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ビクター JT-V45

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 このチューナーは、一連のプリメインアンプと任意にペアが組めるように、性能と機能を重視してAMを除き、FM専用機として開発された特長がある。RF1段増幅バッファー付局発回路と7連バリコン使用のフロントエンド、PLL、MPX部などを採用し、機能面では、333Hz基準レベルとピンクノイズ発振器の内蔵、正確な同調点を保持するチューニングホールド回路、左右チャンネル独立型出力レベル調整があり、操作性がよい同調機構を備えている。

ビクター JA-S41

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ビクターの新製品は、JA−S51とS31の中間に位置する65W+65Wのパワーをもつプリメインアンプである。
 機能面では、JA−S51に準じた、5段切替モードスイッチ、前面録音端子をもつが、入力切替がフォノ1系統でカートリッジ負荷抵抗切替がなく、テープが2系統になった他、高音フィルターが低音フィルターに替わり、実用性が増している。
 回路構成上では、初段FETで入力コンデンサーを除いたICL型イコライザー、4連ボリュウム採用のプリアンプ部、ドライバー段以後と以前を分離した独立電源をもつパワーアンプを備えている。
 このアンプは、一連のビクタープリメインアンプのなかでは、もっともストレートで明快な音をもっている。とくに、低域の腰が強く、リズミックで活気があるのがメリットである。

ビクター S-3

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 このシステムは、このところ、新しい価格帯として注目されている2万円台のスピーカーシステムとして開発された、S−5のジュニアシステムである。
 基本的な設計方針は、当然のことながらS−5と共通であるが、ウーファーの口径が20cmとなっているのが大きく変っている点である。このウーファーは、軽合金センターキャップ付で、フレームはアルミダイキャスト製である。なお、トゥイーターは6cm口径コーン型で、S−5に採用してあるユニットと同じものだ。
 S−5は、この種の2ウェイシステムとしては、バランスがとりやすい25cmウーファーをベースとしているだけに、帯域バランスがよく保たれ、メリハリが効いたコントラストがクッキリと付いた音をもっている。音色が明るく活気があるのは、やはりビクターらしい特長である。
 S−3は、S−5にくらべると低域が軽くなった反面、スケール感は小さくなる。一般的には、アンプ側のトーンコントロールで補整したほうが、トータルなバランスはよい。トゥイーターは、このクラスとしては粗さが少ないために、適度にクリアーで輝き、トータルなシステムに活気を与えているようである。

ビクター S-5

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最近のスピーカーシステムは、共通して音色が明るく、活気のある音をもった製品が多くなっているが、このビクターの新製品も、現在流行しているディスコサウンドやクロスオーバーなどの、ジャズロック系のプログラムソースにマッチした、力強くいきいきした音を狙ってつくられたスピーカーシステムである。
 エンクロージュアは、前後のバッフルに比重が大きい針葉樹系高密度パーチクルボードを、側版には硬質パーチクルボードを合板でサンドイッチ構造にした特殊ボードを採用し、トータルな音の響きをコントロールするとともに、マルチダクトをもつバスレフ型が採用してある。
 ユニット構成は、25cmウーファーと6cmコーン型トゥイーターを組み合わせた2ウェイシステムである。ウーファーは、アルミダイキャストフレームを使い、コーン紙には米ホーレー社製の、腰が強く軽い、ハイ・ヤング率コーンが選び出され、コーン紙中央のキャップは、分割共振が少ない特殊合金製で、いわゆるドーム鳴きを抑えながらクロスオーバー周波数付近のレスポンスをコントロールしている。
 トゥイーターは、ウーファーと同様に、ホーレー社製のコーン紙を採用したコーン型で、最高域のレスポンスを補整するために軽合金製キャップが付けてある。
 各ユニットのクロスオーバー周波数は、2000Hzと発表されているが、クロスオーバーネットワークのコイルには、磁気飽和が高いケイ素鋼板コア入りのタイプを使い、高耐入力、低歪率設計である。なお、レベルコントロールは連続可変型である。

