アルテック 9440A

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 アメリカのアルテック社はプロフェッショナル機器専門のメーカーで、同社の劇場用スピーカーのA7シリーズは有名だ。しかし、アルテック社はエレクトロニクスや各種の機器を開発していて、高級業務用のアンプ類が少なくない。この9440Aは、比較的新しく開発されたトランジスター・ステレオ・アンプで200W/チャンネル以上の出力で、モノでは800Wの大出力が得られる。いかにもアルテックらしい堂々たるコンストラクション。

SAE Mark 2500

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 アメリカ、 SAE社のパワーアンプ・シリーズ中の現役最高モデルであり300W+300Wの大出力と、高いリニアリティによる小レベル時の繊細な再生音。抜群の安定性と信頼性をもった高級パワーアンプ中の雄である。2400同様、全段ピュアー・コンプリメンタリーA級動作の回路、パラレルシリーズの出力回路と現代アンプの代表的存在。冷却ファンの音はさすがに気になるが、このアンプを使うぐらいの人は覚悟がある筈。

GAS Thaedra

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 アメリカの新しいメーカーのグレート・アメリカン・サウンドの作る高級プリアンプで、世界初のサーボ・ループ・コントロール・プリアンプを標榜する。サーボ・ループにより安定したDCアンプを実現し、低い入力抵抗によりMCカートリッジによる再生が素晴らしい。ネイミングのユニークさに見られるように、きわめて意欲的な製品で、新しいテクノロジーとセンスに溢れた個性的なアンプである。透明で弾力性のある音質が魅力。

ダンラップ・クラーク Dreadnaught 1000

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 アメリカ、ダンラップ・クラーク・エレクトロニクスが発表したセンセイショナルなパワーアンプである。そのトップモデルが、この1000でこの下に500というシリーズ製品もある。連続出力が両チャンネル駆動時、20Hz〜20kHzで250W+250W(8Ω)、500W+500W(4Ω)という大出力である。まさに、ドレッドノートの名にふさわしい超弩級のパワーアンプといえるであろう。これもオーディオに夢をもたらす超高級品。

GAS Ampzilla II

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 プリアンプ、テァドラと対で開発されたアンプジラのマークIIモデルだ。現在はこれが現役のパワーアンプの最高モデル。この下にサン・オブ・アンプジラというのがある。なんともユニークなネイミングであるが、同社のジェイムズ・ボンジョルノ氏の非凡な才能から生まれた傑作でありそのセンスのひらめきも鋭い。アンプジラはマークIIでさらに洗練され滑らかで透明。しかも力強い音質の200W/チャンネルの実力。

ソニー SS-G7

ソニーのスピーカーシステムSS-G7の広告
(スイングジャーナル 1977年8月号掲載)

SS-G7

JBL 4343(組合せ)

瀬川冬樹

世界のステレオ No.2(朝日新聞社・1977年夏発行)
「オーディオ・コンポーネントを創る」より

 こんなに大がかりな機械を揃えて、いったいどんなに大きな音で聴くのかと質問した人がある。ところが実際はまるで反対だ。およそ繊細で鋭敏で精巧で、しかも美味な──これらはすべてdelicateという言葉の内容する意味だが──音を聴かせる組合せなのである。実をいえばこれは筆者の実用している装置と殆ど同じなのだが、私自身の部屋はといえば、貸しマンションの3階の約8畳ほどの一室で、何の音響的な処理をしているわけでもなく、大きな音量を出そうとすれば下の家から文句を言われるし、逆に2階の家でピアノを弾けば音がつつ抜けになるというような環境で、したがって音量はおさえて、むしろひっそりと小さめの音量でレコードを楽しんでいるというのが現状だ。
 概してこういう小さな音量では、レコードの音は生彩を欠いて、いかにも缶詰然とした鳴り方をしがちだ。ところが私はそういうレコードの世界が大嫌いで、たとえ一枚のレコードであっても、溝の隅々まで掘り起こして、刻みこまれたどんな微細な音でも新鮮に再現して、時間空間を超越して元の演奏を実体験したいという、欲ばりな望みを持ち続けている。こういう最新型の装置を完全に調整して調子を整えれば、たとえばフルトヴェングラーのモノーラル時代の録音でさえも、まるで昨日演奏されたかのようなみずみずしい新鮮さで再現することができる。アメリカの最新型のアンプとスピーカー、などといえば、およそこうした古い録音のクラシックなど鳴らせないかのように云う人があるが、それは、こういう鋭敏な装置を使いこなすだけのテクニックを持たない人のたわごとだ。
 そして言うまでもないことだが、そこまで調整し込めば、最新の録音のあらゆるジャンルに亘る音楽のすべてを、スピーカーからとは思えないほどの最上の質で聴かせて堪能させてくれる。

