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ソニー APM-8, APM-6、パイオニア S-F1、テクニクス SB-M1 (MONITOR 1))

井上卓也

ステレオサウンド 72号(1984年9月発行)
特集・「いま、聴きたい、聴かせたい、とっておきの音」より

 平面振動板採用のユニットを使ったスピーカーシステムといえば、1970年代の末期に急激に開花した徒花といった表現は過言であるのだろうか。
 毎度のことながら、国内のオーディオシーンでは、これならではのキャッチフレーズをもった、いわば、究極の兵器とでもいえる新方式や新材料を採用した新製品が、開発され、ある時期には、各社から一斉に同様のタイプの新製品が市場に送り込まれ、盛況を見せるが、それも長くは継続せず、急速に衰退を元す、といった現象が、繰返されている。平面振動板を採用したユニットによるスピーカーシステムも、その好例であり、現在では継続してこのタイプのユニットによるシステム構成を行なっているのは、テクニクスとソニーの2社といってよいであろう。
 平面振動板は、スピーカーユニットの振動板形態としては、もっとも、シンプルなタイプであり、振動板の振動モードを検討する場合に、オルソンの音響工学にもあるように、常に引合いに出されるタイプだ。
 従来からも、平面振動板を採用したダイナミック型のユニットは、特殊なタイプとしてはすでに1920年代から存在することが知られているが、いわゆる、コーン型ユニット的に、ボイスコイルで振動板を駆動する製品としては、かつて、米エレクトロボイスにあったといわれる、木製の板を振動板としたユニット、ワーフェデールのコーン型ユニットの開口部を発泡性の合成樹脂の平らな円板でカバーしたウーファーなどが一部に存在をしたのみである。これが、急速にクローズアップされたのは、宇宙開発や航空用に開発された軽金属製のハニカムコアが、比較的容易に入手可能となり、これに、各種のスキン材を使って、振動板として要求される、重量、剛性、内部損失などの条件がコントロール可能になったためである。簡単にいえば、新しい材料の登場が、急速な平面振動板ユニット開発のベースとなっているのである。
●ソニーAPM8/APM6
 平面振動板を採用した原点は、全帯域にわたり完全に近いピストン振動をする、いわば、スピーカーの原器ともいえるシステムを開発するためといわれ、アキユレート・ピストニック・モーションの頭文字をとりAPMの名称がつけられている。
 APM8は、11978年1月に開発されたAPMスピーカーをベースに製品化された第一弾製品で、ハニカムサンドイッチ構造の角型板勤板ユニットを4ウェイ構成とし、フロアー型バスレフエンクロージュアに組込んだシステムである。アルミ箔スキンの低音は、4点駆動で、中心にローリング防止ダンパー付。中低域以上は、カーボンファイバーシートをスキン材に採用している。
 磁気回路は、アルニコ系鋳造磁石を採用し、プレートとセンターポールの放射状スリットと、磁気ギャップ近傍のプレートやボールに溝を設けるなどの機械加工による電流歪低減と、各ユニットのインピーダンスを純抵抗と純リアクタンスに近づけ、単純化し、ロスを減らし、特性をフラット化する設計が見受けられる。
 エンクロージュアは、200ℓ、自重60kgで25mm厚高密度パーチクルボード製。ネットワークは、SBMCの高圧成形の防振構造を採用している。
 ユニット性能を最重視した基本設計は、国内製品として典型的な存在である。物理的な性能は超一流のレベルにあるが、システムとしての完成度に今一歩欠けるものがあり、発表以後、改良が加えられた様子はあるが、サウンド的には未完の大器であり、非常に残念な存在である。完全にチューンナップした音が聴きたいモデルだ。
 APM6は、APMユニットをモニターとして最適といわれる2ウェイ構成とし、エンクロージュアをスーパー楕円断面の特殊型として、デフテクションの防止を図ったAPM第二弾製品である。2ウェイ構成のため、セッティングは非常にクリティカルな面を示すが、追込めばさすがに、従来型とは一線を画したスピード感のある新鮮な音を聴かせる。使い手に高度の技術を要求する小気味のよい製品だ。
●パイオニア S−F1
 世界初の平面同軸4ウェイユニットを開発し、採用した、極めて意欲的、挑戦的モデルである。基本構想は、音像定位、音場感を最優先とした設計であり、混変調歪やドップラー歪に注目して一般型としたソニーAPM6と対照的な考え方と思う。
 角型ハニカム振動板は、低域と中低域のスキン材にカーボングラファイト、中高域と高域用はベリリュウム箔採用だ。磁気回路は、同軸構造採用のため、ウーファー振動板40cm角に対して32cm型のボイスコイルであり、背面の空気の流れを確保するため非常に巧妙な考えが見受けられる。とくに、高域と中高域の同軸構造磁気回路は、シンプルでクリーンな設計である。
 エンクロージュアは、230ℓのバスレフ型で、システムとしての完成度は、相当に高いが、今後のファインチューニングを願いたい内容の濃いシステムである。
●テクニクス/モニター1
 SB7000で提唱した位相特性平坦化を平面振動板採用で一段とクリアーにした理論的追求型のシステムだ。独特のハニカムコア展開法は、振動板外周ほどコアが大きくなり、軽くなる特徴をもち、4ウェイ構成のユニットはすべて円型振動板採用。
 低域用の特殊構造リニアダンパー、高域用のマイカスキン材をはじめ、磁気回路の物量投入は、価格からみて驚威的で、非常に価格対満足度の高い製品である。特性は充分に追込まれているが、システムアップの苦心の跡としてバッフル前面のディフューズポールや、内部定在波を少し残して低音感を調整したあたりは巧みである。この製品の内容を認めて、使いこなせる人が少ないのが、現在のオーディオの悲劇であろうか。

