Category Archives: アンプ関係 - Page 19

テクニクス SU-V10X

井上卓也

ステレオサウンド 73号(1984年12月発行)
「BEST PRODUCTS」より

 CD、PCMプロセッサーなどのデジタルプログラムソース、ハイファイVTR、ビデオディスクなどのAVプログラムソースなど、多様化するプログラムソースに対応する現代のプリメインアンプとしてテクニクスから登場した新製品がSU-V10Xである。
 アンプとしての基本構成は、テクニクスが理想のパワーアンプを目指し、クロスオーバー歪とスイッチング歪を解消するシンクロバイアス回路ニュー・クラスA、トランジエント歪に対するコンピュータードライブ、理論的に歪を0とするリニアフィードバック方式などの技術と、大電涜が流れる出力段で発生する電磁フラツクスを抑えるコンセントレイテッド・パワーブロック構造の採用などが、従来からのテクニクスアンプのストーリーだが、今回さらに、駆動電圧と電流間に位相差をもつ実スピーカーに対し、リニアな駆動とドライブ能力を向上するコンスタントゲイン・プリドライバー回路を採用したことが特徴で、オンキョーのアプローチとの対比が興味深い。
 機能面では、AVシステムの中心となるアンプらしく、AV信号を連動切替するAV入力セレクター、単独切替のRECセレクターとグラフィックイコライザーなどを使用する外部機器専用端子、ターンオーバー可変型トーンコントロールなどが備わるが、AUX1/TV、AUX2/Video、TAPE2/VTRと3系統のAV入力端子のうち、AUX2/Video端子は、フロントパネル面にもあり、フロントとリアがスイッチ切替可能である。
 パワーアンプは、150W+150W(6Ω負荷)の定格をもつが、電源部は、従来のトランスと比較し10~20%以上太い線を高密度に巻ける尭全整列巻線法を採用し、レギュレーションを改善している。線材は無酸素銅線、3重の磁気シールド内に特殊レジン封入で振動が少ない特徴がある。なお、電解コンデンサーは全数300Aの瞬間電流テストを行なう特殊電解液使用のオーディオ専用タイプで強力な電源部を構成し、310W+310W(4Ω負荷)、400W+400W(2Ω負荷)のダイナミックパワーを誇っている。
 JBL4344とLC-OFCコードによるヒアリングでは、ナチュラルに伸びた広帯域型のバランスと、聴感上でのSN比が優れ、前後方向のパースペクティブを充分に聴かせる音場感と実体感のある音像定位が印象的である。優れた物理的特性に裏付けられたクォリティの高さ、という従来の同社アンプの特徴に加えて、スピード感のある反応の早さ、フレッシュな鮮度感のある表現力が加わったことが、魅力のポイントである。新製品が登場するたびに、ひたひたと潮が満ちるようにリファインされているテクニクスアンプの進歩は見事だ。

ヤマハ A-1000

井上卓也

ステレオサウンド 73号(1984年12月発行)
「BEST PRODUCTS」より

 ヤマハからの新製品A1000は、昨年、高級プリメインアンプの市場に投入され見事な成果を収めたA2000と基本的に同一コンセプトをもつ製品である。
 このところ、ブラックパネルが大流行のようで、視覚的に各社間のデザイン的な特徴が希薄になりがちのなかにあって、ツヤを抑えたヤマハ独自のシルバー仕上げのパネルと、ウォルナット鏡面仕上げのウッドキャビネットを配したデザインは、クリアーで、エレガントな雰囲気をもつ新しいヤマハの顔であり、A2000とのパネルフェイスの違いは、好みが分かれるところであろう。
 アンプとしての構成は、MC型カートリッジをダイレクト使用可能な、NF/CR型ハイゲインイコライザー、低域をスピーカーに対応して約1オクターブ伸ばす独自の3段切替リッチネス回路とト-ンコントロールを備えたラインアンプ、B2x、A2000パワーアンプ部に順次採用されてきた、純A級アンプに電力損失を受持つAB級パワーアンプを組み合せたヤマハ独自のデュアル・アンプ・クラスA方式の120W+120W(6Ω負荷)、140W+140W(4Ω負荷)の出力をもつパワーアンプ、の3ブロック構成で、A2000の流れを受け継ぐものである。なお、パワーアンプ部にはヤマハ独自開発のZDR歪回路を採用し、一般的な純A級パワーアンプのわずかの素子の非直線性に起因する歪をも除去し超A級ともいえるリニアリティを実現し、織細で美しい音を得ている。
 電源部は、多分割箔マルチ端子構造ケミコン採用で、総計14万6千μFの超強力電源を構成し、2Ω負荷時のダイナミックパワーは、279W+279Wを得ている。
 機能面では、入力切替スイッチに2系統のTAPE入力を組み込み、アクセサリー端子を独立して設けたのが特徴。AV対応時のサラウンドアンプやグラフィックイコライザーなどの接続時に使い、使用しないときにはショートバーで結んでいる。なお、この端子の後に、ミューティング、モード、バランス、ボリュウムコントロールがあるため、接続されるアクセサリー横器の残留ノイズ等はボリュウムで絞られ、通常の使用時でのSN比は良く保たれる。
 JBL4344とLC-OFCコードによるヒアリングでは、音の粒子が、細かく滑らかに磨き込まれており、素直に伸びた適度なワイドレンジ感と、自然な雰囲気の音場感的な拡がりが印象的で、ナチュラルサウンドの名にふさわしく、洗練された音だ。A2000と比較すれば、全体の音を描く線が、細く、滑らかなのが特徴であり、このしなやかな表現力は、使うにしたがって本来の良さが判ってくるタイプの魅力だ。リッチネスを使うときのポイントは、わずかに、トレブルを増強することだ。

ソニー TA-F555ESII

井上卓也

ステレオサウンド 73号(1984年12月発行)
「BEST PRODUCTS」より

 ソニーから、去る9月に発売された新プリメインアンプは、デジタルプログラムソースからアナログプログラムソースまで高忠実度で再生できるように、基本特性を向上させるとともに、AV対応にはビデオ入力端子を2系統と出力端子を1系統備えていることに特徴がある。
 アンプとしての基本特性の向上のポイントは、実使用時のダイナミックレンジ120dBと左右チャンネル間のセバレーション100dBを実現していることだ。
 アンプ構成上の特徴は、プリアンプ部とパワーアンプ部との間に新たにカレント変換アンプを設け、信号系をプリアンプ部とパワーアンプ部とに電気的に分離し、独立できるオーディオ・カレント・トラスファー方式にある。この方式は、電圧としてプリアンプ出力に出てくる入力信号を、いったん電涜信号に変換し、このカレント変換アンプ終段に設けたリニアゲインコントロール型アッテネーターで再び電圧信号に戻す、というものだ。この方式の採用でプリアンプとパワーアンプ相互間の干渉やグランドに信号電流と電源電流が混在することに起因する音質劣化や、歪、ノイズなどの問題が解消でき、実使用時のダイナミックレンジの拡大と優れたセバレーション特性を獲得し、音質を大幅に向上しているとのことである。
 この電流変換アンプに設けられた新方式アッテネーターは、最大から実際に使われる音量に絞り込むに比例してインピーダンスが低くなり、通常のリスニングレベルでの歪や周波数特性、SN比、クロストークなどの諸特性が改善できる特徴をもつ。
 パワーアンプ部は、独自のスーパー・レガートリニア方式パワーアンプと大型電源トランスを組み合せ、100W以上の大出力時にも広帯域にわたりスイッチング歪、クロスオーバー歪を激減させ、4Ω負荷時180W+180W、1Ω負荷で、瞬時供給出力500W+500Wを得ている。
 なお、音質を左右する大きな要素である配線材料には、このところ話題のLC-OFCを大量使用しているあたりは、いかにもOFCワイヤー採用以来のソニーらしい動向を示すものだ。
 JBL4344を、LC-OFCコードを使いドライブしたときの本機の音は、ピシッと直線を引いたように感じられるフラットな帯域バランスと、タイトで密度感があり、十分に厚みのある質感、ダイレクトな表現力などが特徴だ。低域は芯がクッキリとし、力感も充分にあり、従来のソニーアンプとは一線を画した見事なものだ。
 音場感的には、音像が前に出て定位するタイプで、輪郭はシャープ。前後方向のパースペクティプな再生も必要にして充分だ。
 質的にも洗練され、ダイナミックでストレートな表現力を備えた立派な製品である。

オンキョー Integra A-819RX

井上卓也

ステレオサウンド 73号(1984年12月発行)
「BEST PRODUCTS」より

 CDの登場により、デジタル記録をされたプログラムソースが手近かに存在するようになると、これを受けるアンプ系やスピーーカーも、根本的に洗いなおす必要に迫られることになる。いわゆる『デジタル対応』なる言葉も、このあたりをマクロ的に捉えた表現であるようだ。
 オンキョーからインテグラRXシリーズとして新発売されたプリメインアンプA819RXは、せいぜい入力系統の増設や1〜2dBのパワーアップ程度でお茶をにごした間に合せの『デジタル対応』でなく、根本的にデジタルソースのメリットを見直し、確実にそれに対応し得る本格派『デジタル対応』に取り組み完成した新製品だ。アンプ内部での位相特性を大幅に向上し、CDのもつ桁外れに優れた音場感情報の完璧な再現に挑戦したのが、新シリーズの特徴だとのことである。
 構想の基本は、スピーカーの電気的な位相周波数特性で、特にf0附近で大きく変化する電圧と電流の位相変位に着目し、これを駆動するパワーアンプの電源トランスに1対1の巻線比をもち非常に結合度を高くしたインフェイズトランスを設け、+側と−側の電解コンデンサーの充電電流の山と谷を打消して位相ズレ情報を除去し、電圧増幅部への影響をシャットアウトして、正しい位相情報を再生しようというものだ。
 また、インフェイズ・トランスにより、+側と−側の電解コンデンサーの充電電流が等しいということは、電源トランスの巻線の中央とアース間に電流が流れないことを意味し、フローティングも可能であるが、コモンモードノイズ除去のため、トランス中央はアースに落してあるとのことだ。
 アンプ構成は、MC対応ハイゲインフォノイコライザーアンプとパワーアンプの2アンプ構成で、パワーアンプは、SP端子+側からNFBをかけ、さらに、超低周波での雑音成分をカットするためのサーボ帰還がかけられ、SP端子−からはアースラインのインピーダンスに起因する歪や雑音をキャンセルする、ダブル・センシング・サーボ方式を採用。また、A級相当の低歪リニアスイッチング方式が採用されている。なお、音楽信号を濁らせる電解ノイズを低減するチャージノイズフィルター、外部振動による音質劣化を防ぐスーパースタビライザー、2系統のテープ端子用に独立したRECセレクターなども特徴である。
 試聴した印象では、独特の粘りがありながら、力強くエネルギー感のある低域をベースに、豊かな中低域、抜けの良い中域から高域がバランスをした帯域感と、説得力のある表現力を備えた独特のまとまりがユニークだ。音場感は豊かな響きを伴ってゆったりと拡がり、定位感もナチュラルである。この低域から中低域をどのように活かすかが使いこなしのポイントである。

