オーディオ製品のあり方と価値判断の方法

岩崎千明

ステレオ 4月号(1970年3月発行)
「アンケート/オーディオ製品のあり方と価値判断の方法」より

 八〇〇字程度で、これだけの質問に答えられるくらいなら、オーディオなんて底の浅いつまらない趣味だ。しかしそうもいっていられないから、最低ギリギリの条件だけを列記しよう。
①よいオーディオ製品の条件
 よいオーディオ製品の条件といってもカートリッジ、チューナー、デッキ、アンプ、スピーカーと全然観点の異なるものだからひとつずつ挙げなければならない。チューナーとカートリッジはステレオのセパレーションのよいことが第一条件。洩れ信号はノイズや歪成分が多く、再生の質をひどく損なう。チューナーはできるだけ実際の感度がよいもの。特にステレオの場合にも、カートリッジはいい尽くされているが規定針圧にてトレーシング特性のよりよいもの。アンプは経済的にゆるせる限りハイパワーアンプのもの。ハイパワーほど製品の質もよいのが通例である。スピーカーはなによりも中音域二〇〇ヘルツから、八〇〇〇ヘルツの歪特性の優れたもの、そして高音域まで指向特性の良いもの。さらに付け加えれるなら高能率ほど、実際の使用上、良い音を望めるものだ。全般的にいえるのは、あくまでも中音域の歪の少ないほど、悪い音を避けることができるものだ。それがハイファイ再生の最低条件でもあり近道だ。
②パーツについてどのようにテスト、性能判断をするのか
 パーツのテストと性能判断は、いつも聴きやすい方法だ。私自身は、いつも聴いている程度の、つまり生の楽器のエネルギーと同じくらいに音を出して判断する。従って、オーケストラ物は判定のソースにはならない。男性ヴォーカル、ピアノ、テナーサックス、チェロなど中低域のエネルギーの多いものだ。
③ユーザーに、パーツを見きわめる場合のアドヴァイス
 私と同じようにいつも聴きなれたソースを聴いてみるのがよかろう。そしてその場合、楽器の少ない方が判りやすいだろう。本来、大編成楽器のハイファイ再生なんて出切得るはずがないのだから!

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