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マランツ Pm-6a, Pm-8MKII, St-8MKII

マランツのプリメインアンプPm6a、Pm8MKII、チューナーSt8MKIIの広告
(モダン・ジャズ読本 ’82掲載)

Pm6a

マランツ Pm-8MkII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 57号(1980年12月発行)
特集・「いまいちばんいいアンプを選ぶ 最新34機種のプリメインアンプ・テスト」より

●総合的な音質 前作Pm8は、最近のマランツブランドに共通した、明るい、いくぶん硬調かつコントラストの高い、しいて言えば、クラシックよりはアメリカ系の新しいポップミュージックに焦点を合わせた音で、プログラムソースをその方向に限定するかぎり、たいへん楽しい音を聴かせた。MKIIになっても、この基本的な性格は受け継がれ、十分のパワーに支えられた音質が、フュージョンやジャズなどの、特に打音の伸び、パワー感にたいへん特徴を発揮する。今回のテストでは旧型と聴きくらべることができたが、MKIIになって、音のコントラストをいっそう高める方向が聴きとれ、ポップミュージック志向の性格をはっきりきわ立たせるように思えた。
●カートリッジへの適応性 オルトフォンVMS30/IIのような、ヨーロッパ的ニュアンス、味わいを大切にするカートリッジの音質と、本機の性格が互いに相容れない部分があるためか、このカートリッジの特徴を生かすというわけにはゆかない。特にクラシックのオーケストラを再生した場合には、音
バランス・質感ともいささか違和感があり、全体の音が硬めで、いくぶん元気よく鳴りすぎる傾向がある。エムパイア4000DIIIで「ニュー・ベイビィ」をプレイバックすると、このアンプの基本的な性格に加えて、パワーの大きな特徴が発揮され、テストアンプ中随一の力のある再生を聴かせる。ただし、音にいくぶん粗い傾向もある。
 エラック794Eで傷んだレコードをプレイバックすると、レコードのヒリつきシリつきなど、歪をきわ立たせる傾向があるが、基本的な音のクォリティがかなり高いためか、いわゆる聴くに耐えない音にはならない。
 MCポジションのテストでは、ハム成分の多いノイズがいくぶん耳につき、オルトフォンのような低出力低インピーダンス型MCでは、実用上十分な音量で楽しめるとはいいにくく、MC30の特徴を生かすともいえない。デンオンDL303の場合には、ノイズはかなり減少するが、音質は中~高域がかなり華やかになり、クラシックのオーケストラなどでは、中高域にいささかエネルギーが集中する傾向があり、もう少し抑えを利かせたい。
●スピーカーへの適応性 アルテック620Bの弱点といえる(中~高域にかけて音の華やかな部分)とアンプの音とが相乗効果になるためか、アルテックを、抑えた気持ちよさで鳴らす、というわけにはゆかず、いくぶんスピーカーとの組合わせ方が難しいタイプかもしれない。
●ファンクションおよび操作性 MM/MCの切替ボタンをゆっくり押すと、途中で音が途切れ、外記にチューナーの音が混入する傾向があった。
●総合的に このアンプの特徴が気に入れば、高級プリメインの中ではかけがえのない存在。

チェックリスト
1. MMポジションでのノイズ:小
2. MCポジションでのノイズ:中(おもにハム)
3. MCポジションでのノイズでの音質(DL-303の場合):2-
4. MCポジションでのノイズでの音質(MC30の場合):1+
5. TUNERの音洩れ:大
6. ヘッドフォン端子での音質:2
7. スピーカーの特性を生かすか:2
8. ファンクションスイッチのフィーリング:2
9. ACプラグの極性による音の差:小