その他のベストバイ

井上卓也

ステレオサウンド 73号(1984年12月発行)
特集・「ジャンル別価格別ベストバイ・435選コンポーネント」より

 LDプレーヤーとCDプレーヤーを同じ筐体にまとめ、さらに、LDの音声をデジタル化したLDDにも対応可能なパイオニアCLD9000は、LD、CDともに、低域の厚み、安定感で、質的な向上があり、価格的にも文字どおりベストバイのトップランク商品だ。これに、CDのユーザーズビットのディスプレイが加われば完全だ。
 PCMプロセッサー関係はEIAJフォーマットが14ビットであること、長時間録音可能に対応する選曲や頭出し機能の問題などもあって、特殊なオープンリール的需要の域を出ないようだが、βIIIで使用可能なプロセッサー、ソニーPCM501ESは、リーゾナブルな価格も魅力的である。サウンドプロセッサー関係のdbx4BXはエキスパンダーとして最高のモデルで、この威力は、まさに、麻薬的な恐しい魅力とでもいえよう。待たれるのは、デジタルディレイユニットなどの登場である。

FMチューナーのベストバイ

菅野沖彦

ステレオサウンド 73号(1984年12月発行)
特集・「ジャンル別価格別ベストバイ・435選コンポーネント」より

 私の住居はFMレセプションに恵まれていて感度やマルチパスのトラブルにも悩むことなく、T字形フィーダーで間に合わせるという不心得を承知で怠けている。したがって、チューナーに関して物をいう資格はないと思うのだが、それでも、いくつかのチューナーを聴いてみると、その操作性やデザインはもちろん、音の違いに驚かされることがある。それぞれの価格帯からもれなく製品を推薦したが、たまたま自分が接したチューナーの中でよいものを上げたに過ぎず、他のチューナーとの間に歴然とした差が確認されたわけではない。ただ、ケンウッドのKT2020、KT3030は別で、この2機種の音は、明らかにベールをはいで、まるでFMステイションと自宅をラインで結線したような音の印象をもったものである。いい加減なアンテナで、こんな音が聴けるとは思わなかった……というのが実感である。

FMチューナーのベストバイ

井上卓也

ステレオサウンド 73号(1984年12月発行)
特集・「ジャンル別価格別ベストバイ・435選コンポーネント」より

 目覚しい発達を遂げたプリメインアンプに代表されるオーディオアンプに匹敵する高度な進歩をしたにもかかわらず、むしろ注目されないのがFMチューナーである。
 現状の県域放送をタテマエとするNHK・FM放送を中心に、コマーシャルに徹して音楽放送のプログラムソースをレコードにほとんどを依存する民放FM局が特別な地域で受信可能という、貧しい状況下では、FM放送の高い音質をもつ特徴も活かされていないわけだ。したがって、特別な要求がないかぎり、プリメインアンプのペアチューナーの選択が巻本と考えたいため、ベストバイの対象外としている。
 普及価格帯のモデルの性能の向上、機能の充実も見事であるが、シンセサイザーチューナーの性能を向上させ、アナログタイプの高音質にまで接近させた、ケンウッドKT3030の音場感情報の豊かさと、FM放送の魅力を再認識させた音は凄い成果だ。

パワーアンプのベストバイ

菅野沖彦

ステレオサウンド 73号(1984年12月発行)
特集・「ジャンル別価格別ベストバイ・435選コンポーネント」より

 独立型パワーアンプとなると、どこかでプリメインアンプのパワー部を超える何かがなければなるまい。その第一は大型スピーカーシステムを楽々とドライヴする能力。第二は「ちがう!」という印象を与える音質の高い品位と個性である。並のアンプとは次元がちがうということを感じさせるものであるべきだ。
 20万円未満では全面的に惚れ込めるものがなくパス。
 20万〜40万円ではアキエフェーズP300LとデンオンPOA3000Zをあげた。前者はC200L同様練りに練られた製品だけに、このクラスのアンプとして全く不満がない。音の生き生きした表情と鮮度は素晴らしい。後者は実に透明で、柔軟な質感と豊かなソノリティを聴かせながら力もある。また、パワーアンプとしては不必要なほどの美的仕上げも魅力の一つといえるだろう。
 40万〜80万円ではサンスイのB2301が弾力性のある音の質感で聴き応えがある。デザイン、仕上げはもう一歩。ハーマンカードンXIはシャープな現代感覚の冴えた音がユニーク。ヤマハBX1はモノアンプ構成で、パワーは大きくないがスピーカーに負けないドライヴ能力と強靭な音でありながら滑らかも魅力だ。アキュフェーズP600はあらゆる点で入念な作りだし、明晰な音には一点の陰りもない。しかも冷たくない。マランツSm700は輝やかしく張りのある音が豪華でありながら、過度に堕さない。マイケルソン&オースチTVA1は管球式だが実に熱っぽく力強く鳴る。だから音楽演奏のヒユーマニティが生きる。
 80万〜160万円ではオンキョーの新製品M510が力作。豪華下品な外観は好きではないが、このアンプの安定した音圧感はどこか一味違う。クレルKMA100の音は他にないよさを感じる。緻密で豊か。しかもベタつかない。パワーアンプでこんなに音が違うものかを強く実感させる素敵な個性と品位の高い音だ。マッキントッシュMC2255はマッキントッシュだけのもつ魅力だ。堂々たる音でいて繊細でしなやかな高域も美しい。大きくは、クレルKSA100、マッキントッシュMC2500にも同じことがいえる。特にMC2500については、このアンプのもつ500W+500Wというハイパワーの能力と、その音の緻密さを考え合せると、現代パワーアンプの最高峰といってよいだろう。

パワーアンプのベストバイ

井上卓也

ステレオサウンド 73号(1984年12月発行)
特集・「ジャンル別価格別ベストバイ・435選コンポーネント」より

 入力信号である電圧を、複雑な変動負荷であり逆起電力という招かれざる客をもつスピーカーに、電力として供給するパワーアンプは、コントロールアンプよりも平均的にレベルが高いといわれているが、その要因としては、トランス、放熱器といった重量物が多く使用され、機械的な強度が機構設計上要求されるために、電気対機構のバランスがよいものが出来やすいとも考えられる。平均的に、海外製品に比べ、機構設計面で不備な点が散見されるのは、残念ながら国内製品に多いようである。
 20万未満では、常識的なパワーアンプとは異なるが、素晴らしい機構設計が音質に活かされたボーズ1701は、異色のボーズ専用パワーアンプだ。ただし、対応の幅は予想外に広く、好結果が期待できる。標準型では、デンオンPOA1500あたりか。個性型は、QUAD405−2。
 20万〜40万円では、中級モデルが数多く選べべる価格帯。新しさと、内容の充実した点で、デンオンPOA3000Zの洗練された音の魅力、アキュフェーズP300Lの安心して使える信頼感の高い音は、ともに’84COTYに相応しい製品。また新しいヤマハの音を聴かせたB2x、完成度が高く、安定感のある、ビクターM−L10、マランツMA6も注目製品だ。独自の振動解析に基づく機構設計がダイレクトにデザインに活かされた京セラB910は、’84COTYに選ばれた製品だが、国内製品パワーアンプとしてベストバイとしてもトップ製品に値する見事な作品である。
 40万〜80万円では、予想外に最新モデルが少ない価格帯で、完成度の高さ、安定した実力を買うべきところで、嫌な表現だがアナログ的感覚で捉えたい印象が強い。伝統的モデルながら、新しいプログラムソースにも予想外の対応を示し、改めて新鮮な魅力を聴かせてくれるエクスクルーシヴM4aがトップの存在だ。マランツSm700、Sm11、ハーマンカードンXI㈵、ヤマハBX1も、なかなか魅力のある音を聴かせてくれる。
 80万〜160万円では、ベストバイの対象外と考えるため積極的には製品を選びたくない価格帯だ。
 印象深い製品では、ハーマンカードン/サイテーションXX、新製品では、オンキョーM510が、かなり個性型の音で新しい魅力が聴き取れるが、そのデザインの点では一考を要するといえよう。

コントロールアンプのベストバイ

菅野沖彦

ステレオサウンド 73号(1984年12月発行)
特集・「ジャンル別価格別ベストバイ・435選コンポーネント」より

 コントロールアンプという独立型のアンプはプリメインアンプにない美的味わいを感じられるものでなくては意味がない。ただ優秀なだけでは物足りない。またいかにデジタルソースが注目されているとはいえ、アナログレコードのイコライザーが並以上のクォリティでなければ評価は出来ない。同時に、デジタル対応としてライン入力の充実も必要であるのはもちろんである。それに加えて、仕上げ、操作性、デザイン感覚などを含むプラス・アルファの魅力が感じられなければ、このジャンルのアンプとして高く評価するわけにはゆかないとも思う。
 20万円未満からは残念ながら、惚れ込めるものがなかった。
 20万〜30万円には3機種。デンオンPRA2000Zはデザインにやや淋しさがあるが、すっきりした低歪感に、適度なふくよかさと滑らかさが加わり好ましい。ビクターP−L10は暖色のトーン、どっしりとした重厚なバランスで安定感のある音が魅力だし、仕上げも入念で軽薄さがない。エスプリTA−E901はソリッドで艶のある音色が、外装のメカニカルなイメージとマッチして、いかにも現代感覚に溢れる魅力がある。
 30万〜50万円の領域からはアキュフェーズC200Lを推した。デビュー以来10年のパネル、シャーシをフェイスリフトにとどめ、内容の充実に磨きをかけ、独特の艶麗な音質に風格が加わった。形は古さが否めないが、その分、嫌味がない。
 50万〜100万円では6機種が浮上したことからして、ここがコントロールアンプの中心帯と見ることが出来る。エクスクルーシヴC5はなんとも鈍重な外観が惜しいが、その透徹な音は評価出来る。サンスイC2301は新しい製品としての技術の新鮮さと伝統的なアンプ技術のバランスが魅力で、力感と透明な空間感の再現が見事。アキュフェーズC280は明晰で豊潤な高品位な音と入念の仕上げが内外に見られる力作である。カウンターポイントSA5はSN比も実用レベルに改善され音像が立体的でまろやか、しかも、解像力に優れ、募囲気満点である。マッキントッシュC29、C33は見てよし、聴いてよし、完成度の高い製品で、高級品で実用性の高いコンセプトは抜群のレベルにある。C29は堅実、C33はそれに情緒性が加わった心憎い音のまとめ。

