Category Archives: カートリッジ - Page 13

グレース SF-90

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 F9シリーズの単売品の音には、どこかひよわな頼りなさがあったが、SF90になってからは音像にしっかりした芯が加わって、国産カートリッジに共通したやや薄味ながらひずみ感の少ない美しい音質が楽しめるようになった。RとLの接続がSME式と逆なので、共用する場合には左右を逆に接ぎかえる。

B&O MMC4000

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ひとつ前のSP15の方が、クセもあったかわりに、あの高域の冷たい艶はゾクッとくるほどの魅力だった。MMCシリーズになってからは、周波数特性をフラットにつくるテクニックを確立したらしく、却って凡庸な印象になっているが、しかし渋いながら良い味わいを持っているところがさすが。

EMT XSD15

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オルトフォンと並んで、MC型カートリッジとして、音楽の豊かな表情を、味わいをもって再現することで人気のあるEMTの製品。もともとプロフェッショナルな機器で、特性もよく、それでいて単なる物理特性の信頼性以上の充実さを聴くものに感じさせるのが外国一流品の底力のようだ。

サテン M-117X

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 117シリーズの最高機種で、もともとは4ch用だが、ふつうのステレオ再生にも、ワイドレンジ型ならではの繊細な音質が生かせる。共振の少ない剛性の高いヘッドシェルにとりつけ、軽くオイルダンプしたアームで、うまく調整すると、高域の華やかさが抑えられ、切れこみの良いクリアーな音が楽しめる。

オルトフォン SPU-GT/E

菅野沖彦
ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オルトフォンの伝統的なSPUシリーズは、MC型の標準的製品として長い間君臨していたが、今となってはむしろ、独特な雰囲気をもつ存在となってきた。真に血の通った重厚なサウンドは、物理特性的な古さを超えた、美の存在が多くの人に認められている。Gシェル、トランスつきで、自重は重いが傑作だ。

デンオン DL-103

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 FM局その他のプロ関係で多数採用されている著名なカートリッジ。もともとはオルトフォン型をデンオン流にアレンジした構造のMC型だが、出力が割合に大きいため、最近のSN比のよいアンプなら、トランスやヘッドアンプなしで実用的な音量まで出せるところが使いやすい。針圧は2・5gぐらいかける。

サテン M-18BX

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 サテンは日本のカートリッジの専門メーカーとして、いかにも専門家らしい行き方をしてきたメーカーだ。信じるコンセプションを一貫し、独自の構造を磨き上げ、本当に一品一品作るクラフトマンシップをもつ。MC型だが高出力で、振動系に不用意にイージーな弾性体を使うことを避け、明解きわまりない音を出す。

エレクトロ・アクースティック STS555E

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 エレクトロ・アクースティック社の最高機種である。この上にSTS655D4という高価格品があるが、これはCD−4用のワイドレンジヴァージョンで、2チャンネルレコード用としては、555Eのほうがバランスがよく、事実上は、これが最高のカートリッジとなる。455の豊かさに高域の繊細なのびが加わる。

オーディオテクニカ AT-14Ea/G

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 テクニカ独自のVMカートリッジも、いまや一連の製品が勢揃いして全く自家薬籠中のものになった印象だが、中で価格と音質のバランスのよいのはこの14Eaあたりのようだ。シュアー型のMMとはひと味違う切れ込みの良い華やかな音質が独特。マグネシウム合金製のMGシェルつきで使いやすい。

オルトフォン SPU-G/E

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オルトフォンのMC型としてステレオ初期の開発製品であるから、寿命は長い。日本には、このカートリッジのファンが多く、オルトフォンは、手間のかかることを覚悟で、あえてカタログに残してくれている。現在のMC型のSLシリーズやMC20もいいカートリッジだが、この製品には独特の重厚な魅力がある。

オーディオクラフト AC-10E

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 国産のカートリッジが、概して中〜高域にエネルギーバランスが集まりがちで、言いかえればオーケストラのトゥッティ等でやや派手やかすぎのカン高い音を鳴らす中で、オーディオクラフトのカートリッジは、中〜高域をむしろおさえこんで、低域に厚みを持たせた、国産には得がたいバランスで聴かせる。

シュアー M75G TypeII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 このもうひとつ下にM75Bというのがあるが、B型の音はかなりラフで反応が鈍いのに対して、75Gになると音は一変してやわらかくよく広がる雰囲気を鳴らしはじめる。その意味でこれをベストバイとするわけ。次の針交換の際に、交換針の変更で最高クラスの75EDIIに生れ変らせることができる点も楽しみ。

エレクトロ・アクースティック STS255-17

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 STS155−17にくらべると、高域の音色がコントロールされて、音のバランスがずいぶん違ってきこえる。この差は好みの問題、あるいは主として鳴らす音楽のジャンルの問題だが、255の方がややクラシック向きに高域に艶を乗せて鳴らす。ただし、輸入品でこの価格では、品位を論じるのはまだ無理。

