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アルテック 620A Monitor

菅野沖彦

ステレオサウンド 46号(1978年3月発行)
特集・「世界のモニタースピーカー そのサウンドと特質をさぐる」より

 620Aは612Cと共通のユニットをもったモニタースピーカーである。つまり、コアキシャルのフルレンジスピーカー、604−8Gが内蔵されている。38センチ口径のウーファーに、ホーン・トゥイーターが同軸でカプリングされた有名なユニットだ。612Cと比較して、こちらのほうがエンクロージュアが、より理想に近い。同じユニットでも、エンクロージュアの違いによりシステムとして、かなりの差が出ている。612Cの時に感じられた、位相感の再現性がより優れ、左右のユニット間の音のうまりが、ずっと緻密になり、ステレオフォニックな音場感も、こちらのほうが豊かに再現されたのである。勿論、低域の再生も、こちらのほうがはるかに優れ、豊かな低音感であった。ただし、いたずらに低域がのびている音ではなく、むしろ聴感上の低音感としての感知領域以下の低い帯域は、十分な再現とはいえない。このシステムも、使い方で低音の再生に大きな変化をきたすはずで、通常、スタジオでは、宙釣りして使うケースが多い。あるいは、台の上に設置するといったケースも少なくないだろう。今回の試聴は床にフロアタイプとして置いたので低音感はより豊かになったと思われる。さすがに、プログラムソースの細部までよく判別の出きるシステムで、エコーの流れやバランスは、普通のスピーカーよりはっきり聴こえる。

JBL 4343(組合せ)

菅野沖彦

世界のステレオ No.3(朝日新聞社・1977年冬発行)
「 ’78のために10人のキャラクターが創る私が選んだベスト・コンポーネント10」より

 JBLのスピーカーは大きな可能性をもっている。高級機機というのはみんなそうだが、それを持てばそれでいいというものではなく、それを使いこなしていく可能性が大きいと理解すべきだろう。この4343は、JBLの本格的な4ウェイ・4スピーカー・システムで、使いこなしの如何によっていかようにも、使用者の感性と嗜好を反映した音を出してくれるだろう。そして、このホーン・ドライバー・システムは特に、ある程度の期間、鳴らし込まないと、本当の音が出てこない事も知っておくべきである。いわゆるエイジングといわれるものだが、この影響は大きい。新品スピーカーは、どこか硬く、ぎこちのない鳴り方をするが、使い込むにしたがって、しっとりと、高らかに鳴るようになるものなのである。これをドライブするアンプは、ケンソニック社のプリ・アンプ……というよりは、同社でもいっているようにフォノ・イクォライザー・アンプC220とモノーラル・パワー・アンプM60×2を用意する。片チャンネル300Wものアンプが果して必要なのだろうかと思われる向きもあるかもしれないが無駄ではない。そして、もしトーン・コントロールを必要とする場合には、別に、グラフィック・イクォライザーを(例えばビクターのSEA7070)をそろえるといいだろう。今年の新製品から、ソニーの超弩級プレイヤーシステムPS−X9を選んだが、たしかにマニアを惹きつける魅力をもったプレイヤーだ。その重量級のメカニズムから生れる音は、まさにソリッドで堂々とした風格がある。しかし、あまりに、抑制が利いていて、戸惑うほどである。このぐらいのシステムになれば、テープデッキも、カセットというのでは少々アンバランス。勿論、日常の便利に、カセット・デッキも1台は欲しいが、ここでは、スカーリーの2TR38cm/secのマスター・レコーダーを組合せ、次元のちがう圧倒的なサウンドの世界を味わっていただこうというわけだ。

スピーカーシステム:JBL 4343WX ¥730,000×2
コントロールアンプ:アキュフェーズ C-220 ¥220,000
パワーアンプ:アキュフェーズ M-60 ¥280,000×2
チューナー:テクニクス Technics 38T ¥65,000
プレーヤーシステム:ソニー PS-X9 ¥380,000
オープンリールデッキ:スカーリー 280B2 ¥2,700,000
計¥5,385,000