パイオニア A-150D

井上卓也

ステレオサウンド 71号(1984年6月発行)
「BEST PRODUCTS」より

 パイオニアから、従来のA150に替わるモデルとして発売されたA150Dは、デザイン的には、オプションのサイドパネルを除き変更はないが、その内容面は、大幅な変更を受け、基本から完全に新設計された、意欲的な新製品である。
 基本的な特徴は、電源トランスを含め左右独立したモノーラル構成のパワーアンプと、同じく、電源トランスを含む、小信号系の独立したイコライザーアンプという、3ブロックに分割した内部構成にある。
 パワーアンプの左右チャンネルをモノーラル構成とするメリットは、左右の信号の相互干渉がなく、混変調歪、セバレーションが優れ、聴感上では、音場感的な空間情報量が豊かであり、音像定位がクリアーになる特徴がある。また、小信号系を分離すれば、変動が激しいパワーアンプの影響を受けず、音質向上が計れることば、セパレート型アンプのメリットにつながるものだ。
 簡単に考えれば、プリメインアンプでセパレート型アンプに近似したメリットを実現させようという考え方で、一時は、この動向がプリメインアンプの主流を占めた時代があったが、最近では、主に価格的な制約が厳しいため、採用される例は少ない。
 このタイプで問題になるのは、構造面の機構設計の技術である。プリメインアンプであるだけに、同じ筐体内に、分割したブロックを組込むためのスペース的な制約は厳しく、この部分の設計が、目的を達成するか否かにかかわる鍵を撮っている。
 パワーアンプは、A150のノンスイッチング方式を発展させた、ノンスイッチング回路タイプIIと呼ばれるタイプで、従来型の100kHzまでのノンスイッチング動作から、100kHz以上までと動作領域を広帯域化している。また、B級増幅のアイドリング電流のドリフトに起因するサーマル歪や出力段で発生する非直線歪に対して、新しくアイドリング電流を電源スイッチ投入直後や大きな信号が入った直後にも、瞬時に安定化する特殊回路が開発され、出力段の歪みは従来の1/10となっているという。
 経験的に150W+150Wクラス以上のパワーアンプでは、一般的な試聴のように、数分間程度信号を加えて音を聴き、数分間、音を止め、再び音を出す、という間欠的な動作をさせると、音を出した最初の10〜20秒位の間は、音が精彩を欠いており、これが次第に立上がって本来の音になることを常々体験し、温度上昇との因果関係をもつことを突きとめてはいるが、アイドリング電源の安定度との相関関係も非常に興味深いものがある。
 このところ、スピーカーのインピーダンスは、従来の8Ωから6Ωに主流は移行する傾向を示していることの影響をも含めて、パワーアンプの低負荷ドライブ能力が、再び、各メーカーで検討されているようだ。
 A150Dも、低負荷ドライブ能力の向上は、設計上での大きなテーマであり、パルシプな入力がスピーカーに加わった立上がり時に、見かけ上のインピーダンスが、サインウェーブで測った公称インピーダンスより低くなる動的インピーダンスに対しての駆動能力を確保する必要性を重視した結果、パワーアンプは、電流供給能力を増強した設計で、4Ω負荷時190W+190W、2Ω負荷時で270W+270Wが得られると発表されている。
 機能面は、トーンコントロール回路や、モード切替えスイッチをパスさせて、信号系路をシンプルにするラインストレートスイッチ、多様化するプログラムソースに対応するための、5系統の入力切替えスイッチと2系統のテープ切替えスイッチを備えている。なお、MC型カートリッジは、A150同様に、昇圧トランスを使い、3Ωと40Ωが切替え使用できるタイプである。
 リアパネルのスピーカー端子は、太いスピーカーケーブルの使用に対応するため、ターミナルのコード接続部の開口は、3×5φmmと大きく、構造的には、2枚の金属板を庄着するタイプが採用されている。
 試聴は、JBL4344、ソニーCDP701ES、バイオニアP3a十オルトフォンMC20IIを使う。
 外観的には、オプションのウッドボードをボンネットの両側に取付けると、かなり大人っぽい落着いた雰囲気になる。各コントロールは、適度に明解さの感じられる節度感のある感触があるが、大型のボリュウムのツマミは、A150と格差を感じる金属削り出しに格上げされ、そのフィーリングは高級磯らしい好ましいものだ。
 また、機構面も目立たないところだが、A150と比較すれば確実にコントロールされており、ボンネットや内部の機械的な共振や共鳴が抑えられ、手でたたいてみても、雑共振が尾を引いて響くことはない。
 音質面でのA150Dの最大の特徴は、従来の、豊かで柔らかい低音から脱皮した、余裕のある力強い安定した低音への変化である。この新鮮な感覚の低域をベースとして、密度感があり、気持よく抜けた中域とナチュラルな高域が巧みにバランスを保ちスムーズに伸びた帯域バランスを聴かせる。基本的なクォリティは、充分に高く、A150に対する価格の上昇を償って充分以上の内容の向上である。
 音色は、ほぼ、ニュートラルであり、アンプの本質がもっとも現われる、音場感の空間情報量や音像定位のクリアーさでも従来とは一線を画したパフォーマンスだ。
 オプションのサイドパネルを取付けると、制動効果で音は少し抑えられるが、クォリティ的には少し向上する傾向が聴き取れる。総合的に、電気系、機械系のバランスが大変に優れた、注目すべき新製品である。

