サンスイ FR-Q5, FR-D4K

井上卓也

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 サンスイのプレーヤーシステムは、伝統的に機械的な構造がリジッドであり、つねに、オート機構をもつモデルも用意されていることに特長がある。
 今回、新しく発売された2機種のプレーヤーシステムは、ともにフルオート機能を備えたモデルで、FR−Q5は、駆動用のモーターが水晶発振器を基準とするPLLサーボ・ブラシレスDC型、FR−D4Kが、ブラシレスDC型を使用するという違いがある。
 ターンテーブルは、直径30cmのアルミダイキャスト製で、バイアス方式過飽和磁芯型位置検出機構を内蔵した20極・30スロットのブラシレスDCモーターで駆動される。FR−Q5では、これにターンテーブル外周部の内側に磁性体を吹付けて着磁した高密度磁気信号を検出用磁気ヘッドから得て周波数(FG)信号として使う磁気記録検出方式とクォーツロックPLL方式が組み合わされ、FR−D4Kでは、ステーターに組み込まれた速度検出コイルにより速度比例電圧をとりだし、基準電圧と比較するサーボ方式が採用されている。とくに、FR−Q5に採用された磁気記録検出方式は、定速回転時の過渡応答性、負荷変動に対しての回転偏差、回転偏差が生じた場合の再安定に要する時間の短縮などですでに定評が高く、中級機以上の製品には数多く採用されているが、従来のSR838に採用されていたような光学式に替わりサンスイ製品では、最初の採用であろう。
 トーンアームは、1978年11月の第61回AESで発表されたダイナオプティマムバランス方式を採用したS字型パイプをもつスタティックバランス型である。この方式は、カートリッジの針先が受けたレコードからの信号や振動が、アーム全体あるいは軸受部分を振動させ、この歪んだ振動が再び針先に影響を与え、カートリッジの出力に振動信号が混入することを防止するためのもので、針先に対してアームの動的な最適支持点を求めることで解決している。
 また、このアームは、アームベース下部にオート動作用の駆動DCモーター、クラッチが組み込まれ、マイクロコンピューターを採用した電子ブロックからの信号によりトーンアームを上下、左右に駆動する。電子ブロックは、基本動作を記憶し、スムーズで確実に動作させるプログラムと数々の異常動作のプログラムをも記憶して各センサーからの情報を整理し、判断をする。
 オート機構は、ストップを最優先としたプログラムで動作をし、演奏中を含め全ての動作中にストップボタンを押したり、動作中にアームに触れたり、スタートボタンを押してもアームはレストに戻り動作はストップするなど、多重動作の電子的安全機構を備えている。
 付属カートリッジは、米エンパイア社製MI型。2機種ともにオート動作は電子制御らしい確実さと応答速度をもち、活気のある伸びやかなサウンドが特長だ。

ダイヤトーン LT-5V

井上卓也

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ダイヤトーンのプレーヤーシステムは、昭和51年に電子制御のECフルオートプレーヤーを開発して以来その性能、機能、操作性の優れたメリットが認識され、国内はもとより、海外でも高い評価をえて、オートプレーヤーのひとつの方向を示しているが、今回は、このECプレーヤーの技術をベースとして、いわば、プレーヤーのコペルニクス的転換ともいえる、レコードを垂直に保持して使うユニークな方式を開発し、世界に先駆けて発売することになった。LT5Vはカートリッジレスで、LT5VCはカートリッジ付である。
 垂直型を採用したメリットは、設置場所の制約が少なくなったことをはじめ、トーンアームにリニアトラッキング方式を必要とすることによって得られるアームの慣性質量の低減、水平トラッキングエラーによる歪率の改善などの他に、床からの振動に対してカートリッジの感度がなく耐ハウリング性が非常に強い。また、カートリッジの自重による針圧変化が少なく、気軽にカートリッジ交換が可能など数多くの、このタイプならではの特長をもつ。
 フォノモーターは、現在のDD型が横位置では軸受が焼付くため使用不能で、PLL・DCサーボモーターによるベルトドライブ方式が採用されている。モーターからの動力は、キャビネット内部に軸受をはさんでターンテーブルと相対的に位置し、バランスをとった大型フライホイールにベルトで導かれる。このダブルフライホイール構造により、総重量は2kgを超す。レコードの保持は、特殊カーブに凹んだゴムマットと腕木状に移動するステーの中央に取付けてあるホルダー兼スタビライザー内部のスプリングで安定に支持することが可能。
 トーンアームは、ステンレスパイプ使用の垂直、前後、左右方向のバランスをとったユニバーサル型のスタティックバランス方式で、アームベースは、2組の光センサーによるサーボシステムにより、専用モーターで精密仕上げのステンレス棒上を、0・05mm×49本のステンレスワイヤーで駆動される。トラッキングエラーは0・1度以内に収まり、一般のタンジュンシャル型の約2・5度と比較すれば格段にトラッキングエラーによる歪は少ない。
 オート機能は、専用LSIを使う光学式無接触型のレコードサイズ検出、オートスタート、オートストップ、回転数の自動選択などの数多くの特長をもつECフルオート方式で、動作は節度があり、しかも、確実に、敏速に動作をする特長がある。操作は、ソフトタッチのスイッチで振動の発生が抑えられ、トラッキング誤差表示、回転数、リピートなどはオプティカルディスプレイに表示される。脚部を外して本体奥行15cmと薄く壁掛け可能なLT5Vは、各種カートリッジの音色を素直に引出し、リニア型特有の広い音場感とシャープな音像定位が聴かれ、その基本性能は同価格帯の在来型以上に高い。

