Category Archives: 瀬川冬樹 - Page 34

オルトフォン RMG309

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 SPU(GおよびA)タイプのカートリッジを、最もオルトフォンらしく鳴らしたければ、やはりRMG309を第一に奨めたい。個人的には不必要に長いアームは嫌いなのだが、プレーヤーボードをできるだけ堅固に、共振をおさえて組み上げれば、しっかりと根を張ったように安定な、重量感と厚みのある渋い音質が満喫できる。こういう充実感のある音を、国産のアームで菊子とができないのは何ともふしぎなことだ。

デンオン PMA-700Z

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 一時期、本誌でも標準アンプのひとつとしていたことにもあらわれているように、デンオンが本腰を入れて全力投球したプリメインの力作で、いまとなっては公称出力がやや少なめであるにしても、それ以外の機能や音質では、最新機種にまじってもひけをとらないだけの内容を持っている。こういう良心的な製品は、旧型というだけで中止したりしないで、ぜひとも小改良を加えながら生き長らえさせて欲しいものだ。

テクニクス SU-8080

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 回路構成や操作ファンクション、そしてデザインと、すべての面でテクニクスが新生面を切り開いた意欲作として評価したいアンプ。一聴していかにも歪の少ない、澄んだ美しい音。ひっそりとひかえめで、いくぶんとり澄ました印象を聴き手に与える。個人的にはもう少し色っぽい表情が欲しいところだが、データをまじめに追求した良さは好みを別として理解できる。操作ツマミ類、ことにボリュウムの感触は抜群。

オーディオクラフト AC-300C

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 調整が正しく行われれば、レコードの音溝に針先が吸いつくようなトレーシングで、スクラッチノイズさえ減少し、共振のよくおさえられた滑らかな音質を楽しめるが、一点支持オイルダンプの基本動作を理解しない人が多いのか、調整ミスのまま真価を発揮させずに使っている人を意外に多く見かける。従って無条件に奨めてよいかどうか迷うのだが、私自身が最も信頼し愛用している主力アームの一本である。

グレース G-545F

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 5万円、6万円という高価なアームが、いつのまにか珍しくなくなってしまった現在、必要かつ十分な性能を保ちながらこの価格を維持しているというのは貴重な存在で、こういうのをほんとうのベストバイというのだと思う。こまかな改良が加えられているとはいえ、基本的には設計当初の精神を受け継ぐロングセラーである点も安心だ。ただ、ヘッドシェルのコネクターがこのメーカーだけ左右逆なので、使用上注意が必要だ。

テクニクス EPA-100

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 トレースは素晴らしくスムーズ。カートリッジのコンプライアンスに応じて低域特性をコントロールできる可変ダンピングのアイデアは秀抜である。全体によくこなれた構造で、動作は繊細でありながら脆弱なところがなく、使い手に安心感を与える。ただこの価格ならデザインをもう一段リファインして欲しい。

SME 3009 S/2 Improved

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 トレーシングの安定さ、アーム自体の音質の良さ、感度の良さ……等、データ的にはSME以上の製品もいまならもう珍しくないが、漆黒の盤面をトレースしてゆくのを眺めるだけでも、いかにも良い音楽が聴こえてきそうな気分にさせるアーム、というのは、SMEを除いてそうザラにないだろう。

トーレンス TD125MKIIAB

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

あまりにも起動が遅くトルクが弱く、操作上のフィーリングが自分の手に合わなくてついに手離してしまったが、音質という意味ではほんとうに惜しい思いをした製品。素晴らしく安定感のある音。艶のある余韻の美しさ。音楽の表情を実によく生かすクリアーな音質。残念ながら国産DDでこういう音をまだ聴けない。

ラックス PD131

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 見た目にも聴感上も、兄貴分のPD121とほとんど差がわからない。ただし、同じアームを即座につけかえて比較試聴すると、心もち音が軽くなるような気がするのは、ターンテーブルの重量やモーターのトルクの違いのせいか。しかし実用上は、価格の安い131の方が一般的といえる。何しろ魅力的な製品。

テクニクス SP-10MK2

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 特性面でDDのいわば標準原器的な存在を目ざしたというだけあって、性能的には文句のつけようがない。が、レコードをかけるフィーリングという面では、見た目にいかにも暖かみを欠いていて、〝愛用〟という表現の使いにくい雰囲気が感じられ、個人的にはいろいろ注文をつけたくなる製品だが……。

ラックス PD121

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 駆動モーター自体がテクニクスのSP10(II型でない方)と同等品であることは、ターンテーブルを外してみればすぐにわかるが、それだから逆に、あの同じモーターを、これだけ魅力的なプレーヤーに仕上げたところが、さすがラックス、と言いたくなる。手もとに置いて愛用する気になれる数少ない製品のひとつ。

ビクター TT-81

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 TT101の回転数のデジタル表示を、ストロボスコープに簡略化して、起動特性やその他の物理データをややおさえたということだが、実用上は101とほとんど差がないと思う。だとすれば、こちらの方が本当の意味でベストバイと言えるのかもしれない。他社の同ランクと比較しても割安という印象だ。

