプSmt845のステレオ版と考えられる大型プリメインアンプである。
 オーディオ用3極出力管として古くから定番となっている845のシングルエンド使用で、純A純動作、定格出力18W+18Wである。
 TWOとFOURを実用型アンプとすれば、トリエイテッドタングステンのフィラメントの輝きと、独自の筐体構造との調和の美しさが、見るだけで楽しい本機は、かけがえのないオーディオの世界を展開する完全に趣味のアンプなのである。
 3極管シングルA級動作的な線の細さは感じられず、ナチュラルな表情で音楽を楽しく聴かせる、視覚的要素と表裏一体となった見事な音は、さすがに高級機の風格だ。

ユニゾンリサーチ Simply Two

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 SIMPLY TWOは、そのモデルナンバーが示すように、単純なEL34/6CA7の純A級シングル動作のプリメインアンプである。基本型は、入力部に入力セレクターとボリュウムコントロール機能を持たせたパワーアンプで、フィードバック切替スイッチが付属しており、一種のキャラクターコントロールとして使用可能だ。また、別売のフォノEQ用の電源供給ソケットが付いている。定格出力は12W+12Wと必要最小限のレベルであるが、小口径フルレンジユニットや感度90dB以上の2ウェイシステムと組み合わせれば、一般の家庭用再生レベルなら実用上での問題は皆無に等しいであろう。いわゆる5極管的な、古くはペントード的な音といわれた傾向は見事に抑えられており、常に手元に置いておきたい印象のモデルである。