Category Archives: スピーカー関係 - Page 58

ダイヤトーン DS-25B

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 いわゆるコンポーネントシステムに使うスピーカーシステムとしては、価格的にローエンドの位置にあり、見落としやすい製品である。ダイヤトーンが伝統を誇る、コーン型ユニット採用の2ウェイ方式、バスレフエンクロージュア入りのシステムだけに、バランスの良いレスポンス、明るく、活き活きとした表現力は、価格からはオーバークォリティであるともいえる。シャープな定位をもつ利点を生かしてテープのモニター用にも使える。

トリオ LS-505

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 このシステムは、大口径軽量コーン紙採用のウーファーをベースとした3ウェイ方式であり、トゥイーターにリングダイヤフラムを使ったホーン型ユニットが採用され、低域との音色上のバランスを巧みにコントロールしているのが、システムとしての完成度を一段と高めているようだ。

ヴァイタヴォックス CN191 Corner Horn

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 いまの私には、これを鳴らす理想的なコーナーを整えるという条件を満たすことができないからあきらめているが、せめていつかは、この豊潤で渋い光沢のある独特の音質をわがものにしてみたいという夢を持っている。いまやこれだけが、現行製品の中で良き時代を残した最後の生き残りなのだから。

ダイヤトーン DS-35B

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 本機は構成面からはDS28Bの後継機としてつくられたようで、ユニットの物理的な特性面、とくに低域の歪を減らす目的で、従来担い低歪化対策がおこなわれているのが特長である。低域の歪が少ない利点は、全帯域の音をナチュラルなものとし、アトラクティブではないが使いこんで良さがわかる音である。

セレッション UL6

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ローボーイ型プロポーションをもつ小型なシステムである。構成は、セレッションの伝統を感じさせる、いわゆるドロンコーンを使った2ウェイ方式だが、このシステムの音色は、かなり明るく軽やかである。小型システムの弱点である許容入力は、かなり大きく、のびやかに飽和感のない音を聞かせるあたりは、新しいスピーカーらしい魅力である。

アルテック A5

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 会議室や中程度のホール、またはそれ以上の広い会場で、できるだけ無理せずに楽しめる音を鳴らしたいというような条件があれば、アルテックを必ずしも好きでない私でも、A5あたりを第一にあげる。以前これを使ってコンサートツアーを組んで大成功を収めたことがある。私自身は家庭用とは考えていない。

デンオン SC-104

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 このところ輸入されたシステムを見ても、デンマーク・ピアレス社製のユニットを採用したシステムが急速に多くなっている。本機もピアレス社製ユニットの採用が特長であり、リーゾナブルなコストで、ヨーロッパ製品の魅力を味わえるのが楽しい。比較試聴では目立たないが、自分の部屋で好ましさがわかるタイプ。

パイオニア CS-955

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ある販売店の店頭で、ばかに素直な感じの美しい音が聴こえていたので注意してみたらCS955が鳴っていた。が、私のデッドな部屋で音量をおさえて鳴らしたときは、もう少し響きに豊かさがあった方がいい、とも感じた。それにしても、失礼ながらパイオニアのスピーカー久々のヒットといってよかろう。

オンキョー Scepter 10

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ユニットの基本設計や全体の構成に、JBLを手本にしたふしはあるにしても、イミテーションの域を脱して明らかにオンキョーの新シリーズの個性に仕上って、計測上も聴感でもフラットなワイドレンジ型で、音のクォリティもしっかりしている。音にもっと明るい弾みがあればなお良い。

タンノイ Devon

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 外形はEatonよりほんのひとまわり大きいだけだが、ユニットが12インチ型になっているせいか、音のスケールが大きくなり、低音の量感も増し、そのためかEatonよりも高域を素直に延ばしているので総体のバランスははるかによく、モニター的な聴き方・使い方にも十分に耐えるクォリティを持っている。

KEF Model 104

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 おそろしくデリケートで、とちらかといえばやせ型で潔癖症といった感じの音質だが、しかし豊かであるべきところは十分に豊かで、鳴り止む前の音の余韻の美しさはみごとといいたいほどだ。ただ、パワーに弱いという面は弱点には違いない。新型のABではその面を含めて、音のバランスもさらに改善されている。

タンノイ Eaton

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 タンノイのシリーズ中、最も小型な、低価格製品ながら、音は、まぎれもないタンノイである。重厚で品のいい、落ち着いた雰囲気を漂わせる。25cm口径の同軸型コアキシャル・ユニットを使ったシステムで、バランスがよく、明瞭度の高いスピーカーだから、モニターとしても優れたもの。中身の濃いお買徳品だ。

ヤマハ NS-690II

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 日本の音、と表現してきたNS690の改良型で、一段の芯の強さ、張りが加わった。特有の美しさは、さらっとして暖かく、穏やかなサウンドを特長としている。どちらかといえば、淡彩で,油のようなこくはない。バランスはじつによくとれていて、3ウェイのコントロールは見事である。

ビクター SX-55

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 中級機の価格帯では、今やユニークな存在である完全密閉型エンクロージュア採用の、オーソドックスな3ウェイシステムである。新製品らしく音色は明るく、クリアーであり、低域の量感は密閉型ならではの厚みがある。SX−3以来のキャリアを活かした、いわば伝統的な利点がよくあらわれたシステムだ。

