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マイクロ MA-505

岩崎千明

週刊FM No.12(1976年発行)
「私の手にした新製品」より

 アームは、理屈からいってもスプリングで針圧を加えるダイナミック・バランスが絶対良い。針圧にカウンター・ウェイトをずらして重力を利用したスタティック・バランス型の場合、アームは必ずアンバランス状態にある、ということになる。だから、ちょっとレコードのソリや偏心、あるいはプレーヤーの傾きは針圧に比例してアンバランス状態を招き、実際の使用状態で理論通りの働きをしてくれない。理想とはほど遠い状態にさらされているのがディスク再生の現実なのである。ところがダイナミック型は、かんじんの針圧加圧用のバネ自体を均一に作るのが難しい。だからダイナミック・バランス型アームはスタティック型にくらべて製品が格段に厄介だ。だから国産品は最近まではなかったし、海外製でもまれだ。軽針圧用にも使えるマイクロのMA−505がなぜ良いか、その基本的理由は以上のようだ。
 さらに中でも、この針圧を自由に変えられるのもダイナミックならではだがMA−505の場合「インサイドフォース・キャンセラー」から「高さ調節」まで演奏中に調節できるというのは驚きだ。超低域の響きがどっしり、スッキりするだけでなく、音楽の音全体が安定して、それは同じカートリッジと思えぬくらいの変わり方だ。トレースの安定向上という点だけにとどまらない飛躍ぶりは一度使えば誰もが痛烈に思い知らされるはずだ。ただし、この構造では止むを得ぬとはいうものの、デザインがあまりに武骨なのが残念だ。

マイクロ DQX-1000+MA-505S

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

●オルトフォンMC20で聴く
 音像は大きめだ。声のなめらかさをよく示すものの、表情が大きくなりがちだ。弦楽器によるピッチカートのひびきにしても、たっぷりひびいて、幾分ふくらみぎみだ。リズムのきれも甘めである。

●デンオンDL103Sで聴く
 このカートリッジのひびきとしては異色なことだが、音像は大きい。クラリネットのひびきのなめらかさなどよく示すが、もうひとつひきしまったひびきがきけたら、全体としてのまとまりはさらによくなっただろう。

●シュアーV15/IVで聴く
 たっぷりしたひびきへの反応はいい。ただ、おしむらくは、少しふくれぎみになることだろう。鋭いひびきも、とりわけ低い方でのものが、まろやかになるので、おっとりした印象だ。

マイクロ DQX-1000 + MA-505S

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 恰幅がいいというべきか、全体的にたっぷりひびく。だからといって、さまざまなひびきが押し出されてくるというわけではない。そのために、まろやかなひびきは、まろやかに、なめらかに示されて、このましい。その点にこのプレーヤーシステムのチャーミング・ポイントがあると考えるべきだろう。
そのひびきのまろやかさが、シャープなひびきと十全に対比されたときに、まろやかさの魅力をつつがなく示しうるということも、どうやらいえるように思う。とりわけ、低域のひびきが、もう少し筋肉質になるというか、ひきしまるというか、くっきりすると、恰幅のよさがさらにはえるのではないか。メロウなひびきと、骨っぽいひびきとの対比が、もう一歩という印象だ。
 全体にまろやかに傾くというのは、それはそれで、ききやすさにつながるということもいえなくもないが、細部の音の動きのすべてをききとろうとするときに、多少のむずかしさがある。おっとり、ふっくらしたひびきが、ときには、きりりとひきしまったら、さぞや立派なひびきになるのだろうが。

マイクロ MA-505X

菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

安定したトレース性能をもつ使いやすい高性能トーンアーム。