瀬川冬樹
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
現代アームのあり方に再び問題提起した点、さすがに元祖の貫禄。
瀬川冬樹
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
現代アームのあり方に再び問題提起した点、さすがに元祖の貫禄。
菅野沖彦
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
最高級アームの典型を現時点で設計し直した高級機。
井上卓也
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
スケールモデルエンジニアリングらしい超精密工作はものすごい魅力。
井上卓也
ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より
最近では、オーディオ製品の性能が止まるところを知らぬように向上し、次々に最新技術を導入したモデルが登場しているが、趣味的な面から考えると、実用性が前面に押し出されてきたために、直ぐに使える性能が高いものが多く、当面は使う予定はないが、手もとに置いて眺めるだけで楽しいという製品は皆無に等しい。この点では、SMEのトーンアームは、例外的な存在であり、デザイン、性能、機能、精度を含めて抜群である。
瀬川冬樹
ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より
トレーシングの安定さ、アーム自体の音質の良さ、感度の良さ……等、データ的にはSME以上の製品もいまならもう珍しくないが、漆黒の盤面をトレースしてゆくのを眺めるだけでも、いかにも良い音楽が聴こえてきそうな気分にさせるアーム、というのは、SMEを除いてそうザラにないだろう。
瀬川冬樹
ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より
SMEの設計者で創設者のA・ロバートソン・エイクマンは、精密模型を作る工場の経営者だった。SMEの名は当時の Scale Model Engineering 社の頭文字をとったものだ。模型といってもたとえば、メーカーが製品を作る以前の試作を請負ったり、博物館に展ホする原寸あるいは縮尺の模型などを作る工場である。大英博物館の展示品の中には、当時の作品がいくつもあるという。したがって、各種の工作機械や成型機械ないしはメッキや塗装の設備まで、精度の高い工作をする下地は揃っていた。
メカニズムに強いエイクマンは、オーディオファンのひとりとして、当時のアームの構造や工作の精度や仕上げなどに、強い不満を抱いて、自分なりにアームを勉強し動作を解明しながら、理想のアームの設計と試作をくりかえしていた。そして一九五九年に、最初の製品であるSME3012の市販をはじめた。
たまたま当時のエイクマンが、オルトフォンのSPU−GT/E型を愛用していたことから、オルトフォンと同じプラグイン・ロックナット締つけのスピゴット方式で、オルトフォンG型ヘッドシェルを交換できるように作った。これがのちにオルトフォンよりも有名になって、〝SME型のコネクター〟と通称されるようになり、現在ではわが国で作られるアームのおそらく九割以上が、このコネクターを踏襲し、カートリッジの互換性を容易にしている。
SMEの特徴は、第一に垂直動の軸受けにナイフエッジを採用したのをはじめ、動作部分の各部に良質の素材を精密加工してアームの動作を鋭敏かつ軽快に保っていること。第二はスタティックバランス型アームを基本から解明した結果、ラテラルバランサーやオーバーハング調整、インサイドフォースキャンセラーなどの独創的なメカニズムを加えたこと。第三に軽針圧型の精密アームの操作を容易にするため、オイルダンプ式のアームリフターを設けたこと、であろう。今日では常識のようになっているこれらの考案のほとんどがエイクマンの独創であった。
クローム梨地メッキを主体とした各部の加工と仕上げは、高級カメラを凌ぐ手のこんだ工作で、見事なデザイン(英国工業デザイン協議会= CoID をはじめ各種の賞を受賞している)もSMEの魅力のひとつだろう。アームの構造や動作原理を知らない人が見ても、それはいかにも精密で美しく、しかもこのアームはあたかも生きもののようにやわらかな感じでレコードを優しくトレースしてゆく。見ているだけでも信頼感に満たされる。
何度もこまかな改良が加えられたが、3年前に Improved 型で大改良をして、最近の軽針圧/ハイコンプライアンス型のカートリッジ専用として、最大針圧1.5g以下の設計に徹してしまった。かつての広範囲なユニバーサリティを捨ててしまったことは、ちょっぴり残念な気分だが、世界的にはますます評価が高く、現在では毎月約3000本前後が生産されているそうだ。この種の製品としては異例なほど量が多い。
瀬川冬樹
ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より
カートリッジ自重の適応範囲及び針圧可変範囲が旧型より狭く、軽針圧専用に徹してしまったが、性格を正しく理解して使えば、仕上げの美しさも含めてやはり第一級のアーム。
岩崎千明
ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より
いわずとしれたSME、その新型は簡素化され、自然な操作で馴染む良さとバランスの長所を一層向上し、軽量アームのマニア用としてますます使いやすくなったインプルーブド型。
井上卓也
ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より
