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ミュージック・リファレンス RM-5 + アクースタット TNT-200

菅野沖彦

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
特集・「高級コントロールアンプVSパワーアンプ72通りの相性テスト」より

 マーラーでは響きが明るくなりすぎるし、高域がややうるさく、しなやかさが不足する。ヴァイオリン群は、もっとキメの細かい音が再現されるべきだと思う。ピアノの中低音が、この試聴スピーカー、試聴室では不明瞭になりがちだった。だが、この組合せでは、よく締り、よく抑えられて、非常にすっきり再生されてよかった。f特に無関係に、この辺りの変化が、アンプの違いによる面白いところである。ジャズのベースはやや重い。

ヤマハ HA-3

井上卓也

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
「PickUp 注目の新製品ピックアップ」より

 MC型カートリッジの出力電圧は平均して約0・1mVほどの低さであるため、これを音質劣化させずにアンプのフォノ入力に送り込むことは非常に難しいものだ。
 昇圧手段にヘッドアンプを選ぶ場合、ヘッドシェルにヘッドアンプを内蔵させてカートリッジからの信号をダイレクトに受けて増幅することができれば、ほぼ理想に近いはずである。この方式を世界初に実用化した製品が既発売のHA2であり、今回のHA3は、その第2弾製品である。
 基本構成は、HA2と同様で、ヘッドシェル内にHA3ではサテライトアンプと呼ばれるようになったFET構成アンプを組み込み、これとHA3本体内のアンプでヤマハ独自のピュア・カレント増幅方式を構成させるタイプだ。本体内にはRIAAイコライザーをも備えているため、本機の出力はAUX入力に接続して使う。
 このHA3の方式は、MCカートリッジ出力を至近距離でアンプに入力し、信号電圧を電流に変換してHA3本体に送るため、トーンアーム内部の接続部分、接点や内部配線、さらにアームコードなどでのノンリニアの影響が極小となり、高純度の音が得られる特徴がある。
 HA3独特の改良点は、出力系に固定出力と可変出力の2系統があり、可変出力を使ってパワーアンプをダイレクトに駆動できるようになったことと、HA2ではヘッドシェル組み込みのアンプが本体と一対一でバランスが保たれ調整されているため、カートリッジ交換のたびに取付け直しが必要だったが、今回はヘッドシェル組込みアンプが1個と任意のヘッドシェルに組込み可能のサテライトアンプが2個、合計3個のサテライトアンプが付属し複数個のMC使用時の使いやすさが向上していることだ。なお、各サテライトアンプは、本体アンプとのマッチングが完全にとられ、誤接続での安全性を確保する保護回路付。
 HA3は、MCダイレクト使用可能のアンプと比較すると、非常にクリアーで抜けのよい音が得られる。アンプとしてのキャラクターは明快で、クッキリと音に輪郭をつけて聴かせるタイプだが、それにもまして音の鮮度感が高く、反応の速いことが、このタイプの優位性を物語る。なお、パワーアンプのダイレクト駆動は、これをさらに一段と際立たせた独特の世界である。

