オルトフォンのトーンアームRS212Bの広告(輸入元:オーディオニックス)
(スイングジャーナル 1972年5月号掲載)
Category Archives: アナログプレーヤー関係 - Page 60
オルトフォン RS212B
マイクロ MR-211, MR-411, MR-611
サンスイ FR-2060, FR-3060
パイオニア PLC-61
ラスター GST-1
ヤマハ YP-700
岩崎千明
スイングジャーナル 5月号(1972年4月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より
ヤマハのプレイヤー、と聴いて、昔のプロフェショナル仕様のプレイヤーを思い浮かべた方がいたら、それは、本格派のベテランマニアに違いない。モノーラル時代の盛んなりし頃、たしか30年ごろだったと記憶するが、リムドライブ型フォノ・モーターと、例の長三角形のオイル・ダンプド・ワンポイントサポート方式のアームを組合せた、プレイヤーをヤマハ・ブランドで市販した。高級マニアのひとつの理想が、このプレイヤーに凝縮され息吹いていた。このプレイヤーを手がけたのは現在のティアック、東京電気音響のさらに前身であったのだが、放送局のモニタールームなどにあったレコード再生機のイメージがそのまま市販品として再現されていた。形だけではなく、その性能も、規格もプロ用に匹敬して今日において歴史に残る名作と謳われるべき高性能機種であった。
今、ヤマハのプレイヤーを前に置いて、かつての名作を思い浮かべる時、眼の前にあるプレイヤーは、昔のものとはイメージすら全然異なるものであるのは確かだがそれはそのまま我国のハイファイの推移を具象化した形で示していることを感じた。
かつて、ハイファイは一般の音楽ファンにとって高嶺の花でしかなかった。
今日のように、多くのファンやマニアの間にオーディオが定着した現実と、ヤマハというブランドがオーディオ産業の奈辺に存在するかに思いをいたせば、この新型プレイヤーの外観と、志向する性能が、昔日と全く異なるのはしごく当然といえよう。購買層ファン自体が、大きく変ったのである。共通点はただひとつ、ターンテーブル上のゴムシートのパターンだけだ。
新製品YP700は、セミ・オートマチック・プレイヤーである。つまりレコードの音溝の上にアームを位置させてプレイ・ボタンをおせば、アームは静かにレコード上におり、演奏が終われば、アームは上って静かに定位置に戻りレスト上に止る。
この新製品がセミ・オートマチック・プレイヤーであるということで、現在のヤマハの狙っている層が、昔日のように一部の超高級マニアではなくもっと若い広い層を考えていることが判ろうというものである。
ターンテーブルは今日では高級品としてオーソドックスなべルト・ドライブ方式で、大きなメタル・ボードの左奥にアウター・ローター型シンクロナス・モーターがあり、三角形のカバーがその位置を示している。この位置は、カートリッジのレコード面上の軌跡からもっとも遠い位置であり、この一点を見てもプレイヤーの設計にオーソドックスながら十分な配慮がなされていることが判る。事実、カートリッジ針先をモーターボードに直接のせてボリュームを上げてみてもスピーカーから洩れるモーターゴロは微少で、モーター自体からの雑音発生量の少ないのが確められる。
これはモーターボードの厚くガッチリした重量による効果も大きく見逃せない利点だ。
さて、このプレイヤーのウィーク・ポイントは、アームのデザインにあるようだ。使ってみて、扱いやすく、誰にでも間違えることのない優れたアームとは思うが、ただ取り柄のまったくないありきたりのパイプアームだ。シンプルというには後方のラテラル・バランサーなどがついており、多分、これが特長としたいのだろうが、このラテラルバランサーと対称的にインサイド・フォース・キャンセラーが、アーム外側につけられている。アームは、実用的であると同時に、毎日これと対決を余儀なくさせられる音楽ファンの、マニア根性を、もう少し刺激して欲しいパーソナリティーを望みたい。
ちょっとだけ不満な点にふれたがこのプレイヤーの最大メリットが2つある。まずヤマハならではの、豪華にして精緻なローズウッドのケースの仕上げだ。圧巻というほかない。
もうひとつの大きなプラスアルファはカートリッジにマニアの嬉しがるシュア・75タイプIIがついていることだ。タイプIIになってスッキリした音が一段と透明感を強めた傑作カートリッジが、オプションでなく、始めからついているのは、このプレイヤーの49000円という価格を考えると魅力を一段と増しているといえよう。
ヤマハ YP-700, NS-310, NS-570
パイオニア PL-25E, PL-31E
グレース F-8E, F-8L
オルトフォン SL15E, RS212B
クライスラー TYPE-5
ナガオカ 0.5mil DIAMONDSTYLUS
マイクロ MR-211, MR-411, MR-611