パイオニア P-D90

井上卓也

ステレオサウンド 71号(1984年6月発行)
「BEST PRODUCTS」より

 P−D90は、D70ベースの音質重視設計の新製品である。
 考えてみれば、大変に不思議なことであるかもしれない。CD開発当初より驚異的な特性を基盤として、超ハイファイをキャッチフレーズにしてスタートしたCDプレーヤーは、当然、音質最優先であるはずである。この、はずが実は問題なのだ。
 CDプレーヤーの基本性能は、f特でこそ、上限が20kHzとアナログに劣るが、SN比、ダイナミックレンジ、セバレーション、ワウ・フラッターなど、さすがにデジタル機器らしく、アナログディスクとは、比較にならぬ次元のデータを示している。この優れたデータが、結果としての音質や音場感情報量に活かすことができれば、超ハイファイになるはず、というのが、いわば希望的観測であるわけだ。
 音質的にも、CD発売以前は、一部ではデータが驚異的なだけに、CDプレーヤー間で、差が出ないのではないかとの話しもあったが、先行したEIAJ規格のPCMプロセッサーでの結果と同じく、機種間、メーカー間の音の差が、明確に存在しているのは衆知の事実である。
 CDプレーヤーで音質が変わる部分は、その構成部品すべてであるといっても過言ではない。一般的には、DAコンバーターからフィルター、それにアナログアンプに、そのもっとも大きな原因があるとされているが、それも現在の段階では、という但し書きをつけてのことである。
 P−D90の基本メカニズムは、D70を受継ぐ、独自の方式を採用した自社開発によるものだ。対物レンズをフォーカス方向と半径方向のトラッキングを独立させ、トレース能力を向上させたクロスパラレル支持方式、プリズム、コリメーターレンズ、対物レンズなどの光学系を一直線上に配置し対物レンズをはさんで2個の磁気回路と2個のコイルでダブル駆動とし駆動系の感度アップと高精度化を計ったフォーカスパラドライブ方式の2点がピックアップ系の特徴である。
 一方、ディスクまわりのメカニズムは、D70で採用されたタイプに手を加えたもので、メカニズムの機械的な検討がボイントであろうが、この部分も予想以上に大幅に音質を変化させるキーポイントである。
 これらの高精度化されたピックアップ系の採用にともないデジタル信号処理回路には、2チップからなる高性能LSIを採用、ディスクの反りや、ピットのばらつき、キズなどによる信号の欠落に対して、最大12フレームにおよぷドロップアウトを原信号に戻す強力な誤り訂正能力を実現している。
 DAコンバーター以後のアナログ回路は、パイオニアのオーディオ技術を駆使したもので、各オーディオアンプ基板上に専用の定電圧電源を置くとともに、オーディオ回路のオペアンプやアナログスイッチ類を全てシングルタイプとしたシングル駆動の採用、さらに電源ライン、アースラインとも、デジタル系とアナログ系を完全分離する処理がD70にないD90の特徴である。
 また、回路部品の高音質C・R、オリエントコア使用の電源トランスやOFCで絶縁体にも音質対策を施し、極性表示された音質が優れた電源コードなど、高級アンプと共通の部品選択が見受けられる。
 機能面は、D70と共通ではあるが、電源のON・OFF以外のすべてのコントロールができるワイヤレスリモコンが標準装備される。なお外装は、ブラックとシルバーの2モデルが選ペるのもD70と異なるD90の魅力である。
 試聴は、スピーカーにJBL4333、アンプは、デンオンPRA2000ZとPOA3000Zを組み合せて使う。
 CDプレーヤーでは、基本的な情報量が多いだけに、アンプと接続するRCAピンコードの種類でかなり大きく音質が左右され、簡単にこれがこのモデルの音といった結論は出しがたいものである。
 基本としては、付属コードもしくは、メーカー指定のコードで聴くことが原則と考えるが、意外にこのあたりは軽視されがちで、専用コードの指示を依頼しても、確答のないメーカーがある例や、雑誌の試聴室でも、比較的に良さそうなコードが適当に使われているのが実情である。
 この点、D90の付属RCAピンコードは、金メッキ処理されたプラグ付の無酸素銅線便用で、平均的な使用では、充分に安心して使える品質をもつだけに有難い。
 操作系は、テンキーをもたないが、シンプルで、実用上文句のない使い勝手である。CDディスクをトレイに入れ、ディスクが装着されるまでの機械音は、メカニズム系の状態の概略を知るうえで、かなりの手掛かりとなる。とかく、軽視されがちで、プラスティック成形品が使われやすいトレイ部分は、軽金属ダイキャスト製でスライド中のノイズも少なく、フィーリングも良い。なお、装着時のカタッとかパシャッとかいうメカノイズも水準以上で、メカニズムが適度に調整されていることが感知できる。あるレベル以上の製品で、この装着時のノイズが、パシャとかカチャッとかのように、機械系のガタや共鳴音が出る場合には音質面に悪影響を与えるため、要注意だ。
 置場所は、充分に堅く、共鳴や共振のない木製の台に置きたい。聴感上の帯域バランスは、適度に力があり豊かな低域をベースとしたナチュラルなタイプで、クォリティは高く、いわゆるデジタル的な軽々しさや、表面的な表現にならないのが好ましい。音場感の拡がりはナチュラルで、定位もクリアーで過不足はない。ノイズも質もよくさすがに、第3弾CDらしい好製品である。

