Monthly Archives: 4月 1978 - Page 4

ソニー TA-N86

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 肌ざわりの柔らかい、むしろトロリとした味わいといいたい印象さえある滑らかな音を聴かせるというのが第一印象だが、しかし決して弱腰の柔らかい甘さではなく、どちらかといえば音像をきりっと引き締めてゆく傾向の、芯のしっかりした、明快であいまいなところのない解像力の良い音といえる音にトゲトゲしさやきつさがなく、やれッ主で生き生きした表情を持っているが、しかし一見当りの柔らかな音の中に、ときとして意外に腰の強い骨ばった感じさえ抱かせる硬質な音をくるみこんでいるらしく、たとえばアメリンクやバルバラの声でいくぶん頬骨の張った感じに聴こえることがあった。Aクラスに切換えるとわずかに線が細くなるが、基本的な傾向は変らない。

サンスイ BA-2000

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

クラシックからポップスまで、あるいは構成の複雑で大きな曲でも逆に小編成や独奏、独唱ものでも、音色の印象が一貫していて、オーソドックスに練り上げられたパワーアンプであることが聴きとれる。総体にはいくぶん華やかなコントラストの強い傾向の音色を持っているが、音のニュアンスを豊かに鳴らし分けるだけの素直さがあるし、プログラムソースやコントロールアンプの差を相当はっきりと出すことからも、ディテールの描写の優れた解像力の高さがわかる。意外に腰の坐りの良い音で、パワー感も十分。コントロールアンプはCA2000とくらべると、こちらの方が出来ばえとしては格段に上だろう。価格とのバランスを考えると、かなり水準の高い製品だと思う。

ヤマハ C-2

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 テストソースやスピーカーその他に、かなりきわどい音を選んであるにもかかわらず、あらゆる音に対して上品なバランスを失わずにこれほど危なげのない音で安心して聴かせたアンプは、新型の出揃った今回のテストでもそんなに多くはない。そこがいかにもヤマハのアンプらしいし、反面、私のような八方破れの人間には多少の物足りなさの残るところでもある。C2自体が音のケバ立ちや粗い感じを細心におさえた作り方なのは、マランツ510Mと組み合わせてもその音をおとなしくまとめてしまうことからわかるが、ヤマハの良さはB3との組合せの方がよく出る。内蔵ヘッドアンプはDL103Sには一応のクォリティを示すが、MC20では少し味が薄くなりすぎた。

マランツ Model 170DC

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 パネル面の明るいやや白っぽい金色が、まるで音そのものを象徴しているかのようで、さらっと乾いた質感の、影のつくことを避けて一様に照らした人工光線に浮かび上ったような印象の音像を展開する。そういう意味ではよくコントロールされた、やかましさの少しもない、むしろやや静的ともいえるきれいな尾とかする。そのせいだろうか、音の起伏をいくぶん揃えて整理するような感じがあって、野卑なところのない、どことなく人口の清浄空気の中で大切に育てられた音、要するにたいへん注意ぶかく慎重に作られた音といってよい。ただ個人的な好みを加えて言えば、もう少し音の流れの自在さや伸びやかさのある方が嬉しい。

パイオニア M-25

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 パイオニアのアンプが、セパレートタイプにかぎらず音のバランスのとり方の巧みなことはすでに多くの機会に言われているが、そこにも一貫したパイオニアトーンとでもいえる個性があって、それは大づかみにいえば、中音域から低音域にかけてやや厚みを持たせ、中高音域ではよく抑えてやかましさをなくし、最高音域にちょっと味をつけてほどよい切れこみの良さを感じさせる、という印象がある。M25も大まかにはその線で仕上げられているが、M4のようにウェットな音でなく、暖かみはあってもややぜい肉をおさえた硬質なところも聴きとれて、いくらか強引さや乾いた印象のあるものの、力としなやかさをバランスさせたなかなかの音質だと思った。

