パイオニアのスピーカーシステムCS5、CS500、CS700、CS-A55、CS-A77、CS-A88、レシーバーSX45、SX65、SX85、アナログプレーヤーPL11、PL-A25、PL30、オープンリールデッキT4000、T5000、T6000、ヘッドフォンSE20Aの広告
(スイングジャーナル 1970年1月号掲載)
Category Archives: スピーカーシステム - Page 95
パイオニア CS-5, CS-500, CS-700, CS-A55, CS-A77, CS-A88, SX-45, SX-65, SX-85, PL-11, PL-A25, PL-30, T-4000, T-5000, T-6000, SE-20A
トリオ KL-5060
菅野沖彦
スイングジャーナル 1月号(1969年12月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より
トリオが、新しく発売したスピーカー・システムKL5060は、同社の音響専門メーカーとしての面目を発揮した充実した製品である。このスピーカー・システムから、トリオの音に新しい時代が来たことをはっきりと感じることができる。KL5060は中型のシステムとして、もっとも競争の激しい位置にランクされる製品であるが、この音なら堂々と他製品と対抗し、その多くを凌ぐはずだ。きわめて明解な音の陰影の再現、よくのびきった低域から高域、歪の少い明るく透明な音色は、プログラム・ソースの持つ豊かな情報量を再現するに十分な物理特性をもつことを証明すると同時に、私たちの心と肌に快よい豊かな音楽を伝えてくれる個性をもっている。スピーカー・システムが音響機器の中で、ソフト・ウェアーとしての性格がもっとも強いものであることは、これまてにも折あるごとに述べてきた。スピーカー・システムこそは、そのメーカーの音への感性の現れである。スピーカー・システムを買うことは、そのメーカーの音への共感に他ならない、良い音のスヒーカーをつくるには、メーカー自身が、卓抜な審美眼を持つと同時に、これを具現できる音響技術をもっていなければならないのである。それが意識されようと、されまいと、システムの制作者が確固たる音の美学をもっていなければ、良い音のスピーカー・システムは出来ないはずなのである。そこが音響技術が、単に物理学や電子工学の領域で律しきれないところなのである。良い音とは何か? という、きわめて困難な問題へのメーカーの解答は、そのメーカーの出すスピーカー・システムだといってもよいかもしれない。
KL5060は、4スピーカーの3ウェイ・システムで、30cmウーハー、16cmスコーカー、2つのホーン・トゥイーターから構成されている。エンクロージュアは密閉型とパス・レフ型の中間をいくような、ダンプされたパイプ・ダクトをもつもので、吸音材がつめられたチユーニング・ポートをもっている。600Hzと6、000Hzのクロス・オーバーをもつネットワークが組み込まれているが、マルチ・チャンネル・アンプ用の独立端子も勿論備えている。見るからに剛性の高いコーン紙はロール・エッジとハイ・コンプライアンス・ダンパーで支持され適度なエア・ダンプと相挨って、きわめて明解な音程再現と、明るく力強い低音を再生する。音楽の基礎になる低音域は絶対におろそかには出来ず、ただ重々しい純な低音が量的に出ていてもなにもならない。このウーハーの中域も質がよく、スコーカーとの連りもスムースである。16cmのコーン・スコーカーは、かなり浅い包角をもち素直で質が高い。欲をいうとトゥイーターにやや気になる音色があるが、2本使っているためにエネルギー的には余裕があり、相当なハイ・パワーでも安定している。
これら3種類のユニットのまとめこそ、トリオの腕ならぬ、耳の聴きどころであるが、既に書いたようにバランス的にも、音色的にも美しく調整されている。従来の同社のスピーカーからは想像できないほど大さな変視で、音が前へ豊かな表現力をもって鳴る。能率は同様の他製品と比して決して高いほうではない。
前面は金属製の格子グリルだが、これはもう一つユニークな雰囲気が欲しい気もする