パイオニア S-9500

井上卓也

ステレオサウンド 71号(1984年6月発行)
特集・「クォリティオーディオの新世代を築くニューウェイヴスピーカー」より

 昨年9月発売のS9500は、価格設定から考えると、ユニット構成は物量投入型で、内容が充実している。さらに、エレクトロニクス・バスドライブ方式という国内最初のダブルボイスコイルを使う新しい武器をも備えた、NS1000Mにとっては、かつてなかった強力なチャレンジャーだ。
 デジタルプログラムソース時代に対応するスピーカーシステムとして、低域再生能力の向上とダイナミックレンジの拡大という二大技術的目標をもって開発されたこのモデルは、パイオニアのトップランクモデルとして長期間にわたりシンボル的な存在である955シリーズでの基本技術に加え、独自の通気性二重綾織ダンパーと、改良されたカーボングラファイトコーン、さらに、新技術EBD方式を搭載した、明らかに新世代のパイオニアスピーカーシステムの登場を思わせる製品である。
 システムとしての最大の特徴は、低域のEBD方式である。ボイスコイルは2組あり、一方は、標準的なバスレフ動作で使用し、やや腰高だがフラットレスポンスからシャープに低域がカットされる特性である。他方は、システム共振周波数以下の帯域でのみ動作させ、システムとしての低域特性を一段と向上させようとするもので、発表値によれば、この外形寸法のエンクロージュアで、50Hzまでフラット再生が可能という、驚異的な値だ。
 この低域レンジの拡大をベースとすれば、スコーカーに要求される条件は、受持帯域の下側のエネルギー量が充分にあるユニットの開発である。
 一般的に、3ウェイ方式のシステムでは、ウーファー帯域が音楽信号の最大のエネルギー量をふくむ帯域を受持つため、最低域と中低域のバランスを両立させることが、システムアップの技術で鍵を揺る部分である。この解決策のひとつが、中低域専用のミッドバスを加えた4ウェイ方式であるが、ユニットの数が増しただけ変化要素が複雑になり、価格の上昇もさることながら、システムアップの難易度は、3ウェイ方式とは比較にならない。
 ちなみに、比較同時試聴でも、3機種の比較は容易だが、4機種となると急に難しくなることに類似している。
 ここで、EBD方式はダブルボイスコイルを採用しているから、一般のウーファーとは違うのではないか、という疑問が生じることだろう。簡単に考えて、ウーファーのボイスコイルを収める磁気回路のギャップの体積は、諸条件がからみあまり大きく変更できない。しかし、ここに2組のボイスコイルを収めるダブルボイスコイル方式は、通常タイプの受持帯域のエネルギーを減らした分だけを最低域用に振替えるタイプで、基本的には通常タイプと同等に考えるべきものと思う。
 さて、前述した要求条件を満たすためのスコーカーは、市販製品では最大の口径をもつ76mmドーム型ユニットが開発され採用されている。振動板材料は、独自のベリリュウム技術をもつパイオニアならではのダイアフラムで、方向性がなく、大パワーでも亀裂が生じない特徴を誇るタイプだ。なお、磁気回路のマグネットは、外径156mmのヤマハと同サイズを採用しているが、ボイスコイル直径が、ヤマハの66mmに対して76mmと大きいため、約10%も磁力が強いストロンチウムフェライト磁石を採用している。大口径スコーカーを採用すると、トゥイーターも受持帯域の下側のエネルギーが必要になる。独自のベリリュウムリボン型ユニットは、従来より一段と低域特性を改善して、ウーファーと共通思想で開発されたダイナミック・レスポンス・サスペンション方式を採用している。
 なお、パイオニアのスピーカーシステムの特徴として、ネットワーク回路が、業務用機器の600Ωラインに採用されているタイプと同じ、バランス型であることがあげられる。このタイプは、通常タイプと比較して、音場感の空間情報が多いのが特徴。
 使いこなしの要点は、量的に充分にある低域の豊かさを活かすことだ。誤った使用方法では、低域がダブつき、反応の鈍い、焦点のボケたシステムと誤認するだろう。現実に、市場でこのシステムの評価がいまひとつ盛上らないのは、使いこなし不在が、その最大の要因である。
 置台は、前例と同じブロック一段とする。左右の間隔は、基準より狭く、ブロックの外側とシステム側板が一致するあたりだ。置台が一段では少し低いため、間隔をつめて、システムの底板の鳴りを制動気味にする必要がある。前後位置は、前方に動かしたほうが全体にシャープ志向のモニター的サウンドとなり、後方に動かせば、伸びやかに闊達に鳴る開放的な響きとなる。当然使い手の好みで判断すべきだが、変化は穏やかで予想以上に使いやすい。ここでは、豊かさと適度なライブネスがあり、音場感の空間情報が多い方向が、システム本来の構成、性格から好ましいと判断して、やや基準点より後方にセットをした。
 積極的に使う場合には、置台は、コンクリートブロックよりも、堅木のブロックもしくはキューブが、響きのナチュラルさの点で好ましい。低域の量感が豊かなため、置台とシステムの間の空間には適量の吸音材を入れ、中域以上の透明感、SN比を向上させるべきであろう。
 ネジ関係の増締めは、適量を厳守されたい。無理をすると比較的容易に破損する。
 左右の置きかたは、バスレフボートを外側にするのが原則。ポートからのパルシブな圧力波的なものが音場感を乱し、大音量時には耳に圧迫感がある。音量レベルは家庭内の平均レベル程度がベストで、低域の量感の豊かな特徴が棲極的に活かせるし、大口径中域の余裕あるエネルギー感が楽しめる。スピーカーコードは、低域が豊かだけに、OFC、LC−OFCなどの情報量の豊かなものを使用し、固有のキャラクターを抑えて、充分に物量の投入された豪華なシステムの特徴を活かしたい。