ジェニングス・リサーチ The Amp

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 明るく元気のよい、身のこなしの軽やかでよく伸びる音がする。音像のひろがりもわるくない。反応がいかにもシャープで、その意味では聴いていて決して不快な音ではないが、いろいろなプログラムソースを通して聴くと、曲によって印象が少しずつ変ってゆくようなところがある。弦楽四重奏ではヴィオラの音域の支えが弱く四声のハモりかたがもうひと息。ピアノのタッチも丸みのある質感がもう少し欲しい。どちらかというと聴き手の注意力が高音域の輪郭の方にゆく傾向で、中低域から低域にかけては意外に反応がゆっくりしているように思える。LNP2Lとの相性があまり良くなかったようにも思えた。

ビクター EQ-7070

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 一聴して基本的なクォリティの高い、よく磨き込まれた緻密さが聴きとれる。音の傾向自体はやや明るく軽く、たとえばオーケストラの斉奏でもディテールのひとつひとつがきらきらと細く光るようなところがあったり、弦楽器では倍音の方に耳の注意力をひきつけたり、アメリンクやキングス・シンガーズやテルマ・ヒューストンなどの声が総体に若づくりになる傾向を聴かせるが、音の支えがしっかりしているのでこうした聴こえ方は不快ではない。ただ音の透明感のすくれている割には、立体感や奥行きがもうひと息増すとなおよいという感じがあった。MCヘッドアンプは低域がやや薄くなる傾向があるがクォリティはかなり高く、中高域以上はかなり美しい音を聴かせた。

パイオニア M-75

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 おそらくペアとして企画されたコントロールアンプC77の、やや重い感じで反応の鈍い傾向の音をちらかがうまく補うという印象で、ややコントラストを強く、音の表情を生かすようにどちらかといえば身ぶりの大きな音を鳴らす。M25やエクスクルーシヴ・シリーズのM4の正攻法の作り方ではなく、どちらかといえばヤングマーケットをことさら意識したのではないかと思えるような、甘さ辛さをはっきりさせたいわゆるわかりやすい味に仕上げてあるので、音の品位という点からみるとかなりものたりない。中音域から低域にかけての厚みを持たせて腰の坐りを良く、大づかみな意味で音のバランスをととのえるうまさはパイオニアならではの手際の良さだと思った。

ハーマンカードン Citation 16A

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 かなり積極的な音を持ったパワーアンプだ。中域以上高域にかけて華やかな光沢があって、明るいライトで照らしたようにディテールに至るまでキラキラと輝いて浮き出してくるようだ。低音のかなり低いところには意外に重量感もある。やや重く、力にまかせるように思えるが、それは、中低音域でいくぶん音の引っ込むような傾向があるのでよけいにそんなふうに聴きとれるのかもしれない。したがっていわゆる低次倍音の音域がバランス上薄手なので、中〜高域の華やぎは、ときとしてかなり派手にはしゃぎすぎる傾向を聴かせる。饒舌気味、説明過剰の傾向といえようか。これなりに得がたい個性で、国産でいえばビクターのアンプに概してこの傾向が聴きとれる。

オンキョー Integra M-505

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 どちらかといえばウェットなタイプの音、あるいは女性的な美しさを持った音、ともいえそうだが、清らかでなよやかな表情のやわらかさは、ごく良質なアンプでなくては聴けない上等の音質だ。「オテロ」冒頭のトゥッティでは、音像の奥行きや深みや発声のニュアンスも十分で、ステージの雰囲気さえ感じとれ、弦楽四重奏やアメリンクの声、伴奏のピアノの表情なども、音がよく響きよく溶けあってほどよく弾み、いかにも音楽している楽しさが感じとれる。LNP2Lの情報量を全部は出しきれないところはあるし、やや甘口で弱腰のところはあるが、この音の良さはもっと注目されていい。外観の武骨さが、かなりイメージを悪くしているのではないかと思える。

