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Lo-D HS-530

黒田恭一

ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイントの試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ピッチカートは湿りがちだが、木管のまろやかさはいい。
❷奥の方にひろがるが、スタッカートのシャープさはたりない。
❸フラジオレットの特徴は一応はこのましく示されている。
❹第1ヴァイオリンのひびきはかなり魅力的。
❺クライマックスでひびきが硬くなるが、つぶれない。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像は幾分大きめだが、音色的にはこのましい。
❷音色的な対比はついているものの、もう少しすっきりしてもいい。
❸軽やかさは不足ぎみ。こまやかな反応とはいいがたい。
❹ヴァイオリンの音色は、硬くならずこのましい。
❺音色的には、音像が大きくなりがちだ。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶声にまろやかさがある。近づいてくる感じもつかめる。
❷声についている残響が強調される傾向がある。
❸クラリネットの音色も、オーケストラと声のコントラストも良。
❹はった声が硬くなっている。ひびきにのびやかさが不足のためか。
❺オーケストラの各楽器のきこえ方に無理がない。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶メンバーの並び方は、ほとんどわからない。
❷声に残響がつきすぎているので、言葉はかなり不鮮明だ。
❸子音のたち方が弱いために、言葉がききとりにくい。
❹ひびきに軽みがないので、各声部の動きはききとりにくい。
❺充分に残響をともなって、まろやかだ。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的なコントラストはついている。奥ゆきもとれている。
❷クレッシェンドは自然だが、透明感に不足している。
❸ひびきに重さがあり、そのために浮遊感は感じとりにくい。
❹一応のへだたりは感じさせるが、ひろびろとはしない。
❺ふくれあがり方は自然だが、ピークで金属的な音になる。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶なめらかにひびくところはいいが、ひろがりはたりない。
❷ギターの音像がふくれがちだ。せりだしてくるのはわかる。
❸ひびきの特徴をきわだたせないために、アクセントがつかない。
❹きこえるが、他のひびきの中にうめこまれがちだ。
❺ききとりにくい。なめらかさが優勢のためか。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶とげとげしないのはいいが、もう少しシャープでもいいだろう。
❷厚みは感じとれる。ベースのひびき方はこのましい。
❸乾いているとはいいがたいが、一応の成果はおさめている。
❹つっこみの鋭さは示す。ひきずってはいない。声も良好だ。
❺言葉のたち方もよく、バックコーラスの効果もでている。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶力感があり、スケール感も、十全とはいえぬが、まずまずだ。
❷鮮明にききとれる。なまなましさもある。
❸誇張駆んなく消え方を示しているところがいい。
❹こまかい動きが、ほんの少しあいまいになる。
❺音量的にペデルセンのものの方が大きいようにきこえる。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶シャープとはいいがたいが、一応の効果はあげる。
❷もう少し鋭くてもいい。力は感じさせる。
❸音像的に大きくなりすぎているので、おしつけがましくなる。
❹距離感はある。接近も感じとれるが、もうひとつすっきりしない。
❺幾分ふくれぎみのため、メリハリがつきにくい。

座鬼太鼓座
❶尺八の比較的近くでひびいているように感じられる。
❷ひびきは、幾分脂っぽく、尺八らしさが希薄だ。
❸ききとれるが、かならずしも充分ではない。
❹スケール感がたりない。力強さは感じさせるが、消え方はきこえない。
❺ききとれなくはないが、きわめて弱い。

Lo-D HS-530

瀬川冬樹

ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より

 このメーカーの製品は、置き方(台や壁面)にこまかな注意が必要で、へたな置き方をして評価すると、このメーカーからは編集部を通じてキツーイお叱りがくるので、それがコワいから、できるかぎり慎重に時間をかけてセッティングした……というのは冗談で、どのスピーカーも差別することなく、入念にセッティングを調整していることは、ほかのところをお読み下さればわかっていただけるはず。
 さてHS530は、本誌で標準に使っている約50cmの台では、少々高すぎのようで背面を壁にぴったりつけても、もう少し低音の量感が欲しく思われたので、約20cmの低い台に代えて、背面はやはり壁につける形に設置した。もう少し台を低くして低音をいっそう補いたかったが、そうすると中~高音のバランスがくずれるので20cm台であとはアンプのトーンコントロールで、ほんの少し低音を増強ぎみにセッティングした。こういう形で低音を補強しても、低音がブーミングを生じたりせずに、パワーを上げても全音域でよくバランスを保って、にごりのないきれいな質の高い音を鳴らす。まじめな性格の音なので、アンプもCA2000のようなタイプの方が統一がとれる。
 空間的な広がりや響きを表現しにくいが、しかし直接音成分自体は、相当にきちんと鳴らすタイプで、そういうせいかカートリッジもシュアーのV15/IIIをよく生かした。