ビクター Z-1E, Z-1, X-1

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 ビクターのカートリッジは、他のスピーカーシステムやアンプの音の傾向とはやや異なった、おとなしく柔らかな音であったが、X1の発売以来、音色が明るくなり、力強さが加わってきて、その内容は一段と向上して完成度が高くなっている。
 X1は、CD−4システム用のカートリッジだが、CD−4専用の枠をこえて、一般の2チャンネル用に充分使用できることを示した第一号機といってもよい製品である。低域のダンピングは適度で、粒立ちはやや細かいタイプである。音色は明るく、中低域がクリアーに拡がるため、全体の音がベトつかない特長がある。聴感上の帯域バランスはワイドレンジ型でよく伸びており、低域がこの種のカートリッジとしては質感がよく、姿・形がよいために、中高域の輝かしさが表面的にならず、クリアーで、クールな特長として活かされている。
 ヴォーカルは少し子音を強調気味で伸びやかさが欠ける面はあるが、ピアノはかなりスケールがあって鳴る。音の性質はアクティブで、ストレートな表現を得意とするが、これが、このカートリッジの特長である。音場はよく拡がるが、音像はあまり前に出てくるタイプではない。
 Z1は、X1にくらべると、やや硬質のメリハリの効いた音をもっている。
 聴感上の帯域バランスは、さしてワイドレンジとは感じさせない。低域にくらべ、中低域がやや甘口であり、中高域は少し粗い傾向がある。ヴォーカルは、アクセントをかなり付ける感じがあり、ドライな印象がある。ピアノは輝きはあるが、やや硬調である。音の腰が強いタイプで、力強さも感じられるのだが、どうも音がピタリと決まらず、表現が表面的になりやすい。このカートリッジは、コントラストをクッキリと付ける効果型の音であるために、性質がおとなしいソフトドーム系のブックシェルフ型スピーカーと上手に使うと、音の輪郭の明瞭な音が得られると思う。
 Z1Eは性質はZ1と似ている。アクティブに音を説明してくれるタイプの音で、演出はかなり効果的で面白い。

ビクター Z-1E, Z-1, X-1

岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 かのフロアー型バックローディングホーンスピーカーFB5の発表で口火を切って以来、独特なスタイリングをもったセパレートアンプ、デジタルカウンターをもったクォーツロック・ダイレクトドライブターンテーブルなど、最近のオーディオ界の中でビクターの名が話題に昇ることは非常に多い。つまり製品開発の成果が、それだけ成功をおさめているともいえるのだ。その成功の中にあるビクターの最新型カートリッジは、驚異的な新技術こそもたないのは当然ながら、新型アームとともに、音を追求する高級オーディオマニアにとっては注目に値する製品だということができる。つまり新型アーム、新型カートリッジの機構そのものが、とくに良いということよりも、実際に音を出したときに、その良さを知ることができる。こうした音の良さは、最終的にターンテーブルやトーンアームを実際にアッセンブルしたときに気がつくことであり、コンビネーションの良さということができよう。
 Z1Eは、まずその力強さをもった明るい音色で、圧倒的な迫力を感じさせてくれる。ダイレクトカッティングの明解さを充分に感じさせてくれる音だが、細部の再現性については、いくらか不満が残る。ステレオ感も全体的に表現して、細かな定位感については聴きとりにくいのが欠点といえる。
 Z1は、1Eでの問題点が大幅に改善され聴感上、相当な広帯域感が得られる。左右前後の広がりも大幅に改善され、音像の再現性は1Eよりもかなり良くなっている。全体の音色は、やはり1Eに似ているが高域でのクォリティは、こちらの方が数段向上している。雑音に対しては1Eよりも気になる傾向があり、針圧の可変範囲もよりシビアになる。
 ビクターの最高級モデルであるX1は、まず音の立上りの良さが一番の特徴だ。ダイレクトカッティングの良さと、スクラッチの抜けの良さは、とくに感じられた長所といえる。全帯域にわたって鮮明で明解な音を聴かせるが、ピアニシモにおける音のディテールの再現においてやや誇張される傾向があることに気がつく。ステレオ感の再現、定位の確さは、さすがに高級カートリッジらしい良さだ。

ビクター JA-S41

岩崎千明

電波科学 7月号(1976年6月発行)