スピーカーシステム:JBL 4343 ¥739,000×2
コントロールアンプ:マークレビンソン LNP-2L ¥1,180,000
パワーアンプ:SAE Mark 2500 ¥690,000
チューナー:セクエラ Model 1 ¥1,480,000
ターンテーブル:テクニクス SP-10MK2 ¥150.000
キャビネット:テクニクス SH-10B3  ¥70,000
トーンアーム:テクニクス EPA-100 ¥60,000
カートリッジ:オルトフォン MC20 ¥33,000
ヘッドアンプ:マークレビンソン JC-1/AC ¥125,000
計¥5,266,000 

タンノイ Arden(組合せ)

瀬川冬樹

世界のステレオ No.2(朝日新聞社・1977年夏発行)
「オーディオ・コンポーネントを創る」より

 最近の新しいオーディオ装置の鳴らすレコードの音にどうしても馴染めない、という方は、たいてい、SP時代あるいは機械蓄音器の時代から、レコードに親しんできた人たちだ。その意味では、このタンノイの〝ARDEN〟というスピーカーと、クォードのアンプの鳴らすレコードの世界は、むろん現代のトランジスター時代の音でありながら、古い時代のあの密度の濃い、上質の蓄音器の鳴らした音色をその底流に内包している。
 〝古き酒を新しき革袋に〟という諺があるが、この組合せはそういうニュアンスを大切にしている。
 ピックアップに、あえて新製品でないオルトフォン(デンマーク)のSPU−GT/Eを選んだのも、そういう意図からである。
 こういう装置で最も真価を発揮するレコードは、室内楽や宗教音楽を中心とした、いわゆるクラシックの奥義のような種類の音楽である。見せかけのきらびやかさや、表面的に人を驚かせる音響効果などを嫌った、しみじみと語りかけるような音楽の世界の表現には、この組合せは最適だ。
 むろんだからといって、音楽をクラシックに限定することはなく、例えばしっとりと唱い込むジャズのバラードやフォークや歌謡曲にでも、この装置の味わいの濃い音質は生かされるだろう。
 しかしARDENというスピーカーは、もしもアンプやピックアップ(カートリッジ)に、もっと現代の先端をゆく製品を組合せると、鮮鋭なダイナミズムをも表現できるだけの能力を併せもった名作だ。カートリッジにオルトフォンの新型MC20、プリアンプにマーク・レヴィンソンLNP2Lを、そしてパワーアンプにスチューダーのA68を、という組合せを、あるところで実験してたいへん好結果が得られたこともつけ加えておこう。

スピーカーシステム:タンノイ Arden ¥220,000×2
コントロールアンプ:QUAD 33 ¥83,000
パワーアンプ:QUAD 405 ¥156,000
チューナー:QUAD FM3 ¥87,500
ターンテーブル:ラックス PD-121 ¥135.000
トーンアーム:フィデリティ・リサーチ FR-64 ¥50,000
カートリッジ:オルトフォン SPU-GT/E ¥43,000
計¥994,500 

KEF Model 104aB(組合せ)

