黒田恭一
ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイントの試聴メモ
カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶弦のピッチカートも木管楽器のフレーズも細めにひびく。
❷あいまいにはならないが、さらにすっきりしてもいいだろう。
❸フラジオレットの効果は示せている。
❹ピッチカートがふくらまないのはいい。主旋律のひびきも豊かだ。
❺クライマックスでは、迫力はあるものの、少しきつくなる。
モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像はほどほど。ただひびきにもう少し力がほしい。
❷各楽器の音色は、無理なく、示すので、対比はついている。
❸室内オーケストラならではのひびきのさわやかさがある。
❹本来はなにげないフレーズだが、少しきわだたせすぎるようだ。
❺鮮色だが、ひびきの特徴をかなりクローズアップする。
J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶残響を適度にひろっているが、音像は小さい。
❷子音を強調ぎみに示す。接近感はあきらかだ。
❸クラリネットの音色をよく示すが、ひびきのとけあいはよくない。
❹はった声は、硬くなりがちで、耳ざわりになる。
❺一応きこえるが、エフェクティヴとはいいがたい。
「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶定位はかならずしもすっきりとは示さない。音像は大きめだ。
❷残響をひろいすぎているので、鮮明とはいえない。
❸ひびきに敏捷さがたりず、幾分不鮮明になる。
❹もう少しすっきりきこえてもいいだろう。
❺一応のびてはいるが、すっきりした気配にとぼしい。
浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色対比は充分だが、音場的には、ひろがりがとれない。
❷奥へのひきがかならずしも充分でない。
❸音は、重くなって、ひきずりがちのために、浮遊しない。
❹前後のへだたりは充分とはいえない。
❺しのびこみ方がしぜんでなく、ピークで刺激的になる。
アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶透明感はたりない。ひろがりもとれない。
❷音像は大きく、はりだしてきこえる。
❸他の楽器のひひきにうめこまれがちだ。
❹一応の成果をあげる。かなりめだってひびくからだ。
❺ことさら耳をすまさなくてもきこえてくる。
ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶きりっとひびかず、幾分かげりがちになる。
❷ひびきの厚みがでにくい。薄味なひびきでとどまる。
❸さわやかにひびくとはいいがたい。
❹乾いた音ではきこえるが、シャープさが不足している。
❺言葉はききとれるが、ひびきにさわやかさがたりない。
ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶大きな箱の中でひかれているかのようにきこえる。
❷指の動きはききとれるが、特にあざやかとはいえない。
❸消え方は充分とはいいがたく、余韻はとぼしい。
❹力強さは感じられるが、こまかい音の動きが鮮明とはいえない。
❺音色の差はあきらかだが、音像の面で問題がある。
タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶つっこみが弱い。切りこんでくるとはいいがたい。
❷ひびきの目がつみすぎているためか、本来の成果が示されない。
❸おしだすようにして前の方できこえる。
❹後方からはきこえるが、接近感は充分ではない。
❺力強くひびくが、切れ味するどいとはいえない。
座鬼太鼓座
❶一応の距離的なへだたりは感じとれる。
❷脂っほいひびきになってしまっている。
❸きこえなくはないが、かなり耳をすますことが必要だ。
❹力強さは感じられる。しかし大きさは感じとりにくい。
❺ききとれる。かなりめだってききとれる。
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