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パイオニア Exclusive M4

岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 良いアンプとは、いったいなんだろう。「良い」という意味は多くある。電気的特性の良さはアンプにとって最低条件だとよくいわれる。電気的特性が良くないのでは、良い音がするわけないともいわれる。しかし、逆に良い音のアンプなのに電気的特性は現代の最新普及価格帯の総合アンプに劣るものもある。いや最近の5万円台のアンプは歪0.1%を下まわり、海外製のひとけた上の優秀なアンプよりも性能表示は優れている。しかし、音は必ずしも電気的特性に伴わない。今日のアンプの音が悪いというわけではないが、電気諸特性がずっと良いのに音を聴くと大したことないのも少なくないのである。
 ところで、こうして記していると結論が出なくなってしまいそうだが、ただアンプをみつめるのでなくて、スピーカーを接続して初めてシステムとして動作することに目をつけて、スピーカーの方から逆に見た方がよいのではないかと思われる。つまりスピーカーをよく鳴らすことが、よいアンプの条件として判断しようというわけだ。
 ところで、アンプ以上に良い悪いの判断が難しいのがスピーカーだが、高価な高級品ほどよく鳴らすのがむずかしいものである。わが家には昔作られた、昔の価格で1000ドル級の海外製高級システムから、今日3000ドルもする超大型システムまで、いくつもの大型スピーカーシステムがある。こうした大型システムは中々いい音で鳴ってくれない。トーンコントロールをあれこれ動かしたり、スピーカーの位置を変えたり。ところが、不思議なのは本当に優れた良いアンプで鳴らすと、ぴたりと良くなる。この良いアンプの筆頭がパイオニアのM4だ。このアンプをつなぐと本当に生まれかわったように深々とした落ちつきと風格のある音で、どんなスピーカーも鳴ってくれる。その違いは、高級スピーカーほど著しくどうにも鳴らなかったのが俄然すばらしく鳴る。昔の管球式であるものは、こうした良いアンプだが、現代の製品で求めるとしたらM4だ。A級アンプがなぜ良いか判らないが、M4だけは確かにずばぬけて良い。

パイオニア CS-T5(組合せ)

岩崎千明

コンポーネントステレオの世界(ステレオサウンド別冊・1976年1月発行)
「スピーカーシステム中心の特選コンポーネント集〈131選〉」より

 パイオニアのブックシェルフ型の新たな流れがこのCS−T5、T3だ。今までにない積極的な前に出る音をはっきりと狙い見事な形で聴く者に迫るサウンドがこの新シリーズの大きな特長で、今までのパイオニアのスピーカーになかったサウンドでもあるのだ。
 このスピーカーが加わることの音楽へのアプローチの拡大ははかり知れぬ。
 もし、このスピーカーをジャズ向きだなどと評するものがいるとしたら、それは音楽の真の聴き方を知らないといわれそうだ。つまりあらゆる音楽が、それを知れば知るほど身近に欲しくなるものだ。そうした欲望はなにもジャズに限ったことでは決してない。
 つまり、オーディオマニアが音楽ファンになったときに欲しくなる音をCS−T5は提供してくれる。
 その鳴らし方はそれこそ聴き手の求め方次第だが、最もオーソドックスな形としてSA8900またはSA9800というこの一年間ベストセラーを続けた製品を指定しておこう。パワーのゆとりがあればトーンコントロールで望む音へのアプローチは大きく拡大されるし、しかもこの入手しやすいスピーカーの価格を考えると、好ましい価格のアンプだから。

スピーカーシステム:パイオニア CS-T5 ¥29,800×2
プリメインアンプ:パイオニア SA-8900 ¥78,000
チューナー:パイオニア TX-8900 ¥65,000
プレーヤーシステム:パイオニア PL-1250 ¥45,000
カートリッジ:ADC Q32 ¥9,000
計¥256,000