トリオ LS-505

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 かなり、個性をもった音で、好みの分れる製品だと思う。とにかく、前へ前へ音が張り出してくるので、欲求不満はない。しかし、決して貴品のある音ではないのである。このあたり、好みの音楽によって評価が分れると思うのだ。肉質の、弾力性に富んだ音は、血の通った魅力だが、センスと品位の高さがもう一つ。

サンスイ SP-L150

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 Lシリーズ中では、中間位置にあるシステムである。性質は、シリーズ3モデル中ではもっともマイルドで、潜在的なクォリティの高さがトータルの音を支持しているような大人っぽさが特長である。音色は明るく、適度に厚みがありニューミュージックからクラシックにいたる幅広いジャンルに反応を示す。

ダイヤトーン DS-35B

 菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

ダイヤトーンらしい、明晰な再生音に、かなりのスケールの大きさが加わって、余裕のある再生音を楽しめる。低音が充実して、豊麗でありながら、中高域の明瞭さを、いささかもマスクしていない。音像の明確な、しかも、位相差による空気感をもよく再現する優秀なもの。やや無機的な響きがなくもないが──。

パイオニア CS-616

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 2ウェイ型のCS−516と、3ウェイ型のこのCS−616の、いずれを選ぶかとなると、一般的には聴感上のバランス感からCS−516が選ばれるだろう。しかし、中域のレベルを少し下げたときのCS−616は、さすがに3ウェイらしく、中域が充実し、明らかに1ランク上の音を聴かせる。

オンキョー M-6

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オンキョーの異端児的存在のスヒーcarで、実に積極的な表現力をもったもの。31cm口径のウーファーを基にした2ウェイだが、2ウェイらしい音の張り出しが魅力である。どちらかといえば、ジャズ、ポピュラー系のレコード再生に向いている。これに端正さと繊細さがプラスされればオール・マイティだが──。

ダイヤトーン DIATONE F1

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 思い切りのよい独特なデザインを採用したスピーカーシステムである。しかし、構成面はオーソドックスなコーン型ユニットを使う2ウェイ方式であり、高能率なシステムである。音色は明るく伸びやかであり、スケールも十分にある。とくに、しなやかで反応が速いトゥイーターは、見事な音を聴かせてくれる。

パイオニア CS-516

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 従来のパイオニアのサウンドイメージを完全に覆した新鮮な音をもつ製品である。表現は線がシャープで鋭角的であり、細部にこだわらず、割り切ったストレートさは、いわば未完成な爽やかさである。オーディオは、とかく密室的になりやすいが、このシステムの明るい外向性の音は、健康そのものである。

ヤマハ NS-L225

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 3ウェイ構成のNS−L325を2ウェイ構成としたシステムだが、トゥイーターはコーン型とドーム型の特徴を備えた、やや特殊なユニットに変更されている。低域は量感が豊かであり、高域もクリアーで、音の鮮度はL325に勝り、滑らかでよくコントロールされた帯域バランスが、この製品の特長である。

ジョーダン・ワッツ Jumbo

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 小口径メタルコーンと独特なワイヤー支持による振動板をモジュールとしてまとめた全域型ユニットは、現在でもひときわ輝く存在である。システム中で最も小型のこのジャンボは、モジュールのシンプルでユニフォームな音の魅力を聴くのに最適であり、オーラトーン的にも使える十分な性能を備えている。

ビクター SX-55

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ビクターのブックシェルフ型は、主流を占めるラインナップに完全密閉型のエンクロージュアを採用している点に特長がある。
 今回発表されたSX55は最近のこの種のシステムがバスレフ型エンクロージュアを採用する傾向に反し、完全密閉型の特徴を活かしながら、より音色を明るくする方向で開発されている。ユニット構成は、上級モデルのSX7/5と同様に、3ウェイ方式であり、30cm型ウーファーには、SX7と同様にコニカルドームが付いたコーンを採用しているのが目立つ。スコーカーとトゥイーターは、ソフトドーム型で、このタイプの利点である指向特性が優れ、音が緻密であることを活かしながら、明るく、伸びやかな音とするために、振動板材質をはじめユニット全般にわたり再検討が加えられているようだ。なお、スコーカー、トゥイーターともに、振動板の保護を兼ねた、放射状に置かれたフィン型のディフューザーが採用されている。また、発表されたインピーダンスが4Ωであることは、実際の使用では見かけ上の出力音圧レベルを上げるために効果的と思われる。
 聴感上での能率は予測したようにかなり高く、音に一種の精気を感じさせている。各ユニットのつながりはスムーズで、完全密閉型らしい厚みのある低域をベースとして、緻密さがありスッキリと抜ける中音、高音がクォリティの高さを感じさせる。効果優先型の音でないのが好ましい。

JBL D44000 Paragon

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 永いあいだこのスピーカーのことを、私は、〝素晴らしい音の出る豪華な家具〟というニュアンスで書いてきた。ところが、私の最も尊敬する一人の愛好家が、一昨年パラゴンを入手し、それ以来おどろくべき感覚でこれを調整し込んだのを聴くに及んで、パラゴンには、独特の濃厚かつリアルな音の味わいがあることを知った。ただ、その面を抽き出すことは尋常ならざる熱意と、研ぎ澄まされた感覚の持続が要求される。