マランツ Tt1000, Tt-7

井上卓也

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 このところ、プレーヤーシステムの分野では高価格帯の重量級プレーヤーシステムが各社で開発され、次々に発売されることが目立った傾向となっている。
 今回、マランツから発売されたTt1000は、昨年秋の全日本オーディオフェアに出品された、プレーヤーベースやターンテーブルマットに高密度ガラスを採用した高性能マニュアルモデルであり、Tt7は、Tt1000に採用されたトーンアームと共通なストレート型アームを備えたクォーツロックPLLサーボ方式のダイレクトドライブ型フルオートモデルである。
 Tt1000は、マランツのプレスティッジシリーズの製品に新しくつけられた、ESOTECの名称をもつ最初の超高級マニュアルプレーヤーシステムである。
 まず、最大の特長は、プレーヤーベースの構造材に硬質ガラスが極めて高密度であることに着目をし、質量が異なる物質をサンドイッチ構造とし、振動エネルギーを熱エネルギーに変換し、振動の伝達を速断するという理論のもとに、ガラス(15mm)+アルミ(8mm)+ガラス(15mm)を3重構造サンドイッチに積層したソリッドベースを採用している点にある。
 ターンテーブルは、重量2・7kgのゴールドに着色されたアルミダイキャスト製で、ターンテーブルマットには、厚さ5mm、重量500gの硬質ガラス板を採用している。これは、従来のターンテーブルマットが内部損失が大きいゴムに代表される材料を使い、振動を吸収する目的であったことに対して、マットは振動を吸収するものではなく、振動そのものを受けつけない構造にするという構想によるものとされている。この考え方は、むしろ、振動を伝達しやすくし、まずマットとターンテーブルのマスで熱エネルギーとし、次に軸受を経てモーターを含めた重量が大きいプレーヤーベースで吸収するといったらよいだろう。
 モーターは、起動トルク1・66kg・cmクォーツロックPLLブラシレスDC型で、0・5秒で定速に達し、電磁ブレーキ内蔵である。なお、電源部は、電磁誘導を防止するために外部に独立したパワーサプライユニットをもつタイプである。
 トーンアームは、専用の挿入式面接触型のシェルを採用したストレートパイプのダイナミックバランス型で、カートリッジのコンプライアンスに応じてアーム実効質量をコントロールする付加ウェイトがストレートパイプ部分に取付可能である。アームベースは重量級のアルミ削り出しで、偏芯したアーム取付穴をもつため、これを回転すれば実効長230mmまでの他のアームを取付けできる。この場合にはプレーヤーベース左奥の45回転アダプター設置場所の加工済みの穴に付属アームを取付け、2本のアームが使用可能となる。スタート、ストップ、回転数切替はベース前面のフェザータッチスイッチで操作をする。なお、電源スイッチは電源部にある。