ビクター P-3030

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 EQ7070と見た目はよく似ているが、出てくる音はだいぶ違う。7070が明るく軽く透明な音のするのに対して、3030の音は逆に総体におっとりして、7070のような入力ソースに対する反応の早さをあまり感じさせない。音像の前にやや暖色系の薄幕をひいた感じで、総体に音の冴えが物足りなく、もっと透明感が欲しい。細部を見渡したい、という気持にさせる。そのせいもあるのか音像の並び方も平面的で、奥行きや立体感がもっと欲しい。内蔵のMCヘッドアンプも7070とはだいぶ違うらしくDL103Sの場合にはまあまあだが、MC20に対しては音を素気なくする傾向。7070とは価格の差がずいぶんあるのだから仕方ないかもしれないが。

ガリエン=クルーガー 1000-1S

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 このメーカーについては詳しいことを知らないが、外観はいわゆるコンシュマー用でなくいかにもプロ用、それもPAあるいはモニター用などの用途を思わせるコンストラクションで、見た目にはなかなか信頼感を抱かせる。そのことは音を聴いてもうなずける面がある。総体に神経質なところが少しもなく、やや重い感じの独特の低音の力に支えられて、中音から最高音域に至るまでどちらかといえば反応が鈍い印象。ディテールを照らし出すのでなく全体をくすんだモノトーンに仕上げるような音色といえる。かなりの音量で鳴らし続ける目的には、シャープすぎなくていいのかもしれないが、ふつうの鑑賞用としては、もう少し鮮度の高さやニュアンスが欲しく思える。

トリオ L-07C

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

「オテロ」冒頭のトゥッティでも埋もれがちのディテールをむしろくっきりときわ立たせ、弦楽四重奏では倍音の方にやや注意力を向ける傾向があるというように、一聴する途中〜高音域にエネルギーが片寄るかに思えるが、低音域にはかなりの重量感があるので、一見骨細だが骨格はしっかりしている。ただ低音はクラシックの持続音ではおさえぎみだが、ポップスの打音ではかなり量感を出すという二面性が聴きとれる。目鼻立ちのクッキリしたタイプの音だが、音楽を楽しませるカンどころのとらえ方は本質を衝いていると思う。本調子が出るまでに時間のかかるタイプだ。ただ内蔵MCヘッドアンプは情報量がやや減ってクォリティがともなわない。

テクニクス SU-A2 (Technics A2)

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ひんやりした肌ざわりはかなりウェットな印象で、ぜい肉を極力おさえたかのように、かなり細身の音。しかし質感はかなり緻密に練り上げられたらしく、細くウェットな見かけの割には、骨格のしっかりして芯の強い音を持っている。バランス的には中高域にややエネルギーの集まるタイプで、相対的に低音域はかなり抑えぎみに聴こえる。音の透明感はなかなかのものだが、肌ざわりの冷たいせいか、とちらかといえばやや素気ない印象。しかし曲によってはオャ? と思うほど強引なところもある。途中でトラブルを生じてMCヘッドアンプのテストが十分できなかったのは残念。A1と違ってプリプロ機らしいが、A1の音から想像してこの方向でのいっそうの完成を期待したい。

テクニクス SU-9070II (Technics 70AII)

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 以前の70Aとは中味が全く別ものといっていい。かつてのいかにもセパレートアンプの流行に便乗した感じのある安手の音が記憶に残っているせいもあるが、II型になって印象は一変して、たいそう密度の高い、充実感のある聴きごたえのする素晴らしい音質だと感じた。従来のテクニクスのアンプが、一体に音の表情の乏しい傾向があったのに、70AIIは音の起伏が豊かで彫りが深く、パースペクティヴな音場の奥行き感もとても良い。ディテールの解像力と音の鮮度も十分だ。内蔵のMCヘッドアンプは、MC20に対してはオルトフォンらしさはやや減るもののやや線の細いきれいな響きは美しく、DL103Sではトランスにくらべて幾分若やぐが音が生き生きしてとてもいい。