ヤマハ MC-2000

井上卓也

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
「PickUp 注目の新製品ピックアップ」より

 最近のカートリッジの特徴は、新製品のすべてがMC型だ、ということである。
 とくに国内製品では、MC型の問題点のひとつでもあった低価格化が生産技術面で飛躍的に改善され、1万円を割るモデルさえ出現している。その内容も、価格は安くても悪くしようがないというMC型独特の構造上の利点もあって、正しくコントロールし追込めば、予想以上に素晴らしい結果が得られるまでにいたっている。
 一方、高級カートリッジの分野では、振動系の軽量化というオーソドックスなアプローチが一段と促進され、結果としての実用針圧は1gの壁を破り、コンマ・オーダーに突入している。
 MC2000は、振動系軽量化への技術限界に挑戦したヤマハの意欲作だ。MC型の音質の碁盤である発電方式は、ヤマハ独自の水平・垂直方向に発電系をもち、マトリックスでステレオ信号とする十字マトリックス方式で、当然のことながらコイル巻枠は空芯型だ。カンチレバーは、高純度ベリリウムを先端φ0・22mm、根元部でφ0・34mmとテーパー状にした肉厚20μパイプを使用。全長も従来のMC3などの5・5mmから3・7mmと短縮され、カンチレバー等価質量0・034mgを達成している。なお、コイルは芯線径12・7μの銅線使用である。
 支持系も大幅に発展した部分だ。ダンパーは、温度特性を改善した異種材料を組み合わせた新開発LTD型を独自の段付き型で使用。温度特性は従来の3〜4倍に改善されたということだ。これに、30μステンレス7本よりのサスペンションワイヤー、支持部0・06mm角ソリッドダイヤ特殊ダ円針が振動系のすべてである。なお、ボディは端子一体型・高剛性ポリカーボネート製、内部は質量集中構造で、自重5・3gとヤマハ製品中で最軽量である。
 針圧を標準の1gで聴く。帯域バランスは、軽量型らしく広帯域を意識させぬ滑らかでナチュラルなタイプ。音色はほぼニュートラル、音の粒子が細かく滑らかで、素直に音の細部を引き出す、このタイプ独特の魅力が感じられる。表情は基本的に抑え気味だが、針圧の0・05gの変化で、伸びやかにも穏やかにも鋭く反応を示す。優れた製品の性能を活かすためには、アームの選択と使いこなしが不可欠の要素だ。

ビクター Zero-100

井上卓也

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
「PickUp 注目の新製品ピックアップ」より

 Zeroシリーズの製品群は、リボン型トゥイーターとダイナミックレンジの広いユニットによるワイド&ダイナミック思想をテーマに発展してきた。昨年末Zero1000が登場したが、今回のZero100は、Zero1000の3ウェイ化モデルと思われやすい新製品だ。
 ユニット構成上の特徴は、高域に独自のファインセラミック振動板使用のハードドーム型を使用していることである。このあたりから将来のZeroシリーズの展開が、特徴的であったリボン型ユニットをドーム型に変えて質的向上を図る方向へ行くであろうことは、ほぼ同時発売のZero0・5の例を見ても、かなり明瞭であろう。
 システムの基本は、Zer1000での成果を導入し、リファインした製品である。スーパー楕円特殊レジン製バッフルボード使用のエンクロージュアは、裏板構造は異なるが、内部の定在波と振動板背面にかかる背圧の処理は重要項目として検討された。Zero1000以来約一年の成果は相当に大きい。毛足の長い純ウール系吸音材開発は、独自のエステルウール開発以に巻いて使う定在波の制御方法や適度にエンクロージュア振動を抑え音を活かす補強(響)棧などの処理方法も従来と異なる。
 ユニットは、すべてファインセラミック振動板採用。低域はZero1000用と類似するが、センターキャップに通気性をもたせ磁気回路内の背圧を前面に抜く方式の採用が特徴。中域はZero1000の75mm口径に対し、65mm口径の新開発ユニットで、振動板周囲にイコライザー類を持たぬ最新の設計法とユニットとしての構造的な発展で、質的向上は明らかだ。高域はZero1000の35mm口径に対して30mm口径とし、高域レスポンスを改善している。すべて新設計ユニットだ。
 聴感上のSN此が優れ、音の粒子が細かく滑らかに伸びた帯域バランスの製品だ。豪快に鳴らすには金属やコンクリート、硬質ブロックの置台を使うが、ナチュラルで色付けがなく本当の意味での反応の速さや音場感的な見通しの良さを聴くためには、良質な木製の置台が望ましい。この場合音色はニュートラルで聴感上のDレンジも広く、狭い部屋が広いホールに化するような見事な音場感とヴィヴィッドな表情が魅力。

ミュージック・リファレンス RM-5 + クレル KSA-50

菅野沖彦

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
特集・「高級コントロールアンプVSパワーアンプ72通りの相性テスト」より

 クラルテと呼ぶにふさわしい高音は、このパワーアンプの持つ音といって間違いなかろう。50Wアンプとは思えぬ安定度と力強さをって、スピーカーをドライブする。このマーラーでは、やや重量感に欠ける異質な音も感じるが、かといって、決してオーケストラの固有の音色は変えられていない。フィッシャー=ディスカウは品位のある、きわめて繊細な発声技術が明らかに再現される。ジャズも骨格、肉づきとともによい充実さだ。