テクニクス SU-V6, ST-S5

井上卓也

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最近のアンプのジャンルでは、パワーアンプのB級動作の問題点であるスイッチング歪を軽減する目的で、B級動作のメリットである効率の高さをもちながら、本質的にスイッチング歪を発生しないA級動作と同等の低歪とする各種の新回路が開発され各社からその製品化がおこなわれていることが特に目立つ傾向である。
 テクニクスでは、さきにA+級と名付けられた新回路を採用した高級セパレート型アンプ、テクニクスA2を発売し、これにつづいてニュークラスAという、異なった発想による新回路を採用したプリメインアンプSU−V10を開発したが、今回は、最も需要層の多い価格帯に、このニュークラスA回路を採用したSU−V6を登場させ、低スイッチング歪を軽減しようとするテーマは、早くもプリメインアンプの分野にまで及び、今後とも各社から、それぞれの構想による低スイッチング歪軽減対策を施した回路を採用したプリメインアンプが、低価格帯と高価格帯に重点を置いて発売されることが予測できる。なお、ST−S5はSU−V6とペアとなる薄型にデザインされたクォーツシンセサイザーFMステレオチューナーだ。
 SU−V6は、B級動作の高い効率とA級動作に匹敵する低歪という、量と質を両立させたニュークラスA動作のパワーアンプを採用している点が特長である。ここでは、B級動作のスイッチング歪の原因となる出力トランジスターのON・OFF現象をシンクロバイアス回路で防止する方法を採用している。この回路は、パワートランジスターの入力にダイオードを使い、ダイオードの半導体としての特性を利用して信号をカットオフし、別のダイオードからバイアスを与えてパワートランジスターのカットオフを防止するタイプで、一種のダイオードスイッチング方式と考えられる。
 イコライザー段は、初段に超低雑音デュアルFETを差動増幅に使うICL構成で、アンプ動作モードスイッチをストレートDCに切替えるとフォノ入力からスピーカー端子までカップリングコンデンサーのないDCアンプとして使用可能であり、イコライザーのゲインを切替えてダイレクトにMC型カートリッジが使える設計である。
 電源回路は、電磁誘導歪みを防止するテクニクス独自の電源部とパワーアンプの出力段を一体化したコンセントレーテッドパワーブロックで左右チャンネル独立型2電源方式である。
 ST−S5は4連バリコン相当のバリキャップ使用フロントエンドをもち、6局までのプリセットが可能。RF系までを含めたDC増幅、DC・MPX回路などが特長。
 SU−V6は、やや音色は暗いが重量感のある低域とクッキリとシャープに粒立ちコントラスト十分な中高域がバランスした従来のテクニクストーンとは一線を画した新サウンドに特長がある。こだわらずストレートに音を出すのは新しい魅力。

パイオニア A-900, A-700

井上卓也

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 パイオニアのパワーアンプのスイッチング歪を軽減する方式はノンスイッチング方式と名付けられ、この方式を採用した製品は、米国市場を優先して発売されているが、A級動作に類似した名称をつけていない点は、このあたりの問題に対して特にシビアな米国市場を考慮した結果でもあろう。
 A900は、サーボ回路方式を導入したMCヘッドアンプ、イコライザーアンプ、それにパワーアンプはカップリングコンデンサーがないDCアンプであり、別に独立したトーンアンプの4ブロックで構成する標準型ともいえるブロックダイアグラムをもっている。
 MCヘッドアンプは入力感度0・1mVで、負荷抵抗切替付。インピーダンスが大幅に異なっている各種のMC型に対応可能であり、別系統にMCポジション検出回路を備え、セレクタースイッチがMCの位置にあるときは、電源ON時にヘッドアンプ回路が安定化するまで約15秒かかるため、特別にミューティング時間を15〜25秒遅らせ、クリックノイズの防止をはかっている。
 イコライザーアンプは初段FET差動カスコードブートストラップ負荷とし、カートリッジ実装時の低歪化をはかり、2段目差動と3段目との間でカレントミラー差動回路を構成し、偶数時歪率を打消す設計。
 トーンアンプは、初段をFET差動カスコードブートストラップ負荷とし、初段と2段目でカレントミラー差動回路とするNF型で出力にはカップリングコンデンサー使用のAC構成でパネル面のラインストレートスイッチを切替えるとトーンアンプと出力部のモードスイッチ、バランサーまでを含みバイパスできる特長がある。
 パワーアンプは、基本構想はイコライザーアンプと同様な設計で、ノンスイッチングブロックを備えたDCサーボ型である。
 電源部は、各増幅部毎に専用安定化電源を置き信号の相互干渉を抑えるダイレクトパワーサプライ方式で左右独立型である。
 信号系の切替スイッチは、リモート操作型を多用し、パネル面での操作は周囲が照明された角形プッシュスイッチで、メモリー回路を内蔵し、最終便用状態を記憶し電源プラグを抜いても最低3日間はメモリー状態を保っている。
 A700は、A900同様の4ブロックのアンプ部を備えたシリーズ製品で、MCヘッドアンプがDCサーボ型でなくなり、フロントパネルの操作がフェザータッチスイッチでないことを除き、ほぼA900と同じ特長を備えた新製品である。
 A900は、音の粒子が全帯域を通じて細かく、滑らかであり、かつシャープであることに特長がある。低域は柔らかく豊かで音色が軽く、高域も自然に伸びている。音場感は前後、左右とも十分に拡がり定位もクリアーである。音の反応は速い。
 A700は、間接音が比較的に豊かな音で、滑らかで、細やかな表情が特長。

