Category Archives: アンプ関係 - Page 50

テクニクス SE-9060II (Technics 60AII)

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 コントロールアンプのところでも書いたように、同じ型番のマークIIといっても、以前の製品とくらべると別系統のアンプと思えるほど改善のあとが著しい。聴きはじめからすぐに、これはかなり良いアンプだと思える。リファレンスのLNP2Lの音の傾向をそっくり写し出す素直さがあって、そこに腰の支えも十分あって、表示出力の割合に力も感じさせ、総じて弱点を探し出すことが難しい。ただそれにはこのアンプの価格が前提として入るので、もっとグレイドの高いアンプと比較すれば、音のひろがりや奥行きなどの立体感や彫りの深さ、ごく微妙な質感や音の艶あるいは色あいの描写力、などの点でむろんまだ極上とまではゆかないが、しかしこの音はかなりの出来ばえだ。

アキュフェーズ M-60

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 マーク・レビンソンLNP2Lとの組合せでは、かなり硬質でタイトな音となり、300Wのパワーのゆとりを活かしたスケールの大きさがあまり感じられない。M60のペアとしては、LNP2Lはマッチせず、音の傾向から推測すれば、今回の試聴した製品のなかでは、マッキントッシュC32あたりが応わしいコントロールアンプとなるだろう。C220では、EMTの入力は結果としてM69に直接入るために、これをベースとすると、M60は、引き締ったかなりタイトな音をもつアンプだということがわかる。いわゆるハイパワーアンプにありがちな散漫さがなく、整然と音を整理しソリッドに聴かせるところが特長である。

アムクロン IC-150A

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 第一印象はとてもおだやかな音だ。ことに、コントロールアンプ単体のテストで組み合わせるマランツ510M自体の内包している、ときとしてケバ立ちぎみのいくぶん冷たい傾向の高音域をみごとにおさえて、少しの粗さもない十分にこなれた音に仕上げる。そのためにうっかりしていると解像力の甘いアンプであるかに聴きあやまりやすいが、こういうふうに抑制を利かせながら、音楽のディテールを失うようなことはないし、音の表情をほどよく生き生きと伝えながら、ハメを外したり神経質になったりすることが少しもなく、非常によく練り上げられたアンプであることを思わせる。ただ、基本的な質感がやや乾いた傾向であることが、私には少しものたりない部分だ。

マッキントッシュ MC2205

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 音のたっぷりして豪華な味わいのあるところはいかにもマッキントッシュだが、新シリーズになってからは、高域の聴感上のレインジを広げ、解像力を上げようとしていることが聴きとれて、音に新鮮な輝きが加わったが、反面、以前から持っていた性格でもある音の掴み方がやや粗い面が、解像力の増した分だけ表面に露出してきたという印象があって、旧シリーズの方が適当に脂肪太りしているところへうまく化粧していたため小皺もうまく隠れていたことがいまになって想像できる。また、今回の新シリーズの方が内在する力をストレートに表面に出すが、力を底に抑制して露に出さなかった旧シリーズの方に、むしろ好ましさを感じさせる部分もある。

アキュフェーズ P-300S

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 150W+150Wクラスのパワーアンプとしては、トータルバランスがとれたスタンダードな性質をもつアンプである。
 マーク・レビンソンLNP2Lとの組合せでは、C200Sとの場合よりも、音の鮮度が一段と高くなったクリアーな音を聴かせる。低域がバランス的に少し抑え気味のようで、かなり引き締っているが、豊かさはもう少し欲しいようだ。この面からは、大型スピーカーを使い、かなり音量を大きく再生したときに、適度のバランスがとれるタイプのアンプのようである。音の粒子は、最新のアンプのような微粒子型でなく、聴感上で中域が薄く感じられないところが、このアンプの特長である。

