Lo-DのスピーカーシステムHS230、HS430、HS630の広告
(モダン・ジャズ読本 ’80掲載)
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Lo-D HS-230, HS-430, HS-630
Lo-D HCA-9000, HMA-9500
菅野沖彦
ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか 最新セパレートアンプ32機種のテストリポート」より
日立のLo−Dのオーディオ製品は常に日立らしい技術開発の精神に立って、素材の開発から手がけ、新製品らしい新製品を発表している。その規模と技術の層の厚さは、いうまでもなく日本のメーカーの中でも飛び抜けた存在であるから、中途半端な製品開発は出来ないのが当然だ。スピーカーをみても、アンプをみても、必ず、そこには注目すべき、新しい技術が生かされている。基礎研究の力は、大いに信頼に足るメーカーであることは、ここで、改めて断るまでのこともない。要は、この技術力が、いかにオーディオ的に生かされるかにあって、人の心情や感性を対象としたオーディオ機器にあっては、高度なテクノロジーが即、これに対応できるものとはいい切れない。この辺りが「技術の日立」の最大の課題であろうと思われる。しかし、それも、このところ、同社なりに豊富なノウハウを蓄積してきているようで、音楽を楽しみ、音を味わうことの出来る製品作りのコツを心得てきたようである。音キチといわれるように、高級オーディオ機器のユーザー達は、音に関して、きわめて集中的かつ求心的な関心の持主であり、音に関わる機器に求めるものは単に機械としての存在を超えた形であり、触感であり、雰囲気であり風格である。しかも、それは人それぞれの嗜好によって、様々な要求があるところに、オーディオ製品の趣味性が生れていることは読者諸兄がもっともよく御存知のはずだ。
音楽の感覚的な娯楽性や精神的な芸術性に共感し、評価する、その心に同次元の印象や感動を与え得るモノの存在は並大抵のものではない。最高級オーディオ機器を生み出すことは、この点で、決してイージーなものではないのである。研究所、開発設計室、生産工場、営業宣伝といった常識的なメーカーのプロセスの中で、はたして、どこで、どうしたら、そのクォリティを付加することが出来るのだろうか。これは頭でだけ考えてシステム化できるような問題ではあるまい。Lo−Dの製品に接して常に感じること、考えさせられることはこのことである。世界的な大企業である日立製作所のオーディオ製品が、この点で全く欠けているとはいわないが、前述した「製品作りのコツ」という同社への賛辞は、同時にまた、同社製品への不満でもある。つまり、要領は巧みに心得てきたといえるが、それが、強烈な個性と、製造者の情熱が生みだす創造性、心情性という面で、まだ一つ、物足りなさを感じさせるのである。
たまたま、Lo−Dの製品の項で、このような私の考えを述べさせてもらったが、これは、他のメーカーにもいえることであって、Lo−D製品に限ったことではないことをつけ加えておく。
Lo−Dのアンプの中での最高級機種といっていい、セパレートアンプ、HCA9000とHMA9500は、以上述べた性格を過不足なく備え、数々の技術的フィーチュアや、製品の特性には、最新最高のテクノロジーの生きた優秀なものであった。
HCA9000の特徴
HCA9000プリアンプは前段ICLのDC構成をとり、出力段のコンデンサーにも周到なセレクトのおこなわれたもの。その選択と使い方には音質との兼ね合いが十分配慮され、アンプ作りのコツの一端をうかがい知ることが出来る。ボリュウムは連続可変で、クリックのないところが気に入った。音楽ファンにとって、音をカチカチと段階的に増減するという感覚は抵抗があって不思議ではない。4連ボリュウム採用で残留ノイズは耳につかない。出力インピーダンスは40Ωと低いから、スピーカーを近づけて使いたい人には、ラインレベルでコードを延ばすのに好都合。電源は全段独立安定化電源を採用し音質へのキメの細かい配慮をおこなっている。MCヘッドアンプはS/Nのよいもので、パネル面で切替えが出来る便利なもの。薄型のデザインは率直にいって、それほど高級感があるとはいえない。かなりこった作りではあるが、その割に効果が上っていないようだ。
HMA9500の特徴
HMA9500パワーアンプは、日立が開発した新しいデバイスの誕生によって実現したもので、技術的なオリジナリティを持った製品だ。コンプリメンタリーパワーMOS−FETという素子がそれで、オーディオ用のパワー素子として優れた特徴をいくつかもっている。大きな電力ゲインをもっているため、複雑なドライバー段を必要とせず、比較的シンプルな構成で、高いリニアリティをもった音声出力を得られる。回路構成は、左右独立電源のDCアンプで、NFBループにコンデンサーは使用していない。