ソニー・ロリンズの太く油ののったテナー、エルビン・ジョーンズの鋭いスティック・ワーク、そして、日野皓正のブラッシーなトランペットのハイ・ノートなどハードでエネルギッシュなサウンドも充実した響きだし、ソフトな味いのコンボやヴォーカルにも魅力的な音を聴かせてくれた。
サンスイ SP-2002, AU-777D, CA-303, BA-90, TU-777, CD-3, SR-3030
サンスイ SP-2002
岩崎千明
スイングジャーナル 1月号(1969年12月発行)
「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より
山水がブックシェルフ・スピーカーSP100とSP200をひっさげて、国産スピーカーの戦列に加わってから3年の月日が経った。
技術的進歩、開発のテンポの著しく早いハイ・ファイ業界において、3年間という月日は、製品がほとんど入れ代ってしまうほどであるが、山水によってきっかけが作られたといってもよい、ブックシェルフ・スピーカーの分野では、特にそれがはっきりした形で現れ、再生音の傾向までが変ってしまった、といえるほどである。それは裏返えせば、それほどにまで山水のスピーカーが成功し、他に影響を与えたといえるのである。
単に音域を低い方に延ばすことにのみ技術を傾けた他社のスピーカー・システムは、山水のSPシリーズにくらべて低音感が重く、スッキリと豊かな山水のシステムとは対称的で、それがそのまま山水のシステムを空前といわれる成功をもたらし、それ以後の国産ブックシェルフ・スピーカーの音のパターンまでも方向づけてしまったといえよう。
国産のブックシェルフ・タイプ・システム全盛の今日を形作った、山水・SPシリーズも、3年の年月で他社の新製品に追上げられ、さらに新らしい技術を導入して製品の向上を企ることとなった。
そして誕生したのが、SP100を向上させたSP1001であり、さらに、SP200を向上させたSP2002である。
SP1001、SP2002とも低音のソフトな豊かさに一段のさえと張りつめたアタックの良さが加わった。さらに特筆すべきは、その中音域の充実ぶりである。
特にSP2002はその効果が、非常によい結果をもたらした。つまり全体の音色と音のバランスが、格段にグレードアップされた。それはまぎれもなくJBLのスピーカーと同じ路線上にある音である。
JBLの日本代理店でもある山水のスピーカーがJBLと似たとしてもこれは決して偶然ではあるまい。いや、それは山水でなくしては得られなかった結果といえないだろうか。
それは、ここに使われているユニットを観察しても判ることなのである。
まずさえたアタックの鮮明な低音を得るため低音用スピーカーはコーン紙が一段と改良され、低いf0と硬度が増したコーン紙を与えられている。さらに注目すべきはその中音用だ。一見SP200とよく似た中音用のコーンは、アルミ・ダイアフラムが、中心部に加えられている、しかもよくみるとこのダイアフラムは凸起が高く、従来のあらゆるスピーカーにくらべて深く成形されていることに気付こう。このような深いダイアフラムはJBLの最近の製品中、特に優秀性を認められているLE20トゥイーター(高音用)のダイアフラムだけである。この砲弾型に高く凸起したダイアフラムにより高音のエネルギーが歪なく一段と強くなり、指向性の著しい向上が図られているようである。このJBLの技術に山水の技術陣が見逃すわけがない。音楽再生上特に重要なこのダイアフラムをとり入れた、とみるべきであろう。その結果、特に歪の気になる中音の高域において従来より歪をおさえ鮮明度の高い中音を得ることができる重要なファクターとなっているのである
このアタックのすばらしい低域と、鮮明でタッチのシャープな中高音はそのままJBLの本来の良さと同じ傾向の再生音をつくり出したのである。そして、JBLのスピーカーと同じように、この優秀性はジャズにおいてもっとも効果を得ることができるのも確かな事実である。
オンキョー F-500A, F-600A
スタックス ESS-4A, SR-3
トリオ KL-61, KL-63, KL-91, KR-33, KR-44, KR-77, PC-100, PC-250, PC-350
クライスラー CE-2a, CE-5a
コーラル BX-1200