マークレビンソン ML-2L

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

「オテロ」冒頭のトゥッティの持続の分厚いハーモニィのからみあいの中から、弱音の微妙な色あいの美しさがキラリと浮かぶ解像力の素晴らしさに思わずハッとさせられる。弦楽四重奏では四つの声部の、というより各楽器の四本の弦の表情の変化まで聴き分けさせ、アメリンクの声、その伴奏のピアノの心理表現まで感じとれる。ベーゼンドルファーの強靭な中にも丸みと艶のあるタッチも満足できるし、シェフィールドではかなりの音量まで上げても、表示出力の信じ難い凄い底力がある。キングズ・シンガーズなどまさにかくあるべき理想が鳴ったという印象。一見引締ったクールなやせ形の音。およそ極限まで磨き込まれた質感の高さ、緻密な力と滑らかさの絶妙なバランス。

AGI Model 511

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 入力信号に対する反応の速さあるいは音の明瞭度(ディテール)の高さを当初から謳い文句にしていただけあって、いかにも現代のソリッドステートの最尖端の技術はかくあるべしというよな、引締ったクールな音を聴かせる。ことにEMTのプレーヤーから入力をAUX(イコライザーアンプを通さずに)直接加えたときの、素晴らしく品位の高い、緻密でしかも音のひと粒ひと粒が生き生きと躍動するのがみえるような音質は、ちょっと類のないほど素晴らしかった。しかしフォノ・イコライザーからのトータルの音になると、ひと幕引いたようでどこか反応の遅い感じの、よく言えばおっとり型の音質で私にはおもしろくない。以前のサンプルよりもこの点がちょっぴり不満に感じた。

マランツ Model P510M

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスとしてずっと聴いているPのつかない方の510Mとの比較に興味があったが、聴きくらべると確かに少し違う。そのほんのわずかな違いを拡大していえば、510Mにくらべてこちらの方がいくつか反応がおっとりしている。510Mの音は、数多くの内外のパワーアンプの中に混ぜると確かに中庸を行って、しかしそこに生き生きとしたバイタリティを感じさせる。ただ高音域にちょっと硬質の細い響きがあって、そこがひとつの特徴でもあり、反面、組み合わせるプログラムソースやプリアンプその他の機器に似たような傾向のある場合には相乗効果でそれがマイナスになることもある。P510Mではそこのところがよくこなれて抑えられている。

スタックス DA-80M

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 のびのびと屈託のない印象で、すべての音を明るく鳴らす。その明るさとは、たとえていえば写真電球のフラッドタイプで一様に照らし出された光景に似て、いくぶん陰影を欠いた、どこかあっけらかんとした感じのにぎにぎしさがある。苦労知らずに育てられた坊やがはた目かまわず鷹揚にふるまっているような感じさえあって、もう少し音の微妙な陰影や繊細な質感が出てほしいとという感じを抱かせる。ただ、国産アンプによくありがちの、どこか抑えこみすぎたような表情の乏しい音にくらべれば、この萎縮した感じのないところは多とすべきだろうか。Aクラスにしては表示パワーも大きいが聴感上もかなり力があって、それがいっそう音の伸びを助けているのだろう。

ソニー TA-N7B

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 基本的にはコントロールアンプのE88に似て硬質でコントラストの強い傾向の音を持っている。ただ、E88ほどの強引さというか一本調子に押しまくるようなところは少なく、音のニュアンスあるいは表情は一応出るので、プログラムソースに受け身に順応していくしなやかさは持っていることがわかるが、しかしどちらかといえばやはり骨太の、腰の強い音色のパワーンあプだ。高域のごく上の方に、いくぶん細い特長のある光沢というか軽い強調感を感じるが、LNP2Lにもその傾向があるため、この組合せでは相乗効果がやや裏目に出て光沢過剰になるが、反面繊細感が増しておもしろいともいえる。E88との組合せではそういう個性は感じとりにくかった。