HCA9000+HMA9500の音質
HCA9000とHMA9500の組合せによる試聴では、透明感のある繊細な音の粒立ちはよく生かされたが、豊かな力強さの点で、少々不満があった。ヴァイオリンは、線がやや細く硬目の響きだが、芯のしまった音で、演奏の毅然とした精神性がよく表現された反面、柔軟でしなやかな遊びの雰囲気といったものが希薄であった。ピアノの質感は高く、響きが冴える。オーケストラでは、弦合奏の高域が時々とげとげしくなる傾向があったが、弦のプルートの数がだんごになってしまうようなことがなく、分離が大変よく聴こえた。トゥッティでのエネルギーバランスとしては、やや高域が勝って聴こえたがこれは、ジャズのビッグバンドでの低域の図太さの再現不足とサックス群のハーモニーの厚みの再現不足と共通したイメージであった。しかし、こうしたバランス上の問題は、スピーカーや部屋のコントロールで補える範囲でのことであり、それほど大きな不満とはいえない。MCヘッドアンプ使用の音は、癖のない、おとなしいもので、歪感がない好ましいものであった。総合的に、緻密で明解な音は、音量によって音色変化の少ない使いよいアンプであった。
Lo-D HS-430
井上卓也
ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
今回発売されたHS430は、既発売のオールメタル振動板採用の3ウェイシステムHS630につづく、同じ構想の新製品である。
ユニット構成は、全部のユニットにメタル振動板を採用した3ウェイ方式で、30cm口径のウーファーL3001は、昭和48年に同社最初のメタルコーン採用のフロアー型システムHS1500のウーファーL301をべ−スとしたユニットである。そのため、コーン形状、外径、エッジ幅は同一だが、コーンの構造が変更され軽質量化が計られている。L301では、100μのアルミ合金箔を2枚使用し、その間に発泡材を使用していたが、今回は200μの1枚の単板メタルコーンとしたために強度は約8倍になり、質量は約8g軽く、能率は約4dB向上している。しかし、低い周波数では、逆にツリガネ振動を発生しやすくなるため、大型のメタルセンターキャップを装着し剛性を高めて解決している。また、エッジはゴムコーティングのギャザードエッジ。チタンのボイスコイルボビンとコーンの接合部にはブチルゴム系のメカニカルフィルターを取付け、メタルコーンの高域共振のピークを電気的なピークコントロールを使わずにメカニカルにコントロールしている特長がある。
5・5cm口径のメタルコーン型スコーカーM5501は、ウーファー同様のメタルコーンとギャザードエッジ採用で最低共振周波数280Hz、14、000ガウスの磁束密度をもつ磁気回路を使用している。2・5cm口径チタン振動板採用のドーム型トゥイーターH2501は、アルミダイキャスト製フレームと耐熱性ボイスコイル採用の高耐入力設計によるものだ。
エンクロージュアは、バッフルボードにカラ松材を主とした針葉樹の3層構造パーチクルボードを使用したバスレフ型で、マホガニー調仕上げである。ネットワークは12dB型、中音と高音に6dB連続可変型レベルコントロール付で、コイルはフェライトボビンに巻いた低抵抗型を、コンデンサーは重要な部分にはメタライズドポリエステルフィルム型を使用している。
HS430は、聴感上でナチュラルに伸びた周波数レスポンスをもち、音色は明るく、各ユニット間のつながりは十分にスムーズである。音の粒子は細かく緻密であり、この価格帯のシステムとしてはクォリティが高く、従来の製品よりも音の表現が一段とダイナミックになったのが特長である。
Lo-D HS-50, HCC-50, HMA-50
Lo-D D-5500DD
井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「第1回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント49機種紹介」より
現在のLo−Dの蓄積した実力を如実に示した製品が、このD5500DDであろう。価格的にもプレスティジモデルが存在するクラスに置かれているが、その内容の充実ぶりは現時点でもカセットデッキの限界に近く、その性能が、さして録音・再生でキャリアをもたないファンにも容易に発揮できる点が素晴らしいことである。