ミュージック・リファレンス RM-5 + サンスイ B-2301

菅野沖彦

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
特集・「高級コントロールアンプVSパワーアンプ72通りの相性テスト」より

 TVA1との組合せで聴いた血の通ったソリッドな音に、さらにキメの細かい質感の緻密な響きが加わり透明度が増した。代りに、暖かさ、熱っぽさはやや失われ、よりすっきりとした現代的な音といえるものになる。ヴォーカルも雑物がとれ、よりすっきりするが、その反面、やや冷たいともいえる感触をもってくる。ジャズでは圧倒的に力強く、安定感が増し、女性の声の艶、弾みのあるヴィヴィッドなベースが素晴らしいものだった。

ミュージック・リファレンス RM-5 + マイケルソン&オースチン TVA-1

菅野沖彦

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
特集・「高級コントロールアンプVSパワーアンプ72通りの相性テスト」より

 血の通った、柔軟で立体的なふくらみの感じられる熱い音だ。オーケストラのトゥッティは充実していて、深々としたマッシヴな響きで、僕の好きなマーラーの音だった。この演奏らしい、弾力性のある重厚な響きに魅力を感じた。フィッシャー=ディスカウの声も、より透り、よく含み、表現の多才な彼らしいテクニックが生きている。ジャズも、リズムの振動が生き生きと伝わり、めりはりのきいた直接音と豊かな響きが美しいバランス。

テクニクス SB-M2 (MONITOR 2)

井上卓也

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
「PickUp 注目の新製品ピックアップ」より

 テクニクスのスピーカーシステムは、従来からマルチウェイシステムのひとつの問題点であった各ユニットの音源中心を、前後方向に揃えるリニアフェイズ化を重視したシステムづくりが最大の特徴だった。
 この考え方は、海外でも米アルテックのA7システムや、欧州ではフランス系のキャバスやエリプソンのシステムが先行していたものだが、音源中心が振動板面で決まる平面振動板ユニットの全面採用で、明らかに世界のトップレベルに位置づけされるようになった。
 M2には、木目仕上げのM2(M)と、シルバー塗装仕上げのM2(S)の2モデルがあるが、今回はM2(S)仕様の試聴である。基本構想は、既発売の4ウェイシステム、M1を3ウェイ化し、いわゆるスタジオモニターサイズにまとめた製品である。
 使用ユニットはすべて、扇を全円周に展開したような独自の構造の軽金属ハニカムコアを採用したことが特徴である。
 低域は直径200mm、重量3・1kgの磁石と直径75mmの高耐入力構造ボイスコイル、独自のリニアダンパーを組み合わせた38cm口径ウーファー、中域は直径140mm、重量1・2kgの磁石と直径50mmボイスコイル採用の8cmスコーカー、それにスキン材に積層マイカ使用、スコーカーとの取付位置を近接化するために特殊な角型磁石を採用した28mmトゥイーターを組み合わせている。エンクロージュアは、筒型ダクト使用のバスレフ型で左右対称型だが、M1でのバッフル面両側にあった金属製の把手兼補響棒がないのは大きな改善だ。なお、ネットワークは低域と中高域分割型、フェライトコア入りコイル、高域用コンデンサーはメタライズド・フィルム型採用で、高域にはサーマルリレー使用の保護回路付である。
 テクニクスらしく基本特性が世界のトップランクの見事さだけに、M2は使い方が最大の決め手だ。簡単な鳴らし方で概要を掴むと、柔らかく豊かな低域と素直で透明感があり、ややおとなしい中域から高域をもっている。低域を程よく引き締め、低域と中域のつながりを密にする使用が望まれる。置台に硬質コンクリート台型のブロックを3個使い、最低域の重量感を確保しながら同軸構造のスピーカーコードを併用すると、現代的なモニターライクな高分解能な音が聴ける。

