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パイオニア CS-810

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 かなり図太い音のスピーカー、というのが第一印象として強い。最近のパイオニアのスピーカーは総体に音像をシャープに鳴らすというよりむしろやわらかくまるめて聴かせる傾向と言え、cS810もその例に洩れない。ことに中域から低域にかけてウエイトを置いて高域をまるめこんだというバランスのとりかたは、国産では最近のフォステクス製品などと一脈通じるつくりかたといえる。中低域に厚みをもたせ、高域を適度にカットする方向は、以前のARやKLHなどが手本になっているとも思われるが(最近のARは少し方向が違ってきたが)、どういうわけか国産の技術あるいは国産の材質、もしくは日本のエンジニアの耳でそれを作ると、困ったことに中低域がふくらみすぎて、しかも妙に箱の中の共鳴音のような感じのこもった音が総体に音を濁してしまう例が多い。したがって音の格調を損ないやすく、押しつけがましい、厚手の感触になる。こういう重い音を好きな人があるのかどうかは理解の外のことなのだが、これは音の重量感とか厚みと言う印象よりも、反応の鈍さ、音質の濁りなどのマイナス面の方を強く感じさせてしまう。高、中、低各音域の質感も少しずつ違う。

周波数レンジ:☆☆☆
質感:☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆
解像力:☆☆
余韻:☆☆
プレゼンス:☆☆
魅力:☆☆

総合評価:☆☆★

パイオニア CS-810

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 全体に音の抜けが悪いし、中高域の連続性もスムースではなくバランスが悪い。音質的には部分的によさも感じられるが、全体に統一されていないことは、システムとしては高く評価出来ない。オーケストラの量感も貧弱だし、かといって小味な室内楽でもまとまりが悪いから音楽にならない。ジャズの場合も音がやせていて演奏者たちの息吹が伝わらず、死んだ音になる。結局、音づくりの派手なポピュラーのソースでしか、納得がいかなかった。