パイオニア Exclusive C5

井上卓也

ステレオサウンド 69号(1983年12月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より

 現時点での世界のトップランクのコントロールアンプを目指して開発されたモデルだけに、C5は長期間にわたり培われたパイオニア独自のアンプ回路設計技術の集大成をベースに、ユニークで簡潔なコンストラクション、コンデンサー、抵抗、スイッチ類などの数多くの部品を非常に高い次元で吟味し選択して採用している。
 このように文字として書けば、ほとんどの新製品アンプのコマーシャルコピーと何の変りもない表現になるが、実際のEXCLUSIVE C5の内部を見てみると、平均的なオーディオアンプの要求度とは隔絶した、非常に高い次元での要求に基づいて開発された製品であることが、現在のアンプ設計技術の水準を適確に捉えている目をもってさえいれば、瞬時に認識できるだけの内容を備えている。
 まず外観から眺めてみると、基本的なデザインポリシーは、EXCLUSIVEの顔ともいえるパネル面の下側に、サブパネルを設けたパネルフェイスに、天然木キャビネットという流れを受け継いではいるが、手づくりのフロントパネルは、C5では一枚構成のシンプルなタイプに整理され、C3、C3aではサブパネルとなっていた下側のパネルは、実際には開閉できず、単なるデザイン上の処理となっている。
 特徴的なパネル左端の長方形の部分は、大型のパワースイッチで、本機独特のマルチトランス・パワーサプライ方式、ACアウトレットのON・OFF用として、音質上でも重要な部品であり、ここでは特殊なタイプが採用されている。
 内容的なアンプとしてのブロックダイアグラムは、入力部に3Ω/40Ω切替型のMCカートリッジ用昇圧トランスを持つフォノイコライザー部、TUNER、AUXなどのハイレベル入力用と、テープ入力用に独立したバッファーアンプ、フラットアンプ部、トーンコントロールアンプとサブソニックフィルター、出力用バッファーアンプ部で構成され、ボリュウムコントロールは、フラットアンプの前に、バランサーは出力用バッファーアンプの前に置かれるレイアウトである。
 これらの各アンプ部は、モジュールアンプ化されていることが本磯の大きな特徴である。280μ厚無酸素圧延銅使用のガラスエポキシ基板上にトランジスター、コンデンサー、抵抗などの構成部品をマウントし、これをポリプロピレン系の特殊な導電樹脂ケース内に、鉛ガラスフィラーを混入した高比重エポキシ樹脂で固め、音質上有害な振動や電磁波の除去と、熱的安定度をも含めた耐久性、安定度の向上をはかった設計であり、フォノイコライザー部のイコライザー素子も同様な構造のCRモジュールが採用され一般的なアンプの内部に見られる基板上に半導体、コンデンサー、抵抗、スイッチ類が林立するアンプらしさは皆無に等しい。
     *
 このところ、アンプの話題は、信号系の回路構成上の斬新さもさることながら、アンプの基本である電源部の見直しが各社でおこなわれ、それぞれにユニークな名称がつけられているようだが、C5の電源部もオーソドックスな手法によるマルチトランス・パワーサプライ方式を採用している。
 基本的な構想は、フォノイコライザーアンプ部、フラットアンプ部の左右チャンネル用4ブロックに、それぞれ独立した4個のパワートランスを使用する方式で、アンプにとっては理想的ともいえる電源方式であり、従来の巻線のみ独立したタイプににくらべ、電源による混変調歪やセバレーションの劣化に対して効果的な手法である。
 本機の電源部は、この4個のトランスに加えて、信号系制御用の主にリレー用に使う電源用の専用トランスを備えるため、これも音質に直接関係をもつAC100Vラインの配線が複雑化する難点をもつが、この解決策として、5個の電源トランスとACアウトレット用の6系統のACラインに対応した無酸素銅線使用の6本のAC用コードを束ねた新開発の電源コードが開発され、各電源トランス間の干渉を低減するとともに、電源インピーダンスをも低くしている。また電源プラグは、当然のことながらEXCLUSIVEらしく、極性表示付である。
 MC用昇圧トランスの採用も本機の大きな特徴である。昇圧トランスのポイントは鉄芯にあるが、ここでは独自の53μ厚リボンセンダストをトロイダル型として採用。パーマロイにくらべ広帯域であり、非結晶性材料のような経年変化のない特徴があるl。巻線はφ0・25mm無酸素銅線を2本並列巻としDCRを低くし、MC型独特の低電圧・大電流を活かしている。
 その他、BTS規格の0〜−90dBと−∞〜の40ステップのアッテネーターの採用、新開発のリレーによる入力セレクター、テープ関係などの信号切替、トーンフラット位置でリレーにより完全にトーンコントロールアンプがディフィートするトーン回路、22番線相当の無酸素銅撚線を芯線とし、低容量ポリエチレン絶縁物、同じく無酸素銅線と導電性ポリ塩化ビニール使用の高性能シールド線など、機構面での非磁性材料使用モノコンストラクション筐体、非磁性ステンレスネジなど、単体部品開発から手がけている点は、類例のないものだ。
 ヒアリングは、EXCLUSIVE M5をはじめ、2〜3機種のパワーアンプと組み合わせて使用したが、基本的にキャラクターが少なく、優れた物理特性をベースとしたナチュラルな音が聴かれる。聴感上のSN比に優れ、音場感的な定位やパースペクティブを誇張感なくサラリと聴かせる。M5との組合せでは、全体に滑らかに美しく音を聴かせる傾向を示すが、旧いマランツ♯510では、整然としたダイナミックな押し出しのよい音を聴かせる。
 現代の優れたオーディオ製品に共通する特徴は、これといった個性を誇示する傾向がなく、自然な応答を示すことだが、C5も同様である。いわゆる、シャープな音とか雰囲気のある音という表現は、結果では生じるが、使用条件、使用機器でかなり変化をするため、簡単にC5の音はこうだと判断するわけにはいかない。あくまでナチュラルで、正確な音といったらよいであろう。とくにコントロールアンプで音の差が生じやすいハイレベル入力からの性能が優れているようで、この点はCD、デジタルプロセッサー用として、現代アンプらしい特徴である。

パイオニア S-955III

黒田恭一

ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
特集・「2つの試聴テストで探る’83 “NEW” スピーカーの魅力」より
4枚のレコードでの20のチェック・ポイント・試聴テスト

19世紀のウィーンのダンス名曲集II
ディトリッヒ/ウィン・ベラ・ムジカ合奏団
❶での総奏がふっくらひびくところにこのスピーカーの特徴がありそうである。❸でのコントラバスのひびきが、ひきずることはないが、まろやかで、コントラバスならではのゆたかさが感じられる。❷でのヴァイオリンの音にしても、決してきつくならず、あくまでもやわらかい。❺ではもう少し音場感的なひろがりが示せてもいいとは思うが、さまざまな楽器のひびきのバランスはこのましく示せている。

ギルティ
バーブラ・ストライザンド/バリー・ギブ
❶でのエレクトリック・ピアノの音はいくぶんふくらみすぎの気味がある。❷での声は音像的に多少大きめではあるが、声そのもののなまなましさをよく示す。❸でのギターの音は繊細さという点で不足する。太くくっきりひびきすぎるためである。❹でのストリングスは、ひろがりも充分であり、ストリングス本来のひびきのしなやかさもこのましく示しえている。❺での声も余裕をもって示している。

ショート・ストーリーズ
ヴァンゲリス/ジョン・アンダーソン
このレコードでのきこえ方をとりまとめていうと、力強い音にこのましく対応しながらも、決して表現がごりおしにならないということになる。ただ、ひびきそのものがいくぷん重めなので、❹で求められる疾走感は稀薄である。重層的にかさなる音の感じはよく示している。❺ではもう少しくっきり示されてもいいように思う。ポコポコいう音がどうしてもふくれてしまう。その点が少しものたりない。

第三の扉
エバーハルト・ウェーバー/ライル・メイズ
❶でのピアノの下の音とベースの音とのきこえ方のバランスが大変このましい。❷での提示も自然である。きめこまかい音への対応力がすぐれているために、個々のひびきの特徴をあきらかにできていると考えるべきであろう。❸や❹での高い音も、もう少しきらめいてもいいとは思うが、それぞれのひびきの特徴は提示しえている。このレコードでのきこえ方は、なかなかこのましかったというぺきであろう。

パイオニア S-955III

黒田恭一

ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
特集・「2つの試聴テストで探る’83 “NEW” スピーカーの魅力」より

 ①と④のレコードでのきこえ方がすぐれていた。ふっくらとした音の示し方にきくべきものがあったためといえよう。
 このスピーカーのよさは、神経質にならずにおっとりときけるところにあるようだ。ただこれでさらに、たとえば②のレコードの❸のギターのような音をもう少しシャープに示せれば、魅力は倍加するのであろうと思わなくもない。
 つまり、シャープな音に対しての反応でいくぶん甘いところがあるということである。ただ③のレコードでの❶の金属的な音の特徴も示せていたので、スピーカーそのものはシャープな音に対しての反応力をそなえていると考えることもできる。
 使うアンプやカートリッジで工夫することによって、シャープな音への反応力をますこともできなくはなさそうである。いずれにしろ神経質なひびきを決してきかせないのはこのましい。