ヤマハ NS-1000M(組合せ)

瀬川冬樹

続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第18項・こんにちの日本を代表するヤマハのNS1000M」より

 この辺でそろそろ、わが日本のスピーカーについて研究してみる。私自身は国産のスピーカー全般をあまり高く評価しないものだから、日本のメーカーやオーディオ界から、舶来主義者みたいに言われているが、しかしアンプ類は十二分に評価しているし、事実、国際市場でも、日本のアンプやその他のパーツは高く評価されながら、スピーカーだけは、いまひとつ良く言われないということは、周知の事実なのだ。
 そうした中で、ヤマハのNS1000M(モニター)は、スウェーデンの放送局でモニター用として正式に採用されるなど、いわば国際的な市民権を獲得した国産最初のスピーカーと言ってよい。またわが国でも、発売後すでに5年を経てなお、人気がおとろえないという実績が、スピーカーの良さを裏づける。このスピーカーは,とくに一〜二年以上ていねいに鳴らしているうちに、次第に音がこなれて滑らかさを増してきて、いっそう評価が高くなるということもロングセラーの秘密のひとつかもしれない。
 難をいえば、黒の半艶のいささか素気ない塗装に、金網をかぶった低・中・高音の三つのユニットのむき出しの、機能本位といえば体裁がいいがいささか挑発的ともいえるデザイン。ただ、それを嫌う人のためには、MのつかないNS1000という、渋いデザインの製品もあることをつけ加えておく。音質はわずかに異なり、M型よりも少々おっとりしている。
 いずれにしてもNS1000(M)は、大別するとアキュレイトサウンドのグループに入れることができる。そして、いままでに例にあげた中では、KEFやスペンドールよりもJBLの鮮烈な鳴り方のほうに近い。したがって、コンサートプレゼンスよりは楽器を眼前にリアルに展開するタイプ。
 ブックシェルフ型、といってもやや大ぶりだし、重量もかなりあるから、本棚等に収めるわけにゆかないし、その性能を生かすためにも、周囲にあまりものを置かず、周辺を広くあけて、三十センチ前後のしっかりしたスタンドに乗せ、タテ位置で使うのが標準的な鳴らしかただ。その点はスペンドールなどの置きかたと共通点がある。
 音量は相当に──楽器のナマの音量程度までも──上げることが可能だが、かなり鳴らし込んだ後でないと、少々やかましい感じがなくなりにくい。
          ※
 さて、NS1000Mう生かす組合せだが、なぜかこのスピーカーは、味の濃い音のアンプやカートリッジを拒む傾向があって、どちらかといえばサラッとした感じの素直な音で統一したほうがいいらしい。で、いろいろやってみると、アンプ(チューナー)は、同じヤマハがやはりよく合う。ほかにというなら、ラックスかテクニクスの系統だろう。また、カートリッジはここ数年来、ヤマハ自身が、アンプ、スピーカーの音ぎめに、シュアーをひとつの標準に採用しているので、やはりV15タイプIVはひとつあげておく。やや高価な組合せと、スピーカーの能力を生かすに必要最低のラインと、ふたとおり示しておく。