コントロールアンプのベストバイ

井上卓也

ステレオサウンド 73号(1984年12月発行)
特集・「ジャンル別価格別ベストバイ・435選コンポーネント」より

 単純に考えれば、フォノイコライザーとフラット兼トーンコントロールアンプという代表的な構成で示されるコントロールアンプは、基本的に電圧増幅段のみであり、優れた製品が出来やすいようだが、アンプの分野では至難なジャンルといわれるだけに好製品は少ない。とくに、高級機では、単に高価格機となりやすく、国内製品では、各種の部品が予想外に入手難で専用部品の開発まで手がけるだけの英断がないと優れた製品の開発は困難のようだ。その点、海外製品は、それぞれ、個性的な回路設計と独自のサウンドバランスで、魅力的に音楽を聴かせてくれる特徴がある。
 20万未満では、これに相当する非常に充実したプリメインアンプと比較して製品数も少なく、内容もやや希薄な印象がある。需要が少ないことが最大のネックだろう。なかでも、素直で、適度に反応の早い音をもつ、デンオンPRA1000は、各種のパワーアンプに寄り添い型で対応し、なかなかの佳作だ。また、テクニクスSU−A6MK2のフレッシュさ、素直さもよい。
 20万〜30万円では、いわゆる、コントロールアンプらしい製品の存在しはじめる価格帯だ。なかでも、リフレッシュされたデンオンPRA2000Zは、華やかさは少ないが、純度が高く、ナチュラルな音は使い込むと次第に魅力の出るタイプの昧わいだ。また、ヤマハの回路設計技術の集大成と伝統的な機構設計が一体化したC2xは、新世代のヤマハサウンドの魅力があり、熟成し安定した音のビクターP−L10、独自の振動解析による機構設計がユニークな京セラC910のハイレベル入力からの緻密さのある音は、新しい魅力の芽生え。
 30万〜50万円では、本来信頼に足るべき性能、音質、デザインをもつコントロールアンプが存在すべき価格帯であるべきだが、予想外に製品数は少ない。創業以来のモデルナンバーを受継いだ、アキュフェーズC200Lの信頼感のある雰囲気、マランツSc11の温古知新的魅力も好ましいが、エクスクルーシヴC3aの風格は、このクラスとして別格の存在だろう。
 50万〜100万円では、エクスクルーシヴC5の内容は国内製品で飛び抜けた存在で、後続製品にとっての巨大な壁である。ダークホースは穏やかだが内容の濃いハーマンカードンXXP、大人っぽい魅力が特徴。

プリメインアンプのベストバイ

菅野沖彦

ステレオサウンド 73号(1984年12月発行)
特集・「ジャンル別価格別ベストバイ・435選コンポーネント」より

 プリメインアンプの価格ランクは4段階に分れているが、大ざっばにいって、価格の低いものにはスピーカーのドライブ能力の大きいもの、高価格クラスには、音の味わい、魅力、品格といったものを重視する見方をしたつもりである。したがって、8万円未満からは、一機種だけ、オンキョーのA817RXを選んだが、これは、このアンプが、この価格で大変力強く、豊かな音を聴かせる点で傑出したものだと思うからだ。もちろん、音色に非音楽的な癖が強かったりしては、いくら力強くても駄目だと思うが、このアンプの音は適度な華麗さと暖かさのバランスをもっていて聴き心地のよいものだ。
 8万〜13万円のゾーンは、プリメインアンプの激戦領域だけあって、優れた製品が目白押しに並んでいる。全体で10機種という枠の中で、6機種が、このゾーンからのものとなったのは必然だと思っている。
 中でのベストはケンウッドKA1100SDで、この音の洗練度の高さは、倍の価格でもうなづける。強靭な質感と繊細さ、そして豊かなプレゼンスをもち立派なものだ。NEC/A10IIは残念ながら親しく聴くチャンスに恵まれず、私には未知である。ユニークなのは、ラックスLV105で、スピーカードライブ能力の点で、やや弱さがあるので最音点にはしなかったが、この音の質感は他のアンプ群とはちがう自然さをもち、音のニュアンスう味わい深く再生するコニサー好みのものである。テクニクスSU−V10Xは、滑らかで透明な従来のテクニクスアンプに厚味と力強さが加わって、なかなか魅力的。サンスイAU−D707Xは、607Xのような空間感の漂いとは一味違ったソリッドな音で明る過ぎず、暗過ぎず、中庸の堅実型である。
 13万〜20万は、プリメインアンプとして標準を越える魅力が必要。この点、ヤマハA2000の内容外装共にきわめて洗練された美しさと能力の高さは評価しないほうがおかしい。サンスイAU−D907Xは、その充実のサウンドが超えている。
 20万以上は音の趣味性が必要な領域で、ラックスL550Xは50Wと小出力ながら、その音の熟成ぶりが断然光っている。E302はこれと対照的な輝やかしく艶やかなグラマラスな音。

プリメインアンプのベストバイ

井上卓也

ステレオサウンド 73号(1984年12月発行)
特集・「ジャンル別価格別ベストバイ・435選コンポーネント」より

 8万円未満では、10万円少し上の異常に充実したともいえる価格帯に比べて、やや、希薄燃焼型のモデルが多いようだ。内容の充実さ、電気的な設計と機構設計、それに音質の総合バランスでは、ビクターA−X900は、さすがに’83COTYに輝やいただけの実力で、現在でも断然トップ。続いて穏やかだが安定感のあるデンオンPMA940、ダークホース的存在が、オンキョーA817RX、マランツPM64。
 8万〜13万円では、選ぶより落す製品を出すほうが早い、というくらいに、見事な製品が並んでいる。総合的に見て、トップは、ビクターA−X1000だ。とくに、GMセレクターを−6dBとしたときの音場感の拡がりは素晴らしいの一語に尽きる。僅差で続くのが、柔らかいが芯のシッカリとした低域をベースとした洗練された音のパイオニアA150D、ナチュラルサウンドそのものの音をもつヤマハA1000、がベスト3、これに、活気のあるケンウッドKA1100SD、素直なデンオンPMA960、充実した安定型の音をもつマランツPM84、軽快な反応の速さを聴かせるテクニクスSU−V10X、個性派のラックスLV105、オンキョーA819RX、正統派のソニーTA−F555ESIIと、どれを選んでも誤りのないのが、以上の機種である。
 13万〜20万円は、本来は、プリメインアンプとしてもっとも内容の充実した、これぞプリメインアンプ、といったモデルが存在すべき価格帯であるが、このところ製品の数が非常に少ないのが残念であり、’84COTYにも該当製品はなく、推薦できるのは’83COTYに輝やく、ヤマハA2000のみがスポットライトを浴びる製品。
 20万円以上はスペシャリティの価格帯で、古くからアンプでは名だたるメーカー各社から、高級プリメインアンプへのチャレンジともいうべきモデルが送り出されたが、成功作と呼べる製品は、ケンウッドL02Aのみといっても過言ではあるまい。ラックス独自の構想と開発による、いかにもAクラス動作のパワーアンプらしい清澄な音をもつ L550Xは、やはり、’84COTYに値する貴重な存在である。好ましい純粋ラックスらしい趣味性は賞讃したいものだ。

ケンウッド L-02A

井上卓也

ステレオサウンド 72号(1984年9月発行)
特集・「いま、聴きたい、聴かせたい、とっておきの音」より

 管球アンプ時代のアンプといえば、ブリアンプとパワーアンプという、セパレート型アンプが一般的なタイプであり、それもプリアンプと専用電源部、パワーアンプと専用電源部という構成のものも多く存在し、プリメインアンプ、つまり、プリアンプとパワーアンプを一つの筐体に組込んだモデルが特殊な存在であった。
 ステレオ時代に入ると次第に管球アンプもプリメインアンプの形態をとることが多くなり、ソリッドステート化されるに及び、プリメインアンプがアンプの主流を占めるようになる。
 その基本的な回路構成は、フォノイコライザーアンプ、フラットアンプ兼トーンコントロールアンプとパワーアンプという3ブロック構成がスタンダードなタイプである。シンプル・イズ・ベストの思想とアンプ構成の単純化による原価低減、さらにMCカートリッジが主流を占めるなどの背景により、現在のプリメインアンプは、ハイゲイン・フォノイコライザー部とパワーアンプの2ブロック構成がベーシックな回路構成になっている。
 一方において、シンプル・イガ・ベストの思想に基づいてアンプとしてのクォリティの向上を追求する傾向が古くから一部に存在し〝イコライザー付きパワーアンプ〟をキャッチフレーズとして最初に開発されたモデルが、たしか、ラックスの5L15であったように思う。
 この、二つのプリメインアンプの動向をベースに、ここで、取上げた、ケンウッドL02Aを考えてみることにしたい。
 もともと、トリオのプリメインアンプには、初期から利得配分で他社にない特徴があったようだ。ソリッドステートアンプが完成期を迎えた時期のトリオの名作プリメインアンプといわれたKA6000では、フォノイコライザーアンプ、ゼロ利得のトーンコントロールアンプと、ハイゲインパワーアンプの3ブロック構成で、パワーアンプの入力電圧は、たしか0・2V程度でフルパワーとなる、いわば英クォードのセパレート型アンプ的な特徴があった。つまり簡単に考えれば、一般的には20dB程度の利得をもつ、フラットアンプ兼トーンコントロールアンプを通すことによる音質の劣化を避けた点に特徴があるともいえる設計である。
 L02Aは独立した電源部とプリメインアンプ部の2ブロック構成をもち、機械的にアンプ部と電源部を一体化してブリメインアンプ化も可能であり、その回路構成は、ハイゲイン・フォノイコライザー部とパワーアンプ部の2ブロック構成という特異性の強いモデルである。各種の条件から考えて、やはりトリオ/ケンウッドのブランドにおいてもっとも誕生しやすい土壌があったと考えてよいだろう。
 この、特異ともいうべき超高価格な製品を、ブリメインアンプの最高峰に位置するモデルとして市民権を獲得し、世に認めさせるとともに、営業的にもそれなりの成功を収めたことは、その性能に裏付けさせられた音質面の優位性、ブランドの信頼感の高さに加えて開発スタッフのオーソドックスなアプローチと努力の賜として賞讃を送りたいものである。
 一方において、L02Aはプリメインアンプという形態を採用しているだけに、これとペアになるチューナーの存在も大きな意味を持つことになる。この点でもFMのトリオに相応しく、FM専用チューナーL02Tの存在は不可欠なものだ。
 ちなみに、このL02Tの音は、数多くの高級FMチューナーが存在するが、バリコンを同調回路に使うFMチューナーとして、かつてのマランツの♯10Bの再来を思わせる素晴らしさであると思う。
 L02TとL02Aのペアは、個人的にも、リファレンスFMチューナーとリファレンス用プリメインアンプとして、長時間にわたり、その大役を果している。L02Aは、CDや、ハイファイVTR登場以前の開発であるため、現状ではややファンクション系の不足があること、セパレート電源部方式を採用しているため、アンプと一体化しても、電源供給ラインにコネクターが入ってしまう点などの小さな問題点も存在はするが、上昇量が切替可能であり、パラメトリックイコライザー的に周波数が可変できるラウドネスコントロールは、各種のスピーカーをコントロールルするときに予想以上に有効に働く機能であり、ナチュラルな帯域バランスと、素直な音色、ストレートで伸びやかであり誇張感のない音は、基本的なクォリティが高く、作為的な効果を狙った印象が皆無であるのが好ましい。
 また、いろいろと話題を提供した独自の㊥ドライブ方式も、スピーカーコードの影響を皆無とすることは不可能であるが、スピーカーシステムをアクティブにコントロールし、追込んで使いたいときにはかなり有効な手段であると思う。
 L02Aは、プリメインアンプの頂点をきわめた立派なモデルであるが、マルチプログラム時代になり、高品位、ハイレベル人力のプログラムソースが増加する今後のオーディオにとっては、セパレートアンプよりも合理的なアンプの原型として、この形態は、見直してしかるべきものと思う。