D5500DDは、基本的に性能を追求したカセットデッキにマイクロコンピューターを導入して、オートバイアス、オートイコライザーなどの機能を加えた製品である。
テープ走行系は、Lo−D独自のトルクむらのないユニトルクモーターを使用するダイレクトドライブメカニズムで、巻取り用に専用モーターを使う2モーター型である。メカニズムの操作はICロジック回路によるフェザータッチのボタンコントロールで、パネル面の操作部分は機械的に独立しており、取り出して赤外線使用のワイヤレスリモートコントローラーに早変わりする。このリモートコントロールは、デッキ側にある受信部に専用のマイクロコンピューターを備え、PLAYボタンを押すと、その信号の判別をおこない、データを2回集めてチェックし、同一信号が同一タイミングで到来したときに正しい信号であると判断して、メカニズムコントロール回路に信号を送る方式を採用しているために、雑音による誤動作がない特長がある。
ヘッド部分は、すでに昭和48年に商品化したD4500で3ヘッド化をしているキャリアをもっているだけに、ここではテープ走行面にチタン溶射処理をし、均一で滑らかな表面としてゴミなどの付着を極力抑えると共に、テープ走行性を安定としているほかに、録音・再生ヘッドのギャップ間隔が1・4mmで、しかも録音と再生ヘッドの磁気的な結合によるクロスフィードを解決した新開発のコンビネーション型を使用している。録音・再生ヘッド間隔を短くするメリットは、カセット装着時にパッドの圧着力によるギャップ部でのテープとヘッドの接触が良くなり、テープ走行時のレベル変動が少なく安定した信号伝送ができることにある。
マイクロコンピューターを導入したシステムは、ATRS(Automatic Tape Response Search)と名付けられている。このシステムは、中低域、中域、高域に専用の可変イコライザーを設けるとともに、バイアス可変回路を備え、使用テープごとにイコライザー量とバイアス量をマイクロコンピューターを使って最適値に調整するため、ほとんどのテープに対して平坦な録音・再生周波数特性が得られる。また、録音感度偏差の補正も同時におこなうため、出力レベルのテープによる変化が抑えられ、ドルピーキャリブレーションコントロールが不要で、ドルピー使用時の周波数特性のうねりがない特長がある。
実際の動作は、テープを挿入してATRSテストボタンを押せば、テープは走行をはじめ、パネル面の表示ディスプレイ上に、イコライザー値、バイアス値、感度補正のランプが順次に点灯し、調整完了を知らせ、すべての動作が終ればテープは自動的に巻戻され、テスト開始位置でストッブする。この時にバイアスとテープ感度メーターにバイアス量とテープ感度が指示され、ATRSテスト中の状態、テスト結果が確認でき、マニュアル使用時にもチェック用として利用できる他に、3個のメモリーボタンにより3種類のテープのデータを保存でき、電源OFF時にもメモリーは内蔵電池でバックアップされる。ATRSのその他のメリットは最適バイアス値に調整するため、バイアス不適による歪率の増加、MOLの低下を防止できることだ。
ATRS使用により、バイアス、イコライザーが最適値となるため、ノーマルタイプのローコストテープから高性能テープにいたるまで、一般の使用とは格段に優れたバランスの音を聴くことができる。従来までテープ固有のキャラクターと周波数特性的なバランスの違いが混同されていた点を一挙に解決し、テープのキャラクターが一層明瞭に聴きとれるのは見事な成果であり、周波数特性的な変化を利用して特長を出していたテープには驚異的な存在のデッキであろう。
Lo-D HS-10000
井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「第1回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント49機種紹介」より
スピーカーシーステムには、スタジオモニターとかコンシュマーユースといったコンセプトに基づいた分類はあるが、Lo−DのHS10000に見られるリファレンススピーカーシステムという構想は、それ自体が極めてユニークなものであり、物理的な周波数特性、指向周波数特性、歪率などで、現在の水準をはるかに抜いた高次元の結果が得られない限り、その実現は至難というほかはないだろう。
HS10000の開発にあたっては、オーディオ機器のなかでスピーカーシステムがもっとも物理的特性面で遅れをとっており、音の出口として最も重要な部分に位置しながら、従来のスピーカーシステムは、特性的にみてもリファレンス(基準)といわれるものが存在せず、録音または放送された音を再生する場合の『再生音の基準』がありえない。