スピーカーシステム:ヤマハ NS-1000M ¥108,000×2
コントロールアンプ:ヤマハ C-2a ¥170,000
パワーアンプ:ヤマハ B-3 ¥200,000
チューナー:ヤマハ T-2 ¥130,000
プレーヤーシステム:ヤマハ YP-D10 ¥128.000
カートリッジ:シュアー V15 TypeIV ¥39,800
計¥883,800

スピーカーシステム:ヤマハ NS-1000M ¥108,000×2
プリメインアンプ:ヤマハ CA-2000 ¥158,000
チューナー:ヤマハ T-1 ¥60,000
ターンテーブル:ラックス PD-441 ¥125.000
トーンアーム:SME 3009/SeriesIII ¥74,000
カートリッジ:スタントン 881S ¥62,000
計¥695,000

ラックス L-58A

井上卓也

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 先般、新発売されたプリメインアンプL309Xを従来からのラックスサウンドを継承したトップランクの製品とすれば、今回、続いて発売されたL58Aは、ラックスの新世代を意味する新回路設計とサウンドをもつ、新しい展開の第1作である。
 外観上で、伝統的な木枠をもつフロントパネルは見慣れた雰囲気であるが、ファンクションスイッチは、従来のレバー型を多用するタイプから、角型に縁どられた横方向に動く小型のレバー型に変更されたため、全体の印象は相当に異なったものとなっている。
 外観の変化に呼応するように回路構成も新しいチャレンジが感じられる。ブロックダイヤグラム的には、MC型カートリッジのインピーダンスによりゲインが20〜28dBに変化する利得自動調整型MCヘッドアンプ、FET差動入力でカスコードブートストラップ回路採用で42・4dBの現在の標準からは利得が高いイコライザーアンプ、前段に利得0dBのFET入力でカスコード接続ソースフォロア一回路のバッファーアンプをもち、回路構成を同じくする利得0dBの湾曲点3段切替のラックス型トーンコントロール、全段プッシュプル構成で出力段にMOS型FETを使い、無信号時に300mAのアイドリング電源を流しスイッチング歪を除いたラックス独自のスタガ一方式により、出力10Wまでは純A級動作をするスタガー方式A級動作のパワーアンプの5ブロック構成で、バッファーアンプとトーンアンプは、フロントパネルの小型プッシュスイッチでバイパスが可能である。
 設計上のポリシーは、基本的にアンプのNFBをかける以前のオープンループ利得を抑え、NFB量を適度に保つ、ローNFB設計がポイントである。このためには裸特性の優れたことが条件となるが、例えばパワーアンプでは、オープンループ利得80dBで定格出力時の歪率0・2%、NFBをかけた後の利得は43dB、歪率0・005%になっている。これが従来の設計ではオープンループ利得が100〜120dB、NFB後の利得が32dB程度とのことである。
 また、NFB量を少なくしたときに生じやすい低域の音質劣化を改善するために、一般のNFBの他に、DC・NFBを併用するデュオβ回路が採用され、超低域成分を抑え低域の分解能を向上している。
 さらにイコライザーアンプでは、低域の裸利得を上げ、高城と低域のNFB量の差を少なくし、TIM歪の低減を図り、イコライザーアンプの低域カットオフ周波数を5Hzに設定している。
 L58Aは、低域から高域までフラットに伸びきった広い周波数レスポンスとクリアーに引締まった、クッキリと粒立つ音が特長であり、従来の滑らかで柔かく、それでいて豊かなラックストーンとは全く異なる音だ。力強くゴリツとした低域と適度に輝やく中高域は巧みにバランスし、新しい実体感のある魅力の音を聴かせる。

サンスイ AU-D907

サンスイのプリメインアンプAU-D907の広告
(スイングジャーナル 1979年7月号掲載)

AU-D907

SAE

SAEの広告(輸入元:RFエンタープライゼス)
(スイングジャーナル 1979年7月号掲載)

SAE

SUMO THE POWER

SUMOのパワーアンプTHE POWERの広告(輸入元:バブコ)
(スイングジャーナル 1979年7月号掲載)

