JBL Olympus S8R

岩崎千明

スイングジャーナル 1月号(1970年12月発行)
「supreme equipment 世界の名器を探る」より

 ギリシャの神殿「オリンポス」をその名にとったスピーカー・システム、それが米国JBLサウンドの家庭用最高級システム「オリンパス」だ。
 その名の由来を彷彿させる厳しゅくなたたずまいと、優雅な響きは、まさに世界スピーカー・システムの中に厳然たるJBLサウンドを代表するにふさわしいシステムであろう。
 JBL社の代表的システムとして、あるいはオールホーンのレンジャ・パラゴンをたたえる識者や、さらに古くモノーラル時代の絶品ハーツフィールドを推すマニアもいるに違いない。
 そのいずれもが低音ホーンロードのエンクロージュアで、折返しホーンの前者、クリプッシュ・ホーンの後者のいずれもが価格的にオリンパスの倍にも近い豪華システムである。
 しかし、今日のステレオ時代、さらに4チャンネル・ステレオ時代を迎えんとする40年代における代表格としてあえてこの「オリンパス」こそ、それにふさわしいものと断じるのはいささかもためらいを要しないと思う。
 大型エンクロージュアでしか得ることのできなかった重低音は、その数分の1の容積のシステムでも楽々と再生され、ここにこそ常にトップを行くJBLサウンドの技術をまざまざと見ることができるからである。
「オリンパス」のデビューしたときにはそれはバスフレックス・エンクロージュアであった。しかし、現在の低音はJBLのオリジナル製品ともいいうるパッシブ・ラジエーターによって再生される。
 この方式がRCAのオルソン博士によって発表されたのは遠く戦前1936年のことだが、その直後に出たRCAの電蓄を除いては、今まで製品として市場に出たことはなかった。この方式の唯一の成功例がオリンパスであり、さらにそれに続いたランサー・シリーズのいくつかで、すべてのJBLのシステムなのは興味深い事実だ。
 このオリンパスの成功こそJBL社が、以後まっしぐらに家庭用システムでの多大の成果を得るきっかけとなったことからも、また今日のJBLの偉大な存在の布石となった点からも、JBLの代表ともいい得よう。
 オリンパスには2通りある。LE15A+パッシブ・ラジエーターの低音に、LE85+HL91を加えたS7と呼ぶ2ウェイ。
 LE15A+パッシブ・ラジエーターの低音に575ドライヴァー+HL93の中音、075の高音という3ウェイのS8R。
 むろん代表格は3ウェイのS8Rシステムだろう。

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