 若いファンにとって求めやすい価格帯のいわゆる、普及形アンプの品質向上がますます加速されている。
 新製品は必らず性能的により高いレベルに要求されるし、実際にそれは遂げられている。同じ価格なら性質は良いし、同じ性能なら価格は安くなった。文字通りお買い得の新形として、常に賛辞を浴びてデビューするというのがこの頃の常識だ。
 だから、今さらここで「ビクターの今度の新形JA−S41は前のくらべて、パワーはぐんと上って65/65W、ひずみ0・05%の高性能、電源トランスは2つ付いてるし電源コンデンサは15、000μFが2つ。性能もSNも抜群、クロストークも格段にすぐれてる」と定石通りにほめ言葉を並べたところで、こんな美辞麗句に馴れっこになってしまった読者の皆さんには、大して気に止めなくなってしまった。馴れというのは恐いものだなんて、長屋のいん居のぐちみたいなことをこぼすひまはここにはないのだが、少なくとも、これだけははっきり知っておいて良い。ビクターの新形アンプJA−S41はまぎれもなく、今までのビクターのアンプ技術の一大集成ともいえる傑作で、音に接しても今までになくステレオ感も自然でくせは本当に感じられず、透明でありながら暖か味さえ伝わってくる。
 歌の生々しさは、音量さえ適切ならばびっくりするほど、眼をつぶって聴くと歌手が眼前で語りかけてくる姿が見えてくるほどだ。マイクに対してのわずかな顔の向きの変り方すら手にとるように判る。バックの演奏者の並び方から楽器の配置、その大きさなど注意して聴けば聴くほどリアルな再生ぶり。それはサウンドのバランスの良さ、音の質的な水準の高さ、さらにステレオ感、セパレーションの良さなくては得られない。
「アンプというのはエレクトロニクス技術だ。だから電気的データが何よりも大切で、これが長ければ実際の動作も音もよいはず」という説はたしかにその通りだ。しかし、電気的性能さえよければそれですべてよいというわけでは決してない。音の良くなる最低条件として電気的性能は必らず要求されるけれど、その辺を十分に認識していないと性能さえよければ音は必然的に良いはずと思い込んでしまうことになるし、それが落し穴とすらなってしまう。しかし、逆に性能なんか無視してもよいというわけでは決してないが、本当の音質の良さの基本になるべき性能の良さというものは、単なる数字で表わせる、というほど簡単なものではない。このところをよく了解しておかなくてはならない。
 たとえば今、話題となっているクロストークについても、セパレーション何dBと数字が良ければそれで本当に良いといえるかどうか。逆にデータの上で、驚異的な数値なんかを発表していなくとも実際には優れているのだってある。ビクターのJA−S41の場合、クロストークに対しての配慮とか処置とかいうだけではないだろうが、電源を左右分離するのでなく、最終出力段とドライバ段以前とを別電源としている。電流変動の大きな出力段を分離することにあって、電源全体的な電圧変動がなくなるため、特に直線性とかひずみとかに強く影著されることがなくなったわけだ。これが同じ価格帯なのにひずみが格段に減り、出力がより大きくなりしかも、ピーク出力でも直線性がよくなった理由だろう。つまり、基本的な性能を重視した新らしい技術的着眼が、アンプの今日的問題点とされているクロストークまでも格段に向上させてしまったということになる。
 それなのにこの新らしい大いなる飛躍は、それをはっきりと知らすことが単なる数値の羅列ではでき難いのである。さぞかしメーカーも歯がゆいことだろう。でもこうした良さは聴く側に耳さえあれば必らず判るものだ。こうして聴いてみることを推めよう。
①左右スピーカを一辺とした正三角形の頂点に座る。
②できれば歌の入った演奏を、ミニチュア化したステージで歌手がある程度の距離で歌っているように再生する。
③アンプのバランス中央のまま右のフォノ端子入力を外す。そのままで左ピーカへと音像、つまり歌手が移動する。次に左フォノ端子を外したときに右スピーカ側に移動する。
④これでよく判らなければ右側フォノを外してアンプ出力端子の左スピーカー側のリード線を外して、8Ωの純抵抗を接続し右側の音を聴き確める。特に高音シンバル、低音ベースなどが洩れていないか。

 JA−S41はこうしたときに数字には表されることのない良さを発揮する。JA−S41の水準にあるアンプは市場の5万台に果して何機種あるだろうか。

ビクター TT-101

ビクターのターンテーブルTT101の広告
(オーディオアクセサリー 1号掲載)

TT101

ビクター Z-1, Z-1E

ビクターのカートリッジZ1、Z1Eの広告
(オーディオアクセサリー 1号掲載)