SUMO

ジュエルトーン MP-50J, No103J

ジュエルトーンのカートリッジMP50J、アクセサリーNo103Jの広告
(スイングジャーナル 1979年7月号掲載)

MP50J

KEF Model 103

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 いかにも英国の代表的スピーカーの音という感じの、輪郭の明快なサウンドが得られる2ウェイシステムだ。私の感覚ではちょっと小骨っぽいという印象だがそれだけ芯がしっかりしているともいえるわけで、むだなたるみのないすっきりとした端正な音が聴かれる。英国のオーケストラのサウンドにも共通するものといえる。

セレッション UL6

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 先ほどの分類からすれば後者に当る。本格的ホーンシステムの小型版のような音をもっている。ユニークな設計がなされたもので、音にもたつきがない。

ビクター S-W300

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 30cmウーファーと38cmドロンコーンを使ったスーパーウーファーで、別売のアクティブフィルターとの併用により豊かな超低域再生が可能なものだ。

アルテック Mantaray Horn + 817A System

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 大容積のホールなどで鳴らすべきシステムである。いかにもアルテックらしい本当の意味でのパブリックアドレスシステムといえよう。

UREI Model 813

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 武骨なスタジオモニターながら実に堂々たるアメリカンサウンドを聴かせてくれる。アルテックの音には違いないが、高域の歪感のなさは、確かにリファインされたモデルといってよい。

ロックウッド Major

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 タンノイの38cmHPD385Aを使ったシステムながら、オリジナル・タンノイとは一味違った雰囲気を再現する。より明快に音が立ち、低域も引き締っている。タンノイユニットの優秀さがマニアライクに仕上げられたシステムだ。

ヴァイタヴォックス Bitone Major

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

一種独特な雰囲気をもっている。同社を代表するスピーカーの一つだけに、相当高度なところで聴き手の嗜好と可能性を問われる、本格的大型フロアーシステムである。

JBL L300

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 同社の3ウェイモニタースピーカー4333Aに相当するユニット構成をもつシステムだけに、本格的なJBLシステムの良さを十分にもった、ワイドレンジな、優秀なスピーカーの代表といってよい。

トリオ LS-202

井上卓也

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 トリオのスピーカーシステムは、完全密閉型全盛時代にも軽量級コーンを採用するなど、かなり独自の構想による開発をおこない、オリジナリティの豊かな点に特長があるが、今回発売された新製品は、コーン型ユニットで構成する25cmウーファー使用の3ウェイシステムである。
 ウーファーは、アコーディオンエッジと新開発のホットプレス製法によるコーン紙を使用し、10cmスコーカーは、センターサポート方式、4cmトゥイーターは、特殊制動剤使用によるエッジレス型となっているところが特長である。
 バッフルボードは、ユニット間の振動による機械的なクロストークを避ける目的でスコーカーとトゥイーターはサブバッフルにウーファーからの振動を抑えて固定する2層構造・分離型と名付けられた特殊な構造を採用し、ネットワーク関係からの電気的クロストークはコイルの独立配置などでユニット間の干渉を防止している。
 LS202は、各ユニットの固有の共鳴音が巧みにコントロールされ、システムとしてのつながりは、レスポンス的にも音色的にもスムーズである。聴感上での周波数レスポンスは、とくにワイド型ではないが滑らかに伸びており、クリアーでシャープな音を聴かせる魅力がある。

マッキントッシュ XR7

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 マルチウェイ・マルチユニットの行き方をしたスピーカーとして、地味ながら聴くほどによさのわかるスピーカーといえる。優れた指向性と平均したエネルギーバランスの良さが素晴らしい。