ビクター P-L10, M-L10

井上卓也

ステレオサウンド 72号(1984年9月発行)
特集・「いま、聴きたい、聴かせたい、とっておきの音」より

 ビクターのラボラトリーシリーズのコントロールアンプP−L10とパワーアンプM−L10は、いま、聴いておきたい音、というよりは、いま、安心して聴ける音、といった性格のセパレート型アンプである。
 従来からもビクターには、オーディオフェアなどで見受けられた一品生産的な特殊なモデルを開発する特徴があったが、その技術をベースに、薄型コントロールアンプの動向に合せた7070系のコントロールアンプと、いわゆるパルス電源を初めて採用したモノ構成の7070パワーアンプをトップランクの製品として持ってはいたが、ビクターのセパレート型アンプとして最初に注目を集め、多くのユーザーの熱い期待を受けたモデルは、パワーアンプのM7050であろう。
 これらの従来から築きあげた基盤の上に、アンプの基本思想として、忠実伝送と実使用状態における理想動作を二大テーマとして、ラボラトリーシリーズのセパレート型アンプとして1981年秋に開発されたモデルが、P−L10とM−L10である。
 コントロールアンプP−L10は、かつてのソリッドステート初期に、グラフィックイコライザー(SEA)を搭載した超高級コントロールアンプとして注目を集めたPST1000以来、久しぶりに本格派のコントロールアンプとして総力を結集して開発された意欲的なモデルである。
 最新の技術的産物としてのアンプではなく、音楽性追求のための技術という考え方を基本にして開発されただけに、例えば、音量を調節するボリュウムコントロールには、一般的に抵抗減衰型のタイプが使われるが、これでは可変抵抗器が信号ラインに入り接点をもつために、位置による音質のちがいが生じやすい点が問題にされ、アンプの利得を可変にすることにより音量を変える新開発Gmプロセッサー応用のボリュウムコントロールが採用されている。
 このタイプは、ボリュウムを絞っていけば、比例してノイズも減少するため、実用状態でのSN比が大幅に改善され、結果として、音場感情報が豊かになり、クリアーな音像定位や見通しのよい広い音場感が従来型に比較して得られる利点がある。このバリエーションとして、昨年来のプリメインアンプA−X900やA−X1000にスイッチ切替型として採用されているが、この切替えによるSNの向上が、いかに大きく音場感再生と直接関係しているかは、誰にでも一聴して判かる明瞭な差である。
 また、フォノイコライザーでのGmプロセッサーの応用にも注目したい。入力電圧を電流に変換増幅後、その電流をRIAA素子に流す単純なイコライザー方式は、CR型の伝送・動特性とNF型の高域ダイナミックレンジを併せ持つ特徴があり、電圧を電流に変換する変換率を変えればトータル利得を変化できるため、MMとMCポジションで性能、音質が変わらず、トータルな周波数特性はRIAA素子のみで決定されるため、RIAA偏差は自動的に100kHzまでフラットになることになる。
 フォノ3系は低出力MC用ハイゲインイコライザーで、入力感度は70μVと低いが、SN比は非常に優れているのが特徴である。外装は、ビクター独自のお家芸ともいえる高度な木工技術を活かした、21工程に及ぶ鏡面平滑塗装仕上げ、これは見事だ。
 ステレオパワーアンプM−L10は、ビクター独自のスイッチング歪をゼロとした高効率A級動作方式〝スーパーA〟の技術をベースに、スピーカー実装時のアンプの理想動作を追求した結果、全段カスコード・スーパーA回路を新採用している。この回路も、実際の試聴により、スピーカー実装時のアンプ特性劣化や、音楽再生時のTIM歪や発熱による素子のパラメーターの変化に注目した結果、優れた回路方式として採用されている点に注目したい。
 この方式は、パワー段までカスコード・ブートストラップ回路を開発し、採用しているため、出力段のパワートランジスターは数ボルトの低電圧で動作し、電流のみ変化する特徴があり、電圧と電流の位相がズレるスピーカー実装負荷でも、ダミー抵抗負荷と同じ動作、性能が確保され、アンプは負荷の影響を受けない利点がある。また、低電圧動作のパワー段は、発熱量が低く、従来型に比較してスピーカー実装時の瞬間発熱量は1/10以下となり、サーマルディストーションの改善とアイドリング電流の安定化にもメリットがある。
 構成部品は、エッチングなしのプレーン箔電解コンデンサー、高速ダイオード、高安定金属皮膜抵抗、低雑音ツェナーダイオードなど定石的な手法が各所に認められる。
 外装は、平均的に16工程程度とされるピアノ塗装を上廻る21工程の鏡面仕上げローズ調リアルウッドのキャビネット採用。
 定格出力時、160W+160W(20Hz〜20kHz・8Ωで、THD0・002%)周波数特性DC〜300kHz−3dBの仕様は、セパレート型アンプとしてトップランクの特性である。
 P−L10とM−L10のペアは、充分に磨き込まれた、安定感のある、タップリとしたナチュラルな音が特徴である。各種のキャラクターが異なるスピーカーシステムに対しても、ナチュラルな対応性を示し、それぞれの特徴を活かすセッティングも、個性を抑えたセッティングも、かなりの自由度をもってコントロールできるようだ。
 好ましいアンプというものは、個性的なキャラクターの強い音をもつものではなく、結果として、電気信号を音響エネルギーとして変換するスピーカーシステムに対して、充分なフレキシビリティをもって対応可能なことと、聴感上でのSN比が優れ、音場感的情報量をタップリと再生できるものであるように思う。
 この意味では、このセパレート型アンプのペアは、発売以来3年を迎える円熟期に入ったモデルであるが、各種のスピーカーシステムに対する適応性の幅広さと、ビクターの伝統ともいうべき、音場空間の拡大ともいうべき、音場感情報の豊かな特徴により、現時点でも、安心して聴ける音をもつ、セパレートアンプとして信頼の置ける存在である。

テクニクス SE-A1、ヤマハ 101M

井上卓也

ステレオサウンド 72号(1984年9月発行)
特集・「いま、聴きたい、聴かせたい、とっておきの音」より

 セパレート型アンプのジャンルでは、コントロールアンプに比較して、パワーアンプに名作、傑作と呼ばれる製品が多い傾向が強いように思われる。
 こと、コントロールアンプに関しては、管球アンプの以前から考えてみても、いま、残しておきたい音というと、個人的には、管球アンプのマランツ♯7と、ソリッドステート以後ではマーク・レヴィンソンLNP2の2モデルしか興味がない。
 これに比較すれば、パワーアンプではいま聴きたい音、あるいはとっておきたい音は数限りなくあるといってもよいし、個人的にもパワーアンプのほうが好きなようで、手もとに残してある製品を考えても、パワーアンプの総数はコントロールアンプの3倍はあると思う。とくに、この号が発刊される頃(秋)は、感覚的にも、管球アンプを使いだすシーズンであり、音的には体質にマッチしないが、マッキントッシュMC275を再度入手したいような心境である。
 国内製品でも、パワーアンプには興味深い製品が数々あり、AクラスパワーアンプのエクスクルーシヴM4、全段FET構成のヤマハBI、 ハイパワー管球アンプのデンオンPOA1000Bなどは、オーディオの夢を華やかに咲かせた。それぞれの時代の名作であり、コレクション的にも興味のある作品と思う。
 パワーアンプでAクラス増幅の高品位とBクラス増幅の高効率が論議され、各社から各種のBクラス増幅のスイッチング歪とクロスオーバー歪を低減する新方式が開発された時点で、スイッチング歪とクロスオーバー歪の両方が発生せず、しかもAクラス増幅で350W+350Wという超弩級のパワーをもつ驚異的なパワーアンプとして、テクニクスから1977年9月に登場した製品がテクニクスA1だ。
 テクニクスの伝統ともいうべきか、全段Aクラス増幅のDCコントロールアンプのテクニクスA2と同時に発表されたA1は、独特のコロンブスの卵的発想によるAプラス級動作と名付けられた新方式を採用した点に最大の特徴がある。
 基本構想は、スイッチング歪とクロスオーバー歪が発生しない低出力A級増幅パワーアンプの電源の中点をフローティングし、別に独立した電源アンプで信号の出力増幅に追従するようにA級増幅アンプの電源中点をドライブするという2段構えの構成での高効率化である。
 これにより、アンプの外形寸法はA級増幅の100W+100Wなみに抑えることが可能となり、しかも強制空冷用のファンなしの静かなパワーアンプが可能となったわけだ。またこのモデルは、入力や出力のカップリングコンデンサーや、NFBループ中にもコンデンサーのないDCアンプを採用しながら、DCドリフト対策として、出力のDCドリフト成分を信号系とは別系統の系を通してDCドリフトの要因となる回路素子に熱的にフィードバックし、素子間の温度バランスを補正し、DCドリフトの要因そのものを打消すアクティブサーマルサーボ方式を採用していることも特徴である。
 機能面は、4Ω、6Ω、8Ω、16Ωのスピーカーインピーダンスによる指示変化を切替スイッチで調整可能の対数圧縮等間隔指示のピークパワーメーター、レベルコントロールによりプリセット可能な4系統のスピーカー端子、2系統の入力切替、電源のON/OFFのリモートコントロールなどが備わっている。
 周波数特性、DC〜200kHz −1dB、スルーレイト70V/μsec、350W+350W定格出力時(20Hz〜20kHz)で0・003%のTHDと、スペックのどれをとってもパワーアンプとして考えられる極限の性能を備えていた。しかも、業務用ではなく、純粋にコンシュマーユースとして開発された点に最大の特徴がある製品だ。
 柔らかく、穏やかな表情と、しなやかで、キメ細かい音が特徴であったが、余裕たっぷりの絶大なスケール感は、ハイパワーであり、かつ、ハイクォリティのパワーアンプのみが到達できる独自の魅力で、現在でも鮮やかに印象として残るものである。今あらためて、ぜひとも最新のプログラムソースと最新のスピーカーシステムで聴いてみたい音だ。また、このAプラス級増幅方式と共通の構想として、それ以後、エクスクルーシヴM5、ヤマハB2xなどが誕生していることも、見逃せない点だ。
 1982年末に、500W十500Wという超弩級ステレオパワーアンプとして初登場したモデルが、ヤマハ101Mである。外観のデザイン面からも判然とするように、ヤマハ一連のアンプデザインと異なった印象を受けるが、基本構想はレコーディングスタジオでのモニターアンプ用として開発されたモデルでナンバー末尾のMは、モニターの意味であると聞いている。
 構成は、筐体は共有しているが、内部は電源コードまでを含み完全に左右チャンネルは独立した機構設計をもっている。人力系は、欧米でのスタジオユースを考えオスとメスのキャノン型バランス入力とRCAピンのアンバランス入力とレベルコントロール、さらに、BTL切替スイッチが備わり、BTL動作時は、1500W(8Ω)のモノパワーアンプになる。なお、出力系は、切替スイッチはなく、1系統のダイレクト出力端子のみ、というのは、いかにも、プロフェッショナル仕様らしい。
 パワー段は、+−70V動作のメタルキャンケース入り、Pc200Wパワートランジスター5パラ動作をベースに、+−120V動作の4パラ動作が必要に応じて加わる方式で、ヤマハ独白のZDR方式採用でパワーパワー段での各種歪、スピーカーの逆起電力による歪までをキャンセルし、定格出力時THD0・003%は、見事な値だ。
 音の輪郭をシャープに描き出し、ストレートに力強い表現をする音は、一種の厳しさをも感ずる凄さがあり、国内製品として異次元の世界を聴かせた印象は今も強烈だ。