マークレビンソン ML-7L + パイオニア Exclusive M5

菅野沖彦

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
特集・「高級コントロールアンプVSパワーアンプ72通りの相性テスト」より

 精緻な音。よく締まったソリッドな音像感、豊かに迫る押し寄せるかの如き力のある音の幕。ディテールの再現も緻密で透徹であった。少々、マーラーには情緒性に乏しい音の世界のように感じられたけれど、立派な音には間違いない。ストラヴィンスキーなどはもっとよいだろうと感じた。ヴォーカルは、透明で淡彩な中に粘りのある不思議な感覚で聴いた。これは男声にも女声にも感じた。これが正確な音色再現かもしれないが……?

クレル PAM-2 + パイオニア Exclusive M5

菅野沖彦

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
特集・「高級コントロールアンプVSパワーアンプ72通りの相性テスト」より

 明晰で、広い拡がりをもったステレオフォニックな響き、鮮かな音色の鳴らし分けは見事といってよい。このマーラーの音としては、やや厚味とこくに欠けるものとはいえ、大変魅力的なサウンドであった。フィッシャー=ディスカウの凛とした声の響きは立派。反面、彼独特の口蓋を生かしたふくらみのある響きは、やや不満がある。つまり、響きに硬さ一色に流れるような傾向があるようだ。ジャズではソリッドで明快な素晴らしさだ。

パイオニア C-Z1a + M-Z1a

黒田恭一

ステレオサウンド 64号(1982年9月発行)
特集・「スピーカーとの相性テストで探る最新セパレートアンプ44機種の実力」より

ヤマハ・NS1000Mへの対応度:★★★
 なめらかなひびきをきかせる。あかるく、あたたかいひびきである。いくぶん力強さの提示に不足がちではあるが、③のレコードでのベースの音がふくらみすぎないところにこのアンプのよさを認めるべきであろう。⑤のレコードでもひびきのデリケートさによく対応できている。
タンノイ・Arden MKIIへの対応度:★★★
 総じて音像が大きくなりがちではあるが、ひびきにきめこまかさがるので提示がごり押しにならないところがこのましい。④のレコードで歌い手たちがマイクロフォンの近くでうたっていることをなまなましく示す。①のレコードでの弦のひびきなどは艶があって美しい。
JBL・4343Bへの対応度:★★★
 スピーカーに、あるいはソースにしなやかによりそうアンプとみるべきであろう。それぞれのレコードのあちあじをこのましくいかしていた。ただ、パワー不足ゆえであろうか、もう一歩踏みこんでの力感にみちた音を望みたくなる。全体的に音像は心もち大きめであった。

試聴レコード
①「マーラー/交響曲第6番」
レーグナー/ベルリン放送管弦楽団[ドイツ・シャルプラッテンET4017-18]
第1楽章を使用
②「ザ・ダイアローグ」
猪俣猛 (ds)、荒川康男(b)[オーディオラボALJ3359]
「ザ・ダイアローグ・ウィズ・ベース」を使用
③ジミー・ロウルズ/オン・ツアー」
ジミー・ロウルズ(P)、ウォルター・パーキンス(ds)、ジョージ・デュビビエ(b)[ポリドール28MJ3116]
A面1曲目「愛さずにはいられぬこの思い」を使用
④「キングズ・シンガーズ/フレンチ・コレクション」
キングズ・シンガーズ[ビクターVIC2164]
A面2曲目使用
⑤「ハイドン/6つの三重奏曲Op.38」
B.クイケン(fl)、S.クイケン(vn)、W.クイケン(vc)[コロムビア-アクサンOX1213]
第1番二長調の第1楽章を使用

パイオニア Exclusive C3a + Exclusive M5

黒田恭一

ステレオサウンド 64号(1982年9月発行)
特集・「スピーカーとの相性テストで探る最新セパレートアンプ44機種の実力」より

ヤマハ・NS1000Mへの対応度:★★★
 みがきあげられた音をきかせた。①のレコードでのヴァイオリンの音には充分ななめらかさがあった。⑤のレコードでの三つの楽器の音色面での、さらに音場面での対比も十全であった。①のレコードでのトゥッティでさらに細部が鮮明になればいうことないのであるが。
タンノイ・Arden MKIIへの対応度:★★★
 ①のレコードでの遠近感の提示はすぐれていた。腰のすわった音をきかせはしたものの、③のレコードではスケール感にいくぶん不足する。④のレコードの音場は狭めだが、⑤のレコードではひろがりが感じられた。⑤のレコードでのヴァイオリンはしなやかでとびきり美しかった。
JBL・4343Bへの対応度:★★★
 すばらしい。①のレコードでのトランペットの直進するひびきの提示は見事である。その一方で④のレコードでは音が織りなす綾を立体的になまなましく示した。③のレコードでピアノによってたたきだされる和音には充分な重量感があった。それぞれのレコードの音の特徴をこのましく示した。

試聴レコード
①「マーラー/交響曲第6番」
レーグナー/ベルリン放送管弦楽団[ドイツ・シャルプラッテンET4017-18]
第1楽章を使用
②「ザ・ダイアローグ」
猪俣猛 (ds)、荒川康男(b)[オーディオラボALJ3359]
「ザ・ダイアローグ・ウィズ・ベース」を使用
③ジミー・ロウルズ/オン・ツアー」
ジミー・ロウルズ(P)、ウォルター・パーキンス(ds)、ジョージ・デュビビエ(b)[ポリドール28MJ3116]
A面1曲目「愛さずにはいられぬこの思い」を使用
④「キングズ・シンガーズ/フレンチ・コレクション」
キングズ・シンガーズ[ビクターVIC2164]
A面2曲目使用
⑤「ハイドン/6つの三重奏曲Op.38」
B.クイケン(fl)、S.クイケン(vn)、W.クイケン(vc)[コロムビア-アクサンOX1213]
第1番二長調の第1楽章を使用