このためプログラムソースと再生機器間の不適合が起きたり、不都合な点がマスクされ、プログラムソースや再生機器の技術的な解明がなされず、オーディオ機器の進歩を遅らせるひとつの重要なファクターとなっていたようである。Lo−Dでは『再生音の基準』にチャレンジして今回のHS10000を開発することになったが、スピーカーシステムの『基準』として決定された仕様は、従来では達成できなかった平坦な周波数特性、可聴周波帯域全域をほぼカバーする広帯域特性、主観による音づくり、原音との比較による音づくり、及び総合周波数特性を補正するための音づくりなどを一切おこなわないこと、の3点である。これらの仕様は、HS10000でほぼ達成されたが、一般のモニタースピーカーシステムより最大出力が小さい、出力音圧レベルが低い、の2点に課題が残されているということである。
HS10000は、エンクロージュアの回折効果による周波数特性のうねりは振動板のくぼみ効果などより大きく、しかも、方向によって周波数特性が異なり、本来の意味での補正が不可能であるため無限大平面バッフルを前提にして開発されている。したがってシステムとしては、900×1800×500mm(W・H・D)の巨大なエンクロージュアをもつが、使用条件としては、広い部屋一面の壁に埋込んで使わないと本来の性能が発揮できないという点が大きな特長である。
使用ユニットは、全可聴周波数帯域でピストンモーションを実現するために、30cmウーファー、6・5cmローミッドレンジ、3・5cmハイミッドレンジ、1・8cmトゥイーターの4ウェイ構成が標準であり、特別仕様として、0・9cmスーパートゥイーターを加えた5ウェイ構成も可能である。各ユニットは、バッフル面に対して振動板がくぼんだりふくらんだりしていると、振動板が剛体であっても音圧周波数特性が平坦でなくなるため、コーン型ユニットもドーム型ユニットも、すべて振動板前面に発泡樹脂を充てんし、表面をフラットとして『くぼみ効果』と『ふくらみ効果』をなくした、極めてユニークなものである。
ディバイディングネットワークは、従来のように入力端子からパラレルに、4ウェイならハイパスフィルター、バンドパスフィルター、バンドパスフィルター、ローパスフィルターを組み合わせ、分岐するタイプは3ウェイ以上では理論的に平坦な特性が得られないために、ここでは一度に二つに分けるだけで、順次これをくりかえす順次二分式を採用し、これにフェイズシフターを組み合わせて、順次二分式同相4ウェイのディバイディングネットワークとし、さらに各ユニットがすべて受持帯域の下限が低域共振であり、上限が高域共振である典型的なバンドパスフィルターであるため、この両共振をピークサプレス回路により抑制し、ディバイディングネットワークと複合化し、いわゆる音づくりを完全に不要としているのも特長である。
システムとしてのその他の特長には、バッフル面上の一つの円周上に配置したユニットレイアウト、ウーファー半径の5倍にウーファーとパッシブラジエーター中心間隔をとった点、5ウェイでは20Hz〜18kHzの広帯域無指向性、 ウーファーのf0のピークまでも含めた定抵抗化など、リファレンススピーカーシステムらしい数多くの成果を得ている。
Lo-D FT-8000
井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
デジタル・クォーツロックシンセサイザーFM専用チューナーである。プリセットメモリーは6局、自動同調、ステップ同調の3種類の選局機能、時計兼用の周波数デジタルディスプレイ、LED使用の5段階信号強度表示、録音レベルセット発振器、音によるマルチパスチェックスイッチなどの機能が特長だ。内容的には5連バリキャップ電子式フロントエンドにTVトラップを備えTVの影響を抑えている。
Lo-D HA-8700, HA-7700
井上卓也
ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
日立では、音質のよい再生をめざし、ワイドレンジ・低歪再生を目標に新しいパワーディバイスとしてパワーMOS・FETを開発し、すでにパワーアンプHMA9500に採用して高い評価を得ている。
今回発表された2機種のプリメインアンプHA7700/8700にも、一般のバイポーラトランジスターにくらべて、周波数特性、電力利得が優れたパワーMOS・FETが採用された。