軽針圧カートリッジ用にモディファイされたSMEのユニバーサル型トーンアームである。もはや表現することすら出来ない美しいデザインは、持つことだけでも喜びである。
菅野沖彦
ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より
イギリスSME社のナイフエッジ式のトーンアームは最高級アームとして世界に君臨するにふさわしい安定した動作と高い感度をもっている。優美な姿体も魅力的である。
瀬川冬樹
ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)
特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より
ごく初期に少数市販された製品は、軸受まわりが現在のようなオムスビ型ではなく、丸いリングを切りっぱなしで、その他細部も今ほど練り上げられていない。山中敬三氏の話ではそれ以前にもっと別の試作品に近い形の製品もあったらしいが、一応現在のスタイルで市販されてからでもすでに15年。その間幾度かマイナー・チェンジが施されている。こういう年月を経て名器が完成するという代表的なサンプルだろう。
菅野沖彦
ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)
特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より
SMEのアームは、なんといっても精度、信頼性、美しいデザインで世界の一級品だと思う。私の手許には旧型がもう10年も使いっぱなしになっているが、全くのノー・トラブル。オルトフォンのSPU−GTの様に自重の重いカートリッジから、細菌の軽いものまで不満は特にない。インプルーブドは、ハイ・コンプライアンス・カートリッジ用に設計を調整したもので、味わいは旧型に劣る。しかし、やはりこれは最高級の品位を持つ。
瀬川冬樹
ステレオ 4月号(1970年3月発行)
「世界の名器」より
英誌「グラモフォン」にSMEという聞き馴れないブランドのピックアップ・アームの広告を見たのは、10年以上も昔のことだったろうか──。どういうわけかイギリスという国は、古くから変わった形やユニークなメカニズムのピックアップを生む国である。ざっと思い出しても、フェランティ、リーク、B・J、デッカ……割合新しいところではオーディオ&デザイン、トランスクリプター等々……。
それぞれに独創に富んだ名品の中で、ひとりSMEだけか、アメリカや日本の、オーディオ・マニアをはじめとする国際的な名声と王座をかちえたというには、それなりの理由が十二分にある筈だ。
むろんSMEも、発表当初から現在のようなあかぬけた姿をしていたわけではなかった。その初期の製品3012型は、朝倉昭氏がサンプルとして入手されたものあたりが、日本で最も早かったものではないかと思う。現品を見せて頂いてからすでに10年の時が流れているが、当時のものは、現在のナイフ・エッジ支持部の三角形の山が無く、円筒をちょん切っただけのような素気ない形をしていたし、記憶がまちがっているかもしれないが、アームはアルミでなくステンレス・パイプだったように思う。キューイング・リフターのレバーの把手は、球形の黒いベークライトで、この形などは今のものよりわたくしは好きだ。それにしても、このアームは構造も動作もこれまでにない新しい考え方がとり入れられて、現物を手にしても、複雑な操作箇所のすべてを理解するまでには、かなりの時間を必要とした。
*
SMEが、このきちがいじみたほどのめんどうな構造にもかかわらず、広くオーディオ・マニアに受け入れられたというのは、その広範な操作のひとつひとつが、極めて合理的、機能的に調整できて調整後の動作が非常に安定していることが第一にあげられる。とくに、ユニバーサル・アームの最大の問題点であったカートリッジ交換のシステムとして、それより以前にオルトフォンがすでに自社のアームに使っていた(つまりオルトフォン規格の)スクリュー・バヨネット・コネクターをそのまま採用したので、初期のSMEには、オルトフォン製の(指かけの裏にメイド・インデンマークの刻印のある)黒いプラスチックのシェルがついていたことをご承知のかたもおいでだろう。
どういう理由があったにしても、SMEがオルトフォン方式を「頂いた」ことは結果として甚だ賢明だったわけで、その後にもいろいろなカートリッジ交換法が発明されているものの、取付寸法以外にはカートリッジの寸法の規格というものの殆んどない現状で、あらゆるカートリッジを自由に交換するにはこのSME/オルトフォン方式が最も合理的であることに異論がないと思う。
その後ほどなく、SMEは現在のアロータイプの独特のアルミ合金プレス・ヘッドシェルに変わり、さらに現在のようなスクリーン状の超軽量シェルに変わった。この孔あきシェルも、最初の製品は今よりも薄く弱い材料で孔の数も多く、指先でひねりつぶせるほどキャシャだったが、すぐに共振などの悪弊に気がついたらしく現在のものに改められているが、しかしわたくしは内外のごく一部のハイコンプライアンス・タイプの製品を除いた多くのカートリッジに対して、現在の製品でもまだ軽量化のゆきすぎと強度の不足を感じている。またアーム本体についてみても、最近の製品になると製造工程をいわゆる「合理化」したのだろうが、やや量産製品的なラフさと、バランス・ウェイトまわりの使いにくさがあって、ウェイトが分割されていた以前の製品の方に、最盛期の完成した姿がみられるように思う。近ごろのものを分解してみると、ボール・ベアリングに MADE IN JAPAN と刻印されていて驚かされたりするが、むろん本質的な性能そのものは、少しも落ちるどころかいまや安定した製品として、安心して使うことができる。