パイオニア S-922II

井上卓也

ステレオサウンド 64号(1982年9月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 S922は、パイオニア独自の新素材であるカーボングラファイトをウーファー振動系に初採用したパッシヴラジェーター方式採用のフロアー型システムであるが、S955IIIと同様な手法により大幅な改良を受けて、S922IIとして新発売されることになった。
 パッシヴラジェーター方式は、ドロンコーンをもつバスレフ型として、1935年に有名な音響学者H・F・オルソンによってパテントがとられた方式である。この方式は、ウーファー振動板と同サイズの振動板を、ボイスコイルと磁気回路を省いてエンクロージュアに取り付けて低域レスポンスを向上させるタイプで、ウーファーのエンクロージュア内側の音圧により振動板が駆動されるためドロンコーン(怠けもののコーン)方式という別名がある。
 ユニット構成は、低域に26cm口径、中域に6・5cm口径のコーン型ユニットを使い、高域に新開発ベリリウムリボン型ユニットを採用した3ウェイに、38cm口径バッシヴラジェーターを加えた方式である。
 コーン材料は、中域、低域、パッシヴラジェーターともにパイオニア独自のカーボングラファイト振動板採用で、低域はS922より20%磁束密度を向上した磁気回路、ガラス繊維強化積層ポリイミド・ボイスコイルボビン新採用で、耐熱性と弾力性を高め、さらに新開発ダイナミックレスポンス・サスペンション採用でリニアリティを向上、高耐入力、過渡特性に優れ、解像度の高さが特長である。中域は低域同様のボイスコイルボビン材採用。高域はリボン材料の変更が主な改良点だ。
 バッシヴラジェーターは、低域ユニット口径より大きい38cm口径採用が特長で、同口径振動板を使うタイプに比べ重低音再生を狙った設計で、オルソンの方式を発展させた、近代スピーカーシステムによく使われるタイプである。ここでの改良は、コーン支持部のワイヤーサスペンション採用である。
 S922IIは、S922に比べシャープで引き締まったソリッドな音が目立つ。低域はパッシヴラジェータ一方式としてはタイトで、ローエンドでパッシヴラジェーターが効果的に働く。中域はクリアーでコントラストがクッキリとつき、高域は華やかでシャープだ。表情は少し硬いため、柔らかく伸びやかなアンプの併用が決め手だろう。

パイオニア S-955III

井上卓也

ステレオサウンド 64号(1982年9月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より

 パイオニアのS955は、国内製品中で際立った、ユニークで高性能なユニット構成をもつ高級スピーカーシステムである。1977年に最初のモデルがCS955として発表されて以来、その改良モデルS955を経て、すでに5年間のロングセラーを誇る優れた製品であるが、今回、来るべきデジタル化されたプログラムソースによる高品質プログラムソース時代に対応した新製品S955IIIに発展して新発売されることになった。
 システムとしての基本構成は、36cmウーファーをベースとし、これにユニークな構造のドーム型スコーカーと特徴的なリボン型トゥイーターの3ウェイユニットをバスレフ型エンクロージュアに組み込んだタイプで、CS955以来変化は見られないが、それぞれのシステムが開発された時点での時代の要求するサウンドに対応して、システムとしての音の狙いにかなりの変化が見受けられる。
 ちなみに、パイオニアが目指した各システムの音の狙いを比較してみると、CS955では繊細さとスケール感の融合、S955は、これをベースとしたエネルギー感の強化が新テーマであった。今回のS955IIIでは、最新のプログラムソースに対応したタイトでパワフルなサウンド、と大幅に変更されている。
 基本的にスピーカーシステムは、ユニットの種類や構成、それにエンクロージュアの外形寸法などが同じであってもテーマとする音の狙いにより、最終的なサウンドキャラクターをかなり自由にコントロールできるユーテリティの広さをもっている。したがって、最適ユニットやネットワーク定数やタイプ、エンクロージュア材料とその構造などの選択には、常に音の狙いが重要な条件として行なわれ、その無限ともいえる組合せの結果から、最終的なそのシステムのサウンドが結果として創造されることになる。このシステムアップの技術や一般的には考えられない程度のミクロの次元でのノウハウ量が、各メーカーそれぞれの独自の世界であり、いわゆるメーカーのサウンドキャラクターができる理由で、新製品を眺める場合に大変に興味深いところである。つまり、逆にいうと、システムをチェックしてみれば、実際に試聴をする以前に大体どのような傾向のサウンドを聴かせるかは、ある経験をつめば自動的に類推することができることになる。
 S955IIIの構成ユニットからその変化を眺めると、ウーファーは、現在入手できるサイズとしては第2位にランクされる外径200mmの大型フェライト磁石と厚さ10mmのT型ポールを採用して磁気回路の飽和を利用した低歪磁気回路やコーン材料、形状はCS955以来同じだが、サスペンション関係は、いわゆるダンパーが従来の平織り布ダンパーから新開発の二重綾織り布ダンパー採用のダイナミックレスポンスサスペンションに改良され、低損失、ハイストローク化が図られた。また、ボイスコイルボビン材料は、CS955のプレスパン、S955のクラフト紙からガラス強化ポリイミド樹脂積層板に変り、耐入力、過渡特性を向上させ、分解能の高いダイナミックなベーシックトーン再生が狙われている。
 外側に独自のワイヤーサスペンションを採用した特徴のあるベリリウム振動板採用のドーム型スコーカーは、まず、ダイアフラム材料がCS955でのベリリウムとアルミの二重構造からS955でのベリリウムのみの軽量化を今回も受け継ぐ。ボイスコイルボビン材料は、ウーファー同様の新素材で耐入力を50%以上向上する設計だ。なお、磁気回路の外径156mm大型フェライト磁石は、S955時点で厚みを従来の22mmから25mmに増し、強化されている。
 リボン型トゥイーターは、CS955でのPT−R7相当、S955での磁気回路を強化したPT−R7A相当タイプから、今回は、振動板材料がアルミ系から新しくベリリウムに変更されたPT−R7III相当品が採用され、独特の繊細さに加えて芯のある反応の速い魅力が加わった。
 ネットワークは、想像以上に構成、部品、取付場所などが音質を大きく左右する重要なポイントであるが、意外に注目されない部分でもある。今回、S955IIIでは新しく並列・平衡型が採用されている。このタイプは600Ωラインに代表される伝送系には標準で、特に珍しいタイプではなく、スピーカーシステムへの応用も一部では早くから試みられ、特に音場感的情報量の多さやダイナミックな表現力などの魅力で、アマチュアレベルでは使われていたが、製品として採用されたのは今回が初めてである。
 エンクロージュア関係はバスレフ型のダクト形状の変更が主で、従来の折曲げ型から平らな矩形断面をもつ直線型に変っている。なお、新システムの定格上の特徴は、最大入力と高・中域間クロスオーバーの変更である。
 試聴システムはプリプロかそれ以前の実験室段階の製品で、詳細な試聴リポートは避けたい。基本的な音の狙いであるタイトでパワフルな方向への展開は明確で、従来とは印象を一変した大幅なサウンド傾向の変更が感じられた。潜在的能力は充分にあるシステムだけに、その完成された姿での結果を期待したい注目のシステムである。

