岩崎千明
ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より
一口に言ってハイエンドもローエンドもいかにもよく伸びた印象を与える。オーディオ界の中でもとくに現代指向の強いもので、それがわりあい明るいサウンドであるところにソニーらしい、若いファンを充分に意識している姿勢を感じ取ることができよう。
XL45は、ラインコンタクト針、45Eは楕円針で、それぞれきわめて安定したトレース特性は国産カートリッジの中でも最上のひとつだ。あまりデリケートな扱いをしなくても、かなり優れたトレースを安定にやってのける。鮮明というほど鮮やかというわけではないが、音のディテールはかなり良くとらえて、しかもその内側の緻密さや力感も不足なく出してくる。ステレオ音像のたたずまいも、その後のバックグラウンドの部分もそれなりに感じさせてくれる。広がりの安定性もしっかりしていて安心させてくれる。
XL35は、充分な力感をもち、明るいサウンドが身上といえる。くっきりとした音の表現は全体のバランスからみても、相当高いクォリティをもっている感じがある。XL45に比べるとまとまりとしては、この35の方にも充分良さをもっていることがわかる。ソニーの中では、このXL35がもっとも売れる製品なのではないかとさえ思わせる。
XL25は、もっとも最近になってから出された機種ともいえるので、音はどちらかといえば、ソニーの、この一連のXLシリーズの特長でもある明るいパステルカラーのような音を再現してくれる。それほど広帯域をカバーしているわけではないが、中域にエネルギーをもったサウンドは全体のまとまりを良く感じさせる。
XL15は、ソニーの中でのもっとも普及価格の商品として、決して単なるローコスト商品に終らぬ良さをもったカートリッジといえる。なによりも音楽のメリハリを充分に出してくれる点は、このクラスのカートリッジにとっては重要なことだ。音のクォリティよりも、初心者にとって大切な音楽の表情をそれなりに表現するのがよい。
0 Comments.