パイオニア CS-T5

瀬川冬樹

ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より

 CS-T3よりはよい面を持っているがそれにしても、この音色は、私にはどうも〝尋常ならざる〟という感じで、自分自身にとって最も縁の遠いジャンルの音楽を考えてみても、こういうスピーカーの音が、どういうジャンルの音楽の再生に最も適しているのか、どうも理解の範疇を越えてしまっている。イギリスKEF社長レイモンド・クックの表現を借りれば日本のスピーカーの音は攻撃的(アグレッシヴ)だそうだが、クックほどは国産のスピーカーの音を異質には思わない私の耳にも、CS-T5やT3の音は、相当にアグレッシヴにきこえる。T3同様に、低めの台に乗せ、壁から背面を20~30センチ離したときの音が最もバランス的には納得がいった。レベルセットは中音、高音とも5の位置より動かさない方がよさそうだ。ステレオの音像のならび方もCS-T3同様に、平面的でしかもかなり音を太く表現する。したがって定位はややあいまいになる。腰の強い、線の太い、強情な音、というべきか。

採点:67点

パイオニア CS-T3

瀬川冬樹

ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より

 同クラスの他社製品と比較して飛びぬけて能率がよく、ふてぶてしいほどアクの強い音を鳴らす。パワーをぐんぐん加えても腰がくだけない。きわめて攻撃的な音である。とうぜん弦や女性シンガーのやわらかな艶っぽさ、色っぽさなどという要求をまるで受けつけない。ためしにトゥイーターを絞りこんでみたがこれはウーファーそのものの性格で、むしろ逆にレベルセットを目盛4ぐらい(やや強調ぎみ)にセットしてこのハードな音色を徹底させてしまう方が救われる。高め(50cm)の台に乗せるより、ブロック1個分ぐらいの低い台の方が音が落ちつくが、それで本質が変るわけではなく、クラシック系は敬遠したいスピーカーだ。そういう音のわりには、音像の並び方が一列横隊的で、平面に投影されたようなきこえ方をする。二万円しか出せないユーザーはこんな音を好むだろう、みたいな作り方にはあまり好感が持てなかった。ロックやソウルの愛好家が、ほんとうにこういう音で満足できるのだとしたら、私は考え方を変えなくてはならないのだが。

採点:65点

パイオニア CS-T88

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 T66と並べて鳴らしてみた。低音から高音までの全域にわたってバランスのいい、やかましさのない音質は明らかに同じ兄弟だが、そこに練り上げられた音のまろやかさ、スケール感、音像の再現の確かさが加わって、すばらくしよくこなれた、完成度の高いスピーカーに仕上っていることが感じられる。総体にいわゆるカマボコ特有の、つまり中域の密度の高いそして高域のオーバートーン領域にかけてやや抑えこんだ感じの、丸味のある緻密な音で、それはことにピアノの音など、打鍵の音に余分な夾雑音をつきまとわせたりしないで、コロンと鳴る丸味のあるタッチが気持よく鳴ってくれる。ヴォーカルも、上ずったりハスキーになったりせずに、キメこまかくニュアンスもよく出てくれる。ただ、木管の音や肉声の持っている一種あたたかく湿った、ふくらみのある艶、のような要素が、どうも十分に鳴ってくれるとはいえず、そこがもうひとつ何か足りないと感じる要素のひとつかもしれない。レベルセットは指定どおりが最良。高めの台が良好。

パイオニア CS-T66

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 音のバランス、という点ではこの価格帯の製品としては欠点が指摘しにくいほどよくまとまっている。芯の強い、中味の濃い音質ともいえる。むろんキャビネットの大きさやユニットの構成から考えても、スケール感など十分とはいいかねるが、あくまでも価格とのかねあいで点数の上がるうまい作り方だ。しかし、総体には表情がやや硬い。音の余韻あるいは響きをややおさえすぎたような感じがあって、良くいえば抑制が利いているが、しかしもう少し柔らかく楽しい表情が生きてきてもよさそうに思う。たとえば金管など太さも腰の強さも適度に漂う感じが出にくい。総じてクラシック系の場合、目の前に幕を一枚引いたようなもどかしさがあり、たとえばダイヤトーン28Bと比較すると、28Bは突然眼の前がひらけたように爽やかに感じられる。レベルコントロールをパイオニアの指定よりも、高音で一目盛上げ、中音で一~二目盛おさえる方が、クラシック系では好ましかった。

パイオニア Exclusive C3

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 海外の高級品と比べてもひどく高価で、単純に価格、性能比を考えれば割高には違いないが、長期に亘ってモニターした結果、音質、操作性とも相当に優秀だと思った。

