ラックス MS-10

井上卓也

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ラックスといえば、現在に至るまで管球式のアンプを作りつづけるアンプ専業メーカーというイメージが強いが、創業以来50年をこすキャリアを誇るだけにプレーヤーシステムやスピーカーシステムの分野でも独自な発想に基づいた製品をタイムリーに開発し、つねに話題を提供してきたことを知る人も多いことであろう。
 今回発売されたMS10は、昨年の全日本オーディオフェアに展示された一連のスピーカーシステムのなかから最初に製品化されたものと考えられる小型ブックシェルフ型である。トールボーイ型のプロポーションをもつエンクロージュアは、箱の後面に複数個の小孔をあけエンクロージュア内部の空気圧をコントロールするマルチベントチューニング方式と名付けられたタイプで、密閉型ほどウーファーのコーンに圧力がかからず、バスレフ型のように共振点をもたずコーンの動きの非対称性がない特長をもつとのことだ。材料はハイダンプド硬質パーチクル板で内部には吸音とパーチクル板の振動を抑える目的で粘弾質含有発泡吸音材スーパーシールが貼付けられ不要輻射を低減している。
 ユニット構成は2ウェイ型で、20cmウーファーは、コーン材料にアラミド系繊維のネットに化学処理を施し加熱成型をした新素材を採用し、エッジはポリウレタンフォーム、ダンパーはコーンと同じ素材、フレームはアルミダイキャスト製バーアーム型と数多くの特長をもつ。2・5cm口径のポリエステルフィルムドーム振動板使用のトゥイーターは、ウーファーとのつながりを重視した素材選択の結果選ばれたもので広帯域、高耐入力設計によるものである。
 ネットワークは、景近その使用部品が注目されているところだが、ここでは低域側、高域側ともに18dB/oct型が採用され、ユニット相互間の干渉を少なくするため補正回路を設け、クロスオーバー周波数付近のマスキング効果の発生を防いでいる。素子のコイルは低損失型、コンデンサーはメタライズドフィルム型を使い、レベルコントロールは付属していない、いわゆる固定型である。なお、スピーカー端子は太いコードでも確実に接続できるリード挿入式の大型ターミナルである。
 MS10のもっとも大きな特長は、アラミド系繊維をウーファーコーンに導入したことにある。各種のプラスティック系の材料を応用した例は国内製品には珍しいが、英国系のスピーカーシステムには比較的多く使用されているようだ。新材料を採用したためか、MS10は音色が軽く明るいタイプで、音の反応が速い特長がある。聴感上での帯域バランスは、小型ブックシェルフ型のつねで、やや高域に偏ったタイプで、セッティング場所を選び、バランスを補正した後にさらにアンプ側のトーンコントロールで補正するのがオーソドックスな使用法だ。MS10には粒立ちが細かく滑らかなアンプがマッチする。

ビクター SX-3III

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 トゥイーターはソフトドームを使った、ブックシェルフ型の代表といっていいロングライフのものだけあって、リニアリティもよく、本格的な再生にも小音量で鳴らすにもいいスピーカーだ。音のタッチに明確な実感がある。

ラックス MS-10

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 新たにスピーカー開発に乗り出した同社の第一作で、アラミド系コーンの20cmウーファーと2・5cmドーム型トゥイーターを組み合わせた2ウェイシステムである。この価格とこのサイズ(W25×H54×D26cm)の中では比較的オーソドックスなリプロダクションが可能であり、すっきりとした歪みの少ない音とスケールの大きな再生音が得られる本格派だ。

セレッション Ditton 11

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 同社独自のABR(ドロンコーン)をもたない密閉型の2ウェイシステム。小型ながら明快な音楽表現力をもっていることが特徴だ。

ブラウン L100

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 西独ブラウンのスピーカーは、あくまで家庭内での音楽再生ということを基本に開発され、その範囲内での巧みな音のまとめ方がなされている。このL100もそういう意味で、相当主張の強い音だが音楽が説得力をもって生き生きと鳴るスピーカーシステムである。