マランツ Sc1000, Sm1000

井上卓也

ステレオサウンド 72号(1984年9月発行)
特集・「いま、聴きたい、聴かせたい、とっておきの音」より

 マランツの製品は、創業期から現在にいたるまで、比較的に、コントロールアンプとパワーアンプのバランスがよいモデルを送り出していることに特徴があるようだ。
 いまも聴きたい音という意味からは、かつての管球アンプ時代の♯7コントロールアンプと♯2モノパワーアンプ×2の組合せは、私個人にとってはマランツの最高傑作と信じている黄金のペア、いや、トリオである。
 コントロールアンプは、ステレオタイプとなり♯7で完成の域に達したが、パワーアンプは、♯5、ステレオタイプ♯8B、♯9と発展をする毎に、製品としての合理性、商品性、安定度などは確実に向上をしているが、パワーアンプとしての魅力は、次第に後退し、♯2の印象は♯5ですでに消失しているように感じられる。
 ソリッドステート化第一作の、♯7Tコントロールアンプ、♯15パワーアンプは、第一作という意味での不安感が少なく、完成度も充分にあり、現在でも少し古いディスクを再生するときにはなかなか楽しめる音を聴かせるペアである。
 ♯15に続く、♯16以後、しばらくの期間は、パワーアンプは、♯250、♯510と続くが、コントロールアンプが不作の時代である。
 基本設計を米国で、実際の開発と生産を国内で行なおうとする、いわば新世代のマランツの製品は、不巧の名作といわれたプリメインアンプ♯1250が代表作になるわけだが、トップランクのセパレート型アンプを目指して、より良き伝統を受継ぎながら最新のテクノロジーとデバイスをマランツらしく生かして久し振りに開発された第1弾作品が、400W+400Wのパワーを備えたステレオパワーアンプSm1000である。
 パワー段は、メタルキャンケース入りのパワートランジスター3個パラレルに対して1個のドライバーを組み合せたものを1組とし、これを、3個組み合せて、3段ダーリントン方式の出力段としている。つまり、3×3=9が+側と一側にあるわけだから、片チャンネル18個のパワートラジスターを使っていることになる。
 ハイパワーアンプの放熱対策は、重要な機構設計上のポイントになるが、Sm1000では、空冷用ファンを組込んだ、風洞型の放熱器を♯510から受継いで採用している。この方式により、400W+400Wの定格出力を持ちながら、外形寸法面でのパネルの高さを抑え、比較的に薄型にすることを可能としている。
 風洞内部には、両チャンネル用の36個のパワートラジスターと12個のドライバーが組込まれているが、風洞内で均等に各トランジスターを冷却するために、風下にいくに従って冷却効果を高めるために長さが次第に長くなっているサブ冷却フィンが整然と並んでいる様は、視覚的にも美しく、一見に値する眺めではあるが、容易に外側から見られないのが大変に残念な点である。
 電源部は、伝統ともいうべき強力タイプで、左右独立した800VAの容量をもつカットコア採用の電源トランスと20000μF、125Vのオーディオ用コンデンサーを+側と一側に2個採用したタイプで、一部を積上げ電源として使うスタック型パワーサプライ方式である。
 入力系は、レベルコントロール付で、アンバランス型のRCAピンジャックと、1と2番端子がコールド、3番端子ホットのキャノンプラグ付、出力系は、ダイレクト端子と切替可能なSUB1とSUB2の3系統をもつ。
 Sm1000は、基本的には、無理に帯域を広帯域型としないナチュラルなバランスと、クッキリと粒立ちがよく、音の輪郭をクリアーに描き出す、ダイナミックで力強い♯510系の延長線上に位置する音をもっている。いかにも、マランツらしいイメージをもつ、ストレートさが最大の魅力と思う。後継モデルのSm700の、しなやかで明るく、音場感を広く再現する性質とは対照的で、安定感のある力強い長兄と、伸びやかで、現代なフィーリングをもつ次男といったコントラストが面白い。
 コントロールアンプSc1000は、Sm1000に続くパワーアンプSm700と、ほぼ同時に開発されたマランツのトップランクコントロールアンプである。
 基本構成は、シンプル・イズ・ベストであり、ディスク再生における最高の音楽表現を目指し、入力から出力までのスイッチなどの接点数を極少とし、裸特性を極限まで追求した増幅回路、負荷電流の変動にいかなる影響も受けない超低インピーダンス化した理想的電源部などがポイントだ。
 フォノイコライザーは、A級動作、全段プッシュプル構成DCアンプを2段使ったNF・CR型、機械的に連動と非連動に変わるバランスコントロールを省いたボリュウムコントロールと、それ以後は、2系統に分かれ、それぞれ専門の出力端子をもつフラットアンプとトーンコントロールアンプをパラに設置したユニークなブロックダイアグラムを特徴としている。なお、電源部は筐体の半分を占める、各ユニットアンプ間チャンネル間の干渉を排除した8独立電源で、事実上のインピーダンスを0としたシャントレギュレ一夕一方式を採用している。また、TUNER、AUX用とTAPE入力用にバッファーアンプを備えているのも特徴である。
 基本的には、アナログディスク再生に焦点を合せたコントロールアンプではあるが1981年当時の設計としては、フラットアンプの性能が追求されており、ハイレベル入力系に対してカラレーションのない音を聴かせるのが本機の特徴である。特徴の少ない音だけに、最初の印象は薄いかもしれないが、使込んで次第に内容の高さが判かってくる。これこそ、いま、聴きたい音である。

サンスイ C-2301

菅野沖彦

ステレオサウンド 72号(1984年9月発行)
特集・「いま、聴きたい、聴かせたい、とっておきの音」より

 C2301というサンスイのコントロールアンプはぼくが目下、大いに興味をもっている製品である。まだ新しい製品なので、ぼくも、それほど長くじっくりと使ったわけではないし、恐らく、これからファンが増えてくるアンプだろう。ぼくにとっては、国産、海外製を問わず、多くのコントロールアンプと接触する中で、これは、本気になってつき合ってもいいなという気を起こさせるアンプなのだ。
 ぼくの部屋にはアンプ棚がある。ここには六段の棚があって、一段に2台ずつのアンプが置けるから、計12台の収納が可能である。そのうち、コントロールアンプのためのスペースとしては、使用上の高さなどからして最上段や最下段は不適当だから、中三段ぐらいということになる。しかし、他にも、CDプレーヤーやチューナーも置かなくてはならないから、4〜5台というところがコントロールアンプのためのスペースだ。ここにある時期、継綻的に収まるものは、結果的にいって、ぼくの好きな製品ということになる。もちろん、好きなものでも、古いものは他の場所に片づけたり、あるいは、一時的に他のものと入れ替えたりすることがあるし、ほとんどが使わないのに、JBLのSG520とマランツの7Tは飾り物と化して居坐ったままというのが現実である。このJBLとマランツは、コントロールアンプのデザインの、偉大で対照的なクラシックだと自分では思っているので、想い出も含めて、どうも片づけてしまう気がしないのである。それはともかく、この棚には、こんなわけで、長年、収まりかえっているものや一日か数時間で取り出されてしまうものがあって、
ぼく自身も、結果的に、自分との関わり合いの濃淡を感じさせられることになるのである。ここにひと月以上入っているというのは、明らかにぼくの気を惹いた製品、三ヵ月になると、愛の芽生えたもの、半年を超えると相思相愛、一年以上同じ場所に居続けた製品は、伴侶である。なんとなく、こんな因果が、この10年くらいの間に出来上がってしまったようなのだ。コントロールアンプのアウトプットをつなぐパワーアンプ群は、ほとんど、この棚の裏部屋に収まっているので前からは見えないが、ここにも、これと似通った状況が見られるのである。
 サンスイのC2301は、まだ、合計で数時間しか、この棚に収まったことがない。しかし、その数時間で、それっきりになってしまわないなにかが、このコントロールアンプにあることを、ぼくはずうっと意識させられていたのである。本誌70号の新製品紹介記事を書くために聴いたC2301の音の魅力が頭から去らないのであろう。あの時、ぼくは、その音を耽美的な情感に満ちていると書いた。また、音楽に人間の生命の息吹きや、感情的高揚を求め彷徨している快楽主義者であるぼく……などと気恥ずかしい告白もやってのけた。天上の音楽を奏でるに相応しい無垢の音とは感じなかったけれど、それだけ暖か味のある魅力を、このアンプから感じ取ったことはたしかである。そして、〝ぼくにとってはこれでよい。いや、このほうがよい。色気がある音だから…〟と書いたのを覚えている。C2301は、明らかにぼくの情感を刺戟した。リビドーを感じさせた。アンプによっで、こうしたレスポンスを心の中に呼び起こすものと、そうではないものとがあることは一つの不思議である。その不思議ゆえにオーディオは面白く、また、その不思議と、科学的な技術問題の関連をさぐること、識ることが、オーディオの尽きない興味である。
 ルドルフ・フィルクスニーの慈愛と高潔の精神に満ちた音が、月並みな甘美さにしか聴こえなかったり、ひどい時には脆弱で鈍い音にしか聴こえなかったりする経験をぼくは知っている。この名ピアニストの、しかも、ぼく自身が録音したレコードによってさえ、ぼく自身にあれこれ聴こえるオーディオの音は、時として面白さを越えて恐ろしくすらある。C2301は、フィルクスニーを甘美に、そして、セクシーに響かせる。そこに、ぼくはこのアンプの魅力と不安を感じているのである。この稿を書く気になったのも、その魅力と不安からであった。そして、今、再び、C2301はぼくの部屋の棚に収まっている。一日ゆっくり、いろいろなレコードを聴いてみた。そして、ぼくは、一段と大きな魅力を、このコントロールアンプに感じ始めているのである。基本的には、ぼくの第一印象は間違っていなかった。しかし、聴けば聴くほど、そのヒューマンな暖か味と、情感の魅力の再現に惹かれていく自分を発見した。

