Category Archives: アンプ関係 - Page 62

サンスイ AU-707

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 AU−607の上級モデルとして登場したプリメインアンプである。左右チャンネル独立電源、パワーアンプのDCアンプ化など、市場の要求を満たすに十分な構成と、一貫して採用しつづけたブラックパネルが、製品としての完成度の高さを、十分にアピールしている。AU−607よりもパワーアンプされているために、独特のプレゼンス感は力感の裏側にかくれているが、しなやかに、よく弾む音は良いスピーカーが欲しくなる。

サンスイ AU-607

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 従来のイメージを完全に変えたサンスイの新しいプリメインアンプである。デザイン、増幅系のブロックダイアグラムなどでも、現代アンプの最先端をゆく新しさがあるが、とくに、このモデルの独特とでもいえるプレゼンス豊かな音は、素晴らしい魅力である。物理的な性能の高さをベースとした漂うような音場感と、クッキリと細やかな輪郭で浮上らせる音像は、ナチュラルであり、QS方式での音場再生技術が活かされている。

マークレビンソン LNP-2L

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 アメリカのマーク・レビンソンのセンセイショナルなプリアンプ。思う存分、自分の意志と力を製品に生かし、自分の名を冠して、それを売るというスピリットは日本のメーカーにはない魅力。最高級のパーツを使った大変高価な製品だが、さすがに、製作者と直接対話が可能なほど生命のある作品である。

ローテル RA-1412

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 あまりなじみのない製品だが、実にユニークなプリメインアンプである。少々こっけいに感じるぐらい、大向うを張ったデザインだが、内容は真面目に作られたアンプだと思う。なめらかで艶のある楽器の質感はよく再生されるし、音の張り、弾み、力感も、なかなか素晴らしい。見た目の品があれば文句なし。

ビクター JA-S91

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 JASシリーズの高級品で、100ワット・チャンネルのプリメインアンプ。パワー級、電源などの基礎から、がっしりとした余裕のある技術的な投資をおこなっていて、豊かで透明度の高い音質のアンプとなっている。重量感のある高級プリメインアンプであるが、デザインはもう一つ魅力に欠ける。

オンキョー Integra A-722nII

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 パワーのわりには、価格はかなり高く感じられるだろうが、プリメインアンプの力作である。オンキョーのアンプ技術の高さと、ノウハウの蓄積が実って、きわめて品位の高い演奏表現が、生き生きと伝わる音が魅力的である。デザインは類型的で特に魅力のないのがこの社の弱味だが、これは優れたアンプだ。

ラックス L-80V

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 中級プリメインアンプというべきランクの製品ながら、かなり品位の高い音質と、風格ある仕上りをもったアンプである。アンプ作りに愛情をもつラックスらしい製品で、持つものに空虚なコマーシャリズムを感じさせない。最近の商品にはそうした物が多いだけに、この音とアピアランスは貴重なものだ。

デンオン PMA-235

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 デンオンの200シリーズは、シンプルなデザインで実質内容の充実した設計ポリシーにもとづいている。いずれも、パワーと価格の対比では決して安いほうではないが、純度の高い音質と実用性の高いコントロール機能は、PMA−235に限らない魅力である。シリーズ中では235の音の純度が最高だと思う。

ラックス L-309V

 菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ラックスらしい風格をもった品位の高い音の情趣が、その質感の高いパネルデザイン、ツマミ廻りのフィニッシュと共に、高級プリメインアンプとしての雰囲気に満ちている。新シリーズが発売された現在も、その独自性の故に、ライン・アップからはずされることなく、ロングライフを保つ製品となるだろう。管球式の38FDのデザインと共通のイメージのTRアンプとして内容外観フィニッシュの三拍子そろった製品だ。

オンキョー Integra T-433nII

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 フロントエンドがPLLロック式のデジタルシンセサイザーチューナーである。IF段にリニアフェイズフィルターを使い、位相歪の追放をはかっている。意欲を評価したい製品であると同時に、実用性も高い。もちろんFM専用チューナーである。この機構に生彩を与えるよりリファインされたデザインが望まれる。

デンオン PMA-700Z

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 デンオンのプリメインアンプとしては、ロングライフの旧シリーズで、その中での高級機種である。しかし、新シリーズに勝るとも劣らない魅力と完成度をもったアンプだと思う。楽器のリアリティ、空間のプレゼンスという、再生音の重要な要素を、バランスよく再生してくれるので、レコードが生きる。オーソドックスなステレオフォニックな録音ほど、このアンプが得意とするプログラム・ソースである。

オーレックス ST-720

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オリジナリティのあるチューナーで、カード式のプリセット機構が面白い。いかにも現代的な感覚で、受信安定性の高さにも連るよい機構だと思う。こうした構造からくるデザインもユニークで、ダイアル式チューナーとは異なった趣きをもっていて楽しい。チューナーは熱心なオーレックスらしい好製品。