マランツ Model 510M

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 アメリカのアンプ・メーカーとしてのマランツの歴史は古い。現在は総合メーカーとしてスーパースコープ傘下にあり、企業の規模も大きくなったが、さすがに、往年のマランツの技術とクラフトマンシップの生きる高級品も意欲的に作り続けている。この510Mは現役マランツ・アンプの代表的な高級パワーアンプで、方チャンネル250Wオーバーの強力なパワーを誇る。音質も抜群のリニアリティで明晰である。

ロジャース LS3/5A

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 イギリスのロジャースがBBCの技術協力を得て開発した小型モニター・スピーカーで10cmのウーファーと2cmのドーム・トゥイーターを内蔵する。クロスオーバーは3kHzである。イギリスのスピーカーにはBBCモニターという規格や、そのテクノロジーに準じたものが多いが、いかにも、イギリスらしい端正な落着いたサウンドをもったものが多い。このシステムも、小型ながら誇張のない、大らかな音で、バランスが大変よい。

ギャラクトロン MK16

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 イタリアのギャラクトロンは、世界で珍しい存在だ。イタリアの専門メーカーというユニークさに恥じないオリジナリティをもった製品を作っている。MK16は5インプットのステレオ・ミキサーと10素子のグラフィック・イコライザーを内蔵するプリアンプであるが、ミキサーのインプットのカードを入れ換えてフォノ、テープ・ヘッド、マイクロフォン、ライン入力などの仕様を構成できる。コンセプションも外観も内容も独特だ。

SAE Mark 2400L

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 200W+200Wの2400パワーアンプのいわゆるMARKIIだが、LEDパワー・ディスプレイを採用し、MARK Lと名づけられた。全回路に完全コンプリメンタリー・プッシュプル回路、A級動作を採用。その極めて優秀な特性をもつ大出力のパワーアンプである。SAEらしい高度なテクノロジーは、優れたコンストラクションとデザインにより完成度の高いアンプに仕上げられ、音は透明で輝きのある高品位のものだ。

ギャラクトロン MK160

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 イタリアのユニークなオーディオ・メーカー、ギャラクトロンの作る大出力パワーアンプで、200W+200Wのパワーをもっている。スイッチの切換により、100W×4、つまり4チャンネルのパワーアンプとしても動作するというユニークなものだ。見るからに、ギャラクトロンらしい斬新なデザインで、視覚的にエレクトロニクスの世界をイメージ・アップさせるモダニズムに溢れた魅力的なフェイスである。

モニター・オーディオ MA5 seriesIII

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 モニター・オーディオはイギリスのアッセンブル・メーカーで使用ユニットは自社製ではない。この製品もウーファーはKEF製のB200という20cmスピーカーを使い、トゥイーターは、モニター・オーディオ使用にもとずくイソフォン製である。MA5は、オリジナル・II・IIIと改良を重ねられ、その都度音質が洗練されてきた。サイズは中型のブックシェルフ・システムで、聴くほどに滋味に溢れた渋い風格のあるシステムだ。

SAE Mark IB

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 アメリカSAE社は、同国のアンプ界のヤングパワーとして台頭し、優れた製品を世に送り出した。MARK IBは同社のプリアンプの最高級品で、きわめて豊富なコントロール機能を持ちながら優れた伝送特性を両立させたプリアンプである。7分割のイコライザーを中心に配したシンメトリックなパネルデザインも仕上げも高級機にふさわしく美しい。これにMCヘッドアンプとフィルターが加わればオールマイティである。