Do me wrong Do me right Tell me lies But hold me tight Save your goodbyes For the morning’s light But don’t let me lonely tonight

 ローズマリー・クルーニーの歌う一節である。この人生経験豊なべテラン歌手の歌唱は見事という他はない。まさに熟女の官能とペイソスである。都会的である。
〝今夜だけは私を一人ぼっちにしないで……。しっかり抱いて……。さよならは夜が明けるまで云わないでほしいの……。〟
 理性と感情が、官能の虜の中でゆれ動く、この円熟した女の心と身体を深く美しく歌いあげる彼女、ローズマリー・クルーニーの表現は、このC2301の音の魅力と同質である。これ一曲を聴くためだけでも、このアンプの存在価値は高いといってもよいほどだ。
 このアンプが、これから、どんな音を聴かせてくれるかは大きな期待である。B2301とのバランス接続で聴いてもみたい。まったく異質なアンプとの組合せの妙も試してみたい。私のアンプ棚で、どんな存在になるのかは、私自身にも、今はわからない……。

パイオニア A-150D

井上卓也

ステレオサウンド 71号(1984年6月発行)
「BEST PRODUCTS」より

 パイオニアから、従来のA150に替わるモデルとして発売されたA150Dは、デザイン的には、オプションのサイドパネルを除き変更はないが、その内容面は、大幅な変更を受け、基本から完全に新設計された、意欲的な新製品である。
 基本的な特徴は、電源トランスを含め左右独立したモノーラル構成のパワーアンプと、同じく、電源トランスを含む、小信号系の独立したイコライザーアンプという、3ブロックに分割した内部構成にある。
 パワーアンプの左右チャンネルをモノーラル構成とするメリットは、左右の信号の相互干渉がなく、混変調歪、セバレーションが優れ、聴感上では、音場感的な空間情報量が豊かであり、音像定位がクリアーになる特徴がある。また、小信号系を分離すれば、変動が激しいパワーアンプの影響を受けず、音質向上が計れることば、セパレート型アンプのメリットにつながるものだ。
 簡単に考えれば、プリメインアンプでセパレート型アンプに近似したメリットを実現させようという考え方で、一時は、この動向がプリメインアンプの主流を占めた時代があったが、最近では、主に価格的な制約が厳しいため、採用される例は少ない。
 このタイプで問題になるのは、構造面の機構設計の技術である。プリメインアンプであるだけに、同じ筐体内に、分割したブロックを組込むためのスペース的な制約は厳しく、この部分の設計が、目的を達成するか否かにかかわる鍵を撮っている。
 パワーアンプは、A150のノンスイッチング方式を発展させた、ノンスイッチング回路タイプIIと呼ばれるタイプで、従来型の100kHzまでのノンスイッチング動作から、100kHz以上までと動作領域を広帯域化している。また、B級増幅のアイドリング電流のドリフトに起因するサーマル歪や出力段で発生する非直線歪に対して、新しくアイドリング電流を電源スイッチ投入直後や大きな信号が入った直後にも、瞬時に安定化する特殊回路が開発され、出力段の歪みは従来の1/10となっているという。
 経験的に150W+150Wクラス以上のパワーアンプでは、一般的な試聴のように、数分間程度信号を加えて音を聴き、数分間、音を止め、再び音を出す、という間欠的な動作をさせると、音を出した最初の10〜20秒位の間は、音が精彩を欠いており、これが次第に立上がって本来の音になることを常々体験し、温度上昇との因果関係をもつことを突きとめてはいるが、アイドリング電源の安定度との相関関係も非常に興味深いものがある。
 このところ、スピーカーのインピーダンスは、従来の8Ωから6Ωに主流は移行する傾向を示していることの影響をも含めて、パワーアンプの低負荷ドライブ能力が、再び、各メーカーで検討されているようだ。
 A150Dも、低負荷ドライブ能力の向上は、設計上での大きなテーマであり、パルシプな入力がスピーカーに加わった立上がり時に、見かけ上のインピーダンスが、サインウェーブで測った公称インピーダンスより低くなる動的インピーダンスに対しての駆動能力を確保する必要性を重視した結果、パワーアンプは、電流供給能力を増強した設計で、4Ω負荷時190W+190W、2Ω負荷時で270W+270Wが得られると発表されている。
 機能面は、トーンコントロール回路や、モード切替えスイッチをパスさせて、信号系路をシンプルにするラインストレートスイッチ、多様化するプログラムソースに対応するための、5系統の入力切替えスイッチと2系統のテープ切替えスイッチを備えている。なお、MC型カートリッジは、A150同様に、昇圧トランスを使い、3Ωと40Ωが切替え使用できるタイプである。
 リアパネルのスピーカー端子は、太いスピーカーケーブルの使用に対応するため、ターミナルのコード接続部の開口は、3×5φmmと大きく、構造的には、2枚の金属板を庄着するタイプが採用されている。
 試聴は、JBL4344、ソニーCDP701ES、バイオニアP3a十オルトフォンMC20IIを使う。
 外観的には、オプションのウッドボードをボンネットの両側に取付けると、かなり大人っぽい落着いた雰囲気になる。各コントロールは、適度に明解さの感じられる節度感のある感触があるが、大型のボリュウムのツマミは、A150と格差を感じる金属削り出しに格上げされ、そのフィーリングは高級磯らしい好ましいものだ。
 また、機構面も目立たないところだが、A150と比較すれば確実にコントロールされており、ボンネットや内部の機械的な共振や共鳴が抑えられ、手でたたいてみても、雑共振が尾を引いて響くことはない。
 音質面でのA150Dの最大の特徴は、従来の、豊かで柔らかい低音から脱皮した、余裕のある力強い安定した低音への変化である。この新鮮な感覚の低域をベースとして、密度感があり、気持よく抜けた中域とナチュラルな高域が巧みにバランスを保ちスムーズに伸びた帯域バランスを聴かせる。基本的なクォリティは、充分に高く、A150に対する価格の上昇を償って充分以上の内容の向上である。
 音色は、ほぼ、ニュートラルであり、アンプの本質がもっとも現われる、音場感の空間情報量や音像定位のクリアーさでも従来とは一線を画したパフォーマンスだ。
 オプションのサイドパネルを取付けると、制動効果で音は少し抑えられるが、クォリティ的には少し向上する傾向が聴き取れる。総合的に、電気系、機械系のバランスが大変に優れた、注目すべき新製品である。

デンオン PMA-960

菅野沖彦

ステレオサウンド 70号(1984年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より

 デンオンのプリメインアンプの新製品として昨年暮に市場に出たPMA960は、プリメインアンプとしては10万円を超える価格からして、明らかに高級製品といえるものだろう。たしかに、内容の充実は目を見張るものがあり、物量面と、ハイテクノロジーがふんだんに盛り込まれた力作であることが解る。しかし、残念ながら、そのデザインやフィニッシュに、新鮮味が欠けるため、うっかりすると、旧製品として見過してしまうような雰囲気のアンプである。反面、オーソドックスで、おとなしい外観のもつ地味な容姿は嫌味のなさともいえるかもしれないが……。のっけからこんな苦情をいいたくなったのも、このアンプの技術的な斬新性と、その音のもつ大人の風格に大きな魅力を感じさせられたからであって、そこそこの仕上りではある。
 このアンプの技術的特徴は、同社のデュアル・スーパー無帰還回路と称する伝送増幅方式と、それをバックアップする余裕のある電源部であろう。ピュアー・ダイナミック・パワーアンプという名称とは印象の異なる、おだやかで、ウォームな音のするアンプだが、優れた特性のアンプというものは、決して形容詞的に使われるダイナミズムやパンチが表に出てくるものではないようだ。このアンプのように、別にどうということのない、自然な鳴り方にこそ、アンプの特性の優秀な点が見出されるように感じられるのである。このアンプのメーカー資料に書かれている一言一句は、すべて力と迫力を感じさせるものであるのが不思議な気がする。もっとも、これは、このアンプだけではなく、アンプというものが、スピーカーをドライブするパワーの役割を担うところから、こういうアピールをするメーカーがほとんどだが……。
 6Ω負何で170W+170Wというパワーは、プリメインアンプとしては大出力アンプといってよいが、試聴感としては、むしろ、ローレベルのリニアリティ、つまり、小出力時のSN比のよさ、繊細な響き分けといった面に印象が強く、魅力が感じられた。大型スピーカー(JBL4344)を手玉にとって、これ見よがしの迫力を聴かせるような荒々しさや雄々しさといった面はこのアンプの得意とするところではなさそうだ。初めに、大人の風格と書いたのはこの辺のニュアンスである。しかし、どちらかというと、ややナローレンジの感じさえする柔らかい質感が捨て難い魅力のアンプであって、音が大きくても、うるささは感じられないといった自然な音の質感に近い鳴り方をする。色に例えればオレンジ系の暖色である。とげとげしく、冷徹なメカトロニクスのフィーリングが氾濫する中で、こういう雰囲気のアンプは貴重な存在といえるだろう。欲をいえば、低域の実在感、深々とした奥深い響きが望まれる。