トリオ KA-7300D

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 コストパフォーマンスがはなやかに喧伝されていたころ開発されたKA7300も、今年になってマイナーチェンジされ、しかもDCアンプ化された。このKA7300Dは内容が充実していて、実質的に高く評価していい製品だ。がっちりした明確な音像イメージの再現が力感に溢れ、より大きなパワーを感じさせる。

テクニクス ST-9030T

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 テクニクスのチューナーは、この製品と、80Aのペア製品を聴いたが、いずれも純度の高い音質で、SN比もよく、安定したチューナーである。新しい製品らしい、アップトゥデイトな内容をもったこのチューナーは、実用性の高い製品として評価できる。デザインとしてはもう少しチューナーらしい夢がほしい。

オンキョー Integra A-7

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オンキョーの新シリーズの中級プリメインアンプである。中低域の透明感と弾力性が、従来のアンプと一味違うところで、プレゼンスの際限が優れている。したがって、大編成のオーケストラのホール空間のリアリティなどが豊かで好ましい。しかし、反面、もう一つ明確にシャープに音像を浮彫りにしてくれるような感じがあってくれたらとも思う。この辺のニュアンスは、アンプでずい分変るものだ。

トリオ KT-7700

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 標準的チューナーといってよい製品。チューナーに関して高い信頼性をもつトリオの製品らしく、ある機会にテストしたとき、このチューナーのSN比のよさ、音質のよさを実感させられた。これよりはるかに値段の高い、高級チューナーで、劣るものがいくつもあったといっておこう。

ビクター JA-S41

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ビクターのプリメインアンプの中の中級機種であるこの製品は、厚みのある立体的な再生音を可能にしてくれるし、音の質感が品がいい。とちらかというと、ウォームなサウンドで、がっちりとしたソリッドな音像感というより、雰囲気重視型のソノリティを特長とする。高さのあるパネルのプロポーションは安定感があって落ち着いているし、決して消化されたデザインとはいえないが、冷たい感じを与えないので好感がもてる。

ヤマハ CT-7000

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 わが家での常用チューナーである。とにかくオーソドックスで使いよいチューナー。そうした実用性を、ことさらに無視したような未来的チューナーを私は好まない。それでいて、このチューナーはモダーンなフィーリングであり、精緻な構造である。感度、音質ともに文句のない優れたチューナーだ。フロントエンドは7連バリコンを使い、RF2段、ブロック・セラミックフィルターを使っている。

アキュフェーズ T-100

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 C200、P300というセパレートアンプとの共通イメージでデザインされたチューナーで、内容的にも同セパレートアンプの充実さとバランスした高度なもの。放送局と家庭のシステムを針金で直結させるという思想で、徹底的に諸歪を追求した特性のリファインされた優秀なチューナー。フロントエンドは5連バリコンで、IF段は10素子のLCフィルターを使用している。デザインが洗練されていないのが惜しい。

トリオ KA-7100D

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 トリオのシリーズ中、新しい中級製品で、豊かな内容を盛り込みながら、価格は安く、お買徳なアンプである。回路的な特長は多くあるが、一言にしていえば、高級アンプの内容を、合理的にコストダウンで実現したといえるものだ。鮮明な音像は、よく引締り、無駄な甘さがなく、よりパワーの大きなアンプを感じさせる立派な音である。デザインは風格がないが、これは求める方が無理な値段であろう。

マランツ Model 1250

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 往年のマランツの系統を引継いだパネルレイアウト・デザインは、今なお魅力的であり、美しい。同社のプリメインのトップモデルの名に恥じない風格である。おとは、まさに絢爛豪華なアメリカン・サウンドで、実にブライトである。力強く、積極的に、スピーカーが雄弁に鳴りはじめるのである。

トリオ KA-9300

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 トリオのプリメインアンプの最高級モデルである。DCアンプで左右2電源独立型。そんなことより、このアンプの、きわめて充実したダンピングのきいたサウンドの魅力は一味違う。ただ、気になるのは、どうも音がふくらみ過ぎの感があって、もう少し輪郭がきりっと鮮やかになれば文句なしであろう。

マランツ Model 1150MKII

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 マランツのアンプの華麗なサウンドは、この1150IIで、さらに洗練された。アメリカ的サウンドといっても、日本マランツの製造だが、不思議なもので、この鳴り方はアメリカを感じさせる。エキゾチックなのである。パネル操作機能は消化され切っていないが、この力強い音の魅力を買って目をつぶろう。

トリオ KA-7700D

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 トリオのプリメインアンプの中での上級機種で、お家芸の左右独立電源、DCアンプの新機種である。艶ののった力のある再生音は、従来のやや弾力性の勝った音を一段と引き締め充実した実感を与えることになった。スピーカーを十分コントロールするといった感じで甘く鳴らさない。引き締めるのである。

パイオニア SA-8900II

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 これは、中堅のアンプとして内容、外観共に、大変充実した製品である。パワーも十分だし、音質の力感はやはり8800IIを上廻る。滑らかな肌ざわりは人間の本能的快感をくすぐる、独特な弾力性をもっていて心地よい。機能も、使い勝手も、よく練られていて、プリメインアンプとしての代表的な存在。