ソニー TA-N86

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 肌ざわりの柔らかい、むしろトロリとした味わいといいたい印象さえある滑らかな音を聴かせるというのが第一印象だが、しかし決して弱腰の柔らかい甘さではなく、どちらかといえば音像をきりっと引き締めてゆく傾向の、芯のしっかりした、明快であいまいなところのない解像力の良い音といえる音にトゲトゲしさやきつさがなく、やれッ主で生き生きした表情を持っているが、しかし一見当りの柔らかな音の中に、ときとして意外に腰の強い骨ばった感じさえ抱かせる硬質な音をくるみこんでいるらしく、たとえばアメリンクやバルバラの声でいくぶん頬骨の張った感じに聴こえることがあった。Aクラスに切換えるとわずかに線が細くなるが、基本的な傾向は変らない。

サンスイ BA-2000

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

クラシックからポップスまで、あるいは構成の複雑で大きな曲でも逆に小編成や独奏、独唱ものでも、音色の印象が一貫していて、オーソドックスに練り上げられたパワーアンプであることが聴きとれる。総体にはいくぶん華やかなコントラストの強い傾向の音色を持っているが、音のニュアンスを豊かに鳴らし分けるだけの素直さがあるし、プログラムソースやコントロールアンプの差を相当はっきりと出すことからも、ディテールの描写の優れた解像力の高さがわかる。意外に腰の坐りの良い音で、パワー感も十分。コントロールアンプはCA2000とくらべると、こちらの方が出来ばえとしては格段に上だろう。価格とのバランスを考えると、かなり水準の高い製品だと思う。

ヤマハ C-2

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 テストソースやスピーカーその他に、かなりきわどい音を選んであるにもかかわらず、あらゆる音に対して上品なバランスを失わずにこれほど危なげのない音で安心して聴かせたアンプは、新型の出揃った今回のテストでもそんなに多くはない。そこがいかにもヤマハのアンプらしいし、反面、私のような八方破れの人間には多少の物足りなさの残るところでもある。C2自体が音のケバ立ちや粗い感じを細心におさえた作り方なのは、マランツ510Mと組み合わせてもその音をおとなしくまとめてしまうことからわかるが、ヤマハの良さはB3との組合せの方がよく出る。内蔵ヘッドアンプはDL103Sには一応のクォリティを示すが、MC20では少し味が薄くなりすぎた。

マランツ Model 170DC

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 パネル面の明るいやや白っぽい金色が、まるで音そのものを象徴しているかのようで、さらっと乾いた質感の、影のつくことを避けて一様に照らした人工光線に浮かび上ったような印象の音像を展開する。そういう意味ではよくコントロールされた、やかましさの少しもない、むしろやや静的ともいえるきれいな尾とかする。そのせいだろうか、音の起伏をいくぶん揃えて整理するような感じがあって、野卑なところのない、どことなく人口の清浄空気の中で大切に育てられた音、要するにたいへん注意ぶかく慎重に作られた音といってよい。ただ個人的な好みを加えて言えば、もう少し音の流れの自在さや伸びやかさのある方が嬉しい。

パイオニア M-25

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 パイオニアのアンプが、セパレートタイプにかぎらず音のバランスのとり方の巧みなことはすでに多くの機会に言われているが、そこにも一貫したパイオニアトーンとでもいえる個性があって、それは大づかみにいえば、中音域から低音域にかけてやや厚みを持たせ、中高音域ではよく抑えてやかましさをなくし、最高音域にちょっと味をつけてほどよい切れこみの良さを感じさせる、という印象がある。M25も大まかにはその線で仕上げられているが、M4のようにウェットな音でなく、暖かみはあってもややぜい肉をおさえた硬質なところも聴きとれて、いくらか強引さや乾いた印象のあるものの、力としなやかさをバランスさせたなかなかの音質だと思った。