サンスイ C-2301

菅野沖彦

ステレオサウンド 70号(1984年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より

 サンスイのアンプは、AUシリーズのプリメインアンプ群の充実したラインが確固たる基盤を築き、すでに8年にわたって基本モデルを磨き上げ、多くの技術的特色を盛り込みながらリファインにリファインを重ねるという、地道な歩みを続けている。初期のものと、8年後の現在のものとでは、中味は別物のアンプといってよいほど充実していながら、型番やデザインを変更せずに、また、音のポリシーも一貫したサンスイの感覚で練り上げるという地に足のついた姿勢は誰もが認めるところであろう。まさにオーディオ専門メーカーらしい自信と頑固さといってよく、また、それゆえに、今回の信頼と成果が得られたといってよい。当然、より上級のセパレートアンプの開発は技術者の念頭に常にあったにちがいないが、安易に商品として出さない周倒さも、このメーカーらしい用心深さというか、今か今かと待っていたこっちのほうが、じりじりさせられたほどである。
 82年暮に、パワーアンプB2301が発表され、続いて翌83年初頭に、その弟分ともいえるB2201が満を持して発売された事は記憶に新しい。このパワーアンプは、さすがに実力のある内容で、その分厚く、どっしりとした音の質感は、豊かな量感を伴って、音楽の表現の暖かさと激しさを、そして、微妙な陰影に託した心のひだを、よく浮彫りにしてくれる優れたアンプである。内容の充実の割には、見た目の魅力と、品位に欠けるのが憎しまれるが、部屋での存在として必ずしも表に現われることのないパワーアンプの性格上、容認できるレベルではあった。しかし、その時点においても、このパワーと対になるコントロールアンプは遂に姿を見せることはなかったのである。
 C2301としてベールをぬいだのが、その待望のコントロールアンプであって、去年のオーディオフェアの同社のブースに参考出品として展示されていたのを記憶の方もあるかもしれない。本号の〆切に、その第一号機が間に合って、試聴する機会を得たのは幸いであった。
 C2301。パワーアンプのB2301と共通の型番を持つこのモデルは、どこからみてもサンスイの製品であることが一目瞭然のアイデンティティをもっているのが印象的で、パワーアンプで苦情をいったアピアランスは、コントロールアンプでは一次元上っている。どうしても、目立つ存在であり、直接操作をするコントロールアンプとして、しかも、かなりのハイグレイドな製品ならば、使い手の心情を裏切らないだけの雰囲気を持っているべきだ。
 細かい内容は余裕があれば書くことにして、まずこのコントロールアンプの音の印象を記すことにしよう。サンスイのアンプの音の特徴はここにも見事に生きている。それは音の感触が肉厚であること。弾力性のある暖かい質感だ。脂肪が適度にのっていて艶がある。それでいて決して鈍重ではない。低音はよく弾み、ずーんと下まで屈託なくのびている。中域から高域は、決してドライにならず、倍音領域はさわやかだが、かさつかない。ブラスの輝やきは豪華だが薄っぺらではないし、芯がしっかりと通る。弦の刺戟的な音は、やや抑えられ過ぎと思えるほど滑らかになる傾向をもつ。どちらかというと解脱には程遠い耽美的な情感に満ちている傾向のアンプである。音楽は宇宙だから、そこにはすべての世界を包含するが、このアンプで天上の音楽を奏でることは無理だろう。正直なところ、筆者のように俗物として、音楽に人の魅力や生命の息吹きを求め彷徨している快楽主義者にとっては、これでよい。いや、このほうがよい。色気がある音だから。しかし、あまりに強くこういうことをいいたくなるというのは、長く聴いているとやや食傷気味になるような個性なのかもしれない……などと思ってみたりしている。なにしろ、きわめて限られた時間の試聴だから、完全に自信のある印象記は書けない。
 オーディオ的な表現をつけ加えるならばプレゼンスはたいへんよいし、定位感も立派なものだ。奥行きの再現、音場の空気感も豊かだし、見通しのよい透明度もまずまず。肉感的な音の質感だから、音像のエッジはそれほどシャープな印象ではない。シャープさを望むなら、他に適当なアンプもあるから、このほうが存在理由があると感じられる。紙数がなくなったが、このアンプも、最近のサンスイ・アンプの技術的特徴であるバランス回路方式をとっていて、出力はアンバランスとバランスの両方が得られる。
 コントロールアンプとしての機能はよく練られ、随所に細かい気配りとノウハウのみられる力作である。

デンオン PRA-2000Z, POA-3000Z

井上卓也

ステレオサウンド 70号(1984年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より

 デンオンのセパレート型アンプの新世代を意味する製品として、PRA2000とPOA3000が登場してすでに5年の歳月が経過している。今回、その安定した評価を一段と高めるために、最新のアンプ技術が投入され、新しく型番末尾にかつてのプリメインアンプPMA700Zで使われた、栄光のZの文字がついたPRA2000ZとPOA3000Zとして新登場することになった。
 デザイン的には、当然のことながら従来の製品イメージを受継いではいるが、操作性を向上するために細部の改良点は数多くある。たとえば、PRA2000Zでは、セレクタースイッチのパネル面の凹みへの移動、パネル下側の扉部分の開閉にロック機構が追加されたことなどだ。
 PRA2000Zは、パワーアンプに先行して発売されたモデルである。前作が発売以来5年というロングラン製品であり、その間に、PCMプロセッサー、CDプレーヤーなどのデジタルプログラムソースが登場したこともあって、アンプとしての内容は完全に一新され、現時点での最新のコントロールアンプに相応しいものがある。
 基本構成は、アナログ系のフォイコライザーにCR型を採用するデンオン独自のタイプであることは前作と同様だが、今回はフォノ入力系が3系統独立したタイプに発展し、スーパーアナログ対応型としている点に特徴がある。イコライザーの構成は、入力部に約1対7の昇圧比をもつステップアンプトランスを備えたヘッドアンプ①、MC型力−トリッジをダイレクトに使用できるヘッドアンプ②とMM型に代表される高出力型力−トリッジ用のヘッドアンプ③の後に切替えスイッチがあり、これに続いてCR型RIAAイコライザー・ネットワークとフラットアンプが置かれる。
 イコライザー出力と、チューナー、DAD、AUXの3系統のハイレベル入力は、電子スイッチと高精度リレーによるソフトタッチ作動方式により切り替えられ、この部分にはプリセット機能をもち留守録音などに対応可能である。
 ファンクション切替え、テープモニター、サブソニックフィルター、バランス調整、ボリュウム調整に続き、フラットアンプ兼リアルタイムトーンコントロール部と出力のバッファーアンプが信号系の通路となる。
 フラットアンプは、最高級機PRA6000で開発された無帰還技術を発展させたハイスルーレイトなダイレクトディストーションサーボ回路による無帰還型で、トーン使用時には、ディストーションサーボ回路内組込みの素子を使うリアルタイムトーンコントロールとして動作する。なお、出力部のバッファーアンプも無帰還型ハイスピードの低出力インピーダンス型だ。
 また、電源部は、従来の2倍の容量をもつ90VA級の大型トロイダルトランス採用。AC電源コードは、デンオン伝統のPMA500以来採用されている大容量型の新開発コードで、これらの部分はコントロールアンプの死命を決定する要点である。
 POA3000ZはPRA2000Zより根本的に設計変更が行なわれていることは、定格出力が250W+250W(8Ω)とハイパワー化されていることからも明瞭である。従来のPOA3000は、純Aクラスベースの高能率型アンプを特徴としていたが、今回は、その後のデンオンアンプに採用された、一般的なBクラスベースのノンスイッチング型に変わったとともに、独自の無帰還技術が全面的に新採用され、飛躍的に高度な性能を引出している。
 無帰還方式でNF技術を使わず歪みを除去するために、静的歪み除去のためのデュアルスーパー無帰還回路、信号のフィードバック、時間遅れ、スピーカーの逆起電力の影響などを排除するパワー段の新開発無帰還回路などが駆使されている。
 電源部は、左右独立トータル5電源型で、電源トランスは大型トロイダルクイブ採用。大型のピークレベルメーターは、0dBが200W(8Ω)表示で、内部に異状温度上昇と左右チャンネルの動作状態をチェックする自己診断ディスプレイを備える。なお、機能面には、CDプレーヤーをダイレクトに接続できるDAD IN端子を備える。
 PRA2000ZとPOA3000Zを組み合せて試聴をする。
 従来のペアが、柔らかく、滑らかで、美しい音を聴かせながらも、内側にかなり芯の強いキャラクターをもち、これが程よい音の芯を形成したり、ある場合には、音の傾向から予想するよりも、はるかに強く輝かしい個性を示したりする傾向をもち、柔らかく、穏やかだが、芯の強さのあるアンプという印象であった。それと比較すると、固有のキャラクターが大幅に弱められて、プログラムソースの内容に素直に対応し、柔らかくもシャープにも音を聴かせるナチュラルさが感じられる点と、音場感的なプレゼンスやディフィニッション、音像定位のナチュラルさなどが加わったことは大変に好ましい新製品らしい成果である。
 アナログディスクをプログラムソースとする場合、とくにMC型カートリッジには、PRA2000Zの独特の3系統のフォノ入力が、積極的に使いこなせるようだ。
 昇圧トランスをもつフォノ㈰は、トランスの昇圧比が低いため、あまり、カートリッジ側のインピーダンスの差に影響されず、トランス独特の程よく帯域コントロールされた密度の濃い、いわばアナログならではの豊かな音を聴かせてくれる。いわゆる低インピーダンス型MCや、軽針圧タイプの空芯高インピーダンス型MCで、広帯域型であるために、力強さや、音の厚みに欠ける場合などはこのフォノ①が好適であり、一般的な嗜好からはこのサウンドのほうが熱い支持をうけるにちがいない。
 ダイレクトにMC型が使用できるフォノ②は、①とは対照的に、広帯域でディフィニッションの優れた、現代型の軽量級空芯MC型の特徴を引出すに相応しい音である。CDを使うことが多くなると、このポジションで使う音が、アナログディスクでも標準となるであろうし、最新のアナログディスクの質的な内容を聴くためには、このクォリティがぜひとも必要になるであろう。フォノ③は、MC型なら外附けの昇圧トランスやヘッドアンプ用に使いたい。
 CDなどのハイレベル入力で音質が優れているのは、PRA2000Zの魅力だ。一般的に、ハイレベル入力からプリアンプ出力までのアンプで音の変化が大きいのが常だが、この部分の質的向上を望みたい。

NEC A-11

井上卓也

ステレオサウンド 69号(1983年12月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より

 アンプのエネルギー源である電源回路は電圧増幅を行なうコントロールアンプはもとより、電力増幅を行なうパワーアンプでは、直接アンプそのものの死命を制する最重要な部分だ。従来からも大型パワートランスや大容量コンデンサーの採用をはじめ、テクニクスがかつて採用したパワー段を含めての定電圧化、ソニーやビクターのパルス電源方式、ヤマハのX電源など各種の試みが行われてきた。しかし最近では、模準的な商用電源を使う電源トランス、整流器、大容量電解コンデンサーを組み合わせたタイプに戻っているのが傾向である。
 NEC A10プリメインアンプで採用され、新電源方式として注目を集めたリザーブ電源方式は、標準的な電源方式をベースに独創的な発想によるサブ電源を加えて開発されたタイプだが、今回、発売されたA11とA7では、これをさらに発展させたリザーブII電源方式を採用している。その内容は、蓄電池に代表される純直流電源とAC整流型の一般的な電源の比較検討の結果から、電源コンデンサーへ充電する場合の両者の波形の差に注目して、主整流電源の充電波形の谷間を埋める副整流電源を加えることで、限りなく純直流電源に近づけ、充電電流による混変調歪を抑え、低インピーダンスで電流供給能力の優れた電源とするものである。
 結果として物量投入型の電源となるために、価格制約上で定格出力は他社比的に少なくなるが、負荷を変えたときのパワーリニアリティは、A11で8Ω負荷時70W+70W、4Ω負荷時140W+140Wと理想的な値を示しているのは、注目すべき成果である。
 A11の主な特徴は、各増幅農独立の5電源方式とリザーブII電源、全段独立シャントレギュレーター型定電圧電源、全段プッシュプル型増幅回路の採用などである。
 A11の音は、安定な低域をベースにクリアーで、ストレートな音を特長としたA10の魅力を受継ぎながらも、一段と余裕があり、しなやかな対応を示す表現力の豊かさが加わったことが印象的だ。いわば大人っぽくなったA10といえるわけだが、試聴機は機構面での仕上げに追込みの甘さがあり、聴感上での伸びやかさ力強さがやや抑えられ、スピード感が弱められているのが残念な印象であった。