ビクター1

ビクター JS-55(組合せ)

岩崎千明

コンポーネントステレオの世界(ステレオサウンド別冊・1976年1月発行)
「スピーカーシステム中心の特選コンポーネント集〈131選〉」より

 ビクターのグレート・ヒットFB5はこのメーカーのそれ以来の路線に少なからず影響を与えたようだ。JS55はFB5のユニットの特長をそのまま拡大したようなサウンドとクォリティとで、そのパワフルな再生ぶりはとうていブックシェルフ型のそれではない。つまり音響エネルギーの最大限度が異例に高いためであろうか、力強さは抜群だ。
 このずば抜けた量感あふれるエネルギーは中域から低域全体を支配して音楽のポイントを拡大して聴かせてくれるのだ。ややきらびやかな高域も現代の再生音楽のはなやかさにとっては必要なファクターといえよう。
 このスピーカーを引き立たせるには、たとえばセパレートアンプも考えられるが、より力強さを発揮する新型JA−S91に白羽の矢をたてた。ここでは音の鮮度を重視して、暖かな響きを二の次にしたからだ。つまり、あくまで生々しく間近にある楽器のソロのサウンドを捉えようとしたのだ。FB5のエネルギッシュな音にくらべてやや控え目ながらここぞというときに輝かしいサウンドがJS55からは存分に味わえるに違いない。JA−S91はこのとき本領を発揮する。

スピーカーシステム:ビクター JA-55 ¥46,500×2
プリメインアンプ:ビクター JA-S91 ¥130,000
チューナー:ビクター JT-V71 ¥59,800
プレーヤーシステム:ビクター JL-F35M ¥37,500
カートリッジ:(プレーヤー付属)
計¥320,300

ビクター SX-5II

瀬川冬樹

ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より

 どちらかといえばスタティックで控えめな、彫りの深さや音の艶に不足を感じる柔らかな音色だが、ことにクラシック系のオーケストラを鳴らしたときの、弦の自然な響きには、国産の攻撃的な音の多い中で改めて評価をし直した。細かいことをいうと、弦のオーヴァートーンにややケバ立つところがあったり、そのせいか倍音だけがやや離れるというか、または基音と倍音との間に僅かな不連続があるともいえるが、クラシックのコンサートプレゼンスとでもいうべき自然な柔らかい響きは、国産スピーカーの多くについて最も不満な部分であるだけに、多少の弱点はあっても価格とのかねあいその他で、良いスピーカーのひとつに数えてよいと思った。ピアノや打楽器のアタックには少し弱い。また、スピーカー自体の音は平面的な傾向なので、カートリッジやアンプの方に、表象の豊かさ、彫りの深さ、音の艶など生かす製品をうまく組み合わせて弱点を補う方がいい。高い目の台、左右にひろげて、背面は壁面から離した方がいい。

採点:91点

ビクター JS-55

瀬川冬樹

ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より

 とても輝きのある積極的な音、とまず感じたが、聴き込んでゆくにつれてその輝かしい音は、どうやらトゥイーターの部分でつくられた音で、それ以下の中音や低音の音域では意外に渋い音色を持っていることに気がつく。ただし試聴当日の製品は期日の関係でまだ量産に移る前の試作品だったそうで、市販までにもう少し音の変わるというコメントつきであったが、試聴記についていえば、コーン型の低音や中音の表情の豊かで、しかし中庸な音色に対して、ホーン型トゥイーターがひときわ線の細いキラキラ輝く倍音を乗せてゆくという感じで、それが曲に酔ってとても効果的に聴こえたり、低~中音に対して高音の倍音領域だけ音色がかけ離れて鳴る感じがしたりで、まだ十分に練り上がった音とはいいかねた。ただ本質的にはなかなかいい素質を持っている。この特徴のある高域の輝きと爽やかさ、または音の切れこみのよさを、表面の華やぎでなく内面の魅力として生かすことができたら、かなり特徴のあるスピーカーが生まれそうだ。

