トリオのシステムコンポーネントMT15の広告
(スイングジャーナル 1967年12月号掲載)
Monthly Archives: 11月 1967 - Page 2
トリオ MT-15
外国製の組合せ型
菅野沖彦
スイングジャーナル 12月号(1967年11月発行)
「SJオーディオ・コーナー 特集/ステレオ装置読本」より
外国製の組合せ型
外国製品の組合せについて書く前に、現在、国産パーツの水準が世界的に第一級といえるものが多い中にあって、なおかつ輸入製品が存在することについてふれておかねばなるまい。いうまでもなく、オーディオ・パーツは科学の産物で、その多くは商品としての品質の均一性をもつべく管理のゆきとどいたメーカー製品である。したがって、製品の性能は理論と測定による物理特性によって設計、製造の一貫性が保れるべきだ。一口に技術水準といういい方をすれば日本と諸外国との間に差は認められない。ある分野では日本のほうが優れている面すらある。しかし、これは理論、設計面について特にいえることで、実際の製造面になると必ずしもそうはいかない。特に材質面と音に対する感性の二点においては最高級品を比較した場合、たしかに外国品には一日の長のある製品を散見する。そしてまた、外国の専門メーカーの歴史と伝統そして豊富なデーターの集積とは国内メーカーが一朝一夕には追いつけないものかもしれない。また、最も大きな相違点である音のちがい、これこそ血のちがいであり、土のちがいであり、環境のちがいであるといわざるを得ない。よくいわれることだが、物理特性のみをもってしては外国の一級品が必らずしも国産パーツを凌駕しない。しかし、結果として出てくる音には強い個性と充実した密度の高い音が存在し、ジャズや西洋音楽の特質と密着したアトモスフィアをもって圧倒的な説得力をもった製品が存在するのである。この差はよく紙一重といわれる。
このように、国産製品の水準が高度化した現在、未だ輸入品の一部には立派に存在価値のある、なくてはならぬ逸品がある。それらは、もはや機器としての性能以上に音楽を創造する芸術作品といえるほどの風格すら備え、見る喜び、持つ誇りといった充実感が優れた再生音と共に強く感じられるのである。
それでは、そうした外国製品のみによる組合せの実例をご紹介しよう
★組合せA
〈カートリッジ〉シュアー㈸V15II
〈トーン・アーム〉SME・3009
〈ターンテーブル〉トーレンス・TD124II
〈アンプ〉JBL・SG520E、SE401E
〈スピーカー〉JBL・075(高音)、375+537-500(中音)、LE15A(低音)、N500、N7000(ネットワーク)
合計 約120万円(含箱類)
アメリカ製品を基調とした最高級組合せとなると価格も100万を越える。このクォリティは今のところ国産では絶対に得られないといってもいいだろう。ただし、この装置を生かすには部屋が小さくとも12畳相当、できれば30畳程度の広さが欲しい。このクラスになると、いかなるプログラム・ソース(音楽)にもペストリプロダクションを得られる。
★組合せB
〈カートリッジ〉オルトフォン・S L15+2-15K
〈トーン・アーム〉SME・3012
〈ターンテーブル〉ガラード・401
〈アンプ〉マッキントッシュ・C22、MC275
〈スピーカー〉タンノイ・GRF
合計 約112万円
前者がアメリカ調とすれば、これはヨーロッパの香り豊かな重厚な装置である。音のキャラクターはかなりちがう。最高級品でも装置の音質が全く傾向のちがうものがでてくるといったことは外国製品のメーカーの主張が感じられ興味深い。本来、クォリティが上れば上るほど装置の個性はなくなるという考え方に対する一つの示唆といえるかもしれない。
モジュラー型再生装置
菅野沖彦
スイングジャーナル 12月号(1967年11月発行)
「SJオーディオ・コーナー 特集/ステレオ装置読本」より
モジュラー型再生装置
再生装置を生活の中にとけこませること、これは、家庭での音楽のあり方のひとつのパターンである。音楽は生活の中で趣味としてだけ存在するものではあるまい。時には照明やインテリア・デザインなどとともに生活環境を味つけし、豊かにし、私たちの情緒を明るく、また、楽しく、そして安定させるのに役立つ。BGMのあり方についてはいろいろ意見もあろう。あんなに音楽を安売りして、年がら年中ばらまかれては音楽に対する私たちの感情がいつのまにか麻痺してしまうという人もある。たしかに、音というのは、意志によって聴くまいとしても耳から入ってきてしまうために、それを望まない人にとっては大変迷惑な話である。しかし、家庭生活に音楽が豊かに溢れるということを私は好む。そして、ホテルやレストランでの押しつけがましい与えられ方とちがい、自分の家で自由に選択して、時と場合によって好みに合った音楽を流すのだから、何んら不都合はない。
こうした再生装置の使い方に最も適したものがモジュラー・タイプである。そして、これは特にデザイン、機能からモジュラー・タイプを眺めた時にいえることで、音質本位に見ると、姿、形に似合わないスケールの大きい本格的な再生音が得られるものもある。つまり、モジュラー・タイプと一口にいっても、さらに一つ一つの製品について詳しく調べてみるといろいろな考え方によって製造されているものがある。
モジュラー・タイプの大きな特長は、プレイヤーとアンプ部が一つのユニットに(モジュール化)まとめられているということで、しかも、かなりコンパクトに、フラットなコンポジションになっている。ちょうど従来のプレイヤーだけ独立したものと同じ程度の容積にアンプまで組込まれている。そして、左右スピーカー・システムはセパレートとして部屋の条件に応じて配置のバリエーションは大幅に処理できる。ただ、ここでお断りしておかなければならないことは、小型ならばすべてモジュラー・タイプと呼んでいるわけではないということ。用語上の問題をとやかくいうと面倒なことになるが、今、この業界でモジュラーと呼んでいるものは、小型高級器のことで、2〜3万円の普及器は指さない。大ざっばには5万円以上の製品で、使用パーツ(アーム、カートリッジ、モーターなど)が本格派としての条件をそなえているものを意味すると考えていいだろう。
モジュラーに限ったことではないが、メーカーの完成品を選ぶにあたって必要なことは、メーカー完成品というものは、入口のカートリッジから出口のスピーカーに至るオーバー・オールでバランスがとられているものだから、後日、どこか一部を交換してクォリティの向上を計ることは大変むずかしいということを知っておくことだ。したがって性来機械いじりが好きで、再生装置に興味をもち、あれこれ自分でいじり廻わしそうな気がする人は敬遠したほうがいい。反対に機械に弱く、音楽が大好き、部屋に美しく調和させた再生装置を欲しいといった方には、下手な組合わせ方でマニア気取りになるよりも、専門メーカーが十分検討してまとめあげた完成品がいい。
本格的なスケールの大きな音を望む方には、パイオニアのC−600、コロムビアCNS−100、トリオNT−55、オットー1カスタムなどがいい。特にC600、オットー1などはよくまとまった万能的な装置である。NT−55は高音の切れ味のよいシャーブな快音が得られジャズ・ファンにおすすめできる。やや予算も少なめで、生活の伴奏として大らかに楽しもうという向きには、トリオNT−35、ビクターMSL−8、コーラルVS−3300、ナショナル・メカニシア2、シャープ白馬などと豊富な機種がある。VS−3300はモジュラー・ホワイトと称しオール・ホワイト仕上げのユニークな製品で、これからの再生装置のデザインを家具的に一歩っっこんだ美しいもの。
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