ジェニングス・リサーチ The Amp

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 明るく元気のよい、身のこなしの軽やかでよく伸びる音がする。音像のひろがりもわるくない。反応がいかにもシャープで、その意味では聴いていて決して不快な音ではないが、いろいろなプログラムソースを通して聴くと、曲によって印象が少しずつ変ってゆくようなところがある。弦楽四重奏ではヴィオラの音域の支えが弱く四声のハモりかたがもうひと息。ピアノのタッチも丸みのある質感がもう少し欲しい。どちらかというと聴き手の注意力が高音域の輪郭の方にゆく傾向で、中低域から低域にかけては意外に反応がゆっくりしているように思える。LNP2Lとの相性があまり良くなかったようにも思えた。

ビクター EQ-7070

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 一聴して基本的なクォリティの高い、よく磨き込まれた緻密さが聴きとれる。音の傾向自体はやや明るく軽く、たとえばオーケストラの斉奏でもディテールのひとつひとつがきらきらと細く光るようなところがあったり、弦楽器では倍音の方に耳の注意力をひきつけたり、アメリンクやキングス・シンガーズやテルマ・ヒューストンなどの声が総体に若づくりになる傾向を聴かせるが、音の支えがしっかりしているのでこうした聴こえ方は不快ではない。ただ音の透明感のすくれている割には、立体感や奥行きがもうひと息増すとなおよいという感じがあった。MCヘッドアンプは低域がやや薄くなる傾向があるがクォリティはかなり高く、中高域以上はかなり美しい音を聴かせた。

パイオニア M-75

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 おそらくペアとして企画されたコントロールアンプC77の、やや重い感じで反応の鈍い傾向の音をちらかがうまく補うという印象で、ややコントラストを強く、音の表情を生かすようにどちらかといえば身ぶりの大きな音を鳴らす。M25やエクスクルーシヴ・シリーズのM4の正攻法の作り方ではなく、どちらかといえばヤングマーケットをことさら意識したのではないかと思えるような、甘さ辛さをはっきりさせたいわゆるわかりやすい味に仕上げてあるので、音の品位という点からみるとかなりものたりない。中音域から低域にかけての厚みを持たせて腰の坐りを良く、大づかみな意味で音のバランスをととのえるうまさはパイオニアならではの手際の良さだと思った。

ハーマンカードン Citation 16A

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 かなり積極的な音を持ったパワーアンプだ。中域以上高域にかけて華やかな光沢があって、明るいライトで照らしたようにディテールに至るまでキラキラと輝いて浮き出してくるようだ。低音のかなり低いところには意外に重量感もある。やや重く、力にまかせるように思えるが、それは、中低音域でいくぶん音の引っ込むような傾向があるのでよけいにそんなふうに聴きとれるのかもしれない。したがっていわゆる低次倍音の音域がバランス上薄手なので、中〜高域の華やぎは、ときとしてかなり派手にはしゃぎすぎる傾向を聴かせる。饒舌気味、説明過剰の傾向といえようか。これなりに得がたい個性で、国産でいえばビクターのアンプに概してこの傾向が聴きとれる。

オンキョー Integra M-505

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 どちらかといえばウェットなタイプの音、あるいは女性的な美しさを持った音、ともいえそうだが、清らかでなよやかな表情のやわらかさは、ごく良質なアンプでなくては聴けない上等の音質だ。「オテロ」冒頭のトゥッティでは、音像の奥行きや深みや発声のニュアンスも十分で、ステージの雰囲気さえ感じとれ、弦楽四重奏やアメリンクの声、伴奏のピアノの表情なども、音がよく響きよく溶けあってほどよく弾み、いかにも音楽している楽しさが感じとれる。LNP2Lの情報量を全部は出しきれないところはあるし、やや甘口で弱腰のところはあるが、この音の良さはもっと注目されていい。外観の武骨さが、かなりイメージを悪くしているのではないかと思える。

