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アキュフェーズ E-303

瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 プリメインタイプの最高機をねらって、著名ブランドがそれぞれに全力投球している中にあって、発売後すでに3年近くを経過しながら、E303の魅力は少しも衰えていない。特別のメカマニアではなく、音楽を鑑賞する立場から必要な出力や機能を過不足なく備えていて、どの機能も誠実に動作する。ことにクラシックの愛好家なら、その音の磨き上げた美しさ、質の高さ、十分の満足をおぼえるだろう。操作の感触も第一級である。

アキュフェーズ E-303

瀬川冬樹

ステレオサウンド 57号(1980年12月発行)
特集・「いまいちばんいいアンプを選ぶ 最新34機種のプリメインアンプ・テスト」より

●総合的な音質 まず一聴して、とてもきれいで滑らかな音という印象を与える。これは最近のアキュフェーズのアンプに一貫した特徴ともいえ、一部には、この音を美しすぎ、あるいはその美しさがやや人工的と評する人もいる。どちらかといえばややウェット型の、中~高域に特徴を感じさせる音だが、基本的な音の質が練り上げられ、緻密な音に支えられると、この音色はひとつの特徴として立派に生きてくる。
●カートリッジへの適応性 オルトフォンVMS30/IIでのベートーヴェン第九(ヨッフム)のプレイバックでは、第四楽章のコーラスとオーケストラの音の溶け合い、ハーモニーがたいへん美しく、テノールも金属的な響きにならずに滑らか。トゥッティの部分での奥行きの深さがよく再現され、各楽器のバランスも良好。「サンチェスの子供たち」でも、中域から低域にかけての支えのしっかりしているわりに、ローエンドをひきずることがなく、切れこみがよく、いくぶんウェットだが十分楽しめる音を聴かせる。エムパイア4000DIIIでも音がウェットになる傾向はあり、この組合せに関してはもっと乾いた音をよしとする人もあるだろう。エラック794Eで傷んだレコードをトレースすると、軽いヒリつきぎみのノイズがまつわりつく傾向があるが、全体としては美しく聴かせるタイプで、古いレコードのプレイバックも安心してできる。
 内蔵のMCヘッドアンプにも、本機の基本的な性格に共通した、独特の音の艶、鮮度の高さがあり、中~高域がくっきりと艶やかにきわ立ってくる。そこを支える低音の力もしっかりしているために、音がうわついたりすることなく、バランスもよいことで楽しませる。オルトフォンMC30のえもいわれぬ魅力をたいへん美しく聴かせてくれる点、プリメインのMCポジションとしては随一といえるかもしれない。デンオンDL303ではノイズはいっそう減少し、アンプ自体がいくぶん女性的な音を聴かせるにもかかわらず、意外といえるほど音の支えがしっかりし、303の弱点である、時として細くなりがちな音をほどよく整える。したがって、外附のトランスその他は、ノイズレベルがほとんど耳につかないところまで改善されるというメリット以外には、必ずしも必要はないといえるほどだ。
●スピーカーへの適応性 アルテック620Bカスタムを、相当程度まで魅力的に鳴らすことができ、このことからも、いろいろなスピーカーの魅力を抽き出し、生かすタイプのアンプということができる。
●ファンクションおよび操作性 MM/MC切替え、インプット切替えおよびスピーカー切替えはすべて、ミューティングスイッチが約1秒のタイムラグで動作するため、ボリュウムを上げたままで切替えても、ノイズは全く出さない。フォノ聴取時チューナーからの音洩れも全くない。
●総合的に いわゆる高級プリメインアンプの名作が数多くある中でも、きわ立って音の魅力を美しく抽き出すタイプで、たいへん好感をもった。

チェックリスト
1. MMポジションでのノイズ:小
2. MCポジションでのノイズ:小
3. MCポジションでのノイズでの音質(DL-303の場合):3
4. MCポジションでのノイズでの音質(MC30の場合):2+
5. TUNERの音洩れ:なし
6. ヘッドフォン端子での音質:3
7. スピーカーの特性を生かすか:2+
8. ファンクションスイッチのフィーリング:3
9. ACプラグの極性による音の差:小

アキュフェーズ E-303

瀬川冬樹

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「JBL♯4343研究(2)」より

 アキュフェーズ初期の音から、新シリーズは少し方向転換したという印象を受けた。セパレートのC240+P400などを聴いても、明らかに音の傾向を変えた、というより、アキュフェーズとしてより完成度の高い音を打ち出し始めたと思う。それがE303にも共通していえる。たとえば、弱音にいたるまで音がとても滑らかで、艶というとオーバーかもしれないが、いかにも滑らかな質感を保ったまま弱音まできれいに表現する。本質的に音が磨かれてきれいなため、パワーを絞って聴くと一見ひ弱な感じさえする。しかし折んょウを上げてゆくと、あるいはダイナミックスの大きな部分になると、音が限りなくどこまでもよく伸び、十分に力のあるアンプだということを思わせる。
 マランツPm8の音のイメージがまだ消えないうちに、このE303を聴くと、Pm8ではプリメインという先入的イメージの枠を意識しなくてすむのに対して、E303は「まてよ、これはプリメインの音かな」とかすかに意識させる。言いかえるとPm8よりややスケールの小さいところがある。しかし、そのスケールが小さいということが、このE303の場合は必ずしも悪い方向には働かず、むしろひとつの完結した世界をつくっているといえる。Pm8ではプリメインの枠を踏み出しかねない音が一部にあったが、E303はこの上に同社のセパレートがあるためかどうか、プリメインの枠は意識した上で、その中で極限まで音を練り上げようというつくり方が感じられた。たとえば、「ザ・ダイアログ」でドラムスやベースの音像、スケール感が、セパレートアンプと比べると心もち小づくりになる。あるいはそれが、このアンプ自体がもっているよく磨かれた美しさのため、一層そう聴こえるのかもしれない。これがクラシック、中でも弦合奏などになると、独得の光沢のある透明感を感じさせる美しい音として意識させられるのだろう。
 内蔵MCヘッドアンプのクォリティの高さは特筆すべきで、オルトフォンMC30が十分に使える。Pm8では「一応」という条件がつくが、本機のヘッドアンプは、単体としてみても第一級ではないだろうか。
 総じて、プリメインアンプとしての要点をつかんでよくまとまっている製品で、たいへん好感がもてた。

アキュフェーズ E-303

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 従来のイメージを完全に一新したソフトで大人っぽい表情のデザインをもつプリメインアンプである。回路構成は同社オリジナルの完全対称型プッシュプルを全段増幅に採用し、DCアンプ構成、トーンコントロール段にはサーボ方式が導入されている。パワー段には、MOS・FETパラレルプッシュプルで130W/130Wの出力だ。E303は、音の粒子が細かく十分に磨かれているため、滑らかで柔かく、かつクリアな音をもっている。クォリティは十分に高く高級機としての完成度は高い。