パイオニア SC-3000

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 いまとなっては回路構成やその他に少々古めかしさが感じられるが、内容や仕上げのよさを考えると、いまやこの価格では単体の高級プリアンプとしては格安の印象を受ける。

パイオニア SX-434

岩崎千明

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 市販レシーバー中のスーパーベストセラーというべき実績にのって、デザインを改めて豪華になったのも商品としての魅力を減らさぬメーカーの偉大なる努力の賜だ。

パイオニア SX-737

岩崎千明

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 レシーバーをステレオの入門用としてのコンポと考えるならば、価格の割に豊富で高い内容はまさにお買徳品。つまり初心者にも納得できる良さ、バランスのとれた製品だ。

パイオニア SA-8900

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 音の楽しさをストレートに表現する感じで、入門者向きに説得力を持つ音質。反面、繊細かつ緻密な表情が出にくいが、のびのびと大掴みで気持のいい響きが特長だと思う。

パイオニア TX-9900

井上卓也

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 一般型とシンセサイザー型との中間的な同調フィーリングをもったユニークな製品である。同調指示メーターの動き、同調ツマミの感触などは、特長があり、良い出来栄えだ。

パイオニア SX-535

井上卓也

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 多角的なユーザーの要求を巧みに導入して作られた機種である。セパレート型やプリメインアンプなどとは異なった生活のなかのハイファイといった使い方がふさわしい。

パイオニア PE-16

井上卓也

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 外観からは、かなりハイファイな音が出るように思われるが、予想外に、中低域ベースの、まろやかな音だ。JBLサウンドのベースとなった機種だが高域の補正が必要である。 やや硬質なスッキリとした音をもったユニットである。それだけに、エンクロージュアは大きめなバスレフ型か、最近流行のバックローディングホーン型が好結果をもたらす。

パイオニア Exclusive M4

菅野沖彦

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 Aクラス動作のアンプで、その音質は非常に品位が高い。数あるパワーアンプの中でも一際瑞々しい音が得られる魅力的な製品だ。簡素で高い仕上げの外観も素晴らしい。

パイオニア PL-1400

菅野沖彦

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 PL1200Aの高級版1400は、コンポーネントシステムを組む上での心臓部として信頼できる性能とメカニックなデザインの魅力をもったマニア好みの好製品だ。

パイオニア SA-9900

岩崎千明

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 プリメインとしてひとつの上限界にあるが、需要層のレベルの高さも意識して作られたシリーズ最高製品。あまりのまっとうな音は、ちょっと物足りないほどだが最高品質。

パイオニア PL-1200A

菅野沖彦

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 DDモーターを使ってローコストで出現し話題になっただけあって、巧みなシステム化が生きる実用価値の高い製品。広く一般層にすすめられる。デザインも立派に見える。

パイオニア SA-6300

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 聴感上の音質もパワー感も、この価格とは思えない充実したもの。使用頻度の少ない機能を思いきりよく省略して、実質的な内容にふりむけた設計が成功の原因。

パイオニア SA-9800

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 8900のシリーズとは一線を画して、メカニックさ、ハイパワーの凄味のようなイメージをうまく表現したコンストラクションに魅力を感じる。チューナーも秀逸。

パイオニア SA-8800

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 このクラスとしては、音に重量感もあり、スケールも十分。ややラフなタッチながらまとまりのよさで聴かせる。ただしバランスつまみの安っぽい光沢はいただけないが。

パイオニア TX-8900

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 8800のグレードアップモデル。中~高級に位置するチューナーの中で、回路構成も操作性も音質も、このランクの中では際立った良さを示す。新しい感覚のデザインに好感。

パイオニア Exclusive M4

井上卓也

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 聴感上ワイドレンジを誇るタイプではないが、透明感のある、やわらかい甘い音が蠱惑的である。各種のスピーカーシステムとも弾力性をもって適合し特長を引き出すのがよい。

パイオニア TX-8800

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 ダイアル面の表現に、類型のなかった新しいイメージを出すことに成功した注目すべきデザイン。むろん性能対価格比も良好。チューナーのイメージを変えた点を評価したい。

パイオニア TX-6300

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 チューニングメーターを1個にするなど、必要最少限度の機能におさえて、性能を落さずにコストダウンという、SA6300と同じ思想が成功した文句なしのベストバイ。