瀬川冬樹

世界のステレオ No.2(朝日新聞社・1977年夏発行)
「オーディオ・コンポーネントを創る」より

 価格の面でもまた大きさの面からも、できるかぎり大げさになる事を避けたい。しかし音楽を十分に味わうために、音の質を落としたくはない……。そんな要求に対して、私がよくおすすめする組合せのいくつかのなかのひとつがこれだ。
 KEFの104というスピーカーは、いわゆるブックシェルフ型というスタイルの、わりあい小型の製品の中では、目立って洗練された上品な音を聴かせるスピーカーだ。いくらか神経質で線の細いところがないとはいえないが、常識的な音量で鳴らすかぎり、ことにクラシック系の音楽に対して、艶やかで美しい余韻のある独特の音質は、オーケストラを上等のホールの、ほどよい席で味わうような快い響きを楽しめる。そしてどちらかといえば、たとえばブルックナーやワグナーのような、音のつみ重なった厚みを大切にする音楽よりも、バロックの室内オーケストラのような、小さな編成でしかしパートごとの音形のデリケートな動きを大切にするような種類の音楽に特長を発揮する音質といえる。
 ことに弦やチェンバロやフルートの典雅な音色は、とてもこういう小型の装置とは思えないほどの上質な味わいで聴き手に満足感を与えるだろう。
 アンプはわざと新製品でないオンキョーの旧型を示した。KEFのスピーカーのデリケートなニュアンスの表現力を生かすには、このアンプが実に優秀だ。ある意味ではKEFのスピーカーと一脈通じる性格の音のするアンプといえる。プレーヤーはダイヤトーンの傑作であるオートマチック型。カートリッジは、ヘッドアンプが必要というわずらわしさを承知なら、オルトフォンのMC20とした。その場合のヘッドアンプは、オルトフォンのMCA76を使うかトランスの方なら、STA6600が使いやすい。

スピーカーシステム:KEF Model 104aB ¥99,000×2
プリメインアンプ:オンキョー Integra A-722nII ¥128,000
チューナー:オンキョー Integra T-433nII ¥150,000
プレーヤーシステム:ダイヤトーン DP-EC1 ¥120.000
カートリッジ:オルトフォン VMS20E ¥27,000
計¥623,000

ソニー SS-G7

ソニーのスピーカーシステムSS-G7の広告
(スイングジャーナル 1977年7月号掲載)

SS-G7

BOSE 901 SeriesIII

菅野沖彦

スイングジャーナル 7月号(1977年6月発行)
「SJ選定新製品」より

 ボーズ社はアメリカ、マサチューセッツ州フレミンガムに本社をおくメーカーだが、そのバックグランドはユニークである。マサチューセッツ・インスティテュート(MIT)の教授であるボーズ博士が、この会社の会長であるが、博士のオーディオに関する学術的研究がバックボーンとなって、その理論の具現化が、ボーズ社という企業に発展したものである。
 ボーズ901IIIは、合計9個の全帯域ユニットを内蔵する実にユニークなスピーカー・システムであるが、そのうち、リスナーに向って、取付けられたユニットは、ただの1個、残りの8個は背面に取付けられ、それぞれ4個づつが30度のアングルで後面に音を放射する。つまり、リスナーは、直接音1に対して間接音8の割合で、トータルの音を聴くことになるわけだ。この直接音と間接音の割合は、通常我々が、コンサート・ホールなどで聴く音の直接音と間接音の、比率にあたるものである。もちろん、その比率はホールのアコースティックや聴取位置によっても異るものだが、一般に、直接音を50%以上の割合で聴くことはないであろう。こうした直接音と間接音のバランスがもたらす〝自然さ〟を、いかにしたらスピーカーから得ることが出来るか? というところが、ボーズ博士のリサーチとこのスピーカーの開発の原点であった。これは過去100年近く、録音再生の世界にいつのまにか定着していた多くの矛盾を含んだ既成概念に対するアンチテーゼとして、きわめて興味深い。とはいえ、これは今までに決して未踏の考え方であったわけではない。しかし、再生においては、電気シグナルの忠実な変換という二次元的発想が圧倒的に強かったので、空間の位相差や時間遅延などの三次元への認識がおくれていたものだと思う。したがって、それらの空間要素は、プログラム・ソースに収録し再生空間では、それら間接音成分もプログラム・ソースの情報として得るという考え方が一般的である。もっとも、この理論からすれば、再生音場は無響室でなければならないが、現実には再生音場、つまり一般家庭の部屋のライブネスによる間接音も音のよさの要因として是認されていた。ボーズ博士の考え方は、すでに述べたように、再生音場のライブネスを積極的に生かすものだから、スピーカーを一つの発音体と考えた場合には、より自然な響きを可能にすることはたしかである。
 因みに、録音時に、直接音と間接音の比率を1:8の割合で収録したレコードを、このスピーカーで再生したらどうなるか。残念ながら、そういう録音は、ボーズのスピーカーならずとも、直接音だけをスピーカーの軸上で聴いても、まず美しい音としては聴えないであろう。なぜそうなるかというと、空間における直接音と間接音の1:8という比率の聴取位置における位相差や時間差は、物理的にもきわめて複雑なもので、これをモノーラルはもちろん2チャンネルや4チャンネルのシステムで収録再生することは無理で、録音時の1:8の電気的ブレンドは、再生時の1:8の空間ブレンドとは似て非なるものなのである。加えて、人間の音響心理作用が働くので、様相は全く異ってくるのである。したがって、直接放射も軸上で聴くことを建前としたスピーカーでの再生で適度なブレンドは、特に位相成分において間接音を不足としているのである。ここが、再生音場に豊かな間接音成分を生み出させることによって、音が自然になり、かつ、決して、不明瞭にな
らないというボーズのスピーカーの効果の現われるゆえんである。901IIIは従来のボーズ・スピーカーとはユニットもエンクロージュアも全く新しく設計し直されたもので、きわめて高度なテクノロジーと新しい着想に裏付けられた高級システムとして生まれ変ったものだ。これは、いわばシグナル・トランスデューサーの概念に対してアコースティック・トランスデューサーの概念で作られたものなのだ。