ダイヤトーン DS-25BMKII

井上卓也

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 数多くの機種を揃えているダイヤトーンのスピーカーシステムのなかでも、2ウェイ構成で、バスレフ型エンクロージュアを採用したタイプは、放送用モニターとして高い評価を得ている2S305以来の伝統的な同社の基本路線を踏襲したシステムである。DS25Bは、この路線のもっとも小型なブックシェルフ型システムであったが、今回、細部にいたるまで改良がくわえられて、MKIIとしてフレッシュアップされた。
 外形寸法、ユニット構成などはDS25Bを受継いでいるのは当然のことながら、外観上での大きな変化は、バッフルボード面でのユニット配置が、音像定位の明確化を計ったため左右対称型となり、各ユニットの仕上げが、メタリック調を強くした明るくシャープな感覚になったこと。細部では、トゥイーターのレベル調整が従来の3段切替から−方向に一段多くなった4段切替になったことであろう。
 25cmウーファーは、中域のレスポンスを改良するためにメカニカルフィルター装備であり、新設計による5cmコーン型トゥイーターは、ダイヤトーン独自のオリフィス構造とフレーム共振を低減する剛性が高い新しいフレームと、センターキャップに高域レスポンスを伸ばす目的のチタンドームを採用した点に特長がある。また、ネットワークは、伝送ロスを抑えた低歪コア入りコイル、要所要所にはメタライズドポリエステルフィルムコンデンサーを選択して使用しており、歪特性の改善をポイントにしている。
 MKIIとなって、スピーカーシステムの性質は従来のモニター的なタイプから一段とバーサタイルなタイプに変ったようだ。音色は明るくなり、ステレオフォニックな音場感の、とくに前後方向の再現がナチュラルになり、中高域のキャラクターが抑えられて、この帯域の音が滑らかで透明になったのがDS25Bとの比較で明瞭に聴きとれる。

Lo-D HS-430

井上卓也

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 今回発売されたHS430は、既発売のオールメタル振動板採用の3ウェイシステムHS630につづく、同じ構想の新製品である。
 ユニット構成は、全部のユニットにメタル振動板を採用した3ウェイ方式で、30cm口径のウーファーL3001は、昭和48年に同社最初のメタルコーン採用のフロアー型システムHS1500のウーファーL301をべ−スとしたユニットである。そのため、コーン形状、外径、エッジ幅は同一だが、コーンの構造が変更され軽質量化が計られている。L301では、100μのアルミ合金箔を2枚使用し、その間に発泡材を使用していたが、今回は200μの1枚の単板メタルコーンとしたために強度は約8倍になり、質量は約8g軽く、能率は約4dB向上している。しかし、低い周波数では、逆にツリガネ振動を発生しやすくなるため、大型のメタルセンターキャップを装着し剛性を高めて解決している。また、エッジはゴムコーティングのギャザードエッジ。チタンのボイスコイルボビンとコーンの接合部にはブチルゴム系のメカニカルフィルターを取付け、メタルコーンの高域共振のピークを電気的なピークコントロールを使わずにメカニカルにコントロールしている特長がある。
 5・5cm口径のメタルコーン型スコーカーM5501は、ウーファー同様のメタルコーンとギャザードエッジ採用で最低共振周波数280Hz、14、000ガウスの磁束密度をもつ磁気回路を使用している。2・5cm口径チタン振動板採用のドーム型トゥイーターH2501は、アルミダイキャスト製フレームと耐熱性ボイスコイル採用の高耐入力設計によるものだ。
 エンクロージュアは、バッフルボードにカラ松材を主とした針葉樹の3層構造パーチクルボードを使用したバスレフ型で、マホガニー調仕上げである。ネットワークは12dB型、中音と高音に6dB連続可変型レベルコントロール付で、コイルはフェライトボビンに巻いた低抵抗型を、コンデンサーは重要な部分にはメタライズドポリエステルフィルム型を使用している。
 HS430は、聴感上でナチュラルに伸びた周波数レスポンスをもち、音色は明るく、各ユニット間のつながりは十分にスムーズである。音の粒子は細かく緻密であり、この価格帯のシステムとしてはクォリティが高く、従来の製品よりも音の表現が一段とダイナミックになったのが特長である。

トリオ LS-202

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 今までの同社のスピーカーとは全く開発の姿勢が変り、抜けのいい力のある豊かな弾力性に富んだ低音を再生する25cmウーファーをベースにした、スケールの大きな再生音の得られる3ウェイブックシェルフの最新作。大音量再生に十分応えることができるワイドレンジ型だ。

デンオン SC-104/II

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 ピアレスのユニットを採用した最初の製品のマイナーチェンジモデルである。25cmウーファーをベースにした3ウェイモデルだが、ロングライフを続けているだけあってまとまりやバランスが一層よくなって、実にナチュラルな音の出方をする。