GAS Ampzilla II

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 中庸であることをの良さを十分にわきまえた音というべきか。実に見事に堂々とした安定感があって、どんなプログラムソースにも破綻をみせず、いわゆるヒステリックなところのない本当の底力のあるとてもいいパワーアンプだ。大地にどっしりと足をふんばってたっているかのように腰の坐りのよい音。よく鍛えたぜい肉のない筋肉質の肉づきの良さを思わせる、いかにも男性的な自信にあふれた魅力といえようか。ただ、前回のセパレート特集でも発言したように、私自身は、同じ音でももう少し女性的なやさしさや艶っぽさがなくては嬉しくなれない。いずれにしてもコントロールアンプのLNP2Lとは相容れにくい性格をもっていて、GAS同志の組合せの方がいい。

スタックス SRA-12S

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 明るく滑らかで、いかにも明瞭度の高い感じの音を聴かせる。たた、その明るさがやや一様で、音の陰影の不足した感じはするが、弱音での汚れも少なくくっきりときれいに音を並べる。しかしその並べ方は、音像を一面に力で押し出したようでやや奥行きに欠けるところがあって、パースペクティヴな立体感が出にくい。たとえばアメリンクの独唱で、歌とピアノが同一平面に聴こえ、パッセージによっては声の方がピアノにめり込んだように聴こえることもあるというように、音のデリケートな分離あるいはニュアンスがもう少し欲しく思われる。マランツ510Mのハイエンドでの危ない部分をよく抑える点はとても良いが、反面脂気も取り去ってしまう傾向もあった。

GAS Son of Ampzilla

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 アンプジラIIとグランドサンとのあいだにあって、まさにその中間的な音に仕上げてあるあたり、実力のある設計にが余裕しゃくしゃくで遊んでいるようで、これは並の手腕ではない。アンプジラのようなパワーに支えられた底力には欠けるという面を補う意図か、いくぶんコントラストの強い硬調ぎみの音に作ってあり、親父のようなおっとりした音でなく目鼻立ちをくっきりさせて、音の輪郭を鮮明にさせる。そういう傾向の割にはクラシックの弦合奏も案外楽しませるが、ただ本質的にはポップス系のプログラムソースの方を生かすようだ。親父の威光に負けまいといくらか突っぱって生きている、という感じで私にはグランドサンの素直さの方が好ましいが。

ソニー TA-E88

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 音の骨格はたいへんしっかりしている。少なくともそういう表現をまっ先に思いつかせるほど、かなり硬質の音といえそうだ。バランス的にみて中低音域から重低音域にかけての支え、あるいは豊かさが不足ぎみに思われ、そのことがいっそう音を硬く感じさせるのかもしれないが、それにしてもたとえばベートーヴェンの弦楽四重奏でも、弦の音がどこかPAでも通したように人工的に聴こえ、かなりきつく、一本調子で色気がない。アメリンクの声にもやさしさが足りない。それらにかぎらずどうも音の姿をことさら裸にしてむき出して聴かせる傾向があって嬉しくさせない。MCヘッドアンプの音は、高域がよく伸びて解像力は上るが音の支えが弱く、ニュアンスが減る。

ソニー TA-E86

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 音のバランスという面では音域内での過不足もことさら指摘しにくいし、質感も滑らかで耳ざわりの悪い音を鳴らさない。ウォームな音の中にも現代的な反応の鋭さもある。ただ、アメリンクの独唱で、声自体がやや張り出す反面、伴奏のピアノはむしろ音像がことさら後に引いて、タッチも暗い感じがするというように、コントラストが強く聴こえた。また、「SIDE BY SIDE3」のベーゼンドルファーの音の丸みと艶が不十分で、打音がどこか輪郭だけのように聴こえる。MCヘッドアンプの音は、MC20に対しては切れ込みは良くなるが素気なくなる傾向。DL103Sでは解像力はトランスより良くなるが骨ばる傾向で、どちらかといえば乾いた音と聴きとれた。