ソニー SS-5GX

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 小型だがハイパワー再生が可能な設計がなされているだけあって、迫力あるサウンドが楽しめる。音の自然な響きという点では少々メカニックな感じもしなくもないが、精緻な音であることは確かだ。

ビクター S-05

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 リボン型トゥイーターを採用した3ウェイシステムだが、SX7IIに共通する透明度の高い音が魅力。品位が高く表現力の大きなスピーカーだ。

ヴィソニック David 502

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 ミニスピーカーとして定評のあったダヴィッド50のタイプIIにあたる製品で、ミニスピーカーながら個性的なうまい音楽のまとめ方をする、聴きごたえのある再生音を聴かせてくれる。

デンオン SC-106

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 5cmコーン型トゥイーターを2個使う3ウェイ4スピーカーのシステムで、ナチュラルな音の感触が魅力のワイドレンジ型。ソースは選ばない。

ジョーダン・ワッツ Jumbo

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 高さ42cm、奥行約9cmと薄型コンパクトにまとめられたスピーカーで、同社のモジュールユニット一発のみというシンプルな構成になっている。キメの細かい輝かしい音が特徴で、見た目のようにカラリングが強いが、いかにも英国らしい粋なスピーカーだ。

テクニクス SB-7000

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 ロングライフを誇るフロアー型。グラマラスなスケールの大きな再生音が得られることが特徴だ。

ビクター SX-7II

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 本格的ブックシェルフの代表的構成をもち、透明度が高く素晴らしい奥行き感、ステレオ感を再生してくれる。

デンオン SC-101

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 同社の最新モデルで、小型ローコストにまとめられているが、再生音には癖がなく、それでいて決して物足りなくないという点で、いろいろなプログラムソースでも満足感が味わえる製品だ。

ヤマハ NS-890

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 先の690IIに比べ、より明るく説得力のあるスピーカーで、スケールの大きさ、パンチ力がある。

ロジャース LS3/5A

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 小型モニタースピーカーだが、本格的音のイメージをもっている。しかるべき音量で鳴らす分には、質のいい歪みの少ない音が得られる。

ヤマハ NS-10M

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 小型ブックシェルフスピーカーながら、迫力ある音を再生する、どちらかというとヤング志向の音楽に向いた製品だ。18cmウーファーと3・5cmドーム型トゥイーターによる2ウェイ。

ダイヤトーン DS-401

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 スケールの大きな再生音を聴かれる人に適したワイドレンジ型。音の緻密さやキメの細かさもダイヤトーンらしい密度の高さをもっている。

デンオン SC-107

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 3ウェイ5スピーカーシステムながら、明確な音像の輪郭と豊かな肉づき、バランスのいい自然な音を再現する本格派スピーカーである。

B&W DM4/II

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 ピリッとどこかにからしのきいた、きちっとした輪郭をもちながら音楽を豊かに再生する。しかし、大型スピーカーのような大音量再生には不適当だ。

KEF Model 104aB

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 20cmウーファーと独特の楕円型ドロンコーン、ドーム型トゥイーターをもつ2ウェイシステムで、端正なまとまりの中に芯のしっかりした音をもっている。

ヤマハ NS-690II

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 いい意味での日本的な良さをもった数少ないものの中の一つだと思う。淡泊な美しさの中に透明な味わいがあり、品のいい音を再生してくれる製品だ。

サンスイ SP-LE8T

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 20cmシングルコーンの名作LE8Tを一発収めたシステムで、明るく抜けきったJBLサウンドを、実にバランスよく苦労なく鳴らすことができる。

フィリップス RH541

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 MFBを利用したパワーアンプ内蔵の小型システムだ。プリアンプ一台とソース系があればローコストシステムが構成できる点もメリットで、ヨーロッパのスピーカーらしい一つの味わいがある。

パイオニア S-180

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 32cmウーファーとボロン合金振動板のスコーカー、トゥイーターによる3ウェイシステムで、アトラクティブなサウンドの世界が魅力である。

オンキョー MX7

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 特に強い個性の主張はないが、すべての音楽がどこかに一つの甘さをもって美しく再現されるという点で、先のMX5に共通する。31cmウーファーになり、豊潤な音のスケールがより拡がっている。