ヤマハ NS-2000

井上卓也

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より

 NS1000の高級モデルがヤマハで開発中で、型番はNS2000というウワサは、昨年来耳にしていた。3ウェイか4ウェイ構成かという問題。それに、低域または中低域用の振動板材料に独自のベリリウムスキンを使った既発表の平面型を採用するのか、コーン型ならどのようなマテリアルを新導入するかというところが注目のポイントであり、非常に興味深かった。
 実際に登場したNS2000の姿を見たのは、全日本オーディオフェア前であるが、オーソドックスに開発された3ウェイシステムというのが最初の印象である。
 基本構想は、中・高域に熟度の高い独自のベリリウムドーム型を使い、問題の低域には、純カーボン繊維積層型の高剛性、低内部損失の新コーンの組合せ。エンクロージュアは、全面25mm厚高密度パーチクル板採用で、指向特性に優れたラウンドバッフル部にはブナのムク材を大量に使った完全密閉型。ヤマハの誇る木工技術を活かし高級家具調の見事な仕上げが施されている。ラウンドバッフルのため、ユニット配置はヤマハ初の一直線レイアウトというものだ。
 注目の低域は、純カーボン繊維の縦方向の比弾性率、強度を活かし、横方向の弱さをカバーする目的で、コーンを扇形に八等分した形状のカーボン繊維一方向配列シートを相互に繊維方向を直交させた4層構造とし、コーン裏側の円周方向に補強リブを採用、きわめて剛性の高いコーンを実現している。磁気回路は直径18cm、厚み20mmの磁石採用。無酸素銅線ボイスコイル口径88mmは、国内製品中では異例の大径で、強力な駆動力を物語るものだ。また、有限要素法を用いて磁束分布を計算した、新設計の低歪磁気回路も見逃せない。中・高域ユニットは、従来より結晶構造を細かくした振動板を採用、特に高域の磁気回路強化が目立つ。なお、ネットワークのコンデンサーが、すべてMP型であることは異例だ。
 NS2000は、滑らかでシャープな音が特徴。モニター調の1000Mより、NS1000系の発展型とも考えられるキャラクターだ。注目の低域はスケールが大きく、ソリッドさが新たに加わった魅力だ。大パワー使用での迫力も注目されるが、特徴を活かした使い方は、良質な木製の置台に乗せて、実際的な家庭内の聴取レベルでバランスを整え、質的な高さを追求したい。