GAS Grandson

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 アンプジラの孫ならさしずめ「マゴジラ」か。いかにも孫らしく、小造りで可愛らしさの感じられる音で、「オテロ」の冒頭の部分など、かなり精一杯がんばっているとでもいう鳴り方をする。ただそれはよほどの音量でのことで、ふつうの聴き方をするかぎり、表示パワー(40W×2)が信じがたく思える点はDB6と同様。コントロールアンプのサリアとも共通の性格だが祖父(アンプジラ)のあの堂々とした押し出しのないかわりに、プログラムソースにしなやかに順応する率直さがあって、弦や声もほどよく柔らかく溶けあう響きが美しい。いくぶん硬質ぎみの音といえるが、自己主張が強烈でなく、ぜい肉を抑えて細身に表現するところが私には好ましい音だった。

サンスイ CA-2000

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 たとえば「オテロ」の冒頭からしばらくのトゥッティでも、またそれとは対照的なベートーヴェンの弦楽四重奏でも、またエリー・アメリンクの声でも、総体に中〜高域にやふ強調感のある華やいだ音のするところがこのコントロールアンプの特徴といえる。ハイコントラスト型、ともいえるし、逆に少々明るすぎるとも音質ともいえる。したがって音の輪郭は鮮明だがくまどりがきつすぎるように感じることがある。音像のひろがりはよく出る反面、並び方がいくらか平面状になって奥行きの表現がいまひと息だ。また、フィルターやトーンコントロールのスイッチをONにすると、コントラストはやや弱まる反面、音の反応がいくらか鈍くなる傾向が、他の類機にくらべるとやや大きく感じられる。

ダイナコ Mark VI

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 弦あるいは声がとてもいい。血の通った暖かさがあって、ふくよかでやさしい音がいつのまにか聴き手の心を和ませる。ボリュウムをかなり上げてもやかましい感じ、金属的な感じが少しもない。最新のTRアンプのどこまでも切れ込んでゆくもの凄い解像力を聴いた耳には、このいささか甘口の音は物足りないともいえる。音の響きの部分のデリケートな繊細さ、弦の倍音の漂う感じ、など、ディテールがTRほどは見通しにくかったり、ピアノなど打音がもうひとつ切れ込まないなど、不満がなくはないが、まろやかで豊かなこの音には十分の魅力を感じる。ただ、組み合わせたLNP2Lの解像力の良さに助けられた面がかなりあることは書き添えておく必要がありそうだ。

ラックス MB3045

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 球と石という単純な分類には賛成しないが、トランジスターアンプでかなりの水準を実現させたラックスがあえて残しているだけの理由は、音を聴いてみて十分に納得できる。旧型の管球アンプの概して不得手な音の切れこみの悪さがこのアンプにはあまり感じられず、LNP2Lのように解像力の良いコントロールアンプと組み合わせることでいっそう引き締った現代的な面をみせながら、しかしマーク・レビンソンのときとして鋭くなりがちの高域を適度に甘くやわらげて、ついいつまでもボリュウムを絞りがたい気分にくつろがせてしまう。弦やヴォーカルには素晴らしく味わいの深い良い音を聴かせるが、打音に対していささか締りの不足する感じがやはり管球アンプの性格か。

DBシステムズ DB-6

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 第一にびっくりしたのは表示パワーが40W×2と小さいのに、鳴らしているかぎりとうてい信じられない力があることだ。国産のパワーアンプの多くが、80Wクラスではまだもうひと息、力あるいは密度の不満を感じさせるのだが、DB6にはそうした不満が、全くないとはいえないが少なくとも百W旧のアンプのような充実感があって、かなりの音量でも危なげがない。低音の支えもしっかりしているし、高音域にも音楽の表情を生かすような適度の艶が感じられて、かなり楽しませてる。中音域、というより中低音域をやや抑えた感じがあり、ディテールを繊細に形造ってゆくやや硬調ぎみの音だが、たいそう質の良い音のアンプだと感じた。