採点:82点

ビクター FB-5

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 従来のバックロードホーンの大半は、ホーンの設計の不備による共鳴や箱の共振で、低音がどろどろと鳴り響いておよそ音楽と無縁の珍妙な音を鳴らすのが多かった。それで低音に関しておよそあらゆるいじわるテストを試みた。海外の名機といわれる製品でも、無伴奏のチェロなどで、低音域のどこかの音階で共鳴からくる不自然なふくらみが出てきやすいが、FB5は、実によくコントロールされた、明るくよく弾みしかも不自然さの少ない低音を聴かせる。小型のバックロードホーンの性質上、ブックシェルフのような重低音のファンダメンタルは出にくいが、ブックシェルフとはひと味もふた味も違うしっかりした低音が出る。ただ、低音をここまで注意深く仕上げたにしては、中~高域にもっと質の高いユニットを開発して、これより高価になっても、もう一ランク上の製品をぜひとも仕上げるべきだと思った。設置場所は共鳴をおさえたしっかりした壁面と床が必要。

ビクター SX-3II

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 良きライバルであるダイヤトーンのDS251/IIが中域のよく張った鮮明さで売っているのに対し、SX3/IIはどちらかといえばヨーロッパ的な柔らかな響きを大切にした作り方で、耳あたりよくソフトなバランスに仕上がっているので、ちょっと聴くとこもったような感じもするが、長い時間聴きこんでゆくにつれて、柔らかな中にも適度の解像力があって、ことにクラシック系の弦や声を主体としたプログラムに対しては、しっくり聴き込むに耐える完成度の高い音質だといえる。本誌28号でテストしたSX3に望んだ注文がほとんどかなえられて、以前の製品に比較して、中域の密度も増してきたし、やや抑えられているとはいうものの渋い艶も聴きとれる。この価格帯では内外を通じて眺めても、注目製品のひとつと言っていい。背面や側面を部屋の壁からなるべく離す方が音質の生きるタイプ。床の上に直接置いたり出窓や床の間に置いたりすると、音がこもってしまい、せっかくの音質が生かされにくい。

ビクター JA-S8

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 からっと乾いた陽性の音質。総体にビクターの音質にはある種のにぎやかさが感じられるが、この製品にもそういう性格は聴きとれる。もう少し余韻が美しく出るとよいが。

ビクター JA-S20

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 スッキリとシャープで、中~高域などやや線の細い音質は、一聴したときはハイパワーらしくないが、繊細な切れこみと、反面、大出力での朗々と延びのよい鳴り方が見事だ。

ビクター JT-V6

井上卓也

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 ローコストチューナーのなかでは、抜群のパフォーマンスと操作性をもった機種である。受信性能、同調のフィーリングなどは、らくに1ランク上の機種に匹敵する。

ビクター FB-5

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 バックロードで鳴らす低音は体質的に受けつけなかったのに、この製品の十分にコントロールされた低音には脱帽した。こう作れるのなら、高価でももっと高品位の製品も欲しい。

ビクター JL-B44

菅野沖彦

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 中級製品として高いパフォーマンスと実用性をもっている。ハウリングに強くトーンアームの感度も高い。色のフィニッシュが一般的ではないので好みの分かれるところ。

ビクター JA-S20

岩崎千明

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 ビクターの一連のアンプ中、最高出力の最新型。規格パワーの大きいことよりも実質的な鳴り方も力強く、回路の確かさ、電源のゆとりが感じられる。豪快なるデザインも良い。

ビクター JT-V6

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 これ以前のビクター製のチューナーにくらべると、内容対価格も実質的に向上していることももちろんだが、ダイアルまわりの意匠にも新しさが出てきて、完成度が高い。

ビクター SX-3II

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 音楽の種類にかかわらず妥当なバランスで、音が生き生きと弾み、愉しく聴かせる。音の質はやや甘い方。マークIIになってより一層完成度が高まった。

ビクター JL-B41

井上卓也

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 JLーB31の上級機種である。外形寸法もひとまわり大きく、トーンアーム、フォノモーター、プレーヤーベースなどは、すべて1ランク上のものを装備した堅実な中級機。

ビクター JL-B31

井上卓也

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 外観から受ける印象よりも実際の価格が安い、まさしくコストパフォーマンスが優れたDD型プレーヤーシステムである。定評の高いJL-B33Hの優れた後継機種と考える。

ビクター JA-S9

菅野沖彦

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 中域のなめらかで立体的な再現は、音に奥行きを与える。豊かな低域もプレゼンスのリアリティを生々しく再現してくれるアンプ。SEAを含む豊富な機能もマニア好みである。