ダイナコ A-40XL

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 ダイナコはアメリカのハーマンインターナショナル傘下のメーカーで、そのスピーカーはデンマークのスキャンダイナが供給する。A40XLはA25XLと共に、ニューシリーズで伝統的な完全密閉型、アコースティック・サスペンション・システム。構成は、2ウェイで、ウーファーは25.4cm口径コーン、トゥイーターは2.5cm口径のソフト・ドーム・トゥイーターを1.5kHzのクロスオーバーで使っている。代表的なブックシェルフ型の一つ。

スキャンダイナ A-403

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 スキャンダイナは北欧デンマークの製品で、A25というソフト・ドーム・トゥイーターををもったシステムが、ブックシェルフ・スピーカーの代表的存在となった程ヒットした。その後、MKIIとして若干の改良を受け現在に至っているが、このA403は、その上級機種である。25cmウーファー、10cmスコーカー、2.5cmドーム・トゥイーターの3ウェイでエンクロージュアは制動の利いたバスレフ型だ。落着いた風格のある音質の品位は高い。

ウエストレイク・オーディオ TM-2

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 アメリカのウエストレイク・オーディオがつくるスタジオ・モニターで、使用ユニットは定評あるJBL2215(38cm)2個、スコーカーは同2440ドライバーにトム・ヒドレイ氏の開発したユニークな木製ホーン、トゥイーターは2420という3ウェイ・バスレフ方式のシステムである。剛性の高いエンクロージュアと圧倒的な高出力音圧レベルで、豪華絢爛のアメリカン・サウンドを満喫できる。

ボザーク B410 Moorish

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 アメリカのボザークは、オール・コーン・スピーカーのマルチ・システムという一貫したポリシーで、クラシックなデザインのエンクロージュアに収めた高級システムをつくっている。その節度ある渋い音色と、品位のの高いクォリティは、高級ファンの中に根強い支持層をもっているようだ。このB410はシリーズ中の最高機種で、〝ザ・コンサート・グランド〟の異名を持つ。計14個のユニットから放射される音は圧巻である。

ヴィソニック David 50

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 西独・ヴィソニックの開発した、超小型本格的スピーカー・システムである。17×10.7×10.3cmという完全密閉型の高密度エンクロージュアに9.8cmウーファーと1.9cmドーム・トゥイーターがつまっている。ムーヴィング・ストロークの大きいウーファーはハイ・コンプライアンスと相俟って、外観から想像できない豊かな低音を再現するし、全帯域にわたって、きわめてエッジ・オブ・サウンドの明確な再生音だ。

ヴァイタヴォックス CN191 ConerHorn

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 イギリスのヴァイタヴォックス社は、ほぼ半世紀にわたる歴史を持つメーカーで、プロフェッショナル機器を専門に製造している。したがって同社のスピーカーは、米国アルテック社と相通じ、劇場・ホール用、スタジオ用として高い名声を得ている。このCN191というシステムは複雑なホールデッド・ホーンでしられるクリップシュ氏の設計になるホーン・エンクロージュアに38cmウーファーとホーン・ドライバーを収めた2ウェイである。

スペンドール BCIII

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 イギリスのスペンドールは比較的新しいメーカーだが、その製品への信頼度は非常に高い。BBCのモニター・スピーカーの規格にもとづいて開発された同社のシステム中、このBCIIIは、シリーズ中の上級機種で、かなり大型のシステムである。独特なユニット構成で、30cmのプラスティック・コーンをベースにした4ウェイ・4スピーカーである。仕上げの高いエンクロージュアもこのスピーカーの音の美しさの要因だろう。

ダイナコ Stereo 400MA

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 アメリカのアンプ・メーカーとして、すでに長い間馴染みのあるダイナコの現役シリーズの最高製品が、この400MAであり、これからパワー・インディケイターを取り除いた400Aというモデルと共に、ダイナコ製品群の旗艦だ。200W+200Wの出力を持つ。ドライバー段はA級動作で、スイッチング歪の少ない小レベル時の音質を重視した設計だ。大型ヒートシンクにより放熱効果をあげているが、オプションでファンもつく。

