パイオニアのスピーカーシステムC550、C560、C650の広告
(スイングジャーナル 1969年2月号掲載)
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パイオニア C-550, C-560, C-650
パイオニア CS-10
菅野沖彦
スイングジャーナル 2月号(1969年1月発行)
「SJ推薦ベスト・バイ・ステレオ」より
CS10というスピーカーをごぞんじだろうか。パイオニアがだしている優秀なスピーカー・システムであろ。ただしお値段のほうも大分高い。
このスピーカー・システムは、ブックシェルフ・タイプといって、現在のスピーカー・システムのタイプの中でもっともポピュラーなものである。初期のブックシェルフ・タイプはたしかに小型で、縦においても横においても使える四面仕上であったが、その後、形が大きくなり重さも増して、現実には本棚へおいて使えるようなものばかりではなくなった。このCS10も、四面仕上げであるが、重くて大きい。約25kgあるから、ちょっとした棚では支持できない。
ところで、肝心の音であるが、このスピーカー・システムの音質について語ることは大変むずかしい。ベスト・バイとして選んでいるのだから決して悪いものではなく初めに述べたように優秀品であるにはちがいない。では何がむずかしいかということになるのだが、音の性格について、音質と音色という2つの面に分けて語らないと説明がつかないのがこのシステムの音だろうと思う。音質と音色は本来切っては考えられるものではなく、むしろ同義語として扱ったほうが混乱はないが、ここでは便宜上分けて使わせていただくことにしたい。
まず音質についてだが、低域から高域にかけての周波数特性ののび、そしてその性格は大変すばらしい。しいていえばごく低いところが小型密閉箱のためにやや物足りないが、通常音楽の再生にはまったく問題ないところまでのびている。途中の山谷は大変少なく、フラットに近い特性は、特定の音を強調することがない。特に高音域は並はずれた指向特性のよさとともに非常によい。歪は適確な帯域分割とユニットの設計により大変少なく、ドーム型スコーカー、トゥイーターを使っているために多くの利点をもつ。特に小型密閉箱にありがちなウーハーの音圧によるスコーカーやトゥイーターへの位相干渉は構造上まったく心配がない。3ウェイが理想的に動作して、すっきりした再生音となっている。つまり音質としては大変バランスのよいもので、物理特性として優れていることがわかる。
次に音色的なものだが、同じような周波数特性、各種の歪率など測定データーが似ていても、音がちがうものはざらにある。特にスピーカー・システムの場合は、箱の設計、材料、工作などは微妙に音色を変える。また、この密閉型の箱にハイ・コンプライアンスのウーハーを入れたタイプ(オリジナルは米国のAR)は一種特有の音色傾向をもつ。ダンプがきいて音がきわめてしまりがよいその反面抜けが悪く、音が前へ豊かに出ないという印象もつきまとう。スコーカーがドーム型のダイレクトラジエーションによるものだけに歪は非常に少ないが、派手な音圧感がない。つまり、ユニットのタイプによっても音色がちがうことも事実である。コーン型、ホーン型、ドーム型など、それぞれちがった音色傾向をもっていることは事実である。
このようにスピーカー・システムの音についての評価はむずかしいが特にCS10はむずかしい。それはいいかえれば、あまりにも他のスピーカーと異った次元の音の良さがあるからかもしれない。私の好きなスピーカー・システムとして推薦するが、決して派手さや、刺激性のある音ではないことをお断りしておく。使用ユニットといい箱といい、ふんだんにぜいたくをした最高級品である。
サンスイ SP-50, SP-100
ラックス 25C43, 25C44, 30C74, SQ38F, SQ78, SQ301, SQ505, SQ606, WL313, WL515, P-22
パイオニア CS-90
アルテック A7
オンキョー E-83A
岩崎千明
スイングジャーナル 10月号(1968年9月発行)
「SJ選定〈新製品〉試聴記」より
音楽の中で一番大切な音は、人間の声の範囲と同じ周波数範囲に含まれている。男の声で200サイクルから上、女の声で400サイクルから上3オクターブぐらいまでである。つまり男声の下限200サイクルから女声の上限2000サイクルぐらいまでですべての楽器の基音はここに含まれる。なぜこんなことを冒頭に述べかたというと、この辺の範囲の音が音楽再生上もっとも重要であるのだがそれを本当に認識しているようなスピーカーが、それほど多くはないという点にある。
最近高級スピーカー・システムはマルチ・スピーカーが常識である。スピーカーの数を増せばそれだけ良くなるとは限らないが、低音専用、高音専用とわけることにより、音の上限と下限は広がることは確かであるし、また低音の影響をかぶって高音が荒れることもなくなる。そしてもっとも大切なことは、ステレオ用として、指向性つまり音のひろがりはきわめて重要なファクターだが高音を小型の専用スピーカーに受けもたせることにより音の前面へのひろがりは必ず改善される。
しかし、ここで問題がある。〝低音用と高音用との境目をどこにおくか〟という点と〝低音用としてその設計の重点をどこにおくか〟というかねあいについてである。
低音用は文字通り低音用として設計し、今日では、中音をよく出そうとするよりも、いかに低音まで出し得るかという点を重視する結果、振動部コーンの重量を増す傾向にある。それが低音域をのばすもっとも容易な近道だからである。
そして、その結果、音量の変化の激しい、アタックの強いパルス音の多い中音再生能力は少々おろそかにされている。つまり市場にもっとも多い2ウェイ・スピーカー・システムでは高音用と低音用の境目クロスオーバーは2000〜3000サイクルにあり、2000サイクル以下の重要な中音はコーン紙の重い低音用で受け持つという問題をかかえている。激しいアタックのある変化に富んだあらゆる楽器の音を、重いコーン紙の低音用が正しく再生することが可能であろうか。できるだけ軽いコーン紙の方が毎秒1000回にも達するパルシブな音を再生するの適していることは一目瞭然であろう。
さて、大切な中音を独立させ、軽いコーンの専用スピーカーに受け持たせた3ウェイが最近クローズ・アップされているが、多くの場合、中音用としてコーン型が超高価格を除き一般的のようである。
さて、大阪音響の3ウェイ83Aを聞いたとき、このスピーカー・システムの中音の輝かしさとずばぬけた切れのよさにびっくりしたものだ。しかも、その音がホーン型中音用から出ていたのを、前面サランを除いて知ったとき改めて驚歎した。中音ホーンによくありがちな、ホーン臭い音が全然感じられないばかりか、そのみるからに小さいショート・ホーンからの音が700サイクルという低い所からごく高い範囲までカバーしていることを知らされて、もう一度驚いた。
考えてみればオンキョーはハイ・ファイ初期からのスピーカー専門メーカーだ。今までに何回となく画期的なスピーカーを作ってきたが、どういうものかマニアの注目をひくに至らなかった。しかし、この中音用には、オンキョーの永く積み重ねられた技術の裏付けがあったのだ。
そしてこの中音ホーンこそオンキョーのハイ・ファイ・スピーカー界における立場を確固たるものにするに違いないと感じた。83Aシステムの成功が、これをひとつ実現したことになる。30センチ低音用と広指向性のスーパー・ツィーターの3ウェイで価格が5万円に満たないことを知ってまた驚いたのである。
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