パイオニア Exclusive C5

井上卓也

ステレオサウンド 69号(1983年12月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より

 現時点での世界のトップランクのコントロールアンプを目指して開発されたモデルだけに、C5は長期間にわたり培われたパイオニア独自のアンプ回路設計技術の集大成をベースに、ユニークで簡潔なコンストラクション、コンデンサー、抵抗、スイッチ類などの数多くの部品を非常に高い次元で吟味し選択して採用している。
 このように文字として書けば、ほとんどの新製品アンプのコマーシャルコピーと何の変りもない表現になるが、実際のEXCLUSIVE C5の内部を見てみると、平均的なオーディオアンプの要求度とは隔絶した、非常に高い次元での要求に基づいて開発された製品であることが、現在のアンプ設計技術の水準を適確に捉えている目をもってさえいれば、瞬時に認識できるだけの内容を備えている。
 まず外観から眺めてみると、基本的なデザインポリシーは、EXCLUSIVEの顔ともいえるパネル面の下側に、サブパネルを設けたパネルフェイスに、天然木キャビネットという流れを受け継いではいるが、手づくりのフロントパネルは、C5では一枚構成のシンプルなタイプに整理され、C3、C3aではサブパネルとなっていた下側のパネルは、実際には開閉できず、単なるデザイン上の処理となっている。
 特徴的なパネル左端の長方形の部分は、大型のパワースイッチで、本機独特のマルチトランス・パワーサプライ方式、ACアウトレットのON・OFF用として、音質上でも重要な部品であり、ここでは特殊なタイプが採用されている。
 内容的なアンプとしてのブロックダイアグラムは、入力部に3Ω/40Ω切替型のMCカートリッジ用昇圧トランスを持つフォノイコライザー部、TUNER、AUXなどのハイレベル入力用と、テープ入力用に独立したバッファーアンプ、フラットアンプ部、トーンコントロールアンプとサブソニックフィルター、出力用バッファーアンプ部で構成され、ボリュウムコントロールは、フラットアンプの前に、バランサーは出力用バッファーアンプの前に置かれるレイアウトである。
 これらの各アンプ部は、モジュールアンプ化されていることが本磯の大きな特徴である。280μ厚無酸素圧延銅使用のガラスエポキシ基板上にトランジスター、コンデンサー、抵抗などの構成部品をマウントし、これをポリプロピレン系の特殊な導電樹脂ケース内に、鉛ガラスフィラーを混入した高比重エポキシ樹脂で固め、音質上有害な振動や電磁波の除去と、熱的安定度をも含めた耐久性、安定度の向上をはかった設計であり、フォノイコライザー部のイコライザー素子も同様な構造のCRモジュールが採用され一般的なアンプの内部に見られる基板上に半導体、コンデンサー、抵抗、スイッチ類が林立するアンプらしさは皆無に等しい。
     *
 このところ、アンプの話題は、信号系の回路構成上の斬新さもさることながら、アンプの基本である電源部の見直しが各社でおこなわれ、それぞれにユニークな名称がつけられているようだが、C5の電源部もオーソドックスな手法によるマルチトランス・パワーサプライ方式を採用している。
 基本的な構想は、フォノイコライザーアンプ部、フラットアンプ部の左右チャンネル用4ブロックに、それぞれ独立した4個のパワートランスを使用する方式で、アンプにとっては理想的ともいえる電源方式であり、従来の巻線のみ独立したタイプににくらべ、電源による混変調歪やセバレーションの劣化に対して効果的な手法である。
 本機の電源部は、この4個のトランスに加えて、信号系制御用の主にリレー用に使う電源用の専用トランスを備えるため、これも音質に直接関係をもつAC100Vラインの配線が複雑化する難点をもつが、この解決策として、5個の電源トランスとACアウトレット用の6系統のACラインに対応した無酸素銅線使用の6本のAC用コードを束ねた新開発の電源コードが開発され、各電源トランス間の干渉を低減するとともに、電源インピーダンスをも低くしている。また電源プラグは、当然のことながらEXCLUSIVEらしく、極性表示付である。
 MC用昇圧トランスの採用も本機の大きな特徴である。昇圧トランスのポイントは鉄芯にあるが、ここでは独自の53μ厚リボンセンダストをトロイダル型として採用。パーマロイにくらべ広帯域であり、非結晶性材料のような経年変化のない特徴があるl。巻線はφ0・25mm無酸素銅線を2本並列巻としDCRを低くし、MC型独特の低電圧・大電流を活かしている。
 その他、BTS規格の0〜−90dBと−∞〜の40ステップのアッテネーターの採用、新開発のリレーによる入力セレクター、テープ関係などの信号切替、トーンフラット位置でリレーにより完全にトーンコントロールアンプがディフィートするトーン回路、22番線相当の無酸素銅撚線を芯線とし、低容量ポリエチレン絶縁物、同じく無酸素銅線と導電性ポリ塩化ビニール使用の高性能シールド線など、機構面での非磁性材料使用モノコンストラクション筐体、非磁性ステンレスネジなど、単体部品開発から手がけている点は、類例のないものだ。
 ヒアリングは、EXCLUSIVE M5をはじめ、2〜3機種のパワーアンプと組み合わせて使用したが、基本的にキャラクターが少なく、優れた物理特性をベースとしたナチュラルな音が聴かれる。聴感上のSN比に優れ、音場感的な定位やパースペクティブを誇張感なくサラリと聴かせる。M5との組合せでは、全体に滑らかに美しく音を聴かせる傾向を示すが、旧いマランツ♯510では、整然としたダイナミックな押し出しのよい音を聴かせる。
 現代の優れたオーディオ製品に共通する特徴は、これといった個性を誇示する傾向がなく、自然な応答を示すことだが、C5も同様である。いわゆる、シャープな音とか雰囲気のある音という表現は、結果では生じるが、使用条件、使用機器でかなり変化をするため、簡単にC5の音はこうだと判断するわけにはいかない。あくまでナチュラルで、正確な音といったらよいであろう。とくにコントロールアンプで音の差が生じやすいハイレベル入力からの性能が優れているようで、この点はCD、デジタルプロセッサー用として、現代アンプらしい特徴である。

デンオン PRA-1000, POA-1500

井上卓也

ステレオサウンド 68号(1983年9月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より

 安定感があり、信頼するにたる内容と音質で堅実なオーディオコンポーネントを開発しているデンオンから、新しく従来にないローコストなセパレートアンプ、PRA1000コントロールアンプとPOA1500パワーアンプが発売された。
 表面的に捉えれば、単に普及価格帯のセパレート型アンプで、セパレート型アンプの入門者用と評価されがちだ。しかし開発の基本コンセプトは、プリメインアンプの超高級機が数は少ないが存在する価格帯で、プリメインアンプに本質的に存在する、MCカートリッジ入力からスピーカー出力までを増幅する、ひじょうに高利得のアンプが単一筐体に組込まれているために起きる相互干渉による音質劣化の問題点を解決することだろう。電圧増幅機であるコントロールアンプと電力増幅機であるパワーアンプに分割し、現時点で高度に発達しているエレクトロニクス技術に基づく物理特性の良さを損うことなく、結果としての音質に、いかに引出すかにあると思われる。
 外観上の特徴は、上級機種PRA2000とPOA3000を受継いだ、いかにもデンオン製品らしいデザインにあり、仕上げも普及価格帯の製品といった印象が少ないのがメリットである。
 コントロールアンプPRA1000は、アナログディスクのハイクォリティ再生の重要な要素としてデンオンが主張しPRA2000、6000で実現したイコライザーアンプの超広帯域化を受継いでいる。一方、CD時代に対応して、高レベル入力のCDプレーヤーを受けるフラットアンプやバッファーアンプにも最新の技術を導入して、広帯域、高SN比化が図られ、ピュアフォーカスなサウンドが狙われている。ちなみに、現状のコントロールアンプでは、簡単に考えれば容易に見受けられる、高レベル入力からコントロールアンプ出力にいたるフラットアンプ、バッファーアンプ、トーンコントロールアンプだが、各社間、各モデル間の音質が相当に異なっていることを体験するのがつねである。
 イコライザーアンプは、低雑音、広帯域に加え、入力インピーダンスの変動による歪増加を抑える設計。これは内外各種のMCカートリッジとの対応性の幅を拡大した、MC/MM切替のCR−NFタイプで、RIAA偏差は±0・2dBで20Hz〜1100kHzを保証している。
 高レベル入力を受けるフラットアンプは、初段ボリュウムの影響による歪の増大を防ぎ、0・002%以下の低歪率が特徴だ。なお、トーンコントロールは、フラットアンプの帰還回路に素子を組み込み、音質上有害なコンデンサーを除去したリアルタイムトーンコントロールである。
  これにつづく、バッファーアンプは、動的歪の発生がなく、接続されるパワーアンプの入力特性の影響を受けずに信号を送り出す独自の無帰還バッファーアンプである。
 その他、高速応答強力電源回路、信号伝達ロスを極少に抑えた、超高周波機器用のポリエステル系基板採用などが目立つ。
 パワーアンプPOA1500は、デンオン独自の入力系への信号フィードバックや時間遅れがなく、動的歪が発生しない無帰還ハイパワー型で、最終段に採用したダイレクト・ディストーションサーボ回路は、出力側から得た信号と入力信号を比較して歪成分のみを検出し、これを入力側に位相反転をして加え歪を打消す本機の重要な回路である。
 電源部は、600VAのトロイダルトランスと6000μFのコンデンサー、強力なダイオードを採用し、8Ωで150W+150W、6Ωで200W+200W、4Ωでは、240W十240Wという優れたパワーリニアリティを確保している、なおフロントパネル中央部のディスプレイにはヒートシンク異常温度、左右チャンネルのパワー段の動作確認ができる自己診断機能を備え、入力系はノーマル入力と、CDプレーヤーダイレクト接続用に、CDサンプリング周波数に近い40kHz以上をカットするとともに−3dBのアッテネーターの入った、CDプレーヤーとのベストマッチを計ったハイカットフィルター付の2系統をもつ。なお、注目のアース関係の処理は、フローティング・ロード回路の採用で、小出力時のノイズと歪を低減している。
 新セパレートアンプを組み合わせた音はブックシェルフ型やフロアー型のスピーカーを問わず、従来のデンオン製品とは一線を画した広帯域でディフィニッションの優れた音を聴かせるのが新しい魅力だ。問題の低域特性も豊かに伸び、CD入力時でも質感の優れた活気のある低域を聴かせる。全体に安定度重視で少し音を抑えて聴かせるデンオンサウンドの傾向はなく、反応が早くナチュラルに拡がる音場感、定位感に加えて、活き活きとした音楽を聴く楽しみが味わえることが本機の大きな魅力だ。