オルトフォン SPU-G

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オルトフォンのMC型カートリッジとしてきわめて寿命の長いSPU−Gシリーズには、楕円針つきのSPU−G/Eとコニカル針つきのSPU−Gの二種類あり、それぞれトランス内蔵のモデルもある。このSPUシリーズは、現在でも日本のオーディオファンに親しまれている魅力あるカートリッジである。

アントレー EC-1

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 国産の新しいメーカーで、デビューしたての製品である。発電方式はMC型で、音質は、外国製カートリッジのようなニュアンスをもったバランスのよいもの。物理特性の誇示だけが表へ出てこないで、音楽に必要なバランスコントロールがおこなわれている。ただ、デザインや仕上りが内容に追いつかず物足りない。

オーディオクラフト AC-10E

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オーディオクラフトのシェルつきカートリッジで、発電方式はMM型である。このカートリッジの音は、国産には珍しい味わいをもっていて、いたずらに周波数レンジの広さの誇示が感じられず、充実したサウンドである。高域に肉付があり、無機的な音の多い国産品の中では、ユニークな存在としてあげられる。

シュアー M75G TypeII

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 シュアーの製品の中で、この75シリーズの寿命は、もうかなり長い。その価格からしても、シュアーとしては普及品の上ぐらいにランクされる製品だが、シュアーらしいバランスのよさと、どこか、感覚に快感として感じられる巧みな魅力のポイントを持たせた好製品である。トレース能力も高く、安心して使える。

エレクトロ・アクースティック STS255-17

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 155−17の上級機で、可聴帯域のバランスは155同様、きわめてバランスのとれたものだ。特性的には155と大きな違いはないが、こちらのほうが一段とニュアンスの再生に繊細さを持っている。そして、柔らかい、プレゼンスの豊かさが加わって、一つ透明感でも上の製品であることがわかる。手堅い中級品。

エレクトロ・アクースティック STS155-17

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 エレクトロアクースティックのシリーズ中で最下位にあるのがこの製品だが、さすがにMM型の元祖だけあって、実にまとまりのいい音を出し、トレース能力も、決して安物のそれではない。さすがに、高域ののびや繊細感は無理だが、音楽に必要な帯域でのクォリティは高い。品位の高い普及品である。

エンパイア 4000D/III

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 いわゆるベスト・バイの意味からは、価格的に逸脱するが、他では得られないトーンキャラクターをとれば、ベスト・バイともいってよいだろう。トータルのシステムのクォリティにより音が大幅に変化する傾向が著しい。このカートリッジが、シャープさと柔らかく陰影の色を濃く鳴らせば、かなりのシステムである。

オーディオテクニカ AT-3M

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オーディオテクニカのモノーラル専用カートリッジで、モノーラル用のカートリッジが少ない現在、貴重な存在なので取上げた。オーソドックスなMM型で、ステレオカートリッジのモノーラルレコード再生では得られない安定した音質が得られる。モノーラルレコード愛好者は是非一個揃えられるとよい。

フィデリティ・リサーチ FR-1MK3

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 繊細で細やかな音をもち、いかにも鉄芯がないMC型らしいカートリッジだったFR−1E以来、改良がくわえられるたびに、音の密度が濃くなっているのがわかる。おだやかで完成度が高く、風格のある音と思われやすいが、最新のヘッドアンプとの組合せでは、中域のエネルギーが強く、ダイナミックで鋭角的な音を聴かせ、このカートリッジがもっているパフォーマンスの奥深さを感じることができよう。趣味性の濃い製品だ。

ピカリング XSV/3000

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 アメリカ・ピカリング社は、カートリッジ専門メーカーとして、長い経験と、かなり大きなスケールのメーカーだ。発売機種もかなり多く、シュアーと並んで、アメリカの代表的カートリッジである。この製品は、ワイドレンジ・シリーズの2チャンネルヴァージョンで、CD−4用の高域特性のワイド化の技術を、一般ステレオレコードにフィードバックしたもので、さすがに再生音の美しさを感じる。一味魅力をもった優秀品。

デンオン DL-103S

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 DL−103をベースに近代カートリッジらしい広帯域化をはかったこのモデルは、当初はネガティブな評価もあったが、ディスク側、アンプ、スピーカーなどクォリティが上昇するにつれて、本来の性能の高さが発揮されるようになった。いわゆるスタンダードカートリッジとしての信頼性の高さは、DL−103ゆずりで製品の安定度は抜群である。優れたヘッドアンプと組み合わせると、いかにも広帯域型で鮮度が高い音である。

パイオニア PC-1000/II

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ベリリウムカンチレバーで話題を呼んだ製品。きわめてクリアーな再生音を特長とする。透明な、明確な音像の輪郭がすがすがしい。しかし反面、暗い陰影のニュアンスを明るく、厳格なきつい線で再現してしまう嫌いもある。これは、このカートリッジの個性であるから、音の好み、音楽の特質に合わせて使いこなすと、抜群の解像力をもったリアリティ豊かな音の世界が拡がる。あいまいさが全くないのだ。