テクニクス SP-20

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 SP10MK2に対しての弟分という位置づけの製品で、データ面では実用上遜色ない。ただ、私個人はフレームの黒いザラザラした塗装が、色調も感触もゾッとするほど嫌いなのだが、それはこのモーターの回転性能の良さとは無関係。性能的にSL01と同等品と思われるが、完成品としてのコンパクトなまとまりの良さをとるか、アーム選択の自由さからやや割高の単売品を選ぶか、が考え方の分れみちになるわけだ。

ガラード 401

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ワウ・フラッターなど、最近の国産DDと比較すると極めて悪いかに(数値上は)みえる。キャビネットの質量をできるだけ増して、取付けに工夫しないとゴロも出る。けれど、このモーターは音がいい。悠然とかまえて、しかも音の輪郭の明瞭で余韻が美しい。こういうところに、データで表せないふしぎさがある。

EMT XSD15

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 TSDでさえ、勝手なアダプターを作って適当なアームやトランスと組み合わせてかえって誤解をまき散らしているというのに、SMEと互換性を持たせたXSDなど作るものだから、心ない人の非難をいっそう浴びる結果になってしまった。EMTに惚れ込んだ一人として、こうした見当外れの誤解はとても残念だ。

EMT TSD15

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ずいぶん誤解されているらしいので愛用者のひとりとしてぜとひも弁護したいが、だいたいTSD15というのは、EMTのスタジオプレーヤー930または928stのパーツの一部、みたいな存在で、本当は、プレーヤー内蔵のヘッドアンプを通したライン送りの音になったものを評価すべきものなのだ。

ピカリング XUV/4500Q

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 かつてモノ時代の名門だったピカリングは、永いこと、チェンジャー用のローコストモデルの生産に力を入れて高級品に見向きもしなかったが、久々に放った4500Qは、4ch用だがむしろふつうのステレオの再生に、尖鋭かつ鮮烈な音の魅力を聴かせるクリーンヒットで、ピカリング健在なりの認識を改めた。

オルトフォン SPU-GT/E

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 馴染み深い割には、本当に使いこなしている人が意外に少ないのではないか。第一に、頑丈な重量級のアームで、3gまたは以上の針圧をかけることが必要だ。軽量アームでは、針圧だけかけてもトレース不良でビリつきが起る。最新の良いヘッドアンプが入手できれば、トランス内蔵でない方も使ってみたい。

AKG P8ES

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 PU4までのAKGのカートリッジは、設計がAKG、製造がアメリカ・グラドという混血だったが、P6、7、8の新シリーズでは、構造も音質も一新された。P7Eのクリアーでキリッと粒立ちの良い音も魅力だが、大型装置なら、より自然で誇張感のないP8ESの方がいっそう優れていることが聴きとれる。

サテン M-18BX

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 型番は同じでもBXだけは別シリーズ、とサテンで言うように、18EやXとはひとつ次元の違う全く独特のリアル感のある音場を展開する。ただしヘッドシェルやアームの組合せが多少難しい。アンプやスピーカーも解像力の良いものでないと生かし切れない。ややデリケートで扱いに細心の注意が要る。

オルトフォン SPU-A/E

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 Aシェル入りのSPUは、Gタイプとは少しニュアンスの異なる、より緻密で無駄のない、少し古めかしいが暖かく厚みのある表現が貴重だ。できればRMA309のような専用アームが欲しいが、無理であればFR64なども一応使える。適性針圧にはややバラつきがあるが、概して3g以上かけた方がいい。

ゴールドリング G900SE

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 とても耳当りの良いソフトなバランスに仕上っていて、品の良い、おだやかな音ですべての音楽を表現する。音の余韻の響きが美しい。華やかさとか輝きといった要素のないかわりに、やさしさ、しなやかさがあって、弦の室内楽などには、他に得がたい独自の世界を展開して聴かせる。針圧の変化には敏感なほう。

ダイヤトーン DS-25B

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 一台3万円を切る最近の国産品の中で、オンキョーM1と対照的だが共になかなかよくできたスピーカー。以前のDS251よりも音の表情にメリハリをつけた印象だが、しかしダイヤトーンらしく適度に抑制が利いている。能率が割合高いので、ローコストのアンプと組み合わせても力不足にならない点、この価格ランクとしての性格をよくわきまえている。ただ個人的にはもう少し楽しい感じで鳴ってくれると一層良いと思う。

セレッション UL6

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 イギリスの小型スピーカーの中に、えてして高域の細いやや腺病質的な音質があるが、セレッションの製品にはそういう弱点が少なく、中域のしっかりした上品な艶のある音色で、音楽をとても生き生きと聴かせる。この小さい箱を見た目の印象からは驚くほどの低音も出る。ごく質の良いセカンドスピーカーが欲しいと相談されたら、一〜二に推したい。

トリオ KA-7300D

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 Dのつかない旧作も一応の力作だったが、改良型の音は全く別もののようにグレイドアップされている。一体にトリオのアンプは、他社よりも調子が出るまでに時間のかかる傾向があるが、このアンプも、鳴らしはじめて二時間ぐらい後になると、素晴らしく細やかで質の高い音の表情を生かしはじめる。