HA8700は、90W+90Wの出力をもち、初段にローノイズ型ジャンクションFETを使った3段直結型MCヘッドアンプからイコライザー段、トーンコントロール段、パワーアンプまでを前代DCアンプ構成としている。電源部は、左右独立の電源トランスと大容量電解コンデンサーを使った左右セパレート電源方式である。機能面では、ターンオーバー周波数2段切替可能な高音と低音トーンコントロール、サブソニックフィルターミューティングスイッチをはじめ、ほぼフル機能であり、イコライザー出力をトーンコントロール段を通さずにパワーアンプに直結するメインダイレクトスイッチがある。また、使用頻度の少ないスイッチはフロントパネルの下部の扉内部に収納してある。
HA7700は、出力70W+70Wでターンオーバー周波数切替とメインダイレクトスイッチを省略したジュニアモデル。
Lo-D HS-5
井上卓也
ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
Lo−Dのスピーカーシステムは、メタル振動板を多く採用する点に特徴があるが、この新製品も20cmメタルコーンユニットと35mmチタン振動板採用のメタルコーントゥイーターを組み合わせた2ウェイ構成のシステムである。エンクロージュアは密閉型で、横にするとB5サイズの雑誌と同じになるコンパクトサイズでブラックメタリック仕上げだ。ウーファーは2層のアルミ合金箔の中間を発泡樹脂でダンプした厚さ約2mmの3層構造の振動板を採用し、高域共振は新開発ピークコントロール回路で制御している。クロスオーバーは1、100Hzと低く、アッテネーター付。
Lo-D HS-55
井上卓也
ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
今回新しくLo−Dから発売されたスピーカーシステムは、従来の同社の製品とはかなりイメージを一新した、コンセプトの異なった製品のように思われる。
まず、ユニット構成を30cmウーファーベースとし、大型のトゥイーターというよりはハイフレケンシーユニットと呼ぶにふさわしいタイプを組み合わせた2ウェイシステムであることがあげられる。
ウーファーユニットL304は、高能率・高耐入力設計で、コーン紙は、表面を硬く、裏面は密度を小さくして剛性と適度な内部損失をもたせたタイプで、深いコルゲーションが施されている。磁気回路は、外径140mmφの大型フェライトマグネットを採用し、センターポールに銅のショートキャップを取付けた、Lo−Dアクチュエーターによる低歪化がおこなわれている。
トゥイーターは、ダイアフラムに直径35mmのチタン振動板を使い、磁気回路には外径90mmφのフェライトマグネットを採用している。アルミダイキャスト製のホーンは、エクスポネンシャルカーブをもち、長さ235mm、開口径は100mmで、開口部には、ダンパー材で不要の振動を抑えた音響レンズが組み合わせてある。
ネットワークは、ウーファー用コイルに低歪のコアを使い、コイルをワニス真空含浸して内部まで固定し、振動を防止している。なお、トゥイーター用コンデンサーはフィルム型である。エンクロージュアはバスレフ型で、バッフルボード、リアボードはカラ松を主材料とした三層構造パーチクルボードである。
HS55は、クロスオーバー周波数が1、500Hzと低い2ウェイ型であり、能率も高いため、活気のある明快でストレートな音を聴かせる。細部のニュアンスを細かく、柔らかく聴かせた従来のLo−D製品とは一線を画した鳴り方であり、音楽を積極的にかの沁むファンに好適なものだ。
Lo-D HMA-9500
菅野沖彦
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
オリジナリティをもつ回路による高性能な信頼性高い製品。
Lo-D D-650
井上卓也
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
中級機に3ヘッドの魅力をもたらした独得の走行系は見事である。
Lo-D D-900
菅野沖彦
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
完全に使いこなした3ヘッド構成の優秀機。音のよさも抜群。
Lo-D D-7500
井上卓也
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
新ホール素子を導入した技術とトータルバランスの高さが魅力的。
Lo-D HMA-9500
井上卓也
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
柔らかく、暖かく、十分に磨き込まれたサウンドクォリティは独特。