ダイヤトーン DS-5000

井上卓也

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より

 ダイヤトーンのスピーカーシステムは、低域振動板材料として軽金属ハニカムコアにスキン材を使うハニカム構造の採用から、新しい世代への展開が開始された。つまり、低域の改善からスタートした点が特徴である。DS401、90C、70Cなどが最初に新ウーファーを採用した製品であり、スキン材をカーボン繊維系に発展させたタイプが、大型4ウェイ・フロアー型のモニター1である。
 これらのプロセスを経て、全面的に使用ユニットが見直され、一段と飛躍を示した製品が、伝統的なDS301、303に続く高密度設計の完全密閉型システムDS505である。低域用スキン材に芳香族ポリアミド系のアラミド繊維を導入、軽量で、防弾チョッキにも使われる強度と適度な内部損失を活かし、ハニカムコーンの完成度を高めた。同時に、ボイスコイル部分と振動板を一体構造とした、DUDと呼ばれるボロン振動板採用のハードドーム型ユニットも新登場している。
 引き続き、昨年は大口径ボロンドーム型スコーカーとバスレフ型エンクロージュア採用のDS503が開発された。一方では、80cm、160cm口径の超大型ウーファーでのトライなどを経て、現時点のスピーカーシステムでのひとつの回答が、4ウェイ構成フロアー型という形態をもつ新製品DS5000であると思う。
 一般的には、DS505のフロアー型への発展とか、DS503の4ウェイ・フロアー型化というイメージで見られるだろうが、内容的にはDS505以来の2年間の成果が充分に投入された完全な新製品だ。
 基本的構成は、業務用としてスタートした40cm口径の伝統的な低域ユニットに、初めてアラミド繊維スキン材を導入してベースとしている。直径200mmのフェライト磁石採用で、ボイスコイル直径75mmは、4ウェイ構成専用ウーファーとしての設計。
 中低域用25cmユニットは、アラミド・ハニカム構造とダイヤトーン初のカーブドコーン採用が注目点で、システム中で最もシビアな要求が課されるミッドバス帯域での高域再生限界を高める効果を狙っている。このあたりは、ミッドバス構成4ウェイ・ブックシェルフ型の名称で登場したDS505の設計思想を踏襲したものだ。
 中高域用6・5cm口径ボロンドーム型ユニットは、DS503系がベースである。しかしユニットとしての内容は、ほとんど関連性がない新設計によるものだ。まず、振動板はチタンベースのボロン採用は同じだが、ボイスコイルを巻いている部分までボロン化が進められ、ボイスコイルの振動が、よりダイレクトにドーム振動板に導かれるようになった。磁気回路も強化された部分で、直径156mmのフェライト磁石は二段積重ね使用、磁気回路の厚みが増しているだけに、ポール部分の形状、バックキャビティなどは変更されている。また外観上では表面のダイキャストフレームに真ちゅう製金メッキ仕上げの特殊リングが組み込まれ、主としてフレーム共振のコントロールに使われていることも目新しい。
 高域用2・3cm口径ボロンドーム型ユニットも中高域同様にDS503系だが、2段積重ね型磁気回路による強化で、磁気飽和領域での低歪化の手法は中高域と同様な設計である。また、4ウェイ化に伴い、最低域のレスポンスの向上に見合った最高域レスポンスの改善のため、振動板関係でのリファインがおこなわれたユニットだ。
 なお、磁気回路の低歪化は、低域、中低域ともに、ダイヤトーン独自の磁気ギャップ周辺に特殊磁性合金を組み込む方法が採用されている。
 ネットワーク関係は、DS505で新採用された圧着鉄芯を使う独自の技術開発に基づく低歪みコアと無酸素銅を使うコイルと、適材適所に測定と試聴の結果で選択されたコンデンサーを従来のハンダ付けを廃した圧着接続で使うのはDS505以来の手法だが、圧着用スリーブに金メッキ処理を施したのは、今回が初めてのことだ。なお、ネットワークは、マルチアンプ駆動用に低域と中低域以上が分割使用できる4端子構造が採用されているが、端子、ショートバーともども金メッキ処理になっている。
 エンクロージュアは、針葉樹系合板を直交して貼り合せた2プライ構造のバッフルが板厚30mm、側板と裏板などは、同じく針葉樹系チップボードの2プライ構造で板厚24mmの材料を使う。内部補強棧関係も、減衰特性のきれいなシベリア産紅松単材を採用、表面はウォールナットのオイルステン調仕上げである。エンクロージュア型式は大口径のアルミパイプを使ったバスレフ型で、重量は約90kgとヘビー級である。
 試聴は、約10cmほどの硬質な木材のブロック4個で床から浮かしたセッティングから始める。プレーヤーは試聴室リファレンスのエクスクルーシブP3、カートリッジはデンオンDL305にFR Xf1の組合せ。アンプはスレショルドFET TWOプリアンプとS/500パワーアンプのペアだ。
 大口径ウーファー採用のフロアー型らしく、量感タップリでやや柔らかい低域をベースに、軽い質感で反応の速い中低域、シャープで解像力が高く、スピード感のある中高域が、鮮映なコントラストをつけて飛び出してくる。この音は非常にソリッドに引き締まり、情報量が極めて多い。プログラムソースの音を洗いざらい引き出して聴かせたDS505的なキャラクターを数段階スケールアップし、聴感上でのSN比を一段と向上したタイプにたとえられる。
 置台の材料を硬質な約10cm角、長さ50cmほどの角材に変えたり、位置的に、極端にいえば1cmきざみに変更し追込むと、DS5000は極めてシャープに反応を示す。トータルバランスを大きく変えることなく、ある程度の範囲で、柔らかいウォームトーン型バランスからシャープなモニターサウンド的イメージまでの幅でコントロールすることができる。
 表現を変えれば、置き方、スピーカーコードの選択、さらにスピーカー端子での接続を低域側と中低域以上の端子に変えることでの音質的変化を含み、結果は使いこなしと併用装置で大幅に変る。即断を許さないのがこのシステムの特徴である。
 ちなみに、アンプ系をより広帯域型に変え、適度なクォリティをもつCDプレーヤーと組み合わせて、CDの音をチェックしてみた。いわゆるCDらしい音は皆無であり、CDのもつDレンジが格段に優れ、SN比が良い特徴が音楽の鮮度感やヴィヴィッドさとして活かされる。音場は自然に拡がり、定位はシャープで、楽器の編成まで見えるように聴きとれる。これは、アナログには求められない世界だ。デジタルのメリットは、相応しい性能をもつスピーカーでないと得られないというのが実感。