マランツ Model Pm-8

瀬川冬樹

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「JBL♯4343研究(2)」より

 今回のテストの中でも、かなり感心した音のアンプだ。この機種を聴いた後、ローコストになってゆくにつれて、耳の底に残っている最高クラスのセパレートアンプの音を頭に浮かべながら聴くと、どうしてもプリメインアンプという枠の中で作られていることを意識させられてしまう。つまり、音のスケール感、音の伸び、立体感、あるいは低域の量感といった面で、セパレートの最高級と比べると、どこか小づくりになっているという印象を拭い去ることができない。しかしPm8に関しては、もちろんマーク・レビンソンには及ばないにしろ、プリメインであるという枠をほとんど意識せずに聴けた。
 デュカスの「魔法使いの弟子」で、オーケストラがフォルティシモになって突然音が止んでピアニシモに移る、つまり魔法使いの弟子が呪文をとなえて、箒に水を汲ませているうちに、箒が水を汲むのをやめなくなって、ついに箒をまっぷたつに割ったクライマックス、そして一旦割れた箒がムクムクと起きあがるコントラファゴットで始まるピアニシモの部分の、ダイナミックレンジの広さ。試聴に使ったフィリップス盤では、この部分が素晴らしいダイナミックスと色彩感をもって、音色の微妙な変化まで含めて少しの濁りもなく録音されている。また、菅野録音の「ザ・ダイアログ」冒頭のドラムスとベースの対話。この二枚とも相当にパワーを上げて、とくに「ダイアログ」ではドラムスが目の前で演奏されているかのような感じが出るほどまで音量を上げて楽しみたいのだがこれはアンプにとってたいへんシビアな要求だ。だがそのどちらの要求にも、Pm8はプリメインという枠をそれほど意識せずに聴けた。
 初期のサンプルより音がこなれてきているのだろう。最初にこの製品を聴いた印象では、華麗な、ややオーバーに言うと音が少々ギラギラする傾向が感じられ、それがいかにも表だって聴こえた。しかし今回聴いたかぎりでは、それらがほとんど姿を消し、一種しっとりした味わいさえ聴かせた。
 バッハのヴァイオリン協奏曲では、フランチェスカッティのヴァイオリンは相当きつい音で録られているため、本質的にきつい音のアンプだとこれが強調されてしまうが、Pm8は弦の滑らかさ、胴鳴りの音もかなりよく再現した。
 中間アンプのバイパス・スイッチをもつが、このスイッチをオン・オフしてみると、バイパスした方が音の透明度が増し、圧迫感、混濁感が減るようだ。こう書くとその差が実際以上に大きく感じられそうだが、バイパスすると前述した点が心もち良くなるという程度の違いでしかない。内蔵MCヘッドアンプは、オルトフォンMC30のように出力の低いカートリッジだと、いくぶんノイズは増えるものの、音質的には十分実用になる。
 総合的には、同価格クラス、あるいはもう少し高価なセパレートアンプと比較しても十分太刀打ちできる、あるいは部分的には上廻っているプリメインといえるだろう。

マランツ Pm-8

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最高級プリメインアンプは、セパレート型のコントロールアンプとパワーアンプを一体化して開発するというマランツの伝統的な手法を現時点で実施した新しいプリメインアンプである。基本構成は、同時発売のコントロールアンプSc7をパネル側に、パワーアンプSm7をその後に配置したといえるレイアウトを採用しているため、奥行きが437mmと長いという外形寸法にもそれがあらわれている。パネル面のレイアウト、機能は、コントロールアンプSc7と同等で、特長的なサブパネルをもつ。パワーは150W+150Wの高出力をもち、電源部は2次巻線で左右チャンネルを分離する左右独立型で15、000μF×4の電解コンデンサー使用だ。
 Pm8の音は、聴感上でのfレンジでは、Sc7とSm7の組合せよりワイドレンジ感は減るが、反面において、中域のエネルギー感が充実した、よりハイデンシティ型のプリメインアンプならではの充分にコントロールされたものだ。高出力タイプの魅力で小音量時にも余裕たっぶりの音が聴けるのが特長。