Lo-D HMA-9500
井上卓也
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
LNP2Lとの組合せでは、HCA7500との場合とは一変した、クォリティの高い、爽やかにスッキリと抜けた、キメ細やかな音である。聴感上の周波数レンジは充分に伸びており、バランス的にはよくコントロールされている。やや中域のエネルギー感が不足気味ではあるが、全帯域にわたり、音の粒子が細かく磨き込まれており、柔らかく滑らかで、スッキリとした音をもつ点では、出色のパワーアンプである。
低域は柔らかく豊かなタイプで安定感があり、音の鮮度もかなり高く、表情もナチュラルでしなやかさがある。音場感は柔らかくスッキリと広がり、音像の定位・輪郭でも水準以上のプレゼンスがある。
Lo-D HMA-7300
井上卓也
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
HMA7500とくらべると、全体に音が引き締ったシャープさがあり、音に適度の厚みがある。聴感上で感じる周波数レンジは、かなりワイドで伸びており、バランス的には、低域が抑え気味で、ややハイバランス型に聴こえる。中域はエネルギー感もあり、粒立ちがクリアーで音色が明るく、良い意味でのソリッドさがある。中高域から高域は、音の粒子も細かいタイプで、クリアーである。低域は、最近のアンプは全般的に柔らかく豊かな音をもっているが、このアンプは、音の芯がクッキリと引き締った、腰の強い音をもつのが特長である。ある程度以上に音量を上げて聴くと、かなり反応が早く、シャープな音の魅力が出てくるアンプである。
Lo-D HMA-7500
井上卓也
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
かなりオーソドックスにつくられたパワーアンプである。
聴感上で感じられる周波数レンジは、現在のセパレート型アンプの平均よりも、むしろナローレンジタイプにまとめてある。そのため、とかく中域で薄くなりがちな傾向がなく、硬質さを抑えたニュートラルな感じである。そのため、音にある種の活気があり、柔らかさもあって、プログラムソースやコントロールアンプのデメリットを抑え、おだやかな音として聴かせる。
このパワーアンプの安定したキャラクターは、セパレート型アンプに個性を求めるとなると、やや不満があるが、良い意味でのプリメインアンプの持つ信頼性の高さが特長だ。
Lo-D HMA-9500
瀬川冬樹
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
すでに各方面で評価の高い製品だが、こうして内外の最新機種の中に混ぜて試聴しても、全力投球のあとが聴きとれて、優秀なパワーアンプのひとつだということがよくわかる。音の傾向は本質的にはハードでかなり力強いところがあるが、緻密で腰の坐りがよく、低音の支えもしっかりしているので、音にうわついたところが少しもなく、ハイパワーでも全く危なげのない充実した音を聴かせる。音の力強さがいかにも男性的で、底力のある重量感に満足をおぼえるが、反面、ここにもう少しやさしさが加わるとさらに素晴らしい音に仕上ると思う。入力にあくまでも素直に順応するというより、どこか一ヵ所力づくの強引さがあるところがもうひと息、なのだ。
Lo-D HMA-7300
瀬川冬樹
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
HMA9500のきわめて男性的な音と比較しての話でなく、この7300自体が本質的にどこか女性的な、硬さを嫌ったかなりウェットな音を持っていると聴きとれる。やかましい音、あるいは張り出す音を嫌ってのことだろう。たとえばダイヤトーンではきわめて張り出していた中〜高音域が、難しい弦の音でテストしてみてもHMA7300ではよく抑えられ、耳たぶをくすぐられるかのような細身の音色で聴こえる。その意味ばかりでなくこういう音はやはり女性的といえるだろう。もうひとつ、音の基本的な質がかなりウェットで、音の密度も薄手のため、プログラムソースによってはもう少し中味の埋まった音が欲しいというように思われることも少なくなかった。
Lo-D HMA-7500
瀬川冬樹
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