オーディオテクニカ AT-VM35, AT-1009
グレース F-8F
ダイナコ A-25X, Mark III, ADC ADC10/E MK-IV, ヴァイタヴォックス AK155, S2, CN157
オーディオテクニカ AT-VM35, AT-VM35F, AT-35X, AT-VM3, AT-VM8
Lo-D HS-350, SR-600, PS-33
ナガオカ 0.5mil DIAMONDSTYLUS
テクニクス SL-1100
デンオン DP-5000
岩崎千明
スイングジャーナル 3月号(1972年2月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より
今月のこのページを一見して、おやまた、ダイレクト・ドライブかと思われる読者が多いことであろう。
先月号のテクニタスSL1000に引き続いて、今月はコロムビア/デンオンのDP5000の登場である。これで、この1年間に登場したプレイヤー関係の3機種が国産ダイレクト・ドライブ(以下DD)ターンテーブル関係の製品で占められたことになるわけである。先陣を切ったテクニクスSP10、続いて量産化の名乗りを挙げたソニーTTS2500とその高級型TTS4000、先月紹介のテクニクスSL1000、今月のデンオンDP5000、とすでに登場した製品群に続いて、さらにパイオニアMU3000が控えているし、開発完了を伝えられるマイクロ精機のDD型ターンテーブルも市場に姿を現わすのも間近いことだろう。
すでに多くの機会に語られているように、これらのDD型ターンテーブルの出現は、国産ターンテーブルおよびそれを基盤としたプレイヤーの、飛躍的向上を意味する具体的な成果として、受け取ってよい。この、技術は、例えていえば自動車産業における、ロータリー・エンジンの、レシプロに対する優位性以上に評価され得よう。いくら賞賛しても決して過ぎることのない優れた研究開発であるし、製品化技術であり、それ一世界のオーディオ・メーカーのすべてに先駆けた、純粋の国産技術であるという点において、その価値が一段と輝きを増すのだが、それだけに、どうしてもDD技術に対するその評価は甘くなり勝ちなのだ。
そうはいっても、国内市場において国産メーカー同志のDD型ターンテーブルやプレイヤーが肩を並べて競い合うようになってくると、それぞれの製品に対する特長づけや評価が要求されるものだし、それに応えるのが、このページの責任でもあろう。
さて、今月のデンオンDP5000、さすが業務用一本槍に生き続けてきた筋金入り本格派老舗直系のブランド商品である。
まずひと目みてスタイルが実にユニークだ。元来ターンテーブルのデザインほどむづかしいものはなかろう。
ディスクを乗せるターンテーブルはまずまったくといってよいほど形を変えられるものではないし、そのまわりもモーターボードと名付けられる通り板状の域を越えるのか難かしいものだ。そうかといってターンテーブルのまわりがないのもは高級品には見当らないのだ。DP5000は視覚的にはまさにこの両方の中間的なスタイルボードではないがメカニカルには堅牢この上ないボードが30センチピッタリのターンテーブルの周囲をゆるやかに取りかこんでいる。ゆるやかにということばは妙ないいまわしだが、それは手前で幅広く、奥で狭くなるように傾斜を変えてあるために感じられるデザインのなせるわざだ。このユニークなプロフィルは、最初にちょっと、とっつき難い印象を受けるのだが、それを手元におけば、実に扱いやすく、演奏前後のレコードを傷つける可能性を根絶した配慮を知らされるに違いない。ターンテーブルのふちはその上でレコードを裏がえす際に、時に障害になり得るし、外し損なったレコードをしばしば傷つけるものだ。
この傾斜したターンテーブルまわりのボード(?)は、レコードの取り外しの際30センチというターンテーブルとゴムシートの作るわずかの隙間に指をかけやすくする、という大きな利点をも生み出している。さらにもうひとつの意味はプレイヤーの大きさやアームを追加する際にも制限をなくしている。
加えて、ほこりがつき難いこともいい足してよかろう。
このわずかなボードに、ストロボと操作を考えて大きく並べたプッシュスイッチの角型つまみ。
ランプを内蔵している点もいたれりつくせりの感がある。
さて、本来の性能だが、ACサーボというテクニクス方式とはやや異なる電子サーボを採用しているがその特長は、大きなトルクを得られる点にあり、まさに業務用ということを強く意識した瞬間定速型で、1/3回転で定速度に達するのが大きなポイントとなっている。
むろんその回転むらや振動の少なさはDD型そのものズバリで、いうことはなかろう。価格も適正な上、信頼度の高いデンオン・ブランドのDD型の出現は、マニアにとって大きな購売目標となって永く市場を確保するであろう。
グレース F-8C, F-8D, F-8E, F-8F, F-8H, F-8L, F-8H, G-840F, G-707, G-640P, G-545F, S8-CML
