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パイオニア PD-9010X

井上卓也

ステレオサウンド 76号(1985年9月発行)

「BEST PRODUCTS」より

 バイオニアの新CDプレーヤーシリーズは、簡潔かつ基本的な構想によるディスクの不要共振を抑える、ディスクスタビライザーを世界初に採用した製品として知られる。すでに、PD5010と7010が発売され、それぞれのモデルに与えられたサウンドと機能面での特徴が、単なるシリーズ製品としてのランク差でなく、価格差を超えて対比できるモデル間の固有の魅力として認められるだけの巧みな展開をみせているが、今回、シリーズのトップモデルとして、PD9010Xが新発売された。
 シリーズ共通のキズや汚れに強いリニアサーボ方式、オリジナルの高精度ピックアップ系の採用などの他に、本機の特徴は、まず、CDの初期から音質に関係する重要な部分とされるフィルターにデジタル型が採用され、帯域内リップルが、0・01dB以内とフラットであり、デジタル信号処理をひとつのマスタークロック発振器で同期する方式は、各信号間のビートやデジタル信号にジッター成分が含まれず、サーボ系やオーディオ系への影響を抑えるために効果的である。
 電源部は、CDプレーヤーでも、音質面で重要な部分だが、電源トランスは、サーボ系とデジタル系に1個、オーディオ系にはオリエントコアにOFC巻線を施した専用トランス1個を採用した2トランス型。
 基板関係は、各基板の微少レベルでの振動による相互干渉を避けるため3ブロック構成とし、オーディオと電源部は、70μmmの銅箔パターン採用で、オーディオ部は左右チャンネル対称型パターン。電源部はOFCバスパー採用が特徴である。その他高音質パーツとして、電源コード、配線材料のOFCコード、独自のガラスケース電解コンデンサーと黄銅キャップ抵抗などがあり、筐体の脚部は、アナログプレーヤーとは異なるが、特殊な振動減衰率の高い材料を使ったインシュレーターで、外部振動をシャットアウトし、光学系は、さらに筐体内部でフローティングをする構造である。
 横能面は、フルモードのワイヤレスリモコン装備で、ダビングに便利なポーズプログラム機能と積算時間表示、プログラム内容を示すトラックディスプレイ3種のリピート機能、2連マニュアルサーチなどの他、サブコード出力をも備える。
 あらかじめ、電源が入っていれば、プレイ開始からの音の立上がりは平均的で、約2分間程度で本来の音になる。
 柔らかく豊かで、質感の優れた低域をベースに、安定した響きをもつ中低域と適度に密度感のある中域、素直な高域がナチュラルなバランスを聴かせる。音色は明るいタイプで、音場感情報は充分に豊かであり、デジタル的な印象がなく、音楽を活き活きとブレゼンスよく聴かせるあたりは、独特の魅力であり、これは、楽しい。