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ハーマンカードン Citation 17

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 以前のセパレートアンプ特集号で旧型の♯11と♯16の組合せを聴いたときの印象では、低音域に独特の厚みと力が感じられて、下半身肥大のようなプロポーションで、しかもかなり厚着したような音だと思ったが、改良型にあたる♯17と♯16Aでは、そうした動きの鈍さあるいは重さがすっかり取除かれて、シャープで反応の早い現代ふうの音に変ってきている──と、一聴したときは思ったのだが、どうも基本的には解像力がもうひと息ともなわないところにそれを補うかのようにかなり鋭い音をちりばめたというように、いささかちぐはぐな鳴り方をする。かなり細い感じなので、イコライザーの150Hzのポジションをわずかに増強してみると、バランス的にはこの方が安定した。

ハーマンカードン Citation 17

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せでは、オリジナルの♯16Aとの場合よりもマッチングが良いとはいえない。聴感上での周波数レンジはナローレンジ型で、バランス的には低域の量感は出るも、軟調で音色が重く暗くなり、ダンピングがかなり甘い。中域は粒立ちが甘く、中高域は予想よりも高質さが出てくる。
 全体におだやかでゆとりはあるが、反応が遅く、音楽のテンポが遅くなったように感じられる。今一歩、反応のシャープさが欲しい。
 ステレオフォニックな音場感は、標準的には広がるが、空間の広がりが少し狭く感じられ、音像は甘いタイプである。

ハーマンカードン Citation 17 + Citation 16A

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 国産でいえばビクター7070の中〜高域の華やかさと、パイオニアC77の身振りの大きさを合わせて、そこにアメリカふかのスケールを加えたという印象の、相当に特徴のある音がする。饒舌ともいえるし、説明過剰、あるいはハイコントラスト、硬調……そうした表現を使いたくなる音で、その傾向は、単体のところでも書いたようにコントロールアンプ、パワーアンプの両方にあるが、しかしどちらかといえば16A(パワーアンプ)の方が全体の音色を支配していそうだ。たとえば「オテロ」の冒頭のトゥッティのところでも、いかにも大見栄を切っているという感じ、大上段にふりかぶった感じがあって、大舞台でのドラマがきわめて劇的に進行してゆくかの観がある。なんともおもしろい個性ともいえるし、やはりこれはアメリカのアンプでなくては鳴らせないスケール感だともいえる。ただ、変に厚着した音でないことは、弦楽四重奏などでは意外に線の細い表現もできることからも聴きとれる。

ハーマンカードン Citation 17, Citation 16A

ハーマンカードンのコントロールアンプCitation 17、パワーアンプCitation 16Aの広告(輸入元:ハーマンインターナショナル)
(オーディオアクセサリー 8号掲載)

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