ビクター P-3030

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 EQ7070と見た目はよく似ているが、出てくる音はだいぶ違う。7070が明るく軽く透明な音のするのに対して、3030の音は逆に総体におっとりして、7070のような入力ソースに対する反応の早さをあまり感じさせない。音像の前にやや暖色系の薄幕をひいた感じで、総体に音の冴えが物足りなく、もっと透明感が欲しい。細部を見渡したい、という気持にさせる。そのせいもあるのか音像の並び方も平面的で、奥行きや立体感がもっと欲しい。内蔵のMCヘッドアンプも7070とはだいぶ違うらしくDL103Sの場合にはまあまあだが、MC20に対しては音を素気なくする傾向。7070とは価格の差がずいぶんあるのだから仕方ないかもしれないが。

ガリエン=クルーガー 1000-1S

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 このメーカーについては詳しいことを知らないが、外観はいわゆるコンシュマー用でなくいかにもプロ用、それもPAあるいはモニター用などの用途を思わせるコンストラクションで、見た目にはなかなか信頼感を抱かせる。そのことは音を聴いてもうなずける面がある。総体に神経質なところが少しもなく、やや重い感じの独特の低音の力に支えられて、中音から最高音域に至るまでどちらかといえば反応が鈍い印象。ディテールを照らし出すのでなく全体をくすんだモノトーンに仕上げるような音色といえる。かなりの音量で鳴らし続ける目的には、シャープすぎなくていいのかもしれないが、ふつうの鑑賞用としては、もう少し鮮度の高さやニュアンスが欲しく思える。

トリオ L-07C

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

「オテロ」冒頭のトゥッティでも埋もれがちのディテールをむしろくっきりときわ立たせ、弦楽四重奏では倍音の方にやや注意力を向ける傾向があるというように、一聴する途中〜高音域にエネルギーが片寄るかに思えるが、低音域にはかなりの重量感があるので、一見骨細だが骨格はしっかりしている。ただ低音はクラシックの持続音ではおさえぎみだが、ポップスの打音ではかなり量感を出すという二面性が聴きとれる。目鼻立ちのクッキリしたタイプの音だが、音楽を楽しませるカンどころのとらえ方は本質を衝いていると思う。本調子が出るまでに時間のかかるタイプだ。ただ内蔵MCヘッドアンプは情報量がやや減ってクォリティがともなわない。

テクニクス SU-A2 (Technics A2)

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ひんやりした肌ざわりはかなりウェットな印象で、ぜい肉を極力おさえたかのように、かなり細身の音。しかし質感はかなり緻密に練り上げられたらしく、細くウェットな見かけの割には、骨格のしっかりして芯の強い音を持っている。バランス的には中高域にややエネルギーの集まるタイプで、相対的に低音域はかなり抑えぎみに聴こえる。音の透明感はなかなかのものだが、肌ざわりの冷たいせいか、とちらかといえばやや素気ない印象。しかし曲によってはオャ? と思うほど強引なところもある。途中でトラブルを生じてMCヘッドアンプのテストが十分できなかったのは残念。A1と違ってプリプロ機らしいが、A1の音から想像してこの方向でのいっそうの完成を期待したい。

テクニクス SU-9070II (Technics 70AII)

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 以前の70Aとは中味が全く別ものといっていい。かつてのいかにもセパレートアンプの流行に便乗した感じのある安手の音が記憶に残っているせいもあるが、II型になって印象は一変して、たいそう密度の高い、充実感のある聴きごたえのする素晴らしい音質だと感じた。従来のテクニクスのアンプが、一体に音の表情の乏しい傾向があったのに、70AIIは音の起伏が豊かで彫りが深く、パースペクティヴな音場の奥行き感もとても良い。ディテールの解像力と音の鮮度も十分だ。内蔵のMCヘッドアンプは、MC20に対してはオルトフォンらしさはやや減るもののやや線の細いきれいな響きは美しく、DL103Sではトランスにくらべて幾分若やぐが音が生き生きしてとてもいい。