パイオニア PL-50LII

パイオニアのアナログプレーヤーPL50LIIの広告
(モダン・ジャズ読本 ’82掲載)

PL50

パイオニア H-Z1

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 超高性能部品を最大限に投入し、独自のMC用スーパーリニアサーキット採用の無帰還ヘッドアンプ。ゲインは2段切替、負荷抵抗切替は4段切替の汎用型。
 帯域バランスはナチュラルだがトランスとは一線を画したレスポンスだ。音色はやや暖色系に思われるが、明るく反応の速いタイプである。このアンプの最大の特徴は繊細さとダイレクトなストレートさを両立させた点で、情報量が多く、トランス独特の力強く分離のよい低域から中域と、爽やかに伸びたディフィニッションの優れた高域が聴かれる。
 カートリッジの対応の幅は広く、それぞれの特徴を素直に出すが専用コードでは全体に美化しすぎるようだ。最適のコードを選べばさらに好結果が期待できる。

パイオニア Exclusive ED-915, Exclusive EL-403

パイオニアのスピーカーユニットExclusive ED915、Exclusive EL403の広告
(スイングジャーナル 1981年9月号掲載)

EL403

パイオニア M-Z1

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 あらゆる点でユニークなパワーアンプである。独自の回路により、NFBを避けて音の鮮度を図った発想だ。60Wのモノーラルアンプで、そのボディは、プリアンプ、プリプリアンプと共通のタテ長のプロポーションでシステムイメージをもたせている。プリアンプでは不自然さを指摘したそのプロポーションも、パワーアンプでは問題するに当るまい。ガラス越しに見えるピークインジケーター、トランスも面白い。

音質の絶対評価:9

パイオニア C-Z1

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 Zシリーズとして登場した、ノンNFBアンプのプリアンプ。パワーアンプM−Z1と共通のプロポーションにまとめたシステム・デザインだが、必ずしも、これが使いやすさにつながるともいえないようだ。ガラス越しにブロックダイアグラムが見え、これにダイオードが点灯するというマニア好みの味つけは楽しいし、好ましい。ヘアライン・ブラックフィニッシュが、少々緻密感とデリカシーを損なっているのが惜しい。

音質の絶対評価:8.5

パイオニア Exclusive M4a

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 M4をリファインしたモデルなので、マーケットにおけるキャリアの長い高級アンプ。A級で50Wのパワーだが、実力は相当なもの。緻密で美しい仕上げは、内外ともに高い次元の感じられる製品である。木枠に入った落着いたムードは、日本間においても違和感がなさそうなもので、いかにも日本の製品らしいキメ細かさをもっている。A級のため発熱が相当なもので、冷却ファンの音が気になるのが惜しい。

音質の絶対評価:8.5

パイオニア Exclusive C3a

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 今やクラシックといってもよい、オーソドックスな操作レイアウトをもったコントローラーで、その仕上げは緻密である。パーツ類も厳選され、細部まで丹念に作られた高級品らしい風格をもっている。ただ、製品として強い個性的魅力に乏しく、やや凡庸な印象が、このアンプの存在を内容に比して地味なものにしてきたようだ。オリジナル設計の古さは否定できないが、リファインされたa型は現役として立派に存在理由をもつ。

音質の絶対評価:8

パイオニア M-Z1

菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 Zシリーズのパワーアンプで、独特の奥行きの深いプロポーションを共通してもっている。ノンNFB思想によって開発されたのが、このZシリーズ共通のコンセプトである。このアンプも、実際上はNFBループをもたないストレートアンプであって、音もきわめて直裁感に満ちていて、屈託のないものである。純Aクラスアンプで、出力は大きくないが、音の力感は充実している。独創性と完成度が、高い次元で一致した優れた製品だ。

パイオニア S-933

菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 ブックシェルフとしては高級大型システムに属する。32cmウーファー、6.5cmドーム型スコーカー、リボン型トゥイーターの3ウェイ・3ユニット構成をとり、エンクロージュアはバスレフタイプである。朗々とした明るい響き中にも、緻密な音像のエッジが明快に再生される。コーン、ドーム、リボンと各ユニットの構造のちがいを、巧みに調和させ、質感もよく統一されているのが見事である。

パイオニア CT-970

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 基本的な性能をCT770におき、内容を高級機にふさわしく一段と充実させた本格派のカセットデッキである。オリジナリティが豊かで使いやすく優れたデザインは、視覚的にも実用上でも、従来のカセットの範囲を超えたもので、リールが回転し走行状態を示すディスプレイは視覚的にも楽しい。音質はCT770の上級機らしく同じラインではあるが、音の粒子は一段と細かく滑らかになり、分解能の高い中域から高域は類例のない見事さだ。

パイオニア CT-770

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 パイオニアのメタルテープ対応第二世代を代表する、非常に意欲的な開発方針に基づいたカセットデッキだ。デュアルキャプスタン方式走行系に、リボンセンダストヘッド採用の3ヘッド構成AUTO BLEを加えた性能と機能は、この価格帯では他の追従を許さぬ実力を備える。テープとの対応性は幅広く、テープのキャラクターに適度にデッキの音を加えて聴かせるタイプであり、この価格帯のリファレンスデッキである。

パイオニア PC-70MC

パイオニアのカートリッジPC70MCの広告
(別冊FM fan 30号掲載)

PC70MC