Lo-D HS-350, SR-600, PS-33
テクニクス SL-1100
菅野沖彦
スイングジャーナル 2月号(1972年1月発行)
「SJ選定新製品」より
テクニクスがSP10というダイレクト・ドライヴ・ターンテーブルを発売したことはオーディオ界に強い刺戟を与えた。低速回転の直流サーボ・モーターを使い高精度の仕上加工によるメカニズムとのコンビネインョンは本物を見分ける人たちの間で、またたくうちに評価が高まったのであった。しかも、世界中どこをさがしても、この種のターンテーブルはなく、まさに世界水準を上回る製品といっても過言ではなかろう。時を経ずして、各社からも続々とこのタイプの新製品が発売され、高級ターンテーブルはダイレクト・ドライヴ(DD)という観さえ呈するに至った。そして今回、試用した新製品SL1100は、このSP10の開発を基礎として、これをプレーヤー・システムとして完成したものだ。そのユニークな発想と随所に見られるアイデアやマニア好みの心情を把えたメカニズムは、このところ調子を上げているテクニクスの開発力と意欲を充分に見せつけているようで小気味よい。
このプレーヤー・システムの特長は全体を完全に一つのユニットとして総合的に設計したことであって、ターンテーブル、アーム、プレーヤー・ベースという三つの部分をパラバラに設計しておいて、互いにつなぎ合せて一つの製品にしたといったイメージは完全に消えた製品なのだ。
プレーヤー・ベースにダイカストを使ったというのもユニークであるが、従釆の木製ベースになじんだファンに、どういう受け取られ方をするかは極めて興味深いところだろう。私としては、一方において同社のねらった重厚感やユニット感覚に共感をおぼえながら、他方、なんとなく冷く、硬い、あまりにもよそよそしい感触にも抵抗を感じているというのが偽りのないところなのであるが、このダイカスト製のプレーヤー・ベースは構造的にも機能的にも、きわめてよく練られた設計で、ショック吸収のインシュレーターを内蔵し、アーム交換パネルと、将来イクォライザー・アンプを内蔵したい人の遊びパネルがビスどめをされているというこりようも泣かせるところ。SL1100はトーン・アームつきでSL110はトーン・アームなしという仕様になっているが、SL1100のトーン・アームは、やはり、ダイカストをベースに、パイプ・アームとの組合せで完成したものだ。ユニークな直読式針圧印加装置は大変セットしやすく、インサイドフォース・キャンセラーもついてはいるが扱いはきわめてシンプルだ。無骨なスタイリングとは全く無線のスムースな動作で、まだじっくり使ったわけではないが音質もなかなかよさそうだ。トーン・アームによる音質への影響は想像より大きいもので、その低域特性が全体のバランスに与える印象やトレーシング・スタビリティは軽視できないものだと思う。35cmアルミ・ダイカスト製のターンテーブルのテーパード・エッジはディスク・レコードの取扱い上の配慮もよくできているし、ダイナミック・バランスもよくとれている。かなりの高級ターンテーブルでも、動力機構をオフにして手で早回しをしてみると、全体にブルブルと振動がくるものが少くない。ふだん我が愛車のホイール・バランスに神経質なだけに、こんなところを妙に気にしてしまう癖がある。しかし、やたらにカタログ表示のワウ・フラッターの数値を気に.するぐらいなら、まだ、こんなことでもしてみたほうがましではなかろうか。横道にそれたが、とにかく、このターンテーブル、SP10をはるかに下回るローコストでまとめられていながら性能的には大差のない水準を確保していることがわかる。ダイカスト・ベースに直接針を下してボリュームを上げてみても、その振動の少さがよくわかる。すでに記した内蔵インシュレータ」もよく働き、外部振動にも強く安定したトレーシングが得られた。
こう書いてくると、この製品、いうところがないように感じられるかもしれない。たしかに、その物理的な動作面では、高い水準を確保していて、ディスク・レコード再生に充分満足のいく機能を示してくれる優秀製品だし、はじめに述べたように設計者のマニア気質がよく出た心憎い配慮にもニタッと笑いたくなるのだが、ここまでくると、もう一つ欲が出るのが人情であろう。モダーンなメカニズムを象徴するデザインも個性的でよいが、音楽を演奏するものとして、直接手に触れるものとして、もう一つ人間的な暖み、ふくよかさがあったならどんなにかすばらしいことだろう。プッシュ式のスイッチを指でタッチした時の感触や、スイッチの動作振動が金属ベースに共鳴して聞える薄っぺらな音は意外に輿をそがれるものだったのである。従来のプレーヤー・システムの概念を1歩も2歩も前進させた優秀なこの新製品の登場はその性能の高さとともに強く印象に残った。






















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