パイオニア CS-500, CS-700
YL音響 YL-11
サンスイ SP-1001, SP-2002
JBL D44000 Paragon
トリオ KL-63, KR-33
フォスター G-11, G-33, G-44, FE-103SR, FE-133SR, FE-163SR
アルテック Malaga
タンノイ IIILZ MKII
菅野沖彦
スイングジャーナル 12月号(1969年11月発行)
「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より
タンノイのモニターIIILZといえば、伝統的な英国の名スピーカーとして有名である。英国には、スピーカー・メーカーが多く、グッドマン、ワーフェデール、KEF、ローサー、リチャード・アレン、クヮド、ヴァイタ・ボックス、そして、このタンノイなどの有名スピーカーがある。これらの英国製スピーカーは日本でもファンが多く、それぞれ独自の個性をもった音がファンを獲得している。しかし、それらのファンは圧倒的にクラシック・ファンが多く、英国スピーカーはジャズの世界では全くといってよいほど冷遇されてきた。何故だろうか? それにはそれなりの理由がたしかにあったのかもしれない。その理由を証明するにはスピーカーというものが、一連の電気音響機器の中で特別にソフトウェアーとしての性格の濃いものであるということから話しはじめなければなるまい。電気音響機器は、大きく二分して、変換系と伝送増幅系とからなっていることは、本誌の愛読者ならすでにごぞんじのことと思うが、変換系、つまり、あるエネルギーを、異った性格のエネルギーに変えるものの代表的なものが、マイクロフォン、カートリッジ、スピーカーである。
この変換系の中でも、直接、空気の波動を扱うマイクロフォンとスピーカーには特に問題が多い。変換能率、周波数レスポンス、歪特性などの特性のよいものをつくること自体大変難しいことだが、もっとも問題になるのは、そうした、いわば解析ずみの特性データによって完全に把握しきれない問題である。これが、結果的な音色に及ぼす影響がきわめて大きく、これらの製品の最終判断は聴覚によらなければならないのである。例えば、振動体にはなんらかの物質を使わなければならないが、この物質自身の個有の特性は必らず音色として現れてくるものである。聴感覚によって判定するとなると、当然、そこには制作者の音への好みが反影せざるを得ないのであって、同じような物理特性をもった二つの製品のどちらかをとるというようなギリギリの場合だけを考えてみても、音への嗜好性、音楽の好みなどがはっきりと現われてくることになろう。スピーカーがソフトウエアーとしての濃い製品だというのはこのような意味であって、スピーカーほど、この点で厄介な、しかし、面白いものはないのである。
音への好みは単純ではない。年令、体質、教養、性格などの綜合されたものが音の嗜好性を形成する。当然、人種の差、文化水準の差、伝統といった条件も必らずまつわりついてくるものだ。
そこで、英国系のスピーカーには、どうしてもクラシック音楽のイメージが強いとされてきた理由もなんとなくわかるのではあるが、今や、英国も、ビートルズを生み、ミニスカートをつくる現代国家であるし、特に輸出によってお金を嫁ぐことに熱心なことは先頃の英国フェアでもよく知っておられる通りである。英国がその古い伝統と、高度な産業技術を、クラフトマンシップを生かしてつくり上げた製品は、筋金入りの名品が多く、しかもお客の望みを十分に叶えてくれるサービス精神にもとんでいる。タンノイはいぶし銀のような艶をもつスピーカーだと評されていたが、このIIILZのニュータイプのIIILZ MKIIは、さらに明るさが加ってきた。重厚明媚を兼備えた憎い音を出す。これでジャズを聞くと、実に新鮮な迫力に満ちた音だ。MPSのジャズのように、最近はジャズの音も多様性をもってきた。アメリカ録音に馴れていた耳には大変新鮮な音のするヨーロッパ録音ではある。再生系も、英国スピーカーはクラシック向と決めこまないでチャンスがあったら耳を傾けてみてほしい。
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