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オルトフォン FF15E MkII

菅野沖彦

最新ステレオ・プラン ’78(スイングジャーナル増刊・1978年7月発行)
「タイプ別本誌特選スピーカー42機種紹介・MMカートリッジ特選4機種2万円未満」より

 オルトフォンは確かにカートリッジの専門メーカーであることに間違いないが、実際にはレコードをつくるカッティング・マシン、メッキ・システムなど、すべてレコードのマニファクチァリングのファシリティーをつくっているメーカーである。従って、レコードのことについては非常によく知っているわけである。
 そういうメーカーであるから、そのメーカーが開発するカートリッジが非常にすばらしいということは充分納得のいくことでもある。また、オルトフォンのカートリッジはあらゆるカートリッジ・メーカーの一つのお手本になっていると言ってもいい。
 そのオルトフォンが、ステレオLPレコード時代に入り、MC型のSPUシリーズでたいへんな好評を得、そして、さらにワイドレンジに製品のバリエーションをつくった。従来のMC型は生産効率も悪く価格も高いということから、大きく言えばMM型の一部に含まれる、つまり、コイルを動かす方式ではなく、オルトフォン独自のVMS(バリアブル・マグネティック・シャント方式)という、インデュースト・マグネットに近い方式の製品も手がけるようになった。その中でFF15EMKII、もちろんMKIIになる前はただのFF15Eだったが、普及クラスの価格の中できわめて品質の安定したカートリッジとして登場したものだ。
 このシリーズの中には、F15、FF15、さらにその高級版にはVMS20Eといったバリエーションがあるが、これらは基本的にはほとんど違わず要するに、非常に効率よく生産的につくっているということで、F15、FF15の実力は、実際のところ高級品VMS20Eなどとそう大きくは違わない。ただ、つくりやすくしているために、多少ムービンク・マスなどが大きい。そのために高域の特性がVMS20Eに比べ、それほど高いところまで伸びていないが、しかし、実際に使って音を聴いてみると、そのバランスのよさと使いやすさという点では、全く何の不足もないと言っていい。
 実際、1万円を切る値段の輸入力ートリッジで、これだけの信頼性とすばらしい音を聴かせてくれるカートリッジは、そうざらにはないだろう。
 そういう点で、オルトフォンという一つのすばらしいカートリッジの専門メーカーのブランド・イメージが、使う間にプレステージとして働きかける満足感のみならず、その満足感と相まって、実用的なパフォーマンスも非常に高いということが言えると思う。
 オルトフォンのサウンドは従来から一貫したバランスをもっており、私たちはそれをよくピラミッド型の音のバランスと言っているが、非常にしかっかりした重厚な低音にささえられ、その上に三角形のバランスのとれた帯域バランスをもっている。このFF15Eもそうしたバランスをいささかも損ねていない。具体的に言うと、非常に鮮明な音のするカートリッジで、その点でウォームな音のするカートリッジのグループとはやや趣きを異にするというのが、このカートリッジの持ち味であり、MM系に属するカートリッジ・グループの中では、やはり非常にすばらしいカートリッジだと言わざるを得ない。
 不思議なことに、メーカーそのものは意識をしていなくても、デンマークのオルトフォンという会社の体質が明らかに残っているということは、やはりこのカートリッジの存在の必然性をわれわれに感じさせる。

オルトフォン FF15MKII

菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

いかなるレコードも着実に再生するお買得な製品。

オルトフォン FF15

岩崎千明

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 オルトフォンの中域から低域への力強く豊かなサウンドを主軸に、ややソフトな中高域とくっきりした高域で海外製らしく幅広い音楽に応じられ、トレースの安定性も優秀。