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オーディオテクニカ AT-VM3

菅野沖彦

スイングジャーナル 9月号(1969年8月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 カートリッジは手軽に差変えて使えるので、ちょっとオーディオにこった人なら2〜3個はもっているものだろう。というよりは、お金が貯って、良いカートリッジが発売されたと聞くと、つい買ってきて使ってみたくなるのが人情。事実、カートリッジを変えると良悪は別にしても音が変るからついつい、これで駄目ならあっちでは……ということになるものだ。もっとも、カートリッジというものは、それを取付けるトーンアームと一体で設計されるべきもので、うるさくいえば、先ッチョだけを変えるというのは問題がないわけではない。だから、同じアームにAとBのカートリッジをつけ変えて、Aがよかったからといって一概にAのほうが優れたカートリッジだと断定できない場合もあるのである。アームを変えたらBのほう力くよくな
る可能性もあるのだ。そこで、カートリッジを差変えて使うことのできるトーンアーム、いわゆるユニバーサル・アームは勢い高級な万能型でなければ回るわけであるが、今回のテストには英国製のSME3009を使用した。国産にも優れたアームが多数あるが、このSMEのアームは精度の高い加工とスムースな動作、ユニバーサル型としての妥当な設計、そして外国製ということで国産アームよりも客観性があると考えられるためか、研究所の測定などにも、現在ではこのアームを使うことが常識となっている。
 アームの条件について前書きが長くなってしまったが、この試聴記はSJの試聴室で実際にじっくリテストした結果なのでその条件について書いておくことも必要だと考えた。アンプやスピーカーは別掲の通り。使用レコードは新譜として各社から発売されたものの中から録音のよいものを数枚選び、さらに私自身の録音したものを何枚か聴いた。これは私にとってもっとも耳馴れたプログラム・ソースなので、その出来不出来はともかくテスターとしての私の耳には最高のプログラム・ソースだからである。
 さて肝心のオーディオ・テクニカの新製品AT−VM3だが、この製品は同社がすでに発売しているAT3というロング・ベスト・セラーに変るものとして登場させたもの。そして構造的には同社の開発したVM式という独特なムービング・マグネット型である。これは、AT35という同社の高級カートリッジで初めて実現した方式で、AT35そのものはかなり長期にわたって改良が重ねられたものだ。音の本質的なよさを認められながら帯域バランスの点でいろいろ問題があったものをコントロールして現時点ではバランスのよいカートリッジに成長した。このAT35を普及タイプとして設計しなおしたのが、このAT−VM3と考えられ、価格的にも求めやすいものになった。VM型の特長は、左右チャンネルに独立した発電機構をもつことと、振動系がワイヤーで支持され支点が明確になっていることだが、この2点は従来のMM型が指摘された問題点を独創的に改良したものである。そのためと断言してよいかどうかはわからないが、音の根本的な体質とてもいうものがVM型共通のクォリティを得ていることがわかる。つまり、きわめて明解な締った音質がその特長で、冷いとも思えぬほどソリッドなダンピングのきいた音がVMシリーズの特長である。硬質で現代的なスマートな音がする。比較試聴に使ったシュアーV15IIやエンパイヤー999、ADC10EMKIIなど世界の一級品に悟して立派な再生音が得られた。ベースの音程の分解能は特に注目に価いするものだった。ブラスの高域やシンバルが、冷いのが特長でもあり難点であるが、対価格という立場で考えれば、優秀製品として推したい。ただし、本誌では蛇足かもしれないが、弦のアンサンブルやクラシックのヴォーカルやコーラスにおいてはもうひとつ不満があることをつけ加えておこう。音響機器にハードでドライな客観性を求めるか、ソフトでウェットな個性を容認するかというオーディオの興味の焦点の一つがそれであろう。

オーディオテクニカ AT-3M, AT-1501

オーディオテクニカのカートリッジAT3M、トーンアームAT1501の広告
(ステレオ 1969年9月号掲載)

AT1500

オーディオテクニカ AT-VM3, AT-35X

オーディオテクニカのカートリッジAT-VM3、AT35Xの広告
(スイングジャーナル 1969年8月号掲載)

AT-VM3

オーディオテクニカ AT-1005

オーディオテクニカのトーンアームAT1005の広告
(ステレオ 1967年9月号掲載)

AT1005

オーディオテクニカ AT-7

オーディオテクニカのカートリッジAT7の広告
(スイングジャーナル 1967年5号掲載)

AT7

オーディオテクニカ AT-7

オーディオテクニカのカートリッジAT7の広告
(スイングジャーナル 1967年4号掲載)

AT

オーディオテクニカ AT-1501

岩崎千明

ステレオサウンド 2号(1967年3月発行)
「プレーヤー・システム・パーツガイド」より

 放送局仕様によるパイプ・アーム。いわゆる軽針圧アームにみられるのと違い、ガッチリした重厚な出来は、堅牢というより豪華。業務用として過酷な取扱いにも耐え、安定な動作を第一に目標としており、オルトフォンの流れをひくシンプルな機構ながら、要所は手を抜かず、価格だけの価値は、使用感の手応えで判ろうと言うもの。業務用として推薦できるひとつだ。

オーディオテクニカ AT-1005

岩崎千明

ステレオサウンド 2号(1967年3月発行)
「プレーヤー・システム・パーツガイド」より

 テクニカの初期の専用アーム1001に初めて接したとき、ユニークなデザインとシンプルなメカニカルな美しさに驚いたが、そのポリシーがこの新型にも脈打っている。英国デッカと同じ伝統のアームをスライドするリング・ウェートによる針圧加圧方式は、目盛が大きく使いやすい。新型ではオフセット角のついたシェルと同じだけずらせ、アームを支える理想的な軸受け方式で、これは国産ではFR24しかなく、この価格では画期的といえる。

オーディオテクニカ AT-7

岩崎千明

ステレオサウンド 2号(1967年3月発行)
「プレーヤー・システム・パーツガイド」より

 オーディオテクニカの久しぶりの新型ということで、ファンの期待も大きくまた、それを裏切ることのない優れた出来と、早くも好評を伝えられる。広帯域ながら、少々繊細すぎるといわれるAT5から一歩前進して、低音域の力強さも加わり、海外新型カートリッジを思わせる音色を、ユニークな円型アルミのデザインに秘めて、魅力をそそる。ミニマム・マスの2重カンチレバー、スーパーパーマロイ・ヨークとMK5B協力マグネット使用により、コイルの巻数が少ないロー・インピーダンスながら、出力が従来とあまり変らない。……などの特長がある。最近、トランジスタ・アンプの流行に伴って、フォノの入力インピーダンスが問題とされてきたが、ロー・インピーダンスほど、高音域の音色の変化などの影響を受け難いので、この点からもトランジスタ万能時代にふさわしいといえる。

オーディオテクニカ AT-1, AT-3, AT-3M, AT-5, AT-1001, AT-1003, AT-1005, AT-1501, AT-1503

オーディオテクニカのカートリッジAT1、AT3、AT3M、AT5、トーンアームAT1001、AT1003、AT1005、AT1501、AT1503の広告
(モダン・ジャズ百科 1966年3月号掲載)

AT1

オーディオテクニカ AT-3, AT-3M, AT-5X, AT-1003

オーディオテクニカのカートリッジAT3、AT3M、AT5X、トーンアームAT1003の広告
(モダン・ジャズ読本 ’65 1965年4月増刊号掲載)

AT1003

オーディオテクニカ AT-1003

オーディオテクニカのトーンアームAT1003の広告
(スイングジャーナル 1964年11月号掲載)

オーディオテクニカ