エレクトロボイス Interface:A

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 アメリカのエレクトロボイス社は、スピーカー、マイクロフォンの専門メーカーで、長い歴史と高度なテクノロジーを持つ名門である。インターフェイスAは、ユニークな構成のシステムで、ウーファー20cmに25cmパッシヴラジエイター、そしてフロントにメタルドーム付の5cm径のトゥイーター、そして背面にも同サイズのトゥイーターを備える。専用イコライザーが用意され、ルーム・アコースティックに対処する。ペアで売られる。

タンノイ Arden

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 名門タンノイが生れ変ったニュー・シリーズ中の最高機種が、このアーデンである。
 伝統的のコアキシャル同軸ユニットHPD385Aは38.5cmウーファーとトゥイーターのカップリングである。この優れたユニットを、フロアー・タイプの大型バスレフ・エンクロージュアに入れたアーデンは、往年のタンノイの伝統が生きた優れた新鋭機といえるだろう。豊かな音は、格調高いタンノイのそれであり、堂々たる再生音を満喫できるもの。

QUAD ESL

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 イギリスのクォードは、きわめて主張と個性の強いメーカーで、その製品の種類はきわめて少ない。常にプリアンプ、チューナー、パワーアンプ、スピーカーをその時々に一通りそろえているだけだ。スピーカーは、このESLが唯一のもので、その名の示す通りエレクトロスタティック型である。繊細きわまりない高域の美しさと、優美なデザインが特徴で、ラウドネスさえ望まなければ、最高品位の再生音が得られる。

フェログラフ S1

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 イギリス・フェログラフ社は、テープレコーダーでその名を知られたメーカーであるが、同社が開発した傑作スピーカー・システムがこのS1である。ウーファーは楕円型のプラスティック・コーン、スコーカーが10cm口径のコーン型、トゥイーターはドーム型である。エンクロージュアはバスレフ式で、きわめて現代的な美しいプロポーションと仕上げを見せる。すっきりとのびる高域を低域が豊かに支え、大変品の高い再生音が得られる。

ジェニングス・リサーチ The Amp

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 アメリカの新生メーカー、ジェニングス・リサーチは、スピーカー・システムにおいても注目に価する製品を我々の前に見聴きさせてくれた。このザ・アンプと名づけられた製品も、一見して魅力のあるパワーアンプである。200W+200Wの大出力をもつパワーアンプとは思えぬコンパクトなもので、詳細は不明だが短時間の試聴の限りでも、きわめてタッチの明確な明るい音であった。華麗なサウンドという印象である。

アナログ ANALOGUE 520

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 アメリカのエレクトロニクス・エンジニアリングのひとつの顔といってよい。きわめてモダーンでドライなテクノロジーにより開発されたプリアンプ。その名前からも伺えるように、コンピューター・テクノロジーのオーディオへの導入により、徹底的にアナライズされたデータにもとずき開発された製品。ほとんどのパーツはプラグ・イン・モジュール化され、ワイアリングは最少限に押えられている。

タンノイ Cheviot

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 イギリスの伝統的なスピーカー・メーカー、タンノイの新しいシリーズ中の中間機種がこのチェビオットである。使用ユニットは、タンノイの伝統的なコアキシャル・2ウェイの全帯域スピーカー・ユニットで、これはこの一つ下のクラスのデヴォンと共通のHPD315Aという31・5cm口径のもの。エンクロージュアがデヴォンより大きく、チェビオットから上が、台座つきのフロアー・タイプとなる。堂々とした重厚な再生音だ。

AGI Model 511

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 アメリカのAGIが作ったプリアンプで、動特性重視のハイ・スピード・アンプを標榜して登場した。つまり、過度特性を重視して設計されたスルーレイトにウェイトを置いた新しい回路の見つめ方であるが、外観からも、往年のマランツ7、7Tのトラディションが流れている。パネル・デザインからも解るように必要最低限にコントロール機能を整理している。生き生きとした音質の高級プリアンプ。