たとえば「オテロ」冒頭のオルガンの低い持続音がやや聴きとりにくく、低音の量感が不足ぎみであることを感じる。国産アンプには案外多いが、続いてのトゥッティの部分でも、総体に音が細身で重量感や厚みや奥行きが出にくい。音の硬さやおしつけがましさがよく抑えられているのでやかましくない点はよいが、弦楽四重奏でさえいくぶんオフマイクぎみに音像が遠ざかる感じで、もう少し実態感や充実感が欲しく思えてくる。骨ばってこない点が好ましいともいえるが、どこか軟体動物的で頼りないところもあって、フォルテ・ピアノのはげしく入れ変るような曲では音がふわふわとあおられて抑揚の強調される感じもあって、もう少しふんばりが欲しい。
Lo-D HCA-7500
瀬川冬樹
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
やわらかく繊細で、一聴した印象ではどこか女性的ともいえる音がする。コントロールアンプ単体の試聴の際には、パワーアンプにはリファレンスのマランツ510Mを組み合わせている。その510Mは、どちらかといえば硬質で腰の強い音がするのだが、それをここまで耳あたりを柔らかく、線を細く鳴らしてしまうのだからかなり個性的なコントロールアンプだ。そういう音だから、音の密度あるいは実態感といった面が弱く、いくらか輪郭で聴かせる傾向がある。また表面のやわらかさに反して意外に芯の硬いところがある。欲をいえば音のひろがりももうひと息だ。が、6万円のコントロールアンプとしてみるとかなりのできばえといえるかもしれない。ただツマミの形やデザインはいささか大味すぎる。
Lo-D HCA-7500
井上卓也
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
おだやかな音をもつコントロールアンプである。聴感上での周波数レンジは、ややナローレンジ型で、バランス的には、低域が安定し、中域の厚みも感じられる。高域は、ハイエンドを少し抑えているが、低域とのバランスはよく保たれている。
ステレオフォニックな音場感は、少し狭く感じられ、音像の定位と音像の大きさ、輪郭は、セパレート型の平均的と思われる。
音の表情は、基本的にはマジメなタイプだが、ときにはアクティブさも感じられる。音や音楽をマクロ的に外側から掴んで聴かせるタイプのアンプとして、オーバーオールのバランスは、よくコントロールされており、安定感がある。
Lo-D HCA-7500 + HMA-9500
瀬川冬樹
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
HMA9500でLo−Dの音は傾向が変った。そのことは単体のところでも書いたが、したがってコントロールアンプは7500でも、トータルの音は別のメーカーのように違ってくる。まず、HCA7500の持っていたいくらか線の細い、密度の薄いやわらかい音は、HMA9500の男性的な腰の太い音にカバーされてか、すっかり影をひそめてしまう。というより、9500のときとして少々力を誇示しすぎる傾向を7500のやわらかさがうまく補うのか、力強さと繊細さとがうまくミックスされて、かなりグレイドの高い聴きごたえのある音に仕上ってくる。音量をぐんと上げても危なげのない安定感が快い。細かくいえば弦のしなやかさ、アメリンクの声の女っぽさやほのかな色気、あるいはベーゼンドルファーの脂こい艶、そしてキングズ・シンガーズの声の響きのやさしさ、などといった面でわずかにあとひと息、という欲は出るものの、総合的にはかなりの水準の音が楽しめた。
Lo-D HCA-7500 + HMA-7300
瀬川冬樹
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
7500どうしの組合せにくらべると、基本的な音の傾向は全く同じだが、音の緻密さはやや増してくる。ここでの価格と出力の差は投資効果が大きいようだ。本質的には、7500の組合せで画いたと同じくさしい音。やかましさを嫌った柔らかい音。7300単体のところでも書いたように、女性的ともいえるウェットな感じが大すじを支配している。またそこでも書いたように、これとごく対照的なのがダイヤトーンで、中〜高域をかなり張り出させて硬質に仕上げているのに対して、Lo−Dの方はちょうどその音域を逆におさえこむかのように、音量を上げてもうるさくない。そのことが、線の細い感じをいっそう際立たせる。ただ、こういうやさしい音を本当の長所として生かすためには、中音域から重低音域にかけての音の力の支え、というよりも密度をもう少し濃く仕上げるべきではないかと思う。しかしこの音はほかのメーカーでは得られないのだから、やはりひとつの個性として存在価値が大きいといえるのか。
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