瀬川冬樹
ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より
とてもバランスの良い、上質の響きを持ったスピーカーだ。価格の割には小型で、低音弦の胴鳴りのようなスケールの大きい響きまでを実感的に鳴らそうというのは無理だが、たとえば、カラヤン/ベルリン・フィルのエグモント序曲の場合など、この価格帯の製品の中でもことに好ましいバランスで、適度の厚みもきめの細かさもあり、内声の動きも問題なくすべてバランスして、緻密に、ユニゾンの響きも美しく聴きほれさせる。低音から高音までのバランスのとり方は、国産でいえばSX551にどこか似ているともいえるが、それよりももう少し抑制の利いた光沢を感じさせるところがやはり海外製品だ。ただしブラウンやヘコーから予想するような、かつてのドイツのスピーカーに際立っていた硬質な音はこの製品からはあまり聴きとれない。それだけいわばインターナショナルな方向に磨きをかけた音になっているわけだ。低音のファンダメンタル領域の厚みを欠くためか、わずかながら冷たい傾向の音質だが、なかなかいい味わいを持った製品だった。
最近のコメント