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さきにふれたヘッドシェル・コネクターをはじめ、針圧印加オモリ部分に針圧目盛を設けたこと、ラテラル・バランサー、インサイドフォース打消しのバイアス機構、オイル・シリンダー利用のアーム・リフター、アーム・ベースをスライディングすることによってトラッキングエラーを修整することなど、あらゆる部分が、これ以後のわが国のユニバーサル・アームにいかに多くの影響を及ぼしたかについては、ここで改めてふれるまでもない。
ところでそきユニバーサル(万能)アームだが、すでに拙稿「オーディオ・ソフトウェア講座」の中でも述べたように、SMEのユニバーサリティとは、一個のカートリッジに対して徹底的に合わせ込んでゆくその多様な可能性の中から一個の「完成」を見出すための、つまり五徳ナイフ的な無能に通じやすい万能ではなく、単能を発見するための万能だといえるのだと思う。その操作のために、アームの物理的特性を十二分に知る必要があるわけだ。
などといいなから筆者自身が、多くのカートリッジを交換するとついSMEの便利さに寄りかかりたくなるし、、調整が難しいと説きながらそういうときにはずいぶんいい加減ないじりかたをしてしまう。逆にいえば、やはりそれほど便利なユニバーサル・アームでもあり、ラフな調整でも結構安定に動いてくれるだけの適応性も併せ持っているわけで、そうでなくては、これほど多くの人たちに愛用される理由がない。
なおSMEは COID(英国工業デザイン協議会=1944年設立の政府機関)が毎年選定するデザインセンター賞で、1962年度の10点の商品のひとつに選ばれている。受賞当時のものは、さきにふれた円筒形のサスペンションとオルトフォン型シェルつきの旧型の♯3012型であった。設計者は A. Robertson Aikman と W. J. Watkinson である。
菅野沖彦
スイングジャーナル 10月号(1968年9月発行)
「ベスト・セラー診断」より
トーン・アームの最高級品は何かときくと、誰の口からも即座にSMEの3字が帰ってくる。SMEアームは現在のトーン・アームの王座にある。
SMEアームが英国から日本へ入ってきたのはずい分前のことだ。はっきりした記憶はないが、5年にはなるだろう。その間にオーディオ機器は急速な進歩をとげているし、特にプレーヤー関係パーツは軽針圧の傾向が大きく支配し、多くのカートリッジやアームが改良に改良という形で消えたり変貌したりした。しかし、SMEアームは細部のちょっとした変更以外、形を変えていない。しかも今だに現役として最高の性能を誇っているのである。この製品がいかに高い完成度をもっていたかが分ろうというものであるし、現在のオーディオ技術の水準を数年前に確保していたともいえるのである。現在のどれほど多くのアームがSMEに方向を指示され、SMEのもつ特性を追いかけたことか。そして、SMEが数年前に現れたことによって国産アームに対する一般の要求度が著しくシビアーで高度なものになったのも事実である。数々の新機構、当時として考え得た総てのアクセサリー類、最高の機質と精密な仕上げSMEアームはその完璧で安定した動作と、溢れるばかりの機械美、抜群の耐久性など、すべて私自身でたしかめた優秀製品なのである。価格の高いことも相当なものだが、実際に数年間使ってみると十分それに応えるものであることがわかる。手元の数台のプレーヤーにつけられた他のアームが、あるいはガタになり、あるいは動作が鈍くなって交換されていく中に、SMEのアームだけは全く買った時と同じ状態の外観と性能を維持しているのである。
SMEアームの特長について簡単にふれておくと、6つのポイントが考えられる。①ナイフ・エッジ方式による高感度、高耐久性の支持、②インサイドフォース・キャンセラー機構、③ラテラル・バランサー、㈬スライドベース方式、④油圧式、アーム・リフタ一機構、⑤ヘッド・アングル可変がそれである。これらの特長は現在では高級アームのほとんどが備えているから今更とも思えるかもしれないが、それらはすべてSMEによって初めて実現されたものといってよいのである。S. M. E. LIMITED, という会社は英国のサセックスにあるらしいが、もともと大変なオーディオ・マニアが自分の理想とする機構をすべて備えたアームを作ろうという夢から生れた製品であり、会社であるという。
ナイフ・エッジ方式というのは今でもあまり他に類がなく、これはアームの上下動方向の支持が鋭利なカミソリの匁先で支えられているものだ。左右の回転はベアリング式を採用している。この支持方式と精度の高さのためにアームの実効質量はそう軽くはないにもかかわらず、1グラム以下の軽針圧トレース、レコードのソリなどに対する追従性も見事な性能を発揮するのである。そして、それでこそ、かえってアームのマスの大きさが適応カートリッジの範囲を拡げてユニバーサルな特質をもつことに役立っている。トランス内蔵のオルトフォンなどの重いカートリッジから、穴あきの軽量シェルにつけた自重約10グラムの軽いものまでいずれにも優れた低域特性が得られる。インサイドフォース・キャンセラー機構はずい分批判もあびてはいるが、その後の多くのメーカーが踏襲している事実は否定できない。マニア気質の満足度というものを考えると、実害を示す以外に反論はできない。リフターはいまだにどの製品のものより動作確実で実用的。スライドベースはオーバー・ハング調整には絶対に有利。高価なのと扱いの難しさが欠点といえばいえるが、それこそぜいたくな楽しさというものだ。
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