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ビクター AST-140T

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 このアンプは弱音の表現がたいへん素晴らしかった。音の抜けがさわやかでみずみずしく音に何ともいえない温かさがあってしかもツヤっぽい。TRアンプとしてはスピーカーをあまり選ばない方で、どんなタイプのスピーカーをつないでもそれぞれの良いキャラクターを生かしてよく鳴らすアンプ、という感じであった。同じ5万円台の山水SAX600やトリオTW510とともに、アンプの音質としては最も素直で色付けの無いオーソドックスなゆきかたでこのクラスになると、最高水準のアンプとの音質の差はごくわずかなものだといえる。

トリオ TW-510

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 SAX600に非常に似た音なのにおどろいた。こちらはトランジスター、向うは三極管である。良くできたアンプには、球と石の差はもうほとんど無い。パワーも割合に大きい方だから、ARタイプのようなスピーカーには有利だろう。しかしコーン型スピーカーの場合に、いくらか抑えられた音になり、のびのびした感じが損なわれるのは、他のTRアンプにも共通の特性だった。周波数特性がフラットによくのびている。

サンスイ SAX-600

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 5万円台唯一の管球式だがそれだからではなく、音質の良さの点から第一に推賞したい。出力は大きい方ではないが、音の伸びが実によく、充実して安定感がある。何よりも、中域の温かな、透明緻密な音が印象的だった。コーン型のスピーカーでは特にその長所が発揮された。

サンスイ SAX-400

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 SAX600と比較して、音のバランスのとりかたには共通のポイントが聴きとれたが、600の透明で緻密な音からみると多少キメが荒いように感じられた。声が太くなるような傾向があるのは、イコライゼイションのわずかなちがいなのかもしれない。また能率の低いスピーカー(AR3やパイオニアCS3)を接続すると多少パワー不足を感じる。どうもトランジスター・アンプは管球式の3倍以上のパワーが必要らしい。

パイオニア SX-30T

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 SX304Bからくらべると、音のバランスがずっと良くなっているし、気になる音のクセも無く、5千円高いだけのことは十分にあると感じた。特に、トランジスターということをさとさらに意識したものか、高域をやわらげて聴きよい音にまとめてある。ただ、トランジスターアンプとしてはパワーが少ない方だから、能率の良いスピーカーを組み合わせないと、腰の弱いのっぺりした音になりすいので注意がいる。

コロムビア MA-20, MA-30/パイオニア SX-304B/サウンド SRQ-302X

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 コロムビアの二機種の、共に高域を甘く丸めたソフトな音に対して、パイオニアと日本サウンドは、シャープさの強調された幾分硬質な音と、それぞれ対照的であった。
●MA20/中〜低域を盛り上げたふくらみのある音質。これはラウドネスコントロールが入りぱなしのためだが、このクラスに組み合わせるプレイアーやスピーカーの特性から、概して小造りな痩せた音になりやすいことを考えれば、これは仲々うまい作りかただと思った。高域が適度に甘いため音源がやや遠のく感じで、多少むーど音楽的傾向が無いわけではないが、トーンでハイを強調してみても、音のひずみをうまく抑えた素姓の良さが感じられた。
●MA30/MA20にフィデリティを加えたという印象。四機種中では最もパワーが大きいためか、音のゆとりが十分に感じられた。しかしMA20よりも一万円高いというメリットは、音のクォリティの向上よりむしろパワーアップと各種附属装置にあるように思われた。
●SX304BのSNは四機種中最良。高音域に良くレンジを延ばしているが、反面、低域はやや不足気味で音に深みを欠いていた。ポピュラーものにはこういう音のバランスも効果を発揮するかもしれないが、クラシックを主に聴く場合には、もう少し音にやわらかさと透明感を望みたい。
●SRQ302X/音のバランスは一層高音域に片寄っている。華やかで派手ないわゆるトランジスターの音で、クラシックをゆっくり聴こうという人にはあまり奨めにくい。