ラックス 5T50

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 一連のラボラトリー・リファレンス・シリーズのコンポーネントは、プリメインアンプ、セパレート型アンプなどのアンプが中心だが、周辺機器としてトーンコントロールアンプ、グラフィックイコライザー、ピークインジケーターなどがあり、ここでは、デジタルシンセサイザーFM専用チューナー5T50を取り上げることにする。
 このモデルは、FM多局化に備えて開発され、多くの新しい機能がある。
 受信周波数は、デジタル表示されるほかに従来のダイアル的感覚を残すために、FM放送帯を1MHzごとに示すLEDがついたダイアルがあり、別に1MHzの間を100kHzだとに示す10個のLED表示部分を組み合わせアナログ的な表示が可能である。同調はオートとマニュアルを選択可能で、操作はUPとDOWNの2個のボタンでおこなう。オート動作では、目的方向のボタンを押せば、次の局の電波を受けるまで探し同調し止まる。マニュアルではボタンのワンタッチで100kHzでと上下に移動し止まり、押しつづければ連続して動き、放せば止まる。このチューニングスピードは、任意に調整可能である。
 また、このモデルにはスイッチによるプリセットチューニングが7局できる。プリセットは機械式ではなく、C−MOS ICを使い、デジタルコードで記憶させる電子式で、希望局の記憶、消去が簡単であり、電源を切っても記憶させた局が消去することはない。シグナルメーターはないが、放送局の受信状態の目安を0〜5までの数字で表示するシグナル・クォリティ・インジケーターが採用してあるのも面白い。
 実際の選局はオート、マニュアルとも違和感がなく快適にチューニングでき、プリセットチューニングの記憶、消去も容易で、とくに慣れを要求しないのが好ましい。
 このチューナーの音は、T110などを含めた従来同社のチューナーよりも、クリアでスッキリとし、粒立ちがよく、滑らかさも十分にある。

オンキョー Integra P-303

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 フラットなプリアンプの流行に流されず、必要な大きさを最小限確保してつくられたプリアンプで、コントロール機能が大きく省略されたイクォライザーアンプに近い製品にしては、大きいアンプである。しかし、このプリアンプの純度の高い音は第一級の品位といってもよく、プログラムソースの細やかな陰影のデリカシーやニュアンスも、クリアーに再生する。それでいて音のタッチは生硬ではない。

KEF Model 103

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 KEFとしては音の肉付が豊かで、しかも、骨格のしっかりしたよさは、このメーカーらしい魅力を感じさせる。端正なバランスは、クラシックの品位をよく再現するし、高弦の表現に生命感が生きる。また、ジャズを聴いてもよく力感を再生してくれるので、かなりハードな音楽性に不満が出ない。104からみれば、かなり小型にまとめられているから、インテリアとの溶け合いにはこのほうがよかろう。

テクニクス SB-6000

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ユニットの取付位置のコントロールによって、全帯域の位相特性の改善を狙ったシリーズの中級製品で、30cmウーファーとドーム・トゥイーターの2ウェイである。ユニットが裸で見えるメカニックなアピアランスもユニークで魅力がある。耳障りのよいなめらかな音で、かなり豊かなグラマラスなサウンドが楽しめる。ドームがソフト系とは思えぬ明晰な高域であるが、低音がやや重く、もう一つ軽い弾みがほしいと思う。

ヤマハ NS-500

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ブラックフィニッシュのエンクロージュアはNS1000シリーズと共通のイメージだし、トゥイーターにもベリリウム・ドームを使っているところも同じ、これは2ウェイで、かなりめりはりのきいた明瞭なサウンドである。陰影やニュアンスが少々乏しい嫌いはあるが、このクラスでは優秀なシステムである。強いていうと、クロスオーバー辺りに、やや耳を刺す傾向があるのが惜しい。外観と共通のイメージの音である。

デンオン DP-7000

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 デンオンの最高級ターンテーブルとして恥じない性能の高さと、作りの美しさをもち、レコード演奏の醍醐味を満たしてくれる高級機である。動力は、現在の回転機器の最高のテクノロジーでSN比、トルク、ワウ・フラッターなどに不満はない。ユニークなスタイルも高く評価できる必然性の濃いデザインだ。

オンキョー M-3

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 M6の成功に引続き、その下のラインを狙って開発されたのが、このM3であろう。やはり、2ウェイ構成で、28cm口径ウーファーと4cm口径トゥイーターを使っている。明るい大らかなサウンドはM6と一脈相通じてはいるが、さすがに、こっちのほうは、少々、小粒である。しかし、このクラスのシステムとしては、プログラムソースを効果的に鳴らすスピーカーで、音のまとめ方は堂に入っているもの。

アキュフェーズ P-300

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 国産セパレートアンプとしては、もはや最も古い製品に属する。こまかな部分に改良が加えられているようだが、そにしても、今日の時点で最新の強豪と肩を並べて、ひけをとらないクォリティの高さはさすがだ。ただし音の傾向は、最新機のような鮮度の高さよりも、聴きやすいソフトな耳当りを重視した作り方。

ロックウッド Major Gemini

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 〝メイジャー〟を土台に、タンノイのユニットを2本並列駆動させるハイパワーが多のロックウッド製モニタースピーカー。1本入りの引締って密度の高い高品位の音質に加えて、音の腰が強く充実感が増して、ことにハイパワードライブではこれがタンノイのユニットか、と驚嘆するほどの音圧で聴き手を圧倒する。

KEF Model 5/1AC

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 かつてBBC放送局のメインモニターとして活躍し、いまでも一部で現用されているLS5/1Aを土台にして、高低2chのパワーアンプとフィルターを内蔵させて現代流の高出力音圧レベルを得ると同時に、マルチアンプならではの解像力の良い鮮度の高い音質に仕上げたのが、このKEFオリジナルの♯5/1ACだ。

ヴァイタヴォックス Bitone Major

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ヴァイタヴォックスの音をひと口でいえば、アルテックの英国版。要するにアルテックの朗々と響きの豊かで暖かい、しかしアメリカ流にやや身振りの大きな音を、イギリス風に渋く地味に包み込んだという感じ。A7−500−8のレンジをもう少し広げて、繊細感と渋味の加わった音がバイトーン・メイジャー。

ラックス 5L15

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ラックスのプリメインアンプには、高級機としてSQ38FD/II、L−309V、そしてこの5L15のいわば新旧三世代のモデルが共存していることが大変に興味深く、オーディオの趣味性を強く捕える、いかにもラックスらしさがある。それにしても5L15は、ラックス育ちの現代っ子の音がするようだ。

アコースティックリサーチ AR-10π

 瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ARばかりでなくアメリカ東海岸の音を必ずしも好きでないことはいろいろな機会に書いているつもりだが、その中でAR10πは、ライヴな広い部屋でハイパワーぎみに鳴らすとき、という条件つきだが、オーケストラの厚みの表現とバランスのよさで、印象に残っている音質だ。低音のレベルコントロールは便利。

デンオン PMA-700Z

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 最新技術内容を誇るプリメインアンプが数多く登場しているなかにあって、このモデルはすでに旧製品となったように思われるが、ゆったりと余裕があり、陰影の色濃い音を聴くと、何故かホッとした感じになるのが面白い。やはり、ある程度以上の完